~EGOミストラルシティ支部・入り口前~
にろく「ここに来るのも久しぶりだな」
秘密諜報部に所属していたにろくには様々な思い出がある場所だ。
きゅっぱ「あたしはここにいい思い出はないけどね」
ミストラルシティ支部の地下で行われた秘密諜報部員の抹殺。その記憶は今だ新しいものだ。
ナル「なんにしても進まないことには問題は解決しないよ。いこうか」
3人は入口へと差し掛かる。そこには警備をしているEGO隊員がいた。
EGO隊員「おや?あなたたちは!」
にろくたちの顔を見るなり驚く様子のEGO隊員。
にろく(やはりEGOがなにか噛んでいたか…)
心配するにろく。
EGO隊員「にろくさんとナルさんですね!あなたたちの噂はかねがね聞いております!」
ナル「噂?」
EGO隊員「はい!クリュセルスでの未元獣攻略で活躍したと!」
Nによるクリュセルスの占拠はEGO始まって以来の大事件だった。その攻略に活躍したにろくたちはEGO内部ではちょっとした有名人となっていたのだ。
EGO隊員「それで今日はどんな御用ですか?」
にろく「ちょっとカレン長官に用事があってな」
EGO隊員「わかりました。今アポを取ってみます」
隊員は何やら通信を行う。
EGO隊員「にろくさん。ちょうど今カレン長官は時間が空いているそうなのでどうぞ会議室へお通りください」
にろく「すまない」
にろくたちはエレベーターへと向かう。
きゅっぱ「今ので1つ謎が解明したね」
にろく「なに?」
ナル「EGOが関与している可能性は低いかもね」
きゅっぱとナルはなにやらわかったように話している。
きゅっぱ「あの逃げたやつが本当にEGOの隊員ならあたしたちを捕えるはず」
ナル「もしかするとあえて泳がしている可能性もあるけどね…その可能性は低いかもね」
にろく「確かにな。俺たちのもとに残していった武器の情報もある。それを知った俺たちを捕えないのはおかしいな」
きゅっぱ「それとも奴らの狙いはウルズと十也だけであたしたちのことはまったくどうとも思っていないのかもしれないけどな」
ナル「カレンさんに会ってみればそこらへんも詳しくわかるさ」
にろく「そうだな。それにここにはあいつもいるはず。それで奴らとEGOがつながっているかどうかもわかる」
きゅっぱ「あいつ?」
にろく「十也だ。あいつは今ここのEGOに所属している」
きゅっぱ「へ~。そうなのかい。じゃあ話が早いね。」
ナル「十也が拘束されていれば例の奴らはEGOに関係しているってことだね」
にろく「そういうことだ」
~EGOミストラルシティ支部・会議室~
カレン「久しぶりだな
にろく、ナル」
にろく「あぁ」
ナル「お久しぶりです」
カレン「その節は世話になったな」
クリュセルスに捕らわれていたカレン。彼女を救い出したのはにろくたちの力でもある。
カレン「とその女性は?」
きゅっぱに目をやるカレン。
きゅっぱ「あたしはきゅっぱ。よろしくな」
カレン「こちらこそよろしく。」
握手をする二人。
カレン「それで急にどうした?」
ナル「実はですね…にろく」
にろく「あぁ」
EGOの隊員証をとりだすにろく。
カレン「EGOの隊員証…?」
隊員証を確認するカレン。そこにはある男の名前が記されていた。
カレン「これは落とし物か?わざわざ届けに来たわけではないだろ?」
きゅっぱ「その男のデータを調べてほしいのさ。」
カレン「隊員のデータか…EGOに所属しているもののデータは閲覧することは可能だが…」
少し渋る様子のカレン。
カレン「なかなか昨今のご時世個人情報にうるさくてな…」
にろく「まぁそうだろうな。だがこの男がすでに死亡しているならそれほどでもないだろ」
カレン「死んでいるだと?隊員証があるのに?すでになくなった隊員の隊員証は本部に保管されているはず…」
ナル「ちょっとやっかいなことに巻き込まれてるみたいでして。なんとか調べてもらえると助かるんですが…」
カレン「なにやらいろいろ込み入った事情がありそうだな…よし!わかった!少し待っていろ!」
そういうとカレンは隊員証を手に会議室を出ていった。
~数分後~
バン!
勢いよく会議室の扉が開かれる。
カレン「その男の素性がわかったぞ!」
ナル「本当ですか!」
カレン「あぁ。お前たちが持っていた隊員証の人物…
ケビン・ロダスは確かにEGOの隊員だった」
きゅっぱ「だった…?その言い方は気になるね」
カレン「ケビンは数年前に任務で死亡していた。」
にろく「やはりか…」
にろくの思った通りだ。ケビンは確かに任務で死亡していたのだ。
カレン「ミストラルシティ支部に所属していた彼は前長官ネオの命令でグリフ大陸のEGO支部の調査任務の補佐についていたらしい」
きゅっぱ「グリフ大陸…」
ナル「それって
スライと
トニーの故郷がある大陸だよね」
にろく「そうだな。あいつらはこの前の一件…バトルグランプリが終わった後、そこにある国に帰ったみたいだからな」
ナル「そうだったね。でもなんでミストラルシティ支部のEGOがグリフ大陸の調査の手伝いをしていたんだろうね?」
カレン「そこまではデータには記載されていなかった。あいつ…ネオが考えていたことなんて私にはわからないからな」
遠くを見つめるカレン。そのまなざしはどこか悲しみを感じさせる。
にろく「やつ…ケビンはグリフ大陸での任務で死亡したというわけか」
カレン「記録ではそうなっている」
きゅっぱ「じゃあ奴の死を直接確認した人物はいないんだね?」
カレン「このミストラルシティ支部ではな。だが…」
にろく「なんだ?」
カレン「グリフ大陸のEGOに所属している人物ならなにか知っているかもしれん」
ナル「真実はグリフ大陸に…か」
カレン「データではグリフ大陸のとある村の調査を行っていたみたいだな」
ナル「とある村?」
にろく「もしかして自縛民か?」
カレン「いや…自縛民とは違うみたいだな。たしかアイラッド村…とか」
きゅっぱ「アイラッド村!?本当か!」
急に食いつくように反応するきゅっぱ。
カレン「あ、あぁ。データにはそう記してあった」
きゅっぱ「そうかい…」
きゅっぱのいつもとは違う様子に気づくにろくはきゅっぱへと問いかける。
にろく「きゅっぱ。アイラッド村のことを知っているのか?」
きゅっぱ「あぁ…知っているさ。その村はあたしの生まれ故郷だからね」
ナル「きゅっぱはグリフ大陸の出身だったんだね!」
きゅっぱ「そうさ…といっても自分の親も知らない孤児だったけどね」
きゅっぱはグリフ大陸の辺境にあるアイラッド村という村で生まれた…らしい。
らしいというのはきゅっぱは物心ついたときにはアイラッド村長の経営する孤児院で暮らしていたのだ。
自分の親もわからないまま暮らしていたある日、きゅっぱはEGO秘密諜報部のスカウトに出会い諜報員として引き抜かれたのだ。
きゅっぱ「幼少期の記憶しかないがあの村になにか変わった様子はあたしの記憶にはないけどね。まぁ子供の記憶だ。あてにはならないかもしれないけどね…ん?そういえば…」
何かを思い出すきゅっぱ。
ナル「思い当たる節でもあったのかい?」
きゅっぱ「あぁ、思い出したよ。毎日村長の家にある銅像に向かって礼拝をしていた記憶があるね。それはあたしのような孤児だけじゃあなく村人全員が行っていたんじゃないかな」
カレン「アイラッド村では何かを信仰していたということか…」
にろく「なんらかの宗教かもな」
ナル「そうだね。アイラッド村で信仰している宗教。そう考えるのが普通だね」
地域によってはそのような場所も存在している。その点についてはおかしいとは言えない。
ナル「だけど…」
ナルは続ける。
ナル「あのネオがわざわざ調査に噛んでいたんだ。なにかあるかもしれないね」
未元獣を操り世界を混乱に導いたネオ。そんな彼が噛んでいた時点でなにかあると疑わざるを得ない。
カレン「そうだな…。自身の管轄外の支部の協力を自ら買って出てまで調査の協力を行ったんだ。普通ならありえないな」
タウガス支部の協力要請のように他支部から要請が来て協力するならまだしも、自支部からわざわざ協力要請を送ることはまずありえないことだ。
にろく「ケビン・ロダス…奴のそこでの死の真実を確かめる必要があるな」
ケビン・ロダスが本当にそこで亡くなっているかのも含めて。
ナル「それとその任務内容もね」
きゅっぱ「だったらグリフ大陸のEGO支部にいくしかないね」
カレン「グリフ大陸のEGO支部か。私の方から連絡を入れておこう。」
ナル「そこまでしてもらって申し訳ないですね」
カレン「いいさ。お前たちがそこまで調べるということはそれだけのことがあるのだろう。一体何があったんだ」
きゅっぱ「…」
もしかしたらEGOが関連しているかもしれない以上、カレンにこの事態を話すことはできない。
にろく「事情があって今は全てを話すことはできない。だが俺たちのことを信頼してほしい」
カレン「…そうか。わかった。」
にろくたちに対して詮索を行わないカレン。
カレン「お前たちにはクリュセルスで助けてもらったからな。それにお前たちが自分たちのために情報を悪用するとは思えない。個人的にグリフ大陸に行くためのサポートをさせてもらうさ」
ナル「ありがとうございます」
きゅっぱ「それともう1つ聞いておきたいことがある」
カレン「なんだ?」
きゅっぱ「天十也は今どこに?」
カレン「十也は結利と共にEGO本部にいる」
にろく「EGOの本部に?」
カレン「あぁ。クリュセルスでの一件とタウガス共和国での新種の未元獣との遭遇。それに立ち会った当事者として本部から聴取を行いたいという申し出が来てな。」
にろく「新種の未元獣?」
カレン「タウガス共和国で現れたらしい」
タウガス共和国に現れた言葉を話す謎の未元獣。それは十也とタウガス支部の龍静たちにより退治された。だがその存在は未知なる存在。その情報をEGOは得るために十也と結利を本部へと召集したのであった。
ナル「なるほどね。まさかそんな未元獣が現れていたなんて…」
タウガス共和国はナルの故郷のある場所だ。そんな未元獣が自身の国に現れたとなればナルも故郷のことが心配になる。
カレン「十也たちが本部に行ったのは数日前だ。明日には本部を出てこちらへの帰路につくと思うぞ」
ナル「そうですか。」
十也たちが帰路につくということは…
にろく「奴らが狙ういい機会ということだな」
きゅっぱ「そういうことだな…だが…」
きゅっぱは小声でにろくとナルに話す。
きゅっぱ「それはEGOが奴らに関係していない場合だ。もしEGOが関係していれば本部に行った時点で拘束されているだろうな」
ナル「…」
十也のことを心配する3人。
カレン「どうしたんだ?」
ナル「いえ、最近十也に会っていなかったので彼は元気かと思いまして」
カレン「あぁ!あいつはお前たちの思っている以上に元気だぞ!帰ってきたらたまにはお前たちのところにも顔を出すよう言っておく!」
ナル「ありがとうございます。では僕たちはグリフ大陸のEGO支部へと行ってみます」
カレン「わかった。気をつけてな」
部屋を出るにろく、ナル、きゅっぱ。
ナル「さて…」
にろく「ケビン・ロダスのことを調べるためにグリフ大陸にいくのはいいのだが…」
ナル「十也のことだね」
にろく「あぁ。あいつが無事なのか知るためにはEGO本部にも向かわなければならない」
ナル「どちらかを優先するか…もしくは二手に分かれるってことだね」
この人数で二手に分かれるのは現実的ではない。だったら…
ナル「僕たちは…」
きゅっぱ「あたしに任せな」
ナルの言葉を遮りきゅっぱが発言する。
きゅっぱ「十也の方はあたしが手を打つ。あたしたちはグリフ大陸に向かおう」
にろく「手を打つ…というのは?」
きゅっぱ「十也のことを一番心配しているあいつなら否が応でも行くだろうさ」
こうしてにろくたちはグリフ大陸へと向かうのであった。
to be continued
最終更新:2017年07月23日 09:58