~グリフ大陸・アイラッド村への山道~
にろく「ここを超えればアイラッド村だな」
メルト「なかなか遠いですね」
険しい山道を進むにろくたち。
ナル「ところで
きゅっぱ。アイラッド村は君の故郷なんだよね。何か思う節はないの?」
きゅっぱ「故郷といっても本当に小さいころにいただけさ。諜報部として活動していた時間の方が長いくらいにね」
きゅっぱはまだ若い。そのきゅっぱが自身の故郷で暮らしていた時間より諜報部としての活動が長いということは彼女はよほどの苦労をしてきたのだろう。
雑談をしながら歩を進めるにろくたち。やがて彼らの前に小さな村が姿を現す。
メルト「あれですか!」
ナル「そうみたいだね。さっそく行ってみようか」
にろくたちはアイラッド村へと進む。
~アイラッド村~
にろく「ここがアイラッド村か」
何の変哲もなさそうな小さな村だ。
メルト「あ!村の方が居ましたよ!」
村人を発見するメルト。村人へと駆け寄るメルト。
村人「ん?この村にお客さんとは珍しい。何か用かね?」
メルト「単刀直入にお聞きします!この村で怪しい儀式は行われていますか!」
きゅっぱ「あのバカ!」
メルトの質問に驚くにろくたち。だが村人はその質問に淡々と答える。
村人「怪しい儀式?そんなものこんな辺鄙なところにある村じゃあ行われちゃあいないよ」
メルト「そうですか…」
メルトが
にろくたちの元へと駆け寄ってくる。
メルト「この村では怪しい儀式は行われていないようですよ!」
ゴチン!
突如メルトの頭上に拳が振り落とされる。
メルト「いった~い!!」
突然の攻撃に驚くメルト。その攻撃を行った人物はナルだった。
ナル「メルト…。君の行動力は素晴らしいと思う。だけど時には慎重に行動することも必要だよ」
メルト「なんで私にゲンコツしたんですか?ひどいです!」
ナル「はぁ…ごめんねにろく、きゅっぱ。」
にろく「起きてしまったことはしょうがない」
きゅっぱ「だけどこれであたしたちは村の連中に警戒されるかもね。情報を聞き出すのは厳しいね」
メルト「もしかして…私のせいですか!?」
3人は口をそろえて言う。
ナル・にろく・きゅっぱ「そうだ!」
メルト「ヒェー!!……ごめんなさい……」
落ち込むメルト。そんなメルトをよそに3人は話を進める。
ナル「村人から直接話を聞くのは難しいかもね」
にろく「だがそれは元々だろうな。」
きゅっぱ「生贄なんてやっていればよそからきたあたしたちにそのことを話すとも思えないしね」
ナル「そういえばこの村では何らかの宗教を信仰しているんだっけ?」
きゅっぱ「あたしの幼少期の記憶が確かならそのはずだよ」
にろく「村長の家の前で礼拝をおこなっていたらしいな?」
きゅっぱ「そうだね」
ナル「なら村長の家を訪ねてみようか。そこに行けば何かわかるかもしれない」
にろくたち4人は村長の家を目指すのであった。
~アイラッド村・村長の家~
ナル「ここが村長の家みたいだね」
村長の家へとたどり着いたにろくたち。
にろく「家の前にだれかいるな」
村人「ん?見ない顔だな。村長に何か用か?」
メルト「えっとですね…」
きゅっぱ「あんたはだまってな!」
メルト「ふぐぅ!」
きゅっぱに口をふさがれるメルト。これ以上話をややこしくされてはたまらない。
ナル「数年前にここにEGOグリフ大陸支部の者が訪ねてきたと思うのですがそのことでちょっとお聞きしたいことが…」
村人「そうか…だが今村長は忙しく、手を離せない状況だ。」
にろく「そんなに時間はとらせない。ちょっとだけでいいんだが…」
村人「だめだ!今は忙しい!」
頑なに村長へと会わせない村人
ナル「そうですか…では日を改めます」
にろくたちは村長の家を後にする。
~アイラッド村・入り口~
にろく「さて…どうするナル?」
ナル「う~ん。この感じじゃあ真実を聞けそうにもないね」
きゅっぱ「こういう村じゃあ村人の団結は固い。あたしたちが入る余地はないね」
にろく「情報は手に入らずか…」
ナル「今回ばかりは仕方がないね…でも」
メルト「でも?」
ナル「村人たちの反応からしてなにかあるのは間違いないね。」
にろく「そうだな。普通の村ならここまでよそ者を警戒したりはしない」
きゅっぱ「村人たちは間違いなくあたしたちのことを警戒していたからね」
村人たちの反応から何かあると感じ取ったにろくたち。ただ1人を除いてはだが…
メルト「そうなんですか!?私にはまったくわかりませんでした!」
ナル「まだまだ修行が足りないねメルト」
メルト「精進します!」
きゅっぱ「これ以上は情報も得られそうにないな」
にろく「
ケビン・ロダスについてもわからずじまいだったな…」
ナル「仕方ないね。とりあえずこの村は出た方がよさそうだ」ちらっ
後方を確認するナル。建物の陰に隠れながら村人たちがにろくたちのことを監視しているのが覗える。
にろく「そうだな…まずは戻るとするか」
にろくたちは村を後にした。
~グリフ大陸・アイラッド村への山道~
にろくたちが山道へと差し掛かると同時に雨が降りだした。
メルト「雨ですね…やだなぁー」
きゅっぱ「悪天候での山道は危険だ。気を付けろよ」
山道を歩くにろくたち。
ナル「この天候…数年前にEGOがアイラッド村からの帰りに事故にあった時と同じだね」
にろく「嫌なことをいうなよナル。」
ナル「そうだね。でも気を付けた方がいいかもしれない」
きゅっぱ「そうだね。もしもということもあるからね」
メルト「わかりました!気を付けます!」
全員が気を引き締めようとしたその時!
ガガン!!
突如崖上から無数の岩が転がり落ちてくる。
にろく「なに!?落石だと!」
ナル「まずい!間に合わない!」
きゅっぱ「くっ!」
メルト「きゃあぁぁー!」
回避が間に合わず無数の落石に巻き込まれるにろくたち。そのまま彼らは崖下へと落石に巻き込まれながら落ちていってしまう。
その光景を崖の上から見つめる数人の人々がいた。
村人「数年前に来たEGOの隊員たちのようにくたばれ!」
村人「この大事な時に村に来るとは運がない奴らだ。今邪魔をされるわけにはいかんのだ!」
それはアイラッド村の村人たちだった。彼らの手によりにろくたちは崖から突き落とされたのだ。
~それから数時間後~
~グリフ大陸・アイラッド村~
あたりも静まり返った夜。村の住民たちが村長の家の前に集まっている。
村人A「これで全部です」
男は輝く石をその場に置く。
村長「我らのもとにある四至宝(ししほう)はこの3つのみ…本来ならばすべてを手に入れてからことに移りたかったが…先ほどの訪問者たちのこともある一刻を急がねばならん」
彼らの前には輝く石、鞘に納められた剣、大きな釜が置かれている。
村人B「今まで所在不明だった残り一つのありかは判明しています。ですが…」
村人A「我々ではそれを取り戻すことはできないでしょう」
村長「我らは戦いに秀でているわけではないからな…その役目は我らが神に託そう…」
村人A「そうですね。儀式の準備は整っております」
村長「うむ。では、みなのもの準備はよいか!」
村長の呼びかけにうなずく村人たち。
村長「ではこれより我らが祖先、神族の復活の儀式を行う!」
村長の家の前の祭壇に炎がともされる。
ボォォ
闇夜に祭壇の炎がきらめく。
村長「~~~~」
なにやら聞きなれない言葉のような呪文を唱える村長。
光に包まれる祭壇。
村人A「これは…!?」
村人たちの体も光に包まれる。村人たちの体の光が祭壇へと集まっていく。
村人A「体の力が抜けていく…これが神の一部になるということ…」
シュウゥゥン!
祭壇に集められた光が形をとっていく。それは人の形となる。
村長「おぉぉぉ…」
村人B「神が…顕現なさる」
光の中から人の姿をしたものが現れる。それは目を閉じた女性だった。神秘的な雰囲気を持つ女性が目を開く。
???「ここは…」
村長「お目覚めになりましたか我らが祖。」
村人A「美しい…」
女性のあまりの美しさに魅了される村人たち。
???「そうか…思い出したぞ。その時が来たということか…」
村長「祖らが眠りについてから数百年の時が立ちました。ですがこれで…」
???「数百年…随分と長く眠っていたのだな」
村長「我らが一族の悲願。そのために必要なものは揃えました」
???「我らの四至宝か…」
祭壇の近くに置かれる輝く石、鞘に納められた剣、大きな釜に目をやる女性。
???「ん?1つ足りんな…」
村長「ご安心ください。それの所在はつかんでおります。」
???「なるほどな。場所はわかっているがそなたたちでは手に入れられない状況ということか」
村長「面目次第もございません」
???「いいだろう。そこまで準備が整っていれば十分だ。後は我らがそなたらの想いを引き受けよう」
村長「ありがとうございます!」
???「では…」
村長たちに手をかざす女性。
村長「我らの命、悲願のために存分にお使いください」
???「うむ」
村長たちの体が光となって消えていく。その光を取り込む女性。
???「幾分か力の足しにはなったか…だが全盛期には程遠いな。まずは…」
女性は大地に手をかざす。
ダーナ「ダーナ神(しん)が命ず!起きよ!我が隷神たちよ!」
ボコボコ!
大地から這い出るように4人の人物が姿を現す。
???「ダーナ神よ。久しいな」
茶色い長髪の男が告げる。
???「
ブリギット。呼びに馳せ参じました」
ブリギットと名乗る女性。彼女は知的な雰囲気を醸し出している。
???「俺の力を再び振るう時が来たか…」
寡黙そうな男。だがその体は屈強だ。
???「我らがそろったということはその時が来たのですね」
右腕のない女性はダーナへと質問する。
ダーナ「そうだ、
ヌアザ。数百年という時がかかったがついにこの時が来たのだ!」
ヌアザ「我らの悲願…ついにこの時が」
長髪の男「四至宝はそろっているということか」
ダーナ「まだだ
ダグザ」
ダグザ「なんだと?」
寡黙そうな男「俺の…至宝か」
ダグザ「ん?」
横にある3つの至宝を見つけるダグザ。
ダーナ「ルー、お前の至宝。その所在はつかんでいる」
ルー「なるほど…」
ブリギット「ではそれを取り戻せばいいということですね」
ヌアザ「では早速行くのでしょう」
ダーナ「そうだな…だが私はお前たちの召喚と数百年の眠りのせいで力が弱まっている。しばらくは力の回復に努めさせてもらう」
ブリギット「でしたら私はダーナ神の護衛につきましょう」
ダグザ「だったら俺たち3人が至宝を取り戻しに行ってくるぜ」
ダーナ「ダグザ、ヌアザ。お前たちの至宝を持っていけ。頼んだぞ」
ヌアザ「承知しました」
ルー「我が至宝…必ずやこの手に」
ダグザ「行ってくるぞ!」
3人はその場を後にした。
ダーナ「我らトゥアハ・デ・ダナン。その悲願を達成するときは近い…」
アイラッド村の村民たちを取り込んだダーナと名乗る女性。彼女たちは一体何者なのだろうか。そして崖から突き落とされたにろくたちの安否は…
to be continued
最終更新:2017年07月24日 19:59