~アイラッド村~
ガーランド「くそっ!ヒルデ・カミナめ!」
何度ヒルデに連絡を取り合おうと一向に繋がらない。
ガーランド「物資の増援も来る気配がない…やつめ我々を裏切ったか」
ゲイン「フリアーデスとも連絡がつかない…どうするガーランド?」
ガーランド「
ダーナも先ほど神妙な面持ちで歩いて行った…迎撃にでたやつらの仲間に何かあったのかもしれん」
今の状況はどう考えてもよくない方向に進んでいる。
ガーランド「最悪の場合は…考えねばならんな」
~~~
ナル「どうだい?」
にろく「今のところ敵の気配はない」
アイラッド村の中を慎重に進んでいく4人。
ウルズ「ダーナに見つかったら終わりか…随分と厳しいかくれんぼだぜ」
ツバメ「難易度高すぎね。誰もやりたがらないわよ」
突如声が響く。
ウルズ「なんだ!?」
ナル「上だ!」
ドゴォン!
上空から何かが降ってくる。咄嗟にそれを回避する4人。
にろく「今のは!」
上空から降ってきたものそれは…
ダグザ「ここまで来るとはな」
ツバメ「トゥアハ・デ・ダナン…!」
ナル「見つかってしまったか…」
辺りを見回すナル。
ナル「ダーナはいないみたいだ…」
ダグザ「お前たちなど俺一人で十分ということだ」
ウルズ「大した自身だな」
にろく「だが助かる」
ツバメ「そうね。ダーナに見つかる前にこいつを倒せれば…まだ!」
戦いが長引けばそれだけダーナに見つかる可能性は高くなる。一刻も早くダグザを倒さなければならない。
ダグザ「俺を倒せる気でいるのか?いい度胸だ!かかってきな!」
ウルズ「速攻で行く!御雷(ミカヅチ)!」
右手を突き出すウルズ。しかし
バチン!
何かに攻撃を弾かれる。
ウルズ「なんだ!」
ダグザ「無駄だ!この精霊石(リア・ファル)がある限り効きはしない!」
ダグザを覆うようにバリアが展開されている。それにより攻撃が通らない。
ナル「
ブリギットが使っていた技…ならこれで!」
地面に宝剣を突き刺すナル。
ゴゴゴゴ!!
ダグザをバリアごと覆うように地面から石の壁が現れる。石の壁はドーム状に形成されダグザを覆い囲む。
ツバメ「さすがねナル」
ナル「これで…」
シュィン!
斬撃の衝撃波が石壁の内部から飛んでくる。
にろく「今のは…」
シュィン!シュィン!
続けて飛んでくる斬撃の衝撃波。
バゴン!
衝撃音とともに石の壁が砕け散る。その中からクレイヴ・ソリッシュを手にするダグザが姿を現す。
ダグザ「こんなもので俺を止められると思うな」
ナル「
スライたちが言っていた通りみたいだね。こいつは…」
ミストラルシティでダグザと対峙したスライと
トニーから話を聞いていたナル。
ナル「他のトゥアハ・デ・ダナンたちの武器を使えるみたいだね」
にろく「攻撃はあのバリアで通らない。動きを封じようにもあの斬撃で防がれる」
ツバメ「攻防に隙がない…」
ウルズ「打つ手なしかよ」
ナル(スライとトニーは自身らの能力で無理やり力押しで奴を退けた…それでもまだこいつは余裕を残していたみたいだけど)
ナルたちに力押しでダグザを押しのけられるとは思わない。それにダグザを倒さなければダーナに見つかってしまう可能性も高まる。
ナル(それだけの力を持つ相手に僕たちで勝てるのか…)
不安そうな表情を浮かべるナル。それに気づいたようににろくがナルへと話しかける。
にろく「ナル。俺とお前ならできるはずだ」
ナル「
にろく…」
そうだ。何を迷うことがあるだろうか。ここには仲間がいる。自分とともに戦ってきた仲間。そして頼れる彼が。
ナル「そうだね。僕とにろくなら!」
ダグザ「今度はこちらの番だ!」
クレイブ・ソリッシュを振るうダグザ。
シュィン!シュィン!
無数の衝撃波が4人に向かって飛んでくる。これだけの数の衝撃波を避けるのは難しいだろう。
ツバメ「くっ!秘密の箱庭『シークレット・ベース』」
ガキン!
衝撃波が何かに当たる。それは…
ダグザ「なんだ?」
ダグザの目の前にいた4人の姿が見えない。代わりにそこに四角い壁に包まれたような空間が現れる。それにダグザの放った衝撃波が阻まれたようだ。
ダグザ「これも能力か。ちっ!」
ガキン!ガキン!
ダグザはクレイヴ・ソリッシュを振るうがその空間を破壊することはできない。
ダグザ「閉じこもって守りを固めたか。ならこっちにも考えがあるぜ」
~秘密の箱庭『シークレット・ベース』内~
ツバメ「なんとか間に合ったわね」
ツバメの能力秘密の箱庭『シークレット・ベース』は任意の空間を切り取り外部から遮断する。
通常ならば特別な商談や密談をするために使うものだが,このように外部からの物理攻撃を遮断するために使用することもできる。
ウルズ「だがどうする…奴を倒す手段を考えなければ…」
ナル「それなら大丈夫」
ツバメ「どういうことナル?」
ナル「奴の弱点を見つけた。そこをつく」
ウルズ「それは…」
ツバメ「待って!大変よ!」
突然ツバメが慌てる。
にろく「どうしたんだ?この空間内にいる限り大丈夫なんだろう?」
ツバメ「それはそうなんだけど…このままじゃあ私の能力を解除できないかもしれないわ」
ウルズ「どういうことだ?」
ツバメ「私は『シークレット・ベース』の外の状況を俯瞰的に知ることができる…外は炎で埋めつくされてるわ。ダグザの仕業ね」
ツバメが言うには外にいるダグザが手にした石から炎を発生させ、それがこの空間を取り囲むように激しく燃え盛っているそうだ。
ツバメ「『シークレット・ベース』」を解除すればその瞬間私たちは炎に包まれるわね」
そうなればひとたまりもない。
ウルズ「こいつはやばいな」
ナル「いやこれはチャンスかもしれない」
ツバメ「どういうこと?」
ナル「にろく!君の力が必要だ」
~アイラッド村~
ダグザ「さて」
ダグザの眼前には炎に包まれた閉鎖空間がある。
ダグザ「これでお前たちは逃げるすべもない。そこから出てきた瞬間に消し炭と化す!いつまで閉じ込もっていられるかな」
シュン!
閉鎖空間が消える。
ダグザ「しびれを切らしたか!終わりだ!」
炎が閉鎖空間の中にいた4人を襲おうと激しく燃え上がる。だがダグザに飛び込んできたのは4人の姿ではなかった。その目に飛び込んできたもの。それは…
ダグザ「これは…?」
それはシャボン玉のような泡の塊。それが閉鎖空間の中から現れる。
パァン!
割れるシャボン玉。するとそこから滝のような水があふれだす。それはダグザの操る炎をかき消すように降り注ぐ。次第に炎が小さくなっていき、やがて消滅する。
ダグザ「水を生み出して、炎を消したか…」
炎が消えた先にナルたち4人の姿が見える。
ナル「これで蒸し焼きは免れたね」
ダグザ「ならこいつで!」
ダグザの手に持つ石が消え、その手にクレイヴ・ソリッシュが出現する。
ツバメ「さっきの剣ね!」
ダグザ「この斬撃で葬ってやる!」
クレイヴ・ソリッシュを振るおうとするダグザ。その瞬間!
にろく「ここだ!『プラグオン』!」
にろくが地面に向け手からプラグを出現させ、突き刺す。すると
ゴォォォ!
地面から激しい炎がダグザに向けて放たれる。
ダグザ「なに!?」
突然の攻撃に驚くダグザ。クレイヴ・ソリッシュを振るおうとしていたため、その炎に対する対処が遅れる。
ダグザ「ぐぉぉ!」
炎に包まれるダグザ。
にろく「自分の炎に焼かれろ」
ダグザ「俺の…炎だと?」
ナル「そうだ。この炎はお前が僕たちを焼き殺そうとはなった炎だ」
ダグザ「俺の炎は…さっきの水で消されたはず…」
ナル「あれは気づかれないためのカモフラージュだ」
ナルの魔道により水を発生させ、その瞬間ににろくが能力で炎を吸い取ったのだ。あのシャボン玉から水を発生させたのはにろくが能力を発動しているのをわからせないようにするためのカモフラージュだったのだ。
にろく「そして今お前が浴びているのがその炎というわけだ」
ウルズ「だがそれになにか意味があったのか?」
ナル「こいつが攻撃をくらっているという事実。それが重要なんだよ」
ツバメ「なるほどね。それがナルが建てた仮説だったということね」
にろく「そしてそれが実証されたわけだ」
ウルズ「お前たちだけでわかってないで俺にも説明してくれ!」
3人で納得しあっているがウルズには状況が理解できない。その説明を求めるウルズ。
ナル「ダグザは一度に複数の武器をつかうことができない。それが僕が見つけた弱点だったんだよ」
にろく「つまりやつは攻撃と防御を同時に行うことはできない」
ツバメ「だから奴の攻撃の瞬間にこちらが不意を衝ければ、攻撃が通る…いや通ったということね」
ウルズ「あの剣を使っているときは、石を使って防御ができなかったってことか」
ナル「そういうことだね。作戦がうまくいってよかったよ」
ダグザ「く…」
膝をつくダグザ。炎に包まれ体が燃え続けているその姿はとても苦しそうに見える。
ダグザ「くそ…」
にろく「ダーナに見つかる前に何とかなったな」
ナル「そうだね。あとはダーナを探そう」
ダグザ「おい。お前たち勝った気でいるなよ」
ツバメ「そんな状態で戦えると思っているの?」
ウルズ「それとも負け惜しみか?」
ダグザ「ったく…気に入らねえなぁ」
不貞腐れたようなまたは呆れたような感じでダグザは話す。
ダグザ「所詮は人間の浅知恵だ。倒すならまだこの程度では…」
にろく「その状態で何ができる…もうお前は戦える状態ではないだろう」
炎に包まれ膝をついている状態で何を言おうともそれは強がりにしか聞こえない。
ダグザ「そうだな…なら…」
ドン!
どこからともなく大きな釜を取りだすダグザ。
ウルズ「なんだ…あの釜?」
ダグザ「クレイブ・ソリッシュ!精霊石(リア・ファル)!」
剣と石を釜の中へと投げ込むダグザ。
ダグザ「そしてこいつで…」
ダグザの手の中に出現する槍。それは…
ツバメ「あれって!」
にろく「十也の使っていたブレオナクか!?」
ブレオナク。それを手に持つダグザ。ダグザはブレオナクを釜の中へと放り投げる。
ダグザ「こいつで…全部そろった」
ゴゴゴゴ!!
釜が激しく振動する。
カッ!
辺り一面を光が包む。そして光の中から姿を現したダグザからはその身を燃やしていた炎が消えていた。
ウルズ「あいつの持っているもの…あれはなんだ」
ダグザの手には見慣れぬ武器が握られていた。
ダグザ「これが四至宝の本来の姿。ケルト・ドルイダス」
それは両刃の剣を有し、柄の部分には赤く光る石がついている。
ナル「四至宝を合体させたのか…」
ダグザ「それは正確には違う。四至宝は元々俺の力を分け与えた武器。その分け与えた力を武器ごと一つにまとめたのだ」
ツバメ「自分の力を元に戻した…ということ」
にろく「それじゃあこれがこいつの本当の力というわけか」
ダグザ「そういうことだ。俺の本気を見れることに感謝し、そして死ぬがいい!」
ケルト・ドルイダスを手に4人へと襲い掛かるダグザ。
ツバメ「秘密のはこ…」
ツバメが能力を発動させるよりも早くダグザの持つ剣ケルト・ドルイダスから斬撃の衝撃波が放たれる。
バギョォンン!!
激しい衝撃音が辺りに響く。
ウルズ「御雷(ミカヅチ)」
ウルズが右手から発した御雷で衝撃波を受け止める。
ツバメ「助かったわウルズ」
ダグザ「防いだか。ならこいつはどうだ!」
キュィィン!
ケルト・ドルイダスの柄についた石が赤く輝く。そして
ゴォォォ!
ケルト・ドルイダスを覆うように炎が発生する。炎に覆われたケルト・ドルイダスはより強力さを増す。
ダグザ「こいつをくらえ!」
ブン!
炎を纏ったケルト・ドルイダスをウルズに振るうダグザ。
ウルズ「御雷だ!」
バギョォンン!!
御雷によりケルト・ドルイダスを受け止めるウルズ。だがダグザは退かず、鍔迫り合いのような状況となる。
ダグザ「この炎で!」
ゴォォ!!
炎が剣を離れ、蛇のようにウルズの背後へと回り襲い掛かろうとする。
ナル「させない!」
ゴゴゴ!!
宝剣の力で石の壁を展開し炎を受け止めるナル。
ダグザ「いい連携だ。だが!」
剣を引き、鞘がないのに抜刀するような態勢をとるダグザ。
にろく「なにをする気だ…」
ダグザ「はぁぁ!!」
ギュィィン!!
ケルト・ドルイダスが光を放つ。その光が刀身へと集約されていく。
ダグザ「この一撃で!!」
ブン!
ケルト・ドルイダスを振るうダグザ。その瞬間、刀身に集約された光が強大な衝撃波となって4人に向かい飛んでくる。先ほどの衝撃波とは比べ物にならない。御雷では防ぐことはできないだろう。
ウルズ「くっ!どうする!」
ツバメ「私の能力で」
にろく「それが最善かもしれないな」
ナル「いや…それじゃあだめだ」
ナルはその案を一人否定する。
ウルズ「なぜだ?」
ナル「あいつもツバメの力のことはわかっている。わかったうえで攻撃してきたんだ。だからその策をとっては僕たちが不利になる可能性が高い」
ツバメ「じゃあどうするの」
にろく「なにか策があるんだなナル」
ナル「あぁ見えたよ。ウルズ!地面に向かって御雷を!」
ウルズ「考えている暇はなさそうだな。わかった!」
バギョォン!
ナルに言われるまま地面に対し御雷を放つウルズ。
ナル「にろく。君の能力でウルズの御雷を!」
にろく「わかった『プラグオン』!」
地面に対し放たれている御雷のエネルギーをプラグオンで吸いだすにろく。
ツバメ「もう衝撃波が来るわ!」
ナル「ウルズ!にろく!2人で御雷を放って!」
ナルに言われるがまま2人は御雷を衝撃波に向け放つ。
バギョォォン!!
ダグザの放った衝撃波が消滅する。
ダグザ「なんだと!?」
ウルズ「こいつは!」
2人の放ったマイクロ波が重なり合い通常の御雷をはるかに凌駕する威力のマイクロ波の盾が形成されたのだ。
にろく「さすがだなナル」
ナル「それだけじゃあないさ!にろくプラグオンから放出しているエネルギーの波を収束させて!」
にろく「やってみる」
ナルのいうようにプラグオンから出ているマイクロ波をウルズの発生させているマイクロ波ごと収束させていくにろく。
ジジジジ!!
先ほどまで暴れるように発生させられていたマイクロ波が収束し、円錐形の槍頭を思わせるような形状になる。それがにろくの手のプラグの先から出ている。
にろく「これは…?」
ナル「マイクロ波を収束させた武器…ってとこかな。ウルズの放つ御雷の膨大なエネルギーをにろくのプラグオンで制御したんだ」
ウルズ「そんなことができるとはな」
ナル「でも使えるのは一回限り。一回使えばプラグオンにためられたエネルギーが放出されてしまうからね」
にろく「チャンスは一度限りか…」
ナル「でもにろくならできると信じているよ」
にろく「ふっ。期待は裏切らないさ」
ツバメ「頼んだわよにろく」
円錐形のエネルギーの塊を手に(正確にはプラグに)ダグザへと立ち向かうにろく。
ダグザ「俺の衝撃波を止めたのには驚いたが…攻撃が通ると思うなよ!」
ケルト・ドルイダスの柄についた石が赤く輝く。
キュィン!
するとダグザを覆うようにバリアが展開される。
にろく「ナルが賭けた一撃。受けてみろ!」
ジジジジ!
円錐形のエネルギーの塊をバリアへと突き刺すにろく。
バチチチ!!
バリアに当たった円錐形のエネルギーの塊の先端が激しい衝撃音を放つ。そして
ジジジジ!
円錐形のエネルギーの塊がゆっくりとバリアを突き破っていく。
ダグザ「ケルト・ドルイダスの力を上回るだと!?」
にろく「このまま!突き破る!」
バチン!
バリアを完全に貫通するた円錐形のエネルギーの塊。
にろく「これが俺たちの力だ!プラグオンミカヅチ『御雷槍(ミカヅチノヤリ)』!」
ザシュン!
ダグザ「ぐっ!」
ダグザの体へと突き刺さる御雷槍。
にろく「フィニッシュだ」
御雷槍をプラグから切り離すにろく。その直後!
バギョォォン!!
制御を失った御雷槍のエネルギーがダグザを飲み込むように暴発する。
ダグザ「ぐぁぁぁ!!」
マイクロ波を体の中から流し込まれ、全身が焼け倒れるダグザ。その姿は焼け焦げ、一目見て人とはわからないほどだ。
ツバメ「やったわねにろく」
にろく「ナルとウルズ、それにツバメも。みんながいなければ勝てない相手だった」
ナル「あとはダーナを…」
「私をお探しですか?」
4人の背後から聞こえた声。それは…
ウルズ「ちっ!」
ナル「ダーナ!」
ダーナ「よもやダグザを倒すとは思いませんでした。驚きました」
ツバメ「最悪ね…」
ダーナと対峙してしまった4人。それは4人がダーナの力の範囲内に入ってしまっていることを意味する。
ダーナ「さて…」
~~~
アイラッド村の中を一人進む十也。
十也「ん?」
背後に気配を感じる。その気配に気づき後ろを振り向く十也。
十也「お前たちは!?」
十也が見た人物。それは…
to be continued
最終更新:2018年01月24日 22:08