究極の黒の魔導!ダーナの切り札!

~アイラッド村~
ダーナ「この2人に気を取られすぎたか」
黒い球体に包まれたリョウガと意識を止められ微動だに動かないディック
ダーナ(奴らが私の生み出した魔導…意識停止(イーシーフェンチィ)から抜け出したとでもいうのか)
意識停止はダーナを中心とした一定範囲内の人間の意識を止める魔導だ。強力だがこの魔導はダーナが数十年物もの歳月をかけて完成させた魔導である。
術式の構成はあまりに難解でダーナ以外には使うこともできない。
ダーナ(あのナルという魔導士が私の魔導を攻略したとでもいうのですか…それとも)

「ソナタがダーナか」

ダーナ「だれだ?」
聞こえた声がする方に顔を向けるとその方向の遠くに人の姿が見える。
アポロン「我がソナタの相手をしよう」
そこにいたのは裾が燕の尾のように分かれた深い青色のスーツに身を包むアポロンだ。
ダーナ「あなたが彼らを逃がしたのですか?」
アポロン「ソナタの質問に答える義務はない」
ダーナ「いいでしょう。どうせあなたも私の力の前に屈するのですから」
アポロンは知ってかダーナの意識停止の効果の及ばない距離にいた。だがそれもダーナに戦いを仕掛ければ意味のないこと。
アポロン「ゆくぞ」
アポロンは白い棒状の剣(エクス=タクト)を手にダーナへと走り出す。
ダーナ(この距離を保っていたのはたまたまか)
アポロンダーナの意識停止の効果範囲へと入る。
アポロン「…」
だがアポロンの動きは止まらない。
ダーナ「なに!こいつも人間ではないのか!?」
アポロン「…」
アポロンはそのまま何も言わずダーナへと近づいていく。
ダーナ「ならば!」
黒の魔導書のページをめくるダーナ
ダーナ「無限闇(ウィサンディヒアン」

グン!

黒の魔導書から影がアポロンへと伸びていく。

ダン!

地面をけり宙へと舞うアポロン
ダーナ「ふっ。空では逃げれん」

ガバ!

影が分裂し空中のアポロンへと襲い掛かる。
ダーナ「おしまいです」
アポロン「…」

タッ!

アポロンは何もないはずの宙を蹴り、舞うかのようにその影たちを躱す。
ダーナ「なに…だが!」
無数の影がアポロンへと襲い掛かる。

タッ!タン!

だがそれは空を舞うように移動するアポロンにすべて躱されてしまう。
ダーナ「こいつ…空を自由に移動できるとでもいうのですか…」
アポロン「…」
アポロンは影の間を縫うように移動し、その手にもつエクス=タクトを振るう。

ザシュン!

ダーナ「ぐっ!」
ダーナの体をエクス=タクトが切り裂く。一撃を加えた後空を飛ぶかのように距離をとり離れるアポロン
アポロン「…うまくいったようだな」
ダーナ「私の力が利かないうえに…これだけの力。お前は…」
アポロン「ソナタの力は効いていた」
ダーナ「なんだと?」
アポロン「我の意識は奪われていた。距離を取った今になり戻ったのだ」
ダーナ「意識もなく先ほどの動きをしたというのですか」
アポロン「そうだ」

ヒュォォン

アポロンの周囲の風がざわめく。
アポロン「これが我の能力『パルティシオン=サルバロール』。この風が我を動かし、先ほどの動きを可能としたのだ」
『パルティシオン=サルバロール』は命なき者にロールを与える能力。彼の意のままに風が動き、彼自身を動かしていたのだ。
ダーナ「だとしても先ほどの動き…」
あれだけの動きを事前に予想して風を動かしていた。それは普通の人間には不可能な芸当だ。ダーナの動きを完全に見切っていたとしか思えないほどのあの動き。
それを事前に予測して風を動かしていたアポロン。その洞察力はまさに脅威的だ。
アポロン「ソナタの動きを把握するためにディックリョウガが先行してくれていた。おかげで我はソナタの動きを把握することができた」
当たり前のように言うアポロンだが他の人間にそのような芸当ができるとは思えない。アポロンだからこそできた戦術だ。
ダーナ「私の動きを完全に見切った…ただの人間にそんなことが…」
アポロン「ソナタに勝ち目はない」
ダーナ「くそ!」
怒りに震えるダーナ。自身が数十年をかけて編み出した魔導がこうもたやすく破られる。その事実はダーナにとっては許しがたいものだった。
アポロン「冷静さを失ったか…」
ディック「はっ…!」
意識が戻るディック
ウルズ「もうあの力はこないみたいだな」
にろく「ナルの言っていた通りだ」
ウルズとにろくがアポロンのもとへと近づいてくる。
ダーナ「なんだ…なぜ私の意識停止が…?」
ツバメ「自分でも気づいていないようね」
ナル「それがお前の魔導の弱点だ」
ツバメとナルもその場に現れる。
ダーナ「弱点…だと?」
ナル「魔導は術式を理解しなければ使うことはできない。それは強力な魔導ならなおさらだ」
ダーナ「何を…」
ナル「お前ほどの強力な魔導なら少し精神状態が揺らげばその魔導を維持するのは困難なはずだ。あの時お前が逃げたのもそれが理由だろう」
メルディア=シールでナルと対峙していたダーナが魔導士たちが集まったとたん撤退していた。それはその状況では自身の魔導の維持が困難だったからに他ならない。
アポロン「強力であるがゆえにそれを維持する条件が厳しいということか」
ナル「おまえの負けだ!観念しろ!」
ダーナ「私が…負ける。そんな…」
ディックリョウガを放しやがれ!」
ダーナ「…」
ダーナディックの言葉に反応しない。まるで聞こえていないようだ。
ダーナ「たかが十数年生きた人間ごときに!」
黒の魔導書のページを開くダーナ
ダーナ「無限闇(ウィサンディヒアン)」

グン!

黒の魔導書から影が伸びる。それは無数に別れアポロンたちへと襲い掛かる。
アポロン「真理を持って、我人事を全うす!森羅万象の一幕を紡ぎださん!『パルティシオン=サルバロール』!風よ!」

ヒュォォォ

アポロンの呼びかけに応じるように辺りに風が吹きすさぶ。

バッ!

影がアポロンたちへととびかかる。だが…

フォン

アポロンたちの体が風に巻き上げられ、宙に浮き影の攻撃をかわす。
アポロン「ソナタの攻撃は見切ったといったはずだ」
ダーナ「だがこれならどうです」

ガバ!

無数の影はさらに分裂し、アポロンたちを取り囲むように影同士がつながり球体のような形を形成する。
ダーナ「これで捕らえました!」
ウルズ「これは…」
ディックリョウガが捕らえられたのと同じ…」
ツバメ「これでは逃げられないわね…」
完全に周囲を囲まれ逃げ道がない一同。
ナル「ここは僕が!」
宝剣を構えるナル。
ナル(拘束型の魔導…黒の魔導を基本としてこれをつくったなら…)

ザシュ!

宝剣を影へと突き刺すナル。
ナル「浄白転化(ジンハーシューテンフェン)!」

ピキピキ

一同を囲う影にひびが入っていく。そして…

パリン!

影が砕け散っていく。
ダーナ「なっ!私の無限闇が!」
ナル「おまえの魔導は黒の魔導を基本としている。それさえ分かっていれば宝剣を用いて破壊するのは簡単だ」
アポロン「やるなナル」
ダーナ「意識停止だけならず無限闇まで…」
ナル「はっ!」
宝剣を投げるナル。

ザシュ! パリン!

それはリョウガを覆っていた影を破壊する。そのなかからリョウガが姿を現す。
リョウガ「うっ…」
ディックリョウガ!大丈夫だったか」
リョウガ「あぁ…なんとかな」
ナル「もう終わりだねダーナ…いや噶玛达娜(カルマ・ダーナ)」
カルマ・ダーナ。それはダーナが魔導士であった頃の名。魔導図書館でダーナについて調べたナルが知った彼女の本当の名前。
ダーナ「忌々しき魔導士ども…。この時代でも私の邪魔をするというのですか」
ナル「お前にとってはそうかもしれない。でも僕ら魔導士にとっては違う。お前は禁忌の魔導を創った存在。そのケジメをつけるのは僕たち魔導士の役目だ!」
ダーナ「私にとってはたわごとだ。私を認めない魔導士ども。そしてこの世界を。私は許さない」

ゴゴゴゴ!!

ダーナからすさまじい気が発せられる。
ダーナ「黒の魔導書!私のすべてを捧げたこの書で!」

ギュゥゥン!!

黒の魔導書に力を込めるダーナ
ダーナ「この世界を葬る!」
ナル「黒の魔導書が…!」
ダーナ「私の編み出した究極の黒の魔導。輪廻逆生(ファンジュエン)ですべてを終わらせてあげましょう」

ゴゴゴゴ!

大地が震動する。
ディック「地震か?」
ウルズ「こいつの力で地面が揺れているのか?」
ダーナ「輪廻逆生は死者と生者を入れ替える究極の魔導。これが発動すればすべての生者は死に絶え、死者が世界にはびこる」
ツバメ「そんな!?地球全体に効果を及ぼすほどの力が」
ダーナ「これが黒の魔導を極めた私の力だ」
アポロン「そうはさせん。ぐっ…!」
急に体の力が抜けるアポロン
アポロン「これは…」
アポロンに続き他の者たちも体の力が抜け、動くこともままならない。
ダーナ「これが輪廻逆生。生者はその魂を肉体から乖離される」
ナル「このままでは…」
どうにかしようにも体に力が入らないナル。
ダーナ「私に近いお前たちはすぐにでも死に絶えるでしょう。もう私を止めることはできない。はははは!」
ディック「く…そ…」
ダーナ「これが黒の魔導。私のちか…」

ドクン!

ダーナ「ぐっ…!」
突然苦しみだすダーナ。それと同時にナルたちの体から脱力感が消えていく。
ナル「なんだ。体が軽くなった…」
ダーナ「これは…」

ズキン!

ダーナの頭が痛む。

???『魂の輪廻…過去は未来へとつながりはしない』

ダーナ「だれだ!」
ダーナの頭の中に響く声。

???『理を崩す行い…それを許容するわけにはいかない』

ザシュン!

突如黒の魔導書を持つダーナの腕が切り落とされる。
ダーナ「ぐぅ!」
ティスシス「失礼しますの」
いつのまにか現れたティスシス。彼女が刀でダーナの腕を切り落としたのだ。
ウルズ「ティスシス!」
にろく「なぜあいつがここに…」
ティスシスは辺りに目もくれずに落ちた黒の魔導書を手にとる。
ティスシス「これはいただいていきますの」
ダーナ「私の…魔導書をかえせ!」
ティスシス「残念ですが…」

ザシュン!

ダーナ「がはっ…」
ダーナの体を貫き深々と刺さる刀。
ティスシス「それはできない相談というものですの」
刀をダーナの体から引き抜くティスシス。
ダーナ「あ…あ…」

ボロボロ

朽ちていくダーナの体。
ダーナ「そんな…わた…しが…」

サァァ

塵となり辺りに霧散するダーナの体。
アポロン「最後はあっけないものだな…」
あれだけの力を持っていたダーナが一瞬にして崩れ落ちた様をみてそう思うアポロン
ディック「それにしてもこいつはだれだ?」
リョウガ「仲間って雰囲気でもなさそうだな」
ディックたちはミストラルシティでの戦いに参加していなかったため、ティスシスのことを知らない。突如現れた彼女に疑問を持つのも当然だ。
にろく「いま世界中に発生している鎧人形…レーヴェンズの仲間だ」
アポロン「あの鎧人形か。我らもことを交えたことがある」
ディック「こいつがあいつらの親玉なのか?」
ツバメ「どうかしらね?彼女に直接聞かない限りその答えはわからないわ」
ウルズ「というわけだ。ティスシス。おまえがレーヴェンズのリーダーなのか」
ティスシス「いいえ。私はただの伝達役ですの」
ナル「伝達役?」
にろく「ということはお前の上にだれかいるということか」
ティスシス「そう…なりますの。でも伝達役の意味は違いますの」
ツバメ「どういうこと?」
ティスシス「報告するための伝達役ではありませんの。私はあなたたちに伝えるための伝達役ですの。でもその必要ももうなさそうですの」
ウルズ「必要がないだと?」
ティスシス「人間は…この星に必要がない存在と判断されましたの。もう…」
少し言葉を詰まらせるティスシス。
ティスシス「新たなる器…お兄様たちも必要ありませんの」
アポロン「それは我ら人間を排除するということか?」
ティスシス「そういうことですの」
そういいながらもティスシスはなにか面白くないような表情を浮かべている。
ツバメ「だからレーヴェンズが各地に現れたのね」
ディック「人間…俺たちを滅ぼすためにか」
アポロン「ならばソナタを倒し、その上にいるものを引きずり出す必要があるな」
エクス=タクトをティスシスに向け構えるアポロン
ナル「黒の魔導書も返してもらうよ」
ティスシス「それはできませんの。私は…」
ティスシスは黒の魔導書を抱え、村の奥へと逃げていく。
ナル「逃がすわけには…」

ブオン!

アポロン「これは…」
一同の前に無数の鎧人形が現れる。
にろく「足止めする気か」
ディック「こいつらをたおしてあいつを追う!」
リョウガ「あぁ!」
ウルズ(ティスシス…あいつの様子…)
なにかの命令に従っている様子のティスシス。だが今のティスシスは進んで従っているようには思えなかった。
ウルズ(なにかあるのか…従わなければならない理由が)
一同は現れた鎧人形と交戦する。それを倒し、黒の魔導書を持って逃げたティスシスを追うために。

to be continued

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最終更新:2018年02月01日 19:44