~アイラッド村~
十也「敵はいないみたいだな」
アイラッド村の中を進む十也。
アポロンと
ディックに出会ったのは驚いたが、頼りになる彼らが戦線に加わってくれたのは心強い。
十也「俺も先を急がないとな」
「現れたか…」
先を進む十也の前に立ちはだかる人物。
十也「お前は…」
ゲイン「へレティス2。ここでお前を葬る!」
トンファーを構えるゲイン。
十也「くっ」
今の十也にはブレオナクもグラムもない。
十也「やるしかない!『ブラスト・リンカー』!」
バシュン!
鎧を纏う十也。
ゲイン「いくぞ!」
十也「はぁぁ!」
鎧を纏った拳でゲインのトンファーを受け止めようとする十也。
ガキン!
十也「うわっ!」
トンファーを受け止められず、態勢を崩す十也。
ゲイン「武器もつかわずに俺の攻撃を受け止めようなど…舐められたものだな」
十也「くっ!だめか(なにか武器があれば…)」
ゲイン「武器はどうしたへレティス2?それとも使うまでもないという余裕か?舐められたものだな」
十也「ちっ!こっちの事情も知らないで!」
トンファーを振りおろすゲイン。
ガキン!
十也「ぐっ!」
鎧を纏った腕で受け止めるがそう何度もは持たなそうだ。
十也「このままでは…」
ゲイン「どういう事情かしらないが…このまま決めさせてもらうぞ!」
ピカン!
2人の上空が光る。
ゲイン「なんだ!?」
ドゴン!
直後ゲインに向かって空から雷が降り注ぐ。
ゲイン「ぐぅ!」
突如降ってきた雷に反応できず直撃するゲイン。
十也「これは!」
空からの雷。そんな技を使う人物は彼しかいない。
トニー「大丈夫ですか十也」
スライ「待たせたな!」
スライと
トニーの2人が来たのだ。
十也「
スライ!
トニー!」
2人に駆け寄る十也。
十也「トゥアハ・デ・ダナンの奴らを倒したんだな」
スライ「あぁ。俺たちにかかればどうってことないぜ」
トニー「
スライ!それは盛りすぎですよ。強敵でしたがなんとか勝つことはできました」
十也「さすがだな」
ゲイン「敵を前におしゃべりとはずいぶんな余裕だな」
十也「なに!?」
雷が直撃したはずのゲインが十也たちの前に立ちはだかる。
トニー「確かに私の『ライトニングボルト』が直撃したはず…」
ゲイン「おまえの能力か。強力な能力だ。だが今の俺はこの程度では止められん!」
スライ「ちっ!やつもなんらかの力をもっているってことかよ」
ゲイン「察しの通りだ。俺は
ダーナにより力を得た。お前たちごときの攻撃では俺を止めることはできん!」
トニー「能力者になったということですか…奴の体。雷を直撃したはずなのにそこまでのダメージがなさそうです」
十也「そこに奴の力のヒントがあるということか」
スライ「回復能力ってところか」
ゲイン「俺は俺の意思が尽きるまで止まらん!この『フォース・アサルト』で!」
『フォース・アサルト』はゲインの意思に応じて肉体と自身の持つ武器を活性化させる能力。
トニーの雷により大ダメージを負ったゲインだがその力で肉体の修復速度を速め、ダメージを最小限に抑えたのだ。
スライ「だったらこいつで!シャイニーマジック!ライトウィップ!」
シュン!
光の鞭がゲインに向けて飛んでくる。
ゲイン「くらいはしない!」
その鞭を回避するゲイン。
スライ「まだまだ!」
続けて光の鞭を放つ
スライ。
スライ(
ブリギットの時のようにとらえてやるぜ!)
トニー「
スライ!後ろです!」
スライ「えっ?」
ガキン!
スライの背後で何かの攻撃を受け止める十也。
十也「くっ!ここにも出て来たのか!」
攻撃を仕掛けてきたもの。それは…
鎧人形「…」
レーヴェンズの鎧人形だ。
スライ「あの世界中で出てきている鎧か!」
トニー「ここにまででてきたんですね」
鎧人形「…」
ブオン!
鎧人形が仲間を呼んだかのように次々と増えていく。
スライ「ちっ!邪魔しやがって!」
トニー「十也!こいつらの相手は私たちが。あなたはアサルト・シャドーを!」
鎧人形と交戦する
スライと
トニー。
ゲイン「思わずして邪魔もの同士で戦い合ってくれるとはな。これでお前との戦いに集中できるヘレティス2!」
十也(
スライと
トニーはレーヴェンズの相手…武器がなくてピンチな状況にまた戻ってしまった…)
ゲイン「さっきは仲間に助けられたようだが今度はそうはいかん」
十也「くっ(ゲインの言う通りだ…どうする…)」
武器がない今十也に勝機があるとは思えない。この状況を変えない限り、十也に待っているのは敗北の運命だけだ。
十也「だったら…!」
バッ!
十也は空に向かって右手を上げその手のひらを大きく広げる。
ゲイン「なんだ?」
その動きを警戒するゲイン。
十也(ルーの時は目の前にいたから成功したのかもしれない…でも今。俺にできるのはこれしかない!)
十也「ブレオナク!来い!」
シーン
辺りが静寂に包まれる。
ゲイン「こけおどしか」
十也「やはりだめなのか…」
『…十也…』
~~~
十也「これは…!」
十也の頭の中に聞こえる声。この声は間違いない彼の…
十也「ブレオナク!」
ゴウニュ『まさかまたお前と声をかわすことができるとはな』
ブレオナクの声は聞こえるがその姿はどこにも見えない。
十也「どこにいるんだブレオナク」
ゴウニュ『もう俺は…ブレオナクはこの世に存在しない』
十也「えっ?でも今俺と話しているじゃあないか」
ゴウニュ『俺が入れられていた器ブレオナクは
ダーナが黒の魔導書の力を解放するため消滅した。いまここでお前と話しているのは魂だけの存在となった俺自身だ』
器であるブレオナクが消滅し、魂だけの存在となったゴウニュ。
十也「そんな…ブレオナクの体が…それでお前は大丈夫なのか?」
ゴウニュ『器がない以上俺の魂は消滅を待つのみだ。こうしてしゃべれるのもあとわずかだろう』
十也「新しい体…なにかお前の魂が入れるものがあればいいんだろ?」
ゴウニュ『それは不可能だ…ブレオナクは俺が造った武器だからこそ俺の魂を定着できた。もう魂を定着するすべはない』
十也「どうすることもできないのかよ!せっかくこうしてまた話せたのに!」
ゴウニュ『あきらめろ十也。こうしてまた話せただけでも奇跡だ』
十也「だけど…」
ゴウニュ『この間も言ったはずだ。また同じことを言わせるなよ』
十也「…そう…だな。約束したもんな。お前と!」
ゴウニュ『そうだ。それでいい』
十也「任せろ!お前がいなくても俺はやってやるぜ!」
ゴウニュ『ふっ。だがこのままではアサルト・シャドーに負けそうなんじゃないのか?』
十也「なっ!」
十也の状況を見透かしたゴウニュの発言に驚く十也。
ゴウニュ『だから俺を呼んだのだろう』
十也「全てお見通しか」
ゴウニュ『すまないな。最後にお前の力になってやれなくて』
十也「気にするなよブレオナク。こうしてお前と言葉を交わせただけでも満足だ。あとはなんとかするさ」
ゴウニュ『その意気だ。お前の力を信じろ』
十也「俺の力?」
ゴウニュ『そうだ。お前の能力なら必ず道を切り開けるは…ず…』
~~~
十也「はっ!今のは…」
夢でも見たかのような様子の十也。
十也(いや。夢なんかじゃない。ブレオナク…俺は必ず!)
空に向かって突き上げていた右手を正面へと構える。
ゲイン「これ以上茶番に付き合う気はない!」
トンファーを構え、十也へと迫るゲイン。
十也(アサルト・シャドーの使っていた武器。あれをイメージするんだ。意識を集中する…俺の手の中に)
キュィィン!!
十也の右手に光が集まっていく。
ゲイン「くらえ!」
振り下ろされるトンファー。
ガキン!
ゲイン「なに!」
ゲインの攻撃がなにかに受け止められる。
ゲイン「粒子ブレード!?いや違う…」
十也の右手には粒子ブレードのようなエネルギーの槍が握られている。その形はブレオナクを模している。
十也「コードブレオナク!これが俺とブレオナクとのきずな(コード)の結晶だ!」
ゲイン「まさか自身の力で粒子を操れるのか…それがヘレティス2おまえの能力か」
十也「いくぞゲイン!」
グン!
ゲイン「くっ!」
コードブレオナクと十也の力に押され、弾かれるゲイン。
ゲイン「くらえ!」
バン!バン!
弾かれながらもトンファーの仕込み銃から銃弾を放つゲイン。
十也「あたるかよ!」
銃弾をかわし、ゲインへと迫る十也。
ガキン!
コードブレオナクとトンファーがぶつかり合う。
ググググ!
だが徐々に押されるゲイン。
ゲイン「力では奴のほうが上か(通常の武装では粒子兵器の攻撃を受け止めるのには限界がある。この武器では俺の『フォース・アサルト』がなければこいつの攻撃は受け止められんな)」
バッ!
距離をとるゲイン。
十也「逃がしはしないぞ!」
ゲイン「勘違いするな。逃げる気はない」
ガシャン!
トンファーの受け部分が展開する。
ゲイン「こちらも全力でいかせてもらう!」
ヴン!
粒子の刃がトンファーの前部からゲインの肘のほうに向けて展開される。
十也「あのトンファー…粒子ブレードを展開できるのか!」
ゲイン「粒子旋棍の力!受けてみろ!」
ダッ!
瞬時に間合いを詰めるゲイン。そして低い体勢から、下から突き上げるようにして粒子旋棍を十也に向かって打ち込む。
十也「は、速い!」
ゲイン「うぉぉ!!」
ガキン!
十也「くっ!」
なんとかコードブレオナクで粒子旋棍を受け止める十也。
ゲイン「下からの攻撃では踏み込みもきかん!」
十也「うわっ!」
力負けし、空中へと打ち上げられる十也。
ゲイン「この一撃!受けてみろ!」
ダン!
地面を蹴り空中へと打ち上げられた十也を追うようにジャンプするゲイン。
バシュゥン!!
粒子旋棍に装着されたブースターが稼働しそのまま勢いよく十也への距離を詰める。
十也「くそっ!」
ゲイン「てりゃあ!!」
ザシュン!
十也の体を粒子ブレードがかすめる。
ゲイン「決めるつもりだったこの一撃をかわすか。いい反応だな」
ダン!
態勢を崩し地面へとたたきつけられる十也。
十也「ぐはっ!」
ゲイン「だが状況の優劣は変わった。このまま押し切らせてもらう」
立ち上がる十也。
十也(力ではこちらが上でも戦闘の立ち回りではあちらのほうが数段上だ…普通に戦ったのでは勝ち目はない)
ゲイン「いくぞヘレティス2!」
十也「はぁぁ!」
ガキン!
再びコードブレオナクと粒子旋棍がぶつかり合い唾づり合いの状況となる。
ゲイン「ふっ!」
フッ!
十也「えっ…」
ゲインの姿が十也の前から消える。力を込めていた十也はそのまま前のめりに態勢を崩す。
ゲイン「この隙!逃さん!」
ゲインは十也の足元にかがむようにして粒子旋棍を構えていた。視界から消えたのは瞬時に屈んだためだったのだ。
十也「ブレオナク!」
ヴン!
十也の呼びかけに応じるようにブレオナクが姿を変える。
ガガガ!!
粒子旋棍が姿を変えたブレオナクに受け止められる。
ゲイン「これは…粒子シールドか」
十也「おまえたちの武器を真似させてもらったぜ!」
大きな盾のような姿に形を変えたコードブレオナク。
ゲイン「発生装置もなしにこれだけ粒子を扱うことができるか…やはりヘレティス2。お前は俺たちの野望を阻む存在。ここで排除する!」
十也「お前たちは俺がいた世界から来たんだろ?何の目的でこの世界に来たんだ!」
ゲイン「俺たちは闘争を求める。それが世界の発展につながるからだ」
十也「闘争が世界の発展?」
ゲイン「そうだ。人間は戦いを続けることで進化し続けてきた」
十也「だがそれは本意ではないはず…」
ゲイン「本意かどうかなど問題ではない。結果が物語っている」
十也「じゃあお前たちは闘争による進化のためにこの世界に来たのか?」
ゲイン「…そうだ。MDSシステムを用いて世界を超えて自由にどこにでも現れることができる最強の軍隊を作り、世界に闘争の火種を巻き人類を成長進化させる。そしてその結果をすべて牛耳る。それが俺たちアサルト・シャドーの目指す世界」
ゲインから語られたアサルト・シャドーの目的。それは十也の予想を超えるはるかに大きな目的であった。
十也「世界を超えてまで闘争をばらまく…そんなこと」
ゲイン「許せないとでも言う気か?戦うために造られたヘレティスシリーズが?」
十也「そうだ。俺はお前たちのその理想を肯定しない!否定する!世界を超えてまで戦争を創るなんてさせるわけにはいかない!」
ゲイン「ふん。世界を滅ぼしたヘレティスシリーズの言葉とは思えんな」
十也「世界を滅ぼした?どういうことだ?」
ゲイン「俺が元居た世界…つまりお前たちヘレティスシリーズがいた世界は奴によって崩壊した」
十也「奴?」
ゲイン「ヘレティス5…奴が暴走し世界を崩壊させた」
十也「ヘレティス5!?俺と同じヘレティスが…」
ゲイン「奴の暴走によりEGOも成す術もなく敗れた。残った俺たちアサルト・シャドーは決死の戦いで奴を倒し、MDSシステムを起動させこちら側の世界に来た」
十也「そんな…じゃあおれの元居た世界は…」
ゲイン「もう人もいない荒野がだけが広がる世界と化しているだろうな。おまえと同じヘレティスシリーズのせいでな」
十也「俺にはもう戻るべき世界もないのか…」
ゲイン「それ以前にお前はもう戻れん!ここで俺に倒されるのだからな!」
十也「くっ!」
ブレオナクを盾のように展開していた十也が押される。
十也「力ではこちらが上だったはず…」
ゲイン「能力というものは便利だな。俺の『フォース・アサルト』は俺の想いに答える。与太話のおかげで闘志がわいてきた!」
十也「うわっ!」
ガキン!
弾き飛ばされる十也。
ゲイン「ヘレティス2。おまえもいつかヘレティス5のように変貌するかもしれん。危険の芽は摘まなければならん!」
十也「おれはそうはならない!」
ゲイン「それを決めるのはおまえではない。こいつがな!」
粒子旋棍を構え十也へと迫るゲイン。
十也「世界に闘争をばらまこうとするお前たちの理想…俺が止める!AS(アクセラレート・シフト)!」
シュィィン!
赤熱化する十也の鎧。
ゲイン「こちらも切り札を切らせてもらう!コード『轟迅(ごうじん)』!」
キュィィン!!
ゲインの持つ粒子旋棍が光り輝く。
十也「うぉぉ!!」
ゲイン「はぁぁ!!」
ガキン!ガキン!ガキン!
目にもとまらぬ速さでぶつかり合う2人。
十也「AS(アクセラレート・シフト)のスピードについてくるなんて!」
ゲイン「俺は…俺たちの理想の世界を!」
両腕を交差し構えるゲイン。
ゲイン「その邪魔となるヘレティスシリーズを排除する!」
バッ!
構えた両腕を開くゲイン。
ヴン!
それと同時に肘まで展開されていた粒子ブレードが2mほどの長さに伸びる。
ゲイン「この一撃で!」
十也「ブレオナクにすべての力を!」
シュィィン!
十也の持つコードブレオナクに光が集まっていく。
十也「アクセラレート!」
コードブレオナクが赤く輝く。
ゲイン「てりゃぁぁぁあ!!!」
粒子旋棍を構え十也へと駆け出すゲイン。
十也「断ち貫く!」
コードブレオナクを構えゲインへと迫る十也。2人の間合いが近づく。
バシュン!
先に仕掛けたのはゲインだ。粒子旋棍のブースターを稼働させ、一気に間合いを詰める。そのまま下から突き上げるように粒子旋棍を振り上げる。
十也「たぁぁ!!」
それに合わせるように上からコードブレオナクを振るう十也。
スカッ!
ゲインの粒子旋棍がコードブレオナクをすり抜ける。
ゲイン「なっ!武器を一瞬だけ粒子かさせただと!?」
十也「はっ!」
ダン!
地面をけり上げ飛ぶようにゲインの上方へと移動する十也。
十也「もらった!」
赤く輝くブレオナクを横なぎに振るう十也。
ゲイン「やられるか!」
ガキン!
咄嗟に態勢を崩しながらも両手の粒子旋棍を構えコードブレオナクを受け止めるゲイン。
十也「うぉぉ!!」
シュィィン!
十也のコードブレオナクが鎧の赤熱化を吸収するかのように赤みを増していき、鎧が青く戻る。
ピシ!
ゲイン「なに!?」
パキン!
ゲインの粒子旋棍が粒子ブレードごとコードブレオナクにより断ち切られる。
十也「ブレイク!」
ザシュン!
ゲインの体を深く切り裂くコードブレオナク。
十也「エンド!」
ゲイン「が…は…」
ドサッ!
その場に倒れるゲイン。十也の手に持っていたコードブレオナクが消える。
十也「どうだ…」
バシュン!
纏っていた『ブラスト・リンカー』も解除される。それほど力を使ったのであろう。
ゲイン「ヘレティス2…おまえの力がこれほどとはな。いや俺にも…迷いがあったからか」
十也「迷い…だと?」
ゲイン「お前たちがこれほどまでに俺たちの理想を否定する理由…それは当然なのかもしれんな…」
十也「なにを…」
ゲイン「俺は一人の兵士でありたかった。何も考えず上からの命令に従う兵士に…」
十也「だがそれは…」
ゲイン「間違いだったのかもしれんな。そもそもこちら側の世界に来たことから…」
十也「ゲイン…」
ゲイン「結果が…全てだ。ヘレティス2…いや天十也。お前は変わるなよ…」
ガクッ
そう言い残しゲインは目を閉じる。
十也「こいつも…闘争の犠牲者だったのかもな…」
戦いの中でしか自分の価値を見出せなかった存在。それがゲインという男だったのかもしれない。
十也「だけどアサルト・シャドーの理想を肯定するわけにはいかない!」
「ならばここで朽ちてもらうぞヘレティス2」
突如聞こえる声。それは…
ガーランド「お前を始末する」
to be continued
最終更新:2018年02月04日 14:57