SIDE:G

〜ミストラルシティ中心部〜
この街はいつでも騒々しいことで有名だ。
なんといっても四大大陸の中央に位置しているのだ。あらゆる人、物、文化が集まっては散って行くのは当然だ。そう、遠く離れたどこかの不可思議な話だってあつまるくらいに。
とはいえこの日はいつも以上に人が集まっている。さらに彼らは一様にそれぞれがカードを一枚持ち合わせている。そのカードには持ち主の写真、もしくはテレビのキャラクターなどのコスプレをしたようなやはり持ち主の写真、そしてステータスを表すような記号が三つほど描かれていた。カードの所有者は複数人で徒党を組んでいたり、あるいは単独で街を歩き回っている。
なにかのイベントを思わせる。

どごぉぉん!!
突然にビル街の一角が爆発した。
往来人A「ファンブルが出たんだと!」
往来人B「いやまじか!リアルに爆発してんじゃん!やべぇ危機感!楽しい!」
なにが楽しいのか、そもそもなにが起きているのか。
白いスーツの男「あなたもゲームに参加しますか?」
突然話しかけられた。
白いスーツの男「興味があるんでしょう?」
自然と首を縦に振る。
白いスーツの男「ウェルカムトゥ《ゲームオブザプラネットナイン》!!」

男の掛け声とともに俺の中から何かが消えた。あとから消えた何かは俺の能力、「液体」とそれのはいった「容器」を投げ飛ばすことでペンギンが生み出される『ペンギン=ハイウェイ』だと気づいた。
そして俺の手には先の彼らと同じように俺の写真(とペンギン二匹)が描かれたカードが握り締められていた。
そして周囲の様相が大きく変わった。先ほどまでのビル街とほぼ同じなのだが、ところどころが崩れたり、大樹が巻き付いていたり、例えるなら数千年後の街といった印象だ。
加えて小型の怪獣と戦う者や、向こうでは大型怪獣にチームで挑んでいるものも見た。
なるほど確かにゲームの世界だ、だがこんなにリアルだなんて!本当の怪獣と戦うのか!試しにあの小型怪獣に挑んでみるか!『ペンギン=ハイウェイ』!!
…そうか、能力は使えないのか。そういうルールなのか。カードにある記号はなんだろう…唐突に理解した。このゲームのなかでは技の成功率が定められていて、それを持って判定されるのだな。俺の場合は…A15B10C3…ふむよくわからんが、試してみるか。

どごぉぉん!
プレイヤーA「あいつもファンブったんだな」
プレイヤーB「かわいそうなもんだ、あいつ来たばっかだったのに」
プレイヤーC「だが仕方ない、なんといってもダイスの目は神のみぞ知る、だから」
〜どこか遠くのあるところ〜
幾羽場イツヤは白いジャケットを脱ぐと椅子に腰掛けた。
流石の彼も数十億人の似顔絵を一夜で作り上げるのは苦労したのだろう。
しかしこれは必要なことなのだ、と彼は呟く。
ノンパスはノンパスらしくちっぽけな世界で楽しんでいればいいんだ。
あとは…あの方が全てをおさめてくれるから。
それにしても尊敬してしまう。いまや数十億のプレイヤーがいるゲームオブザプラネットナインのゲームマスターを一人でこなすなんて、あの人以外に務まらないだろう。われわれスピノザを統べる果倉部かもめにしか、この大役は務まらない。

その日を境に地球上から能力が消失した。
シャカイナの支配下から逃れたものたち、パスファインダーを除いて。


SIDE:G(GAME of the Planet Nine) Fin

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最終更新:2021年08月29日 11:43