この物語は、Nが未元獣を解き放ってしばらくした頃に起きた実に奇怪な出来事である。
◯レムリア大陸ラークンシティ
この街に一匹の未元獣が侵入したことに気づいたものは少なかった。
それ故に未元獣の被害は静かに、それでいて尋常ならぬスピードで進行したのだった。
未元獣「ぐるるる」
しかしそれも時間の問題。その未元獣めがけてEGO職員の放った攻撃により、被害は収束を見せた。
………はずだった。
未元獣に襲われた人間が、突如として立ち上がり、生きた人間を襲い出したのだ。
その数数百。失われた命はその姿を死せる者「ミゲンデッド」に変え、この街をさらなる混乱に陥れたのだ。
一方で、この街のとある地下室に隠れていた二人の男女がいる。
彼はこの街の主力企業に属し、将来を有望される技術者であったのだが、ミゲンデッドの魔の手は彼の未来をたやすく奪い取ったのだ。
地下室に侵入したミゲンデッドの集団が、彼の眼前で彼女をいともたやすく肉塊へと変えてしまったのだ。
さらに彼もまた、ミゲンデッドにその肉体を屠られてしまった。
失意の中、彼はその絶望を怒りに変えた。自身ならず彼女の命を奪ったミゲンデッドを絶対に許さない。
すると彼はミゲンデッドでありながらミゲンデッドを狩るもの「 ミゲンデッドスレイヤー」としてこの世に蘇ったのだ。
その首に彼女と二人の写真を収めたペンダントを携えて。
地下室のミゲンデッドを絶命させた後、スレイヤーは街のミゲンデッドを狩り始める。
しばらくするとミゲンデッド同士が一箇所に融合を始めた。
複数の頭部を持つその姿はこの世の醜悪の全てを集めたような奇怪な様相を見せていた。
巨大な姿となったミゲンデッド「キマイラ」はスレイヤーを捕食しようと攻撃を仕掛けてくる。スレイヤーは理解した。ミゲンデッドの目的は他種生命体を捕食しその特徴を獲得してから、さらにミゲンデッド同士で融合することで様々な力を集約させることだったと。
キマイラは一体だけではなかった、スレイヤーはその身の限界を突破し、なんとかキマイラを倒しきった。
だが悪夢はまだ終わらない。
肉塊となったキマイラたちの亡骸はずるずるとセントラルタワーに集まり、ついに悪魔の化身「バスタード」を生誕させたのだ。その力は絶大なるもので、スレイヤーの健闘むなしく、彼はバスタードに捕食されてしまう。
愉悦な冷笑を浮かべるバスタードであったが、その肉体の奥底から黒ずんだ光が放たれるや否や、原型をとどめないほどに爆散した。
肉塊と豪炎の中には、赤く身を焦がすスレイヤーだった者「エグゼクター」が佇んでいた。
彼の周りを蛍火が飛び交う。この街の、失われた住民の魂だ。その中にひときわ輝く光が一つ、エグゼクターの側に浮かんだ。奪われた彼女の魂はエグゼクターに優しく触れ、周りの魂たちとともに空の彼方へ飛び去っていった。
全てが終わった。夜明けとともにミゲンデッドは消え失せる。
わずか一晩の出来事を思い、エグゼクターは終焉を迎えようとその身を崩さんとした。
その時首からさげたブレスレットが朝日を映す。
彼女の笑顔が、エグゼクターに新たな命を授けたのだ。
悲しみを胸に、彼は彼のために戦う。
こうして
オクター=ブ=インシュレータはミゲンデッドエグゼクターとして闘う運命の輪を回すことになったのであった。
SIDE:O(オクター=ブ=インシュレータ)
Fin
最終更新:2019年08月24日 21:39