オリジネイター幻影のビシオンの能力により過去のトラウマに捕らわれた十也。
十也にとどめを刺そうとするビシオン。しかしその攻撃は一人の男に防がれた。
十也を守った男の名は
コード・ウルズ。仮面の男コード・ウルズとビシオンの戦いが始まる。
ウルズ「行くぜ!」
コード・ウルズはビシオンに向かってその拳を放つ。
ビシオン「ふん!」
ビシオンはその攻撃をかわす。空を切るウルズの拳はその勢いのまま地面に直撃する。
ドゴォン!
凄まじい衝撃とともに地面に亀裂が走る。
ビシオン(拳で地面を砕くか…こいつの能力は肉体の強化か?)
ウルズ「おらぁ!!」
ウルズはすかさずもう片方の拳をビシオンに振り込む。その拳はビシオンの体に直撃する。
ビシオン「ふっ…」
攻撃が当たった瞬間、ビシオンの姿が消える。
ウルズ「なに!?」
ビシオン「どんなに戦闘能力に自信があろうとも…俺の能力の前には無力だ。さぁ、貴様の心の闇に沈むがいい!」
ウルズ「なんだ!?」
ウルズの体が闇に飲まれる。ビシオンの能力『闇怯(あんきょう)』だ。その場に立ち尽くすウルズ。その心は過去のトラウマを見せられているのだろう。
ビシオン「所詮はこの程度。たいそうなセリフを吐いていたが大したことはなかったな…さて」
十也のほうを見るビシオン。十也の目はうつろでその場から動かない。ビシオンの能力により過去のトラウマを見せられているのだ。
ビシオン「天十也…お前も所詮はその程度か…」
~~~
十也「俺は…もう」
暗闇の中一人立ち尽くす十也。
十也「俺はミストラルシティに来る前の記憶がなかった。俺が気付いたとき、俺はこの街にいた。俺は自分が誰なのかもわからなかった。ただ俺が唯一所持していた紙にはこう書いてあった。」
「アマツトーヤ」
十也「俺が俺である唯一の手がかり。それが俺の名なのだと。そしておれは…この街で
天 十也(あまつ とおや)として生きてきた。」
十也「しかしこれが俺の記憶なら…」
老人「XXXX」
赤髪の男「XXXX!」
記憶の中で出てきた人物たちが口にする名前。XXXX。十也には聞き取ることができない名前。それこそが自分の名前なのではないか。
十也「それに俺は…多くの人々を殺してきていた…」
記憶を失っていた十也は自分の過去に対して興味を持っていなかった。どうせそれなりな人生を送ってきていたんだろう程度にしか思っていなかった。しかい現実は違ったのである。
十也の生きてきた環境は自分の考えていたものとは180度違った。他者を殺さなければ生存も許されぬ、研究施設の被検体。それが自分だったのである。
そしてその研究施設で起きたEGOの襲撃。同じ被検体と思われる赤髪の男との決闘。数々の事態が十也の心に深い傷を与えた。そのどれしもが自分の予想だにしない過去だったからである。
十也「俺は……」
その過去は今の十也にとってあまりに衝撃的だった。
十也「俺は自分のことを全くわかっていなかった」
人を殺したことのないとおもっていた人間が、実は過去には大量の殺人を行っていたとしたら…。その事実を本人が知ったら…
十也「俺の手はこんなにも血にまみれていたのか…」
その現実に人は耐えられるだろうか…。
十也「俺に生きる価値はないよな…。これだけの命を奪ったのだから…」
十也は自分の喉元にナイフを突き立てる。
十也「俺は天十也ですらなかった。何者かもわからない…。そんなことを考えるのにも疲れたよ。この命で俺は…償うことにするよ」
十也はナイフを勢いよく押し込もうとする!
???「まてよ!」
そのナイフは何者かの手でつかまれ制止させられた。
十也「だれだ!?」
ナイフをつかんだ人影。それは…
???「おれはXXXX。お前自身だ」
過去の十也。その人だった。
十也「お前は…。過去の俺…なのか?」
XXXX「そうだ。十也、お前はそれでいいのか?」
十也「俺は多くの命を奪った。だったら俺の命で償うのが筋だろ?」
XXXX「…そうかもしれないな。だけど俺は行きる道を選んだんだ。何故だと思う?」
十也「そんなの…俺にはわからない」
XXXX「いいや!わかるはずだ!お前は俺なんだからな。思い出せよ!セブンとの戦いを!」
十也「…」
セブン。俺があの施設で最初に戦わせられた被検体だ。
XXXX「俺はあいつの体を槍で貫いた。その時の記憶…」
十也が弱ったセブンに槍を振り上げたその時、セブンは何かをつぶやいていた。
十也「そうだ!あのときたしかあいつは…」
セブン「XXXX…俺はここで終わりだ…外の世界を見たかったよ…お前は…俺の分まで生きてくれ…そして…」
十也「このくだらない世界を変えてくれ…」
XXXX「そう。それがあいつの最後の言葉だった。」
十也「自分を殺そうとしている相手になんで…」
XXXX「俺たちは戦うことでしか生きられない存在だとおもっていた。だがそれは奴がそうさせていただけだったんだ。それに気づくのが遅すぎたんだ」
十也「どういう…」
XXXX「だからそれに気づいたセブンは俺に想いを託したんだ」
十也「想い…?」
XXXX「そうだ。俺たちのような存在が生まれない世界…それをセブンは望んだんだ。そして俺は…」
XXXX「セブン…。お前の想いは俺が引き継ぐ…」
セブン「そうか…ありがとう…頼んだぞ…」
XXXX「あぁ…」
ザシュッッ!
十也「そんなことが…」
あの記憶を体験している最中…俺は自分が人を殺すという事態に戸惑い、そんな会話を聞いている余裕はなかった。まさかそんなやりとりがあったなんて…
十也「でも!だったら!セブンを殺す必要はなかったんじゃないのか!」
XXXX「あの状況ではそうするしかなかった。奴に監視されている以上、下手なことをすれば2人とも殺されていた」
十也「くっ!」
確かにあんな施設を管理している老人だ。その通りだろう。
十也「でも…!」
XXXX「なにかほかに解決策があったかもしれない…だろ?」
十也「なっ!?」
言おうとしたことを先に言われ驚く十也。
XXXX「わかるさ。俺はお前自身なんだから。でもな十也。そうじゃないんだ…俺を認めたくないんだろ?俺を認めることはお前の過去を認めることになってしまう。そんな自分にたえられないんだろ?」
十也の考え、発言はすべて見透かされる。そう、彼も自分なのだから。
十也「…そう…なのかもな…。俺は認めたくないんだろうな。自分の過去を。俺もわかっているんだ。だから俺は逃げるために自分の命を差し出そうとした」
XXXX「そうだな。俺だって逃げたくなる時はあったさ。セブンとの約束…それを後悔するときも来るかもしれない」
十也「後悔?」
XXXX「あぁ。死者の想いは呪いとなって生き続ける。それを託されたものは正解のわからない道を進み続けなければならないのだから」
十也「呪い…か。でもおれにはそれがふさわしいのかもな」
XXXX「十也…」
十也「…俺は自分のことを全く分かっていなかった…俺は命を簡単に投げ出してはいけなかったんだな…」
何かを感じ取った十也。そんな彼にXXXXは告げる。
XXXX「過去の俺からもお前に呪いをかけさせてもらうぜ!」
十也「えっ?」
XXXX「お前は生きろ!生き続けてこの世界を変えろ!」
十也「なっ!」
突然のXXXXの発言に驚く十也。
XXXX「あっ。でもおれは死んではないから呪いにはならないか。だったらこれは過去の俺からお前のエール(応援)だ」
十也「ふっ。へんなやつだ」
XXXX「その調子ならもう大丈夫そうだな」
十也「あぁ。自分の過去を全部受け入れるってのはすぐには無理だけど、俺が託された想い…それを無駄にはしない」
XXXX「そうだ。それでいいんだ。俺たちには俺たちのやり方がある。だからさ…」
十也&XXXX「俺たちは生きるんだ!」
十也「生きてこの世界で苦しんでいる人々を救う。そのために力を振るう!」
XXXX「そうだな。そのためにはまず目先の脅威から人々を助けなければならない」
十也「オリジネイター…」
XXXX「まずは自分の住んでいる街くらい守って見せろ!お前ならできるはずだ!なんてったってお前はおれなんだからな!」
十也「まかせろ!」
XXXX「後は頼んだぜ。未来の俺…」
XXXXの姿が消えていく。
十也「ちょ、ちょっとまってくれ!まだお前にはききたいことが!」
XXXX「お前の本当の力…それを引き出すためのカギをお前に渡す…思い出せ、己の力を…」
XXXXから光の塊が十也の体に吸い込まれる。そしてXXXXは姿を消した。
十也「いっちまったか…。俺もうかうかこんなところで寝てられない!うぉおお!!」
右腕を上にあげ力を籠める十也。その右手に痣が浮かび上がる。暗闇の空間の中に一人立つ十也から光が発せられる。
十也「まってろよ、オリジネイター!この世界をお前らの好きにはさせないぜ!」
~~~
ビシオン「他愛ない」
ビシオンの前にはその場で立ち尽くす十也とウルズが。
ビシオン「まずは天十也!お前からだ!」
手に持った剣を十也目がけて振り下ろすビシオン。
ビシオン「ぐふっ!!」
ビシオンが強い衝撃を受け吹き飛ばされる。
ビシオン「なっなんだ!?」
ウルズ「そいつはやらせないぜ」
ビシオン「な、なに!?なぜだ?俺の能力が効いてないだと?」
ウルズ「なるほどな。相手への精神攻撃がお前の能力か。だがな残念だったな!俺にはそういうのはきかないんだよ」
ビシオン「トラウマが通じないだと!?たかが人間がこんな簡単にトラウマを打ち破るなんて…」
ウルズ「トラウマを打ち破る?そんな必要おれにはないんだぜ。俺はすべてを受け入れる。そのうえで俺のやるべきことをやる!そう決めてるんでな!」
ビシオン「トラウマがないとでもいうのか!?なんてやつだ…」
ウルズ「お前は人間のことを甘く見すぎだ。お前が思っているほど人は弱くはないぜ。特にそいつはな」
ウルズが後ろを指さす。
ビシオン「なに!?」
指をさしたほうには十也がいた。
十也「うぉぉ!!」
十也の目に力が戻る。
ビシオン「なに!?自力で自分のトラウマを打ち破ったというのか…」
十也「オリジネイター!この街をお前たちの好きにはさせない!『コート・オブ・ブラスト』!」
ビシオン(天十也…俺の能力を打ち破るまえとは雰囲気が違う…なんだ…)
ウルズ「一皮むけたってとこか、天十也」
十也「あんたは!ミストラル号事件のときの!」
ウルズ「まぁまぁ。今はそんなことより目の前の敵を倒すのが先だろ?」
十也「そうだな」
ビシオン「2対1か…」
ウルズ「お前の能力はもう俺たちにはきかないぜ。さぁ降参したらどうだ?」
ビシオン「あまり我々の力をなめるなよ…」
ビシオンは腕のブレスレットを外す。
十也「なんだ?」
ビシオン「能力の制限を解除する。いくぞ!」
剣を構えウルズにとびかかるビシオン。
ウルズ「隙だらけだぜ!」
カウンターで拳を打ち込むウルズ。しかし
ウルズ「なに!?」
その拳はビシオンの体をすり抜け空を切る。
ビシオン「ふん!」
ビシオンは剣でウルズを薙ぎ払う。
ウルズ「くっ!」
とっさにガードするウルズ。
ウルズ「こいつの能力…相手にトラウマをみせるだけじゃないのか…」
ビシオン「俺の体を闇と同化させた。心の闇を見せるだけが能力ではないのさ」
十也「これじゃあこっちの攻撃はすり抜けて通らない。」
ビシオン「2対1なら勝てるとでも思ったか!甘い!所詮は人間の浅知恵だ」
ウルズ「勝てるさ」
ビシオン「なに?」
ウルズ「こいつならな!」
十也「えっ?おれ?」
ウルズ「そうだ!天十也、今のお前なら使えるはずだ!今からいう言葉をいえ!シフトR2(アールツー)」
十也「なんだそれ?」
ウルズ「いいからやってみろ!」
十也「あ、あぁわかった!シフトR2!」
ビシオン「なにをするきだ…」
ピピピ!
十也の鎧から機械音が発せられる。
ウルズ「きたな!」
『音声認証確認。ピピピ!シフト、リストラクション・リリース。』
十也「なんだ?俺の鎧から音声が…」
十也の鎧から機械音声が発せられている。
『使用可能時間1分デス。時間内ニ対象ヲ殲滅シテクダサイ。』
十也の鎧が微振動により熱を持ち、赤熱化していく。
十也「こ、これは!?」
十也(おれはこれを知っている気がする…これも過去の記憶を垣間見た影響なのか…)
ビシオン「1分だと?攻撃をあてることもできないお前らが俺を1分以内に倒すとは面白い冗談だ!」
ウルズ「いけ、天十也!お前の力を見せてやれ!」
十也「なんだ…この感じ。俺の中から力が湧き出る!いくぜ!」
大地をける十也。その姿は一瞬でビシオンの視界から消える。
ビシオン「なに!?」
ビシオンの背後から十也の槍による一撃が炸裂する。しかし
ビシオン「闇と同化できる俺に攻撃は効かない!」
十也「くっ!どうすれば…」
xxxx(思い出せ十也…お前の…俺の力を…!)
十也の右腕の痣が光を放つ。
十也(奴の闇を打ち消すイメージ…これなら!)
槍を地面に突き刺す十也。
ビシオン「武器を捨てるか。自分の無力さを悟ったか」
十也「うぉぉぉ!」
右手を天に掲げる十也。広げた手のひらに光のエネルギーが集約されていく。
『ピピピ残り時間10秒』
ビシオン「何をするきだ…」
十也「『ブラスト・デバスター』!」
姿を消す十也。
『5』
ビシオン「どこに消えた…」
『4』
十也「ここだ!」
ビシオンの背後に移動した十也。
『3』
ビシオン「なにをしようと俺の能力は突破できん!」
『2』
ウルズ「いけぇ!十也ぁーー!!」
十也は右手に集約したエネルギーの塊をビシオン目がけて打ち込む。しかしビシオンはダメージがない。
ビシオン「どうした?なんともないぞ?やはり無意味な行為だったな」
『1』
十也「いいや…これでおわりだ!『ブラスター・ノヴァ』!」
エネルギーの塊から凄まじい吸引が発生する。その吸引がビシオンを闇ごと呑み込んでいく。まるで小さなブラックホールだ。
ビシオン「な、なんだと―!?俺の闇ごと吸い込むだとーー!!くそぉーー」
エネルギーの塊に吸い込まれるビシオン。その体はエネルギーの塊に吸い込まれ、塊ごと完全に消滅した。
『0。シフト・オーバー。』
強制的に十也の鎧が解除される。
十也「やった…くっ」
ドサッ
膝をつき倒れこみそうになる十也。
ウルズ「能力の使い過ぎによる疲弊だ。休めばじき治る」
十也「あんたは…いったい…」
ウルズ「通りすがりのヒーローさ。今はゆっくり休め天十也」
十也「あ…あぁ…」
その場に倒れる十也。
ウルズ「さすがだな。お前はお前の道をいけ。じゃあな」
ウルズは去っていったのであった。
自分の過去を知りそれと向き合った十也。
彼の過去…それはまだ多くの謎が残っているがいずれ明かされる時が来るのだろうか。
そして仮面の男コード・ウルズ彼はいったい…
TO BE CONTINUED
最終更新:2016年10月09日 00:34