SIDE:1

~EGOミストラルシティ支部地下・データベース兼管理室(元秘密諜報部無機室)~
にろく「まさかおまえがシングルナンバーたちの元締めだったとは驚きだな」
マオ「傭兵部隊ビーハイブは元秘密諜報部員で構成された傭兵部隊。EGOを抜け、路頭に迷っていたファウストたちを引き入れたのも私さ」
にろく「おまえはいったい…」
秘密諜報部のシングルナンバーをも仲間に引き入れるほどの力を持つマオ。彼女の正体は…
きゅっぱ「トリガーオン!」

バン!

きゅっぱの指から放たれたエネルギーの弾がマオの肩をかすめる。

ビリリ!!

マオの肩部の服が破ける。
にろく「これは…」
破けた服から除くマオの肩には刺青が見える。
きゅっぱ「MA0(エムエーゼロ)…やっぱりあんたは…」
MA0の刺青。それは彼女が何者であるかを指し示す。
マオ「Marvel Army №0(マーベルアーミーナンバーゼロ)。それが私さ」
にろく「おまえが諜報部の最初期メンバー…」
マオ「そうさ。諜報部の始まりの存在。そして今はEGOを終わらせる存在さ」
にろく「そうはさせない。おまえはここで俺が、俺たちが食い止める。いくぞきゅっぱ!」
きゅっぱ「あぁ!」
マオ「さぁ死闘を始めようじゃないか!エクストラナンバーの力見せてみな!」
にろく「はぁぁ!」

ブン!

マオに蹴りかかるにろく。

ガッ!

腕を曲げ、肘でにろくの足を受けとめるマオ。
きゅっぱ「くらいな!」
にろくの攻撃を受けとめた瞬間にマオの背後から殴り掛かろうとするきゅっぱ。
マオ「『シフトギア2(セカンド)』」

ボッ!

にろくの足を受け止めたまま体を捻り、強烈な回し蹴りをきゅっぱへと放つマオ。
きゅっぱ「がはっ!」

メリメリ!

きゅっぱの腹部にクリーンヒットする蹴り。

ドン!

そのまま部屋の壁へと吹き飛ばされるきゅっぱ。
にろく「きゅっぱ!」
マオ「他の心配をしている余裕はないよ!」

グン!

にろくの足をいなすように体を回転させるマオ。
にろく「なっ!」
態勢を崩したにろくは頭から地面に倒れる。
マオ「『シフトギア3(サード)』」
足に力を籠めるマオ。

ボッ!

マオの足がにろくの頭上へと振り下ろされる。
にろく「がっ…」

ドゴン!!

地面に勢いよく叩きつけられるにろくの顔。
にろく「ごふ…」

ドパッ…

にろくの鼻から噴き出す大量の血。
にろく「かはっ…」
立ち上がるにろく。
マオ「今の一撃を受けて、立ち上がれるとはなかなかやるね」
にろく「おまえに…負けるわけにはいかないからな…はぁ…はぁ…」
きゅっぱ「にろく!」
壁に吹き飛ばされたきゅっぱがにろくの元へ駆け寄る。
にろく「奴の動きについていくにはあれしかない!きゅっぱ!」
きゅっぱ「あぁ『トリガーオン』!」
にろくに指を当てトリガーを引くきゅっぱ。
きゅっぱ「人間は無意識に肉体の力を制限している。そのリミッターを外すことで常人ではありえない動きをすることが可能になる」
にろく「いくぞ!」

ボッ!

にろくの姿が消える。
マオ「なに!?」
にろく「こっちだ!」
マオの背後に瞬時に移動していたにろく。
にろく「はぁ!」

ゴッ!

マオを蹴り飛ばすにろく。
マオ「くっ!やるね!」
蹴り飛ばされながらもマオの表情には余裕が見える。
にろく「その余裕崩してやる!」

ボッ!

蹴り飛ばしたマオの背後に瞬時に移動するにろく。その場で右足を高く上げる。
にろく「はぁぁ!」

ゴッ!

マオ「ぐっ!」
マオの頭上に振り下ろされるにろくの右足。

ボゴン!

地面へと頭から激突するマオ。
にろく「さっきのお返しだ!」
マオ「……」
顔から血を流しながら立ち上がるマオ。
マオ「…よくもやってくれたね…」
先ほどまでの余裕ある態度とは違い、その雰囲気は殺気で満ちている。
マオ「もう容赦しねぇ!一気に嬲り殺してやるよ№26!『シフトギア4(フォース)』!」

シュッ!

マオの姿が消える。
にろく「消えた!?だが追いついてみせる!」

ゴッ!

目にもとまらぬ速さで激突するマオとにろく。
マオ「うぉぉ!!」
にろく「はぁぁ!!」

ガガガガ!!

次々と目にもとまらぬ速さで撃ち込まれるマオとにろくの攻撃。
きゅっぱ「速すぎて二人とも目で追いきれないね…」
マオ「まだ私についてこれるか!」
にろく「この程度!まだいける!」
マオ「だったら!年季の違いをみせてやるよ!『シフトギア5(フィフス)』!!」

ボッ!

にろく「なっ…」

ボキン!

にろくの右腕がありえない方向に曲がる。一瞬にして腕を折られたにろく。
にろく「見えな…」

ドドドド!!

にろくが言い終わるより先に体全体に痛みが走る。マオにより体全体に拳を撃ち込まれたにろく。
にろく「い…」

ドサッ!

その場に倒れるにろく。
きゅっぱ「にろく!」
マオ「終わりさね。次はお前だよ№98」
きゅっぱ「そんなにろくが…」

ザッザッ!

きゅっぱへと迫るマオ。
にろく(俺は…まだ…)
声も発することができないほどダメージが蓄積しているにろく。
にろく(きゅっぱを…守らないと…)
目の前でマオがきゅっぱへと手を下そうとその歩みを進めている。だがにろくの体はその意思に反し、まったく動かない。
にろく(俺の体…動いてくれ!)
どんなに体を動かそうとも動く気配がない体。それは彼の体が限界を迎えていることを示していた。
にろく(俺は…ここまでなのか…)
あきらめの感情が沸いてくる。
にろく(もう…やれることは…俺にはない…)
それが現実。この現状こそが自分の限界。それを受け入れるべきなのかもしれない…だが俺は…。
にろく(諦めてたまるか!)
どんなに強欲と思われようが、無意味と罵られようが俺は…あきらめない。

コォォォ!!

にろくのスーツの中で何かが赤く光を放つ。
にろく(これは…!)
それは緋色の魔導書。にろくの意思に呼応するように光を放つ魔導書。
にろく(まだ…左手は動く)

スッ!

緋色の魔導書に挟まれた金色の栞を引き抜くにろく。

カッ!

緋色の魔導書から強力な赤い光が放たれる。それは辺り一面を赤く染める。
マオ「なんだ?」
きゅっぱ「部屋が赤く…」

にろく「マオ…おれはまだ戦える。お前の相手は俺だ!」
きゅっぱ「にろく!」
にろくの意思に応じるように、彼の黒いスーツが少し赫みを帯びているようにみえる。
マオ「右腕をへし折ってやったのにまだ戦う気か?もう体も対して動かないだろうに」
にろく「腕の一本つかえない程度ちょうどいいハンデだ。お前を倒すのに左腕一本あれば十分だ」
マオ「あん?そのふざけた言葉、あんたの遺言にしてやるよ!」

ガクッ!

マオ「なっ…」

急に体の力が抜けるマオ。よくみるといつの間にか自身の体にプラグがささっている。そのプラグはにろくから伸びている。
にろく「『プラグオン』。お前の能力をもらう」
マオ「バカな!?そんなこと…」
にろく「『シフトギア5(フィフス)』!!」

ボッ!

マオ「がはっ…」
マオの体を蹴り飛ばすにろく。
マオ「ばか…な」
にろく「これで理解した。お前の能力『シフトオン』は状態変化の能力。無機物に対してはその物質の状態を気体、液体、固体へと変化させることができる。自身の肉体に対して使えばその身体能力をギアという段階で強化する形で状態を変化させる力」
マオ「なぜそんなことが…わかる」
にろく「緋色の魔導書により強化された俺の『プラグオン』は他者の能力を拝借することができる。その際、能力をすべて理解する!」
マオ「私の『シフトオン』を奪ったのか…」
にろく「あくまで一時的な拝借だ。借りたものは返すのが常識だろう」

ゴッ!

マオの腹部に拳を撃ち込むにろく。
マオ「ごふっ…!」
にろく「ただ返すのでは悪いからな。駄賃をつけさせてもらう!『シフトギアMAX(マックス)!』」
左手に力を籠めるにろく。

ゴゴゴゴ!!

マオ「ま、まて№26!」
にろく「これ以上の利子はつけれないな。これが駄賃だ!」

ブン!

左手を勢いよくマオへと撃ち込むにろく。

ドゴォォン!!

マオの腹部に撃ち込まれたにろくの拳。その衝撃波がマオの体を貫通し部屋の壁を破壊する。
マオ「ぐぇ……」

グルン!

白目を向き気を失うマオ。
にろく「終わった…な」

ドッ!

その場に膝をつくにろく。
きゅっぱ「にろく!」
にろくへと駆け寄るきゅっぱ。
にろく「だい…じょうぶだ…」
きゅっぱ「全然そうはみえないよ!急いで病院へ!」
にろく「わるい…な」

ガクッ!

気を失うにろく。
きゅっぱ「ったく…」
気を失ったにろくを抱えるきゅっぱ。
きゅっぱ「…ありがとうにろく」

こうしてマオが率いるナンバーズ(ビーハイブ)たちのEGO襲撃はにろくたちにより未然に防がれた。
そして数日後…

~ミストラルシティ・中央病院~
病院のベッドで横たわるにろく。
にろく「これではしばらく喫茶店のほうはできそうにないな…」
右腕の複雑骨折に加え、全身の打撲、および筋肉疲労。直るにはしばらくかかりそうだ。

ガララ!!

部屋の扉が開く。
メルト「調子はどうですか?」
にろく「メルトか」
メルト「いろいろと気になることもあると思い、にろくさんにお伝えしようと馳せ参じました!」
にろく「相変わらずだな。だが助かる。あいつら…ナンバーズはどうなったんだ?」
メルト「それはですね…」
メルトから語られた事の顛末。№3は死亡。№0、№2、№4はEGOにより拘束。本部へと連行されたそうだ。№1は消息不明。ナルの話では№1はそれでも問題はないだろうとのことらしい。
にろく「そうか…かたはついたんだな」
メルト「えぇ。それともうひとつお伝えしないといけないことが」
にろく「なんだ?」
メルト「私は近々メルディア=シールに戻ります」
にろく「なに!?じゃあ俺がいない間かざぐるまの営業はどうするんだ!」
メルト「その点はご心配なく!にろくさんが戻ってくるまでは新しいアルバイトさんと共にお店を回しますから!」
にろく「新しいアルバイト?」
メルト「はい!ではでは!マスターに顔見せです!どうぞお入りください!」
メルトが合図をすると部屋に足を踏み入れる人物。喫茶店の制服に身を包んだその人物は…。
きゅっぱ「マ、マスター。今日からよろしく頼む」
にろく「きゅっぱ!?」
メルト「彼女が新しいアルバイトさんですよー。にろくさん、いえマスターがいない間彼女にお店の経営を頑張ってもらいましょう!」
にろく「なんでおまえが!?」
きゅっぱ「お、おまえがいったんだろう!俺の元にこい…って」
にろく「そう…だったな。じゃあ俺がいない間かざぐるまをよろしく頼む」
きゅっぱ「…はい。マ、マスター…」
ぎこちない様子の二人。そんな二人をよそにメルトはいつも通りの調子で割って入る。
メルト「ではでは!きゅっぱさんに仕事のいろはから教えますよ~!行きましょう!!」
きゅっぱ「ちょっ!いきなり引っ張るな!」
きゅっぱの手を引いて病室を出ていくメルト。
にろく「相変わらず騒がしいやつだな。だがきゅっぱにはちょうどいいかもしれないな」

新たな道を見つけたきゅっぱ。彼女が見据えた未来は、信じる限り必ずその手に掴めるであろう。
そしてそれを指し示したにろく。彼もまた多くの仲間たちと共に希望の未来へと進んでいく。
諜報員として暗闇のなかで生きてきた二人は新たな道を、光の指す道を進んでいくのだ。
その先の未来を掴むために。

SIDE 1 (1から始まる新たな道)   Fin

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最終更新:2020年08月15日 01:19