出会い(であい)

~ミストラルシティ・治安維持委員(セキュリティ)第4支部~

カタカタカタ!

パソコンを打つ美天(みそら)。
十一(ともろ)「世界を始める者(オリジネイター)…無人ロボットの暴走事件どころではなさそうね…」
美天「…ですね。EGOもそちらの対応に追われているみたいで無人ロボットの暴走のほうはどこ吹く風状態です」
ミストラルシティ上空に現れた飛行島からの宣言。栄光のグローリーと名乗る人物による宣言によりミストラルシティは混乱を極めていた。
美天「ミストラルシティ支部の副長官がオリジネイターと交戦したという情報もあります」
十一「この街で一体何がおきているの…」
美天「私たちは私たちにできることをやるしかありません」
十一「そうね。オリジネイターはEGOがなんとかしてくれるでしょう。私たちは私たちにできることをやりましょう。ということで!」

ガッ!

美天の肩を掴む十一。
美天「な、なんですか!?」
十一「美天を先輩に会わせてあげる」
美天「先輩?ってもしかしてあの裳丹高校の風力使い(エアロマスター)!」
わくわくと興奮を隠しきれない美天。
十一「そう!あなたも前から会いたがっていたでしょ。先輩と近くの喫茶店で待ち合わせているの。美天もくるでしょ?」
美天「はい!ぜひ!」
目をキラキラとさせながら答える美天。
美天「あの風力使い(エアロマスター)に会えるなんて光栄です!断る理由なんてありませんよ!」
十一「美天ならそういうと思ったわ。じゃあ行きましょうか」

~喫茶店かざぐるま~
カランコローン
喫茶店の扉を開く十一と美天。
ナル「やぁいらっしゃい」
店員が二人を出迎える。店内を見渡す十一。そこに彼女の姿を見つける。
十一「待ち合わせです」
ナル「あぁ。あそこのお嬢さんかな?」
黒蜜入りカフェオレアイスを食べている女性の席へと案内される二人。
一凛(いちか)「あ!十一(ともろ)!」
十一たちに気づく一凛。
十一「せんぱ~い!」

バッ!

一凛へと抱き着こうとする十一。

ゴッ!

だが十一は一凛の前に見えない壁でもあるかのように阻まれる。一凛が空気を壁のように展開したのだ。
十一「い、いたい…」
一凛「ったくあんたはまた…ってその子は?」
十一「この子が以前お話しした美天有然(みそらありさ)です」
一凛「あ~十一の友達の!」
美天「ミ、ミソラアリサデス!裳丹高校の風力使い(エアロマスター)にお会いできて光栄です!」
ガチガチに緊張した様子の美天。
一凛「そ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。私は也転一凛(やめぐりいちか)。よろしくね」
美天「は、はい!」
席に着く十一と美天。
一凛「十一と美天さんはなに注文する?」
十一「そういえば気になっていたんですが先輩」
一凛「なに?」
十一「この店ってコーヒー専門店じゃなかったでしたっけ?」
美天「あれ?でも一凛さんが食べているのってアイスですよね?」
一凛「実はね…私も最近知ったんだけどこの店注文すれば大抵のものは何でも作ってくれるみたいなのよ」
一凛の話ではとある2人組の男がこの店に来るたび店員にメニューにない注文をするのだが店主はしぶしぶそれらの料理を作って提供しているそうだ。一凛も試しに店員に言ってみたらメニューにない料理を出してくれたそうだ。
美天「へぇ~」
十一「でしたら私は先輩と同じ物を食べようかな~」
美天「じゃ、じゃあ私も!」
一凛「店員さ~ん!」
店員を呼ぶ一凛。
ナル「はい。ご注文ですか?」
一凛「私と同じものを二人にも」
ナル「かしこまりました」
そういうと店員は店主へと注文を伝える。店主は少し面白くなさそうな顔をしながらも注文された料理を作り始める。ほどなくして…
ナル「はい。黒蜜入りカフェオレアイスです」
二人に提供されるアイス。
美天「わぁ~おいしそう!」
十一「ではいただきます!」

パクッ!

十一「ん~!」
美天「おいしい!」
一凛「でしょ~!ここのデザートすごくおいしいのよね!」
黒蜜入りカフェオレアイスを堪能した3人。
ナル「ありがとうございました~」
カランコローン

喫茶店を後にした3人。
一凛「これからどうしようか?」
十一「まだ門限まで時間もありますしね」
美天「じゃ、じゃあこれいきませんか?」
美天は鞄からチラシを取り出す。
一凛「『技術展覧会』?」
美天「世界中の最新技術が集まっている展覧会なんです。来週まではミストラルシティで開催されているんですけど、なかなか一人じゃ行きづらくて」
一凛「いいね。いってみようか!」
十一「先輩がいうなら!」
美天「じゃあ行きましょう!」

~ミストラルシティ・商業ビル~
美天「え~とチラシの住所はこの辺のはず…」
一凛「あっ!あったこのビルじゃない?」
ビルの前に掲げられた看板。そこには『技術展覧会』の文字がでかでかと掲げられていた。その横にはスポンサーであろう企業の名前もでかでかと書かれていた。
十一「カミナ工業…随分とアピールの強い会社ですね」
一凛「まぁ、入ってみようよ」
ビルの中へと足を進める3人。
美天「わぁぁ~~!!」
入った瞬間、目を輝かせる美天。ビルの中には様々な各国の最新ロボットや最新の機械がずらりと並ぶ。それぞれ企業ごとにブースのようになっており、担当者が各々の機械やロボットの説明をしている。
美天「居ても立ってもいられません!」

ビュン!

目に付いたブースに次々と行き、いろいろ聞いて周る美天。あまりの積極さにブースの担当者たちも若干引いているようにも見える。
一凛「美天さんって…あんなキャラだっけ?さっきまでと随分違うね」
十一「はぁ~」
ため息をつき、頭に手を当てやれやれというように頭を抱える十一。
十一「美天は昔からああなんです。機械が大好きで見たことがない機械をみると普段の人見知りが嘘のように積極的になって…先輩も引いちゃいました?」
今まで美天を会わせた友人たちは彼女の機械趣味と変貌ぶりに例外なく引いていた。
一凛「引く?なんで?」
十一「えっ?」
予想外の言葉に驚く十一。
一凛「これだけ熱中できることがあるなんていいことじゃない。美天さんもあれだけ目を輝かせて楽しそうで、来てよかった!」
十一「先輩…」

ドッ!

一凛に抱きつく十一。
一凛「おわっ!どうしたの十一?」
十一「なんでもないです(やっぱり先輩は最高です…先輩に美天を会わせて良かった)」
なかなか理解者が少ない美天のことをこうも容易く受け入れてくれた一凛に喜びの感情をいつものハグで表現する十一。
一凛「なんでもないなら抱きつくなっての!」

ギギギギ!!

十一を引きはがそうとする一凛。

ドゴン!

衝撃音がビル内に響く。
一凛「なに!?」

きゃぁぁ!

響く悲鳴。悲鳴の聞こえるほうを見ると展示されていたロボットの一体が壁を殴りつけていた。大きくへこむ壁。

ギギギギ!

ロボットは目の前の少女に狙いを定めてその拳を振り上げている。狙われている少女は…美天だ!
美天「はわわ…」
腰を抜かしその場に倒れている美天。このままでは美天が危ない。
一凛「美天さん!」

バッ!

美天に向け手の平を広げ向ける一凛。

ゴウッ!

美天の周囲の風が渦巻いたかと思うと

フワッ!

美天の体が宙に浮かぶ。
一凛「はっ!」
一凛が手を引き寄せるように動かすと宙に浮いた美天の体が一凛に向かって飛んでくる。

ガッ!

美天を抱きかかえる一凛。
一凛「大丈夫美天さん?」
美天「は、はい」
その光景を見て羨む十一。
十一「いいなぁ美天!私も先輩に抱っこしてもらいたい!」

ゴン!

十一の頭に振り下ろされる一凛の拳。
十一「いったぁ~!」
一凛「ふざけている場合じゃないでしょ十一!」

ガシン!ガシン!

展示されていたロボットたちが一斉に動き出す。それらは一凛たち3人を狙っているかのように集まってくる。企業の担当者たちはロボットを制御しようと試行錯誤しているが、その命令にロボットたちが聞くそぶりはない。
一凛「このロボットたち私たちを狙っている?」
十一「ロボットの暴走…」
美天「そんなはずは…」
美天は疑問に思う。『技術展覧会』は警備体制は万全で行われる展覧会のはず。外部からのロボットや機械への不正アクセスを遮断するため会場外との通信状況を遮断して行われているはず。それがなぜロボットたちが操られているのか。
一凛「狙いが私たちっていうならまとめて吹き飛ばす!」
右腕の人差し指を目標へ向け、親指を立てる一凛。

ゴゥ…

室内の風が渦巻くように女生徒の指先へと集まっていく。

ゴゴゴゴ!!

女生徒の指先に空気が圧縮されるように渦巻いていく。形成される巨大な空気の塊。

一凛「『風弾(バレット)』!」

ボッ!

一凛の指先から放たれる空気の塊。

バッ!

ロボットたちの中からカエルの姿を模したロボットが前に出てくる。

ウィィィン!!

カエルロボットの口が大きく開く。

ゴゥン!!

一凛の放った空気の塊を口に吸い込むカエルロボット。
一凛「なっ!?」
十一「先輩の風弾が!?」
企業担当者A「あれはわが社の『台風でもへっちゃら君』です!台風時に同行させればどんな風速の風だろうとその口に吸い込んでしまう優れもの!ただ雨はどうしようもありません!」
一凛「なんじゃそりゃ!雨を防げなきゃ意味ないじゃないの!」
などと突っ込んでいる場合ではない。ロボットたちは3人に迫る。
十一「私の出番ですね!」

スッ!

スカートの中から魔導帳を取り出す十一。

ビッ!

その中の1ページを口で破る。破られたページは水で濡れたように萎びて消滅する。次の瞬間!

バシャァァ!!

ロボットたちの頭上に降り注ぐ雨。びしょ濡れになるロボットたち。だがロボットたちは全て防水性のようで雨に濡れても平気なようだ。
十一「本命はこっち!」

ビッ!

再び魔導帳の1ページを口で破る十一。

ビシビシ!

破られたページが電気を放つように消滅する。
十一「はぁ!」
口を大きく開く十一。

ボッ!

その口から放たれた雷がロボットたちを包み込む。

バリバリバリ!!

美天「これなら!水に濡れたロボットたちがショートして…」

バリバリバリ!

雷がロボットの中の一体に集まっていく。
十一「なっ!」

ビリリ!ビリリ!

雷を吸収するロボット。
企業担当者B「あれは!わが社の『漏電ももう怖くないビリビリガード』!不意な漏電にも対応できるよう高出力の電気収束装置を搭載した最新型!この一体があれば漏電による火事も心配なし!」
一凛「そんなのアリ!?」
十一「最新技術のロボット…どうすれば…」
一凛「なにか手はないの…」
美天「もしかして…」
何かを思いついた様子の美天。
美天「この会場は外からのデータ干渉はできないはずなんです。となるとこのロボットたちを操っている要因はこの会場内にあるはずです」
一凛「でもどうやってそれを探すの?」
十一「もうロボットたちはそこまでせまってるのよ!」
美天「私が…やります!」

バッ!

鞄から携帯パソコンを取り出す美天。
美天「スゥ~」
深く息を吸い込み深呼吸する美天。

カッ!

大きく目を見開く。

カタカタカタカタ!!

目にもとまらぬ速さでキーボードを打つ美天。
一凛「は、はやっ!!」

ピピピピ!!

パソコン上に表示されるデータ。一瞬にしてロボットたちの制御コンソールへとアクセスする。その制御コンソールは全て一か所に繋がっていた。
美天「見つけた!ここだ!」
会場に設営された警備用の制御装置。そこに何者かがアクセスしてロボットたちを操っているようだ。
美天「やはりウイルス…でもこのウイルスに対するワクチンを探す時間はない。でも対処法はある!」

カタカタカタカタ!!

ピピピ!!

パソコンに表示される文面。パソコンに詳しくない一凛にはさっぱりだ。
美天「全てのロボットの制御は警備用の制御装置で行われている。つまり!」

タン!

パソコンのキーボードを押す美天。

グググ!!

ロボットたちの動きが鈍くなる。
十一「これは…」
一凛「ロボットたちが…」
美天「警備用の制御装置の電源を強制シャットダウンしました。これでロボットたちに命令を送ることはできません」

ガクン!!

ロボットたちの動きが完全に止まる。
十一「さすが美天!」
一凛「すごいわね美天さん!」
美天「えへへ。ありがとうございます」
にへらと笑う美天。
十一「あとは治安維持委員(セキュリティ)第4支部とEGOに連絡を」
美天「はい!」
こうして技術展覧会のロボットの暴走は防がれた。

~ミストラルシティ某所~
???「オリジネイターとかいうやつのおかげでこっちにEGOの目が向かないうちに第4支部のあいつらを始末するはずが…こちらの想像以上か」
パソコンに向かい、その画面を見つめる男。
???「だがデータもそろってきた。アレももうすぐ完成する。そうすれば…」

ガタッ!

椅子から立つ男。
???「僕は全てを支配できる。フハハハハ!!」

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最終更新:2020年09月01日 21:27