征服者(コンクェスター)

~ミストラルシティ・治安維持委員(セキュリティ)第4支部~
一凛(いちか)「へぇ~ここが十一(ともろ)と美天(みそら)さんが所属している治安維持委員(セキュリティ)かぁ」
治安維持委員第4支部へと見学もとい遊びに来た一凛。
十一(ともろ)「そうです。ここで私たちが日々ミストラルシティ内のいざこざを解決しているんですよ」
美天(みそら)「そんなたいそうなことじゃないですけどね。あくまでEGOの手の届かないところに私たちが出ていく…ん~孫の手みたいな感じです」
一凛「でもミストラルシティの平和を守っているには違いないんだからすごいよね」
美天「そ、そうですかぁ」
にへらと笑う美天。
一凛「学生で組織されたっていっても設備はしっかりしているのね」
室内を見渡す一凛。室内には様々な機器や書類が置かれている。普通の会社と遜色ないように見える。
十一「EGOや有識者からの支援で成り立っている組織ですから。それなりの設備は整えられていますよ」
両手を広げドヤァ感をだす十一。
美天「といってもEGOのおさがり品が大半ですけど」
十一「こら美天!余計なことは言わない!」
美天「す、すいません」
一凛「あはは…」
十一と美天のやり取りを見て苦笑いをする一凛。
一凛「そういえばこの間の『技術展覧会』の事件。どうなったの?」
十一「あの件はEGOには報告したのですが、EGOはオリジネイターの件で忙しいみたいで…」
一凛「ニュースでやってたよね。モゴラ大陸の聖ラウズレイ王国だっけ?そこの人達がオリジネイターと戦ったとか」
美天「はい。ミストラルシティの人達も負傷者が多数でたそうで、EGOはオリジネイターの対応に追われているようです」
一凛「じゃあロボット暴走のほうは進展なしってことか」
肩を落とす一凛。自分がかかわった事件だ。その進展は気になるもの。
美天「そうでもないですよ。EGOはそっちに対応する余裕はないみたいなので独自に私が調べてみたのですが…」

タン!

パソコンのキーボードを押す美天。するとパソコンに男女の写真が表示される。
一凛「これは…?」
十一「『技術展覧会』に参加していた企業の担当者たちです」
一凛「この人たちになにか?」
美天「『技術展覧会』の会場は警備体制を万全にするために外部からの電子的アクセスを完全にシャットダウンしていました。そこであの暴走事件が起きたということは…」
ウイルスは会場に設営された警備用の制御装置に送り込まれていた。外部からはウイルスが送れないということは…。
一凛「内部の犯行!あの会場にいた人物の誰かが警備用の制御装置にウイルスを仕込んだ!」
美天「はい。となると企業担当者の誰かがそれを行った可能性が高いかと」
十一「担当者たちはまだミストラルシティ内のホテルに滞在中です。この期を逃したらもう犯人の特定は困難になります」
各国に担当者が帰ってしまえば、追って調べるのは困難。その前に犯人を見つけなければ。
一凛「そういうことだったら私も手伝うよ」
十一「先輩!いいんですか?」
一凛「当たり前でしょ!ロボット暴走を引き起こした犯人。必ず捕まえるわよ!」
美天「じゃあ、みんなで企業担当者のいるホテルへ行きましょ。犯人はなんらかのウイルスデータを持っているはず。それを持っている人が犯人です」

~ミストラルシティ・ホテル~
ホテルに到着した一凛、十一、美天。
十一「治安維持委員です。このホテルに泊まっている『技術展覧会』の参加企業の企業担当者の部屋を教えてもらえますか?」
治安維持委員の委員証をフロントに見せる十一。
フロント係「治安維持委員の方ですか。わかりましたすぐに調べます」
フロント係は宿泊者リストから企業担当者の一覧を調べる。治安維持委員はEGOからの許可が下りれば外部特権を行使できる。外部特権が下りれば様々な場所で捜査許可が下りるのだ。今はオリジネイターの件で混乱しているEGOミストラルシティ支部。外部特権申請を出せばなんでも通るといっても過言ではない状況なのだ。
フロント係「こちらが企業担当者たちの部屋番号です」
十一「ありがとうございます。いきますよ美天、先輩!」
3人は企業担当者の部屋へと向かう。

バン!

フロント係から借りたマスターキーで部屋の扉を開ける十一。
十一「治安維持委員です!捜査に協力してもらいます!」
次々と企業担当者たちの部屋を調べていく3人。だが…
美天「だめです…このパソコンからもウイルスデータはでません…」
担当者たちの部屋やパソコンを調べてもなんの証拠も出てこない。
十一「どうして…証拠は隠滅されたの」
美天「そんなはずは…隠滅するならバックアップがあるはず。それすらも見当たらないなんて…」
途方に暮れる二人。もう犯人は見つからないのだろうか。そう思ったとき、一凛が言葉を発する。
一凛「もしかして…犯人は企業担当者じゃないとか?」
美天「そんなはずは…犯人は会場にいたはずです」
一凛「だから会場にいた人間だよ」
その言葉にハッとする十一と美天。
十一「企業担当者以外で会場にいた人間…」
美天「来場者!そっちですか!」
鞄から携帯パソコンを取り出し操作する美天。
美天「事件が起きた前後の会場内の監視カメラの映像から、来場者の個人データを照合。リストが出ました」

ピッ!

携帯パソコンに表示される来場者のデータ。
美天「ですが監視カメラの映像の一部がおかしいです。事件が起きる十分前の映像に改ざんの疑いあり。やけに画像が乱れています」
十一「何者かが監視カメラの映像を書き換えた」
美天「はい。その可能性が高いです。ということは!」

カタカタカタ!!

携帯パソコンを操作する美天。
美天「改ざんされた時間の付近に警備用の制御装置の近くにいた人物をリストアップ」

ピッ!

パソコンに表示される人物。
美天「容疑者はこの人物です」
一凛「えっ…まさか」
予想外の人物に驚く一凛たち。
十一「でも美天がはじき出した演算結果です。間違いはないと思います」
美天「彼が犯人だとしたら大変なことですよ」
十一「えぇ。まさか犯人が…」
一凛「行ってみれば真相はわかるわ。彼の元へ行ってみましょう」

~ミストラルシティ・鋼勇(こうゆう)高校~
機械工学を専攻している高校。その一室。

カタカタカタ!!

パソコンを弾く男。

コンコン!

部屋の扉を叩く音。男はその音に反応する。
???「はい。どうぞ」

ガララ!!

部屋の扉が開く。その扉を開けた人物は…
???「おや?あなたは…」

十一「治安維持委員第4支部所属千百十一です。鋼勇高校3年機征 械理(きせい かいり)さんですね」
械理「いかにも。僕が機征 械理だが。治安維持委員がなんのようだ?」
十一「単刀直入に言います。あなたにミストラルシティで起きているロボットの暴走事件の犯人である容疑がかかっています。あなたのパソコンを見せてもらってもいいでしょうか?」
械理「…チッ!」

舌打ちをする械理。
十一「その反応は協力願えないということでよろしいですか?」
スカートに手を入れる十一。
械理「治安維持委員ごときが僕を嗅ぎつけやがって!だがもう遅い!」

タン!

パソコンのキーボードを打つ械理。

ゴゴゴゴ!!

振動する校舎。
十一「なに!?」

ドゴン!!

部屋の壁を突き破り何かが部屋に入ってくる。
十一「これは駆動鎧(パワードスーツ)!」

ガキョン!

部屋に入ってきた駆動鎧が械理を迎えるように装甲を展開し、その場に佇む。
械理「はっ!」
駆動鎧に乗り込む械理。

ガシャン!

ブオン!

駆動鎧の目が怪しく光る。
械理『『征服者(コンクェスター)』が完成した今!治安維持委員ごときには僕のことは止められない!』
十一「学生が自力で駆動鎧を!?くっ!驚いている場合じゃない!」

バッ!

魔導帳を取り出す十一。
十一「犯人は確定した!あとは…!」

ビッ!

魔導帳の1ページを口で咥え、破る。

ボッ!

敗れた魔導帳から、火球が駆動鎧に向けて放たれる。
械理『そんなものあたりはしない!』
火球を避ける械理。

パリン!

窓ガラスを突き破り火球は何処かへと飛んでいく。
械理『やれ征服者(コンクェスター)!』
駆動鎧が十一へと襲い掛かる。
十一「ふっ!」
にやりと笑う十一。次の瞬間!

ボゴッ!

械理『なんだ!?』
駆動鎧の背後に感じる圧力。

ドゴン!

駆動鎧が壁へと吹き飛ばされる。
十一「あの火球は合図です。先輩への!」
一凛「こいつが犯人で間違いないみたいね」
窓の外に浮かぶ一凛。
械理『裳丹(もにわ)高校の風力使い(エアロマスター)か…』
立ち上がる駆動鎧。
一凛「まさか本当に学生が犯人だったなんて…なんでロボットの暴走を引き起こしたの?」
械理『おまえたち能力者にはわからないさ。能力を持たない人間の苦悩なんて!』

グオン!

駆動鎧が一凛へと向かっていく。
十一「先輩!」
一凛「確かにあなたがどんな苦労をしてきたなんて私にはわからない。でも!」

バッ!

指を銃のように構える一凛。
一凛「その鬱憤を人に危害を加えて晴らすのは間違っている!」

ゴォォォ!!

一凛の指先に集まっていく風。
一凛「風弾(バレット)!」

ボッ!

指先から放たれる空気の塊。

ドゴォン!

械理『ぐっ!』
駆動鎧が吹き飛ばされる。

ボゴォン!!

そのまま学校の壁を突き破り校庭の真中へと吹き飛ばされる駆動鎧。大の字に横たわり、もう動くこともできなさそうだ。

ざわざわ!!

騒ぎを聞きつけ学校の生徒たちが集まってくる。

フワッ!

校庭の真中へと飛んでくる一凛。その手には十一を抱えている。十一を下ろし、地面へと足をつける一凛。
一凛「終わりね。観念しなさい!」

ガシュン!

駆動鎧の装甲が開き、中から姿を現す械理。
械理「終わりだと?まだだ!」

ヒュゥゥゥン!!

上空から何かが落下してくる。

ドゴォォン!!

校庭の真中に落下してきたそれの衝撃で辺り一面に砂が舞い散る。
一凛「なに!?」
十一「くっ!前が見えない!」
砂埃が落ち着く。一凛たちの前に現れたのは…
一凛「駆動鎧?」
空から落ちてきたのは駆動鎧だ。
械理「さっきのは試作機の駆動鎧。これが征服者(コンクェスター)。僕の最高傑作だ!」
征服者へと乗り込む械理。
械理『さぁ第2ラウンドといこうか!』

バッ!

両手を広げその指を大きく開く征服者。

ジジジジ!!

その指から放たれた電磁波が周囲の電線を通って街中に拡散していく。

ビービー!!

学校近くの警備ロボットたちが一凛と十一に向かってくる。
一凛「ロボットの暴走!?」
十一「まさかウイルスを拡散している!?」
械理『ミストラルシティのAI制御のロボットは全て僕の支配下だ!お前たちはそいつらにやられるんだな!』

ボシュゥ!!

何処かへと飛び去る征服者。
一凛「逃げられた!」
十一「今はこのロボットたちの相手が先です先輩!」

わぁぁ!きゃぁぁ!!

学校の生徒たちも警備ロボットたちに襲われ始めている。
一凛「生徒たちもこのままにしておけないわね」
十一「ロボットたちを倒して機征械理を追いましょう!」

機征械理によるウイルスによる無人ロボットの暴走。それはミストラルシティ全域を巻き込んだ事件へと発展していく。
一凛たちはロボットの暴走を止めるため機征械理の後を追うのであった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年09月04日 21:02