~ミストラルシティ・
治安維持委員(セキュリティ)第4支部~
美天(みそら)「これが例のデータですか」
十一(ともろ)「これの解析を美天にお願いしたいの」
美天「怪しいですね~。どこから手に入れたものなんですか?」
一凛(いちか)「ちょっとそこらへんはふれないでもらいたいな~なんて」
まさか不法侵入して手に入れたとは治安維持委員の美天には言えない。十一にはなんとか目を瞑ってもらったが。
美天「仕方がないですね。十一さんと一凛さんのお願いですから。中のデータを解析してみます」
パソコンにデータ端末を差し、その中身を解析していく美天。さすがの腕前だ。次々とセキュリティを突破してデータの中身を開いていく。
美天「これは…」
データ端末の中身がパソコン上に表示される。
美天「静寂(シジマ)機関ととある組織とのやりとりが記載されています」
十一「とある組織?」
美天「
構成員(メンバー)と表記されていますね」
一凛「構成員…」
一凛が調べていた組織。それが構成員(メンバー)だ。やはり静寂機関は構成員と繋がっていた。
美天「構成員のリスト…構成員は学生の犯罪者の更生施設、更生院(カリキュラム)からも人員をとっていますね。更生院の行方不明者たちが多数所属しています」
十一「更生院と構成員にもつながりが…」
美天「更生院には静寂機関が多額の寄付を行っている記録があります。裏で静寂機関が手を回していたのかもしれません」
一凛「となると静寂機関が諸悪の根源…ってことね」
美天「このデータの中身からすると更生院と自社の能力者を使って構成員を作って、暗躍しているみたいですね」
十一「これは一大事ね。急いでEGOに報告を!」
美天「はい!」
一凛「とうとう構成員の尻尾をつかんだわよ。静寂機関…待ってなさい!」
~EGOミストラルシティ支部・長官室~
コンコン!
長官室の扉を叩く音。
ネオ「どうぞ」
ガチャ!
ネルティア「失礼します」
ネオ「どうしたんだい?」
ネルティア「ネオ長官。治安維持委員からの報告です」
報告書をネオのデスクに置くネルティア。
ネルティア「静寂機関に関する報告なのですが…」
ネオ「これは…わかった。下がっていいよ」
ネルティア「はい」
部屋を後にするネルティア。ネオは書類に目を通す。
ネオ(まさか学生が構成員だけでなく静寂機関にまでたどり着くとは…いやいや参ったね。本来ならもみ消すとこだけど治安維持委員全員を消すなんてことはできない)
ミストラルシティの多数の学生を消すのは現実的ではない。やれやれと頭を抱えるネオ。
ネオ「秘密諜報部と静寂機関の繋がりが露呈する前に足きりが必要だね…」
スッ!
机の引き出しから仮面を取り出すネオ。
ネオ(こうなると諜報部も動かしづらくなるなぁ。未元獣の方も予定よりも早く動かないといけないかな。とりあえず秘密諜報部長官S(エス)にはご退場願おうか。静寂機関と共にね)
~静寂機関・社長室~
静寂機関の社長、静寂静峰(シジマセイホウ)は社長椅子に腰かけ佇む。
静寂静峰「先日の侵入者の件。どう始末をつける気だ?」
静寂機関副社長「申し訳ございません」
静寂静峰「聞けば侵入者は子供だったらしいじゃないか。人事部のデータも盗まれたらしいし、何をやっているんだ掃除部は?」
副社長「私のほうから厳しく指導しておきます、盗まれたデータも構成員を使って早急に取り戻します」
静寂静峰「次はないと思え」
副社長「はい!」
社長室を後にする副社長。
静寂静峰「やれやれ…」
プルルル!!
社長室の電話が鳴る。電話に応答する静寂静峰。
静寂静峰「なんだ?」
???「やぁ、元気かなS(エス)?」
社長室のモニターに電話の相手が表示される。仮面をつけた相手の顔は伺えしれない。
静寂静峰「…N(エヌ)か」
Nと呼ばれる仮面の人物。
N「静寂機関と構成員の件が表に出てしまったよ」
静寂静峰「なんだと!?まさか先日の侵入者か…」
N「どう対処する気かな」
静寂静峰「…出所はどこだ?」
N「治安維持委員だね」
静寂静峰「学生の警察ごっこ風情が…余計な真似を。諜報部を使って治安維持委員の情報の出所をつぶしてもみ消す」
N「それがそうもいかないと思うよ」
静寂静峰「なに?」
ビービー!!
静寂機関内に鳴り響く警報。館内放送が鳴り響く。
「現在ビル周辺に治安維持委員と思われる部隊が集結しております。社員の方々は指示があるまでその場で待機していてください」
静寂静峰「治安維持委員が直接来ただと!EGOの圧力はどうなっている…N!まさか貴様!」
N「治安維持委員みたいな元気な学生は応援しなくちゃね。ついつい後押しをしてしまったよ」
仮面をしていて顔は伺えしれないが、その声色からさぞ静寂静峰に対して嘲笑っているのは伝わってくる。
N「秘密諜報部長官Sは今日でお終い。君は用済みだよ」
静寂静峰「そんなことをしてただで済むと思うなよ!」
N「君は勘違いをしているようだけど。静寂機関がこれほどの力を得たのも、秘密諜報部の長官という地位を得たのも。それは僕が君を隠れ蓑にするため以外にないんだよ。その役目が終わった今、君には消えてもらう」
静寂静峰「諜報員を動かす権限は私が持っている!諜報員を使って…」
N「君が動かせるのはせいぜいミストラルシティの諜報員ぐらいだろう。僕の承認がなければ君にできることなんて限られているんだよ、肩書だけの長官さん。せいぜい最後まであがいておくれ。じゃあね~」
プツン!
Nとの電話が切れる。
静寂静峰「くそっ!Nめ!私はこんなところで終わらない!なんとしても乗り切って見せる!つかえる諜報員どもと構成員は全てここに集める!」
~ミストラルシティ・静寂機関ビル前~
ミストラルシティ各支部から集結した治安維持員がビルの前に大挙している。
治安維持委員女性「私たちの目的はあくまでEGOからの増援がくるまでの時間稼ぎです。各自無理はしないで!」
治安維持員たち「はい!」
一凛「うわ~なんだか壮観ね」
これだけの数の治安維持委員が集まって行動することなど、ほぼほぼない。よほどEGOもこの件に本腰を入れて動いてくれたのだろう。
十一「鬼が出るか蛇が出るか…気を引き締めた方がいいですね」
美天「そうですね。構成員(メンバー)がでてくるのは確実です。敵は私たちと同じ学生と言えども強力な能力者の集まりです」
十一「そうね」
一凛「その時は私に任せて!」
この間の廃工場で戦った奴らもまた現れるかもしれない。容易に勝てる相手ではない。それに静寂機関にはこの間の掃除部(スィーパー)もいる。
十一「そんなに気負わなくても大丈夫ですよ先輩。私たち治安維持委員がいますから!」
美天「そうです!あくまで一凛さんは協力者なんですから私たちに任せてください!」
メルト「そうですよ!私もいますからね!」えっへん!
胸を張るメルト。乗り掛かった舟ということでメルトも最後まで協力してくれることになったのだ。
メルト「大船に乗った気持ちでいてください!」
十一「メルトの大船は心配だなぁ…」
メルト「そんなことはないよ!」
一凛「う~ん…」
少し考えた一凛だったが先日のメルトのことを思い出す。転移を失敗していきなり殺されかけたり、川の上に転移してみたり。
一凛「あんまり気負わないでいこうか」
ポン!
メルトの肩を叩く一凛。メルトに向けたその目からは少し疑心を感じる。だがメルトはそんなこともお構いなしのマイペースだ。
メルト「はい!」
そんなこんなしていると治安維持委員のこの現場でのリーダーらしき人物から全員に指示が下される。
治安維持委員女性「静寂機関に動きは感じられない…前衛の担当は一階に突入お願いします!」
治安維持委員たち「はい!」
ドドドド!!
治安維持委員たちが静寂機関のビルへと突入を試みる。
ウィーン…
一階の扉が開く。その扉の向こうには治安維持委員たちと同じ年代ほどの学生だろうか。少年、少女たちが待ち受けていた。
ゴォォォ!!
手から炎を放つ少年。ほかの少年、少女たちも様々な能力を使い治安維持委員たちを押し返していく。
一凛「構成員(メンバー)!でてきたわね!」
十一「そう簡単には踏み込ませないというわけですか」
~ミストラルシティ・静寂機関近くのビル屋上~
零軌「お~。思ったより激しくやってるわねぇ」
ビルの屋上から治安維持委員と構成員(メンバー)との戦いを眺めている零軌。
きゅっぱ「それであんたはこれからどうするんだ?」
零軌「私の予想だとぉ、あいつらも出てくるはずなのよねぇ」
きゅっぱ「あいつら?」
零軌「秘密諜報員」
きゅっぱ「…」
きゅっぱの顔色が一瞬変わったのを零軌は見逃さない。
零軌(やっぱりこの子の狙いは…)
きゅっぱ「秘密諜報員?なんだそれは?」
零軌「細かい説明をするのも面倒だからぁ。直接説明するわぁ(本当は知っているんでしょうけどねぇ…)」
きゅっぱ「直接?」
零軌「私たちもこのお祭りに参加するわよぉ♪」
最終更新:2020年12月01日 20:45