~ミストラルシティ・更生院(カリキュラム)~
オタクダ「ったく…」
施設内を闊歩する生気のない人物たち。突如としてあらわれたそれらは更生院内の職員を襲い、制圧した。オタクダは先日ここに捕らわれたばかりだがこの事態の異常は身にしみてわかる。なにか異常ない事態がここで起きている。
オタクダ「ゾンビみたいなやつらの襲撃…なにが起きてんだ…」
何が起きているのか全容はわからないがやばいことが起きているのだけは理解できる。
オタクダ「いよいよもって俺も運の尽きが来たか…」
このミストラルシティで多くの不良グループをまとめてきたオタクダ。だがそんな彼もここ更生院へと収容された。そして今のこの事態。不運とは重なるもの。自分も覚悟を決める時が来たのかもしれない。
オタクダ「俺をここまで貶めたのはあいつ…あの変身野郎と出会ってからだ!」
オタクダの不良街道が崩れたのは、彼との出会いがきっかけだ。
オタクダ「あいつと出会ってからろくな目に会ってない…今のミストラルシティ長官に出会ったのもあいつと接触したせいだ。不幸一直線だ」
ガン!
オタクダが入っている部屋に何かが激突してくる。
オタクダ「うぇっ!」
部屋の扉に激突してきたそれは生気のない人物。まるでホラー映画のゾンビのようだ。
オタクダ「ったく…どうなってやがるんだ。この街は…」
~更生院・管理室~
更生院を管理するモニターや装置が配備された部屋。そこに彼女たちはいた。
フラメル「施設内の様子は?」
パラケル「職員は全員排除した。使えそうなやつはホムンクルスへと転化した」
ゲオルグ「いい場所だな。ここならあれを出迎えるには最高だな♪」
フラメル「EGOにも目をつけられた以上、ここで勝負を決める。あれも必ずここに現れるだろう」
パラケル「全力で出迎えてやろう」
ゲオルグ「宿願を果たす時だな」
フラメル「あぁ。あれを今、この時代で…私たちの手で完成させるのだ」
~ミストラルシティ治安維持委員第4支部~
ニュース映像を見つめる焙那たち。占拠された更生院。その周りをうろついているのは例のホムンクルスと呼ばれていた化け物たちだ。
焙那「あの錬金術師たちね」
美天「間違いないですね」
十一「更生院に逃げ込んで、そのままそこを根城にしているようですね」
一凛「EGOもカレン長官がやられて、だいぶ混乱している今…動きが読めないわね」
ミストラルシティのEGOは諸事情によって現在副長官がいない。支部長官のカレンがが気を失って倒れている今、EGOの統制は乱れあてにできない。まともに動けるのは
治安維持委員(セキュリティ)だけだ。
焙那「私たちでやるしかないわね。当然EGOにも応援を頼むけど…」
美天「あまりあてにはできないかもしれないですね」
十一「ほかの治安維持委員支部は?」
焙那「第1から第3にも協力体制を要請したわ。ミストラルシティすべての治安維持委員の力を合わせてこの事態を乗り切りましょう!」
一凛「私も力になります!」
焙那「ありがとう。みんな!時間がないわ!急いで作戦の準備を!」
一同は更生院にむかう準備を始める。
十一「先輩」
一凛「なに十一?」
十一「先輩はしばらく寮には帰っていませんが準備はいいんですか?」
一凛「あぁ~そうね」
そういわれると中央公園で錬金術師にさらわれてから今まで寮にも帰っていない。
一凛「作戦は明日の明朝よね。少し時間もあるからいったん私は寮に戻るわ」
十一「寮長たちも心配していると思います。そうしたほうがいいですよ」
一凛「そうね」
~裳丹(もにわ)高校学生寮~
一凛「なんだか久しぶりに帰ってきた気分だわ~」
いろいろなことがあった気がする。まさか自分が誘拐されるとは思いもしなったが…そういえば錬金術師から自分を助け出してくれたのはあの静寂機関の男だった。あの男が言っていた言葉を思い出す一凛。
一凛(あいつ…たしか)
私があの男になんで私を助けるのか尋ねようとしたとき…あいつの名前を言っていたような。
「あらあら~。やっとかえってきたのねぇ也転(やめぐり)さん」
聞き覚えのある声。この声は…
一凛「零軌!」
響零零軌(ひびおれいき)。彼女が一凛を出迎えた。
零軌「無事でよかったわぁ」
一凛「ありがとうといっておくわ。あの男はあんたが差し向けたんでしょう?」
零軌「なんのことかしらぁ?私はあなたが失踪したんじゃないかと心配していたのよぉ。学友として」
一凛(あくまでしらをきるか。でも助けてもらったのは事実だし…)
零軌「しばらくはゆっくりできそうなの?」
一凛「そうもいかない。すぐに支度をしたらでるわ」
零軌「相変わらずね。さっきから話題になっている更生院のニュースが関係しているのかしら?」
一凛「どうかしら。とにかく今は忙しいんでまたこんどゆっくり話をしましょう」
その場を後にする一凛。
零軌「相変わらず首を突っ込むのが好きねぇ」
涅尤からの報告で一凛が錬金術師たちと対峙したのを聞いていた零軌。更生院の事件もその錬金術師絡みなのだろう。一凛のことだ。治安維持委員とともに更生院へと乗り込むのだろう。
零軌「私にとっては関係ないことだけどぉ」
そういいつつも携帯端末を取り出す零軌。取り出した携帯端末をじっと見つめなにやら葛藤している。携帯端末とにらめっこを続ける零軌。そして
ピッ!
意を決したようにどこかへと連絡を取る。
零軌「私も一凛さんのことを言えないわねぇ」
そして様々な思惑が交錯し、その時は訪れる。
~ミストラルシティ更生院(カリキュラム)~
更生院の前にずらりと並ぶ人々。各支部の治安維持委員とミストラルシティのEGOだ。その中には一凛たちの姿もあった。
EGO隊員「カレン長官の代わりにこの場の指揮をとらせてもらう!治安維持委員(セキュリティ)は我々EGOの援護を優先し、無理をするな。更生院を占拠している連中は先日大体育場(だいたいくじょう)に現れたものと思われる。各員気を引き締めて任務を遂行せよ!」
焙那「わたしたち第4支部もいくわよ!」
美天「はい!」
十一「えぇ!」
EGOと治安維持委員が一斉に更生院更生院へと突入しようとする。
EGO隊員「まて!なにかでてくるぞ」
更生院の中から出てきたのは無数のホムンクルスとパラケルだ。
パラケル「随分と客の数が多いな。だがわがホムンクルスたちの敵ではない!」
ビキビキビキ!!
ホムンクルスたちが変貌していく。肉体が肥大化し、それぞれに異形な姿へと変わっていく。巨大な腕を持つもの、鞭のような腕を持つもの、はたまた翼のような腕を持つもの。ほかには巨人へと変貌したものもいる。
EGO隊員「臆するな!全軍突撃!」
ホムンクルスと治安維持委員、EGOとの激闘が繰り広げられる。
パラケル「ゲオルグの錬金術で強化されたホムンクルスをそう易々とは倒せはせん!」
「だったら!」
ゴゥ!!
パラケルの頭上に誰かが飛んでくる。風に乗り空中へと浮かぶ彼女は、その指を銃のように構えパラケルへと向ける。
「『風弾(バレット)』!!」
彼女の指先から放たれる空気の塊。パラケルに直撃した空気の塊は彼の体を地面へと押し込む。
ドゴォン!!
パラケル「がはっ…」
地面を砕く空気の衝撃波。その衝撃に白目をむき倒れるパラケル。
一凛「錬金術師!あなたたちの好きにはさせない!」
地面へと着地する一凛。
一凛「この化物たちを操っているあんたを倒せば戦況はこっちに有利になる!」
パラケル「……」
ボコボコ…
倒れたパラケルの体が変貌していく。その姿がパラケルとは似ても似つかぬ別人へと姿を変える。
一凛「これは…」
その服装から更生院の更生院の警備員のようだ。パラケルに似せて体を変貌させられていたようだ。
一凛「そう簡単にはいかないか…」
この様子だと前線にはあの錬金術師たちはいないだろう。いるとすれば更生院の中だ。
一凛「この化物たちをどうにかしないと…」
ここで足止めを食らっていては錬金術師たちをとめることもままならない。
十一「先輩!」
一凛「十一!」
十一がホムンクルスの合間をぬって一凛の前に姿を現す。
十一「ここは私たちとEGOで何とかします。先輩はこの化物たちを操っているやつを見つけ出してください!」
一凛「わかった!すぐに見つけ出す!それまでたのむわよ十一!」
十一「はい!」
一凛は更生院の入口へと走っていく。だがその前に2体のホムンクルスが立ちはだかる。
スカイ「…」
アンダー「…」
一凛「あんたたちね…」
スカイとアンダーが一凛へと襲い掛かる。
十一「やらせはしません!」
魔導帳を引きちぎり、スカイとアンダーへと投げつける十一。魔導帳は激しく燃え、その炎が二人の体を包み込む。
十一「今のうちです先輩!」
一凛「無理はしないでよ十一」
十一「はい!先輩も!」
更生院内へと突入する一凛。その背を見つめながら十一は魔導帳を手にもつ。
十一「さぁ来なさい!先輩を邪魔するなら容赦はしません!」
~更生院~
一凛「さ~て、中に侵入はできたけど…どこに向かえばいいのか」
まずはホムンクルスを操るやつを倒さないといけない。どこにいるのだろうか。そう考えていると暗闇の先から誰かが歩いてくる。それは…
パラケル「お前が探しているのは私だろう」
一凛が探していた相手。パラケルが彼女の前に立ちはだかる。
一凛「…探す手間が省けたわね」
相手のほうから出てくるとは予想外だ。
パラケル「予想通りだな。お前のほうから来るとは」
一凛「私もあんたに聞きたいことがあったからちょうどいいわ。なんで私を追っていたの?」
パラケル「それはお前がわれらの悲願を達成するものに選ばれたからだ」
一凛「選ばれた?」
パラケル「そう。それは偶然であり、必然だったのかもしれぬ」
一凛「わからないわね。何を言っているのか」
パラケル「お前が理解する必要はない。おとなしく捕まってもらえば、手間も省けるのだがな」
一凛「その気はないわ」
パラケル「だろうな。だがお前ひとりで私に勝てるなどという驕りがその器を示しているな」
一凛「どういう意味…?」
パラケル「そのままの意味だ」
シュルル!!
突如地面から現れた触手が一凛の両手足を縛り拘束する。
一凛「なに!?」
パラケル「わが錬金術『亡操術(ぼうそうじゅつ)』は死者を操る。この街には能力者の死者が溢れていた。わが能力にはうってつけの場だ」
一凛「くそっ!」
どんなに体を動かそうともその両手足を拘束した触手はほどけそうにない。
パラケル「お前を拘束することなどたやすいことだったな」
一凛「こんなところで…」
こうも簡単につかまってしまうなんて。だが彼女にはどうすることもできない。自身の無力さに落胆する一凛。
パラケル「さて、あとは…」
「おいおいおい…情けねぇなぁ『風力使い(エアロマスター)』!」
建物内に響く女性の声。
パラケル「だれだ!?」
「そんな簡単につかまってんじゃねぇよ」
ボッ!!
一凛の両手足を拘束する触手が切断される。
一凛「なにが…」
一凛の前に誰かが立っている。顔を上げその人物を確認する一凛。それは予想外の人物だった。
リヴィエラ「よぉ。久しぶりだな風力使い(エアロマスター)」
リヴィエラ=キュリス。先日公園で会った彼女が今、この場にいた。
一凛「げっ!」
ものすごく嫌そうな顔をする一凛。できれば会いたくなかった相手だ。なぜ彼女がこの場にいるのだろうかも想像できない。
リヴィエラ「てめぇはそのままそこに座ってな。こいつの相手は私がする」
一凛「何を言って…」
ブン!!
一凛の言葉を遮るように何かがその顔を掠める、一凛の頬から垂れこぼれる血。
リヴィエラ「邪魔をすんなよ。そんなに遊びたいならこいつを殺ったあとに相手をしてやるからよ」
そういうリヴィエラの目は冗談には見えない。
パラケル「この前の女か」
リヴィエラ「探したぜぇ。またお前と遊びたくてよお!」
パラケル「そうか。ならば全力で相手をしてやろう。このまえのようにはいかんぞ」
リヴィエラ「いいぜぇ!見せてみろよ!おまえの全力ってやつをよう!」
最終更新:2021年02月25日 20:28