決別(けつべつ)

~更生院(カリキュラム)~
パラケル「くらうがいい!」

ボゴン!

地面から生えた無数の触手がリヴィエラへと襲い掛かる。だがその触手はリヴィエラに触れる直前、見えない何かに切り落とされる。
リヴィエラ「ネタは割れてんだよ!」

ボッ!!

一瞬のことだった。パラケルの体が上下に切断される。
リヴィエラ「おい!」
下半身がないパラケルの首を左腕でつかむリヴィエラ。
リヴィエラ「あいつはどこにいやがる!」
パラケル「ふっ…」
切断されたパラケルは不敵な笑みを浮かべている。
リヴィエラ「なんだ…?」

パキパキ…

パラケルの体が植物へと姿を変えていく。それはまるで彼の能力。
リヴィエラ「植物の擬態!ちっ!」
左手を植物から放し、とっさに距離を取ろうとするが間に合わない。
パラケル「遅い!」

カッ!!

植物から放たれる光。直後、植物は爆発し激しい爆炎があたりを包み込む。リヴィエラの姿も爆炎に包まれ見えなくなる。
一凛「あいつ…」
会いたくもない相手だったが目の前でいざ消えるとなると、先ほどまでとは違う感情が溢れてくる。
パラケル「とんだ邪魔が入ったな」
柱の陰から姿を現すパラケル。
パラケル「これで邪魔ものはいなくなった」
一凛「くっ…」
感情の余韻に浸る暇もない。今は目の前の敵を倒さなければ。
パラケル「さておとなしく捕まってもらおうか」
一凛へと襲い掛かろうとするパラケル。

ボッ!

パラケル「なっ…」
爆炎の中から放たれた水弾がパラケルの脇腹を貫通する。
一凛「この水弾は…まさかあいつ!」
リヴィエラ「まだ勝負は終わってないだろうが…なによそ見抜かしてんだ!!」
燃え盛る炎の中から姿を現すリヴィエラ。服は焼け焦げ、その体も多数の火傷を負っている。特にひどいのはその顔だ。顔の右側が大きく焼けただれている。
パラケル「あの爆発に巻き込まれて無事だと!?」
一凛「なんてやつ…」
リヴィエラのあまりのタフさに驚きを隠せないパラケルと一凛。
リヴィエラ「私は目的を果たすまで死ねねぇんだよ!」
パラケル「やはり厄介な奴だ…んっ?」
炎の中に立つリヴィエラ。パラケルはそこに違和感を見つける。
パラケル「やつの右腕付近(いややつに右腕はないのだが…)、空気の揺らぎがおかしい」
炎による空気の揺らぎによってリヴィエラの右腕の付け根付近から、そこに見えない何かがあるように見える。
一凛「あれって…」
風の流れの変化で一凛にはそれがすぐにわかった。リヴィエラの右腕は存在しない。だが彼女は何かで見えない右腕を形成している。
パラケル「能力で不可視の右腕を造っていたのか。それがお前の見えない攻撃の正体」
リヴィエラ「ばれちまったら隠す必要もねぇなぁ。そう、わたしの流体操作で大気中の水分を集め水の右腕を造っている。光の屈折を利用した、見えない腕だ」
それがリヴィエラの見えない攻撃の正体。だが炎にさらされたことでその右腕の正体もあらわになった。
パラケル「炎でお前の右腕の動きも見える今、恐るに足りんな。さきほどの言葉を返すならばネタが割れているというやつだ」
リヴィエラ「だったらその炎を消してやるよ!」

ブン!!

水で構成された右腕を大きく振るうリヴィエラ。するとあたり一帯の炎が消える。
リヴィエラ「これで私の右腕は見えない」
パラケル「炎を消したか」
リヴィエラ「流体、水を操れる私にとって鎮火なんて朝飯前だ!いくぜ!」
パラケルへと再び見えなくなった右腕を振るおうとするリヴィエラ。
パラケル「そうか。だがお前に勝ち目はない」

ガクッ!

突然リヴィエラの体から力が抜ける。
リヴィエラ「なに!?」
その場に両ひざを付くリヴィエラ。立ち上がろうにも力が入らない。
リヴィエラ「なにを…しやがった!」
パラケル「植物を操る能力。思った以上に便利な能力だな」
リヴィエラが自分の体を見ると、体の節々から小さな芽が出ている。爆発した植物に仕込まれていた種子。その特殊な種子は寄生した有機物のエネルギーを吸い取り成長する。
リヴィエラ「№25か。やつがいやがるんだな」
近くに№25がいるのは間違いない。だがあたりにリヴィエラ、一凛、パラケル以外の人物がいる気配は感じられない。
パラケル「№25?そうか。おまえはこいつの知り合いか」
リヴィエラ(こいつ…?)
なにかその言い方に違和感を感じるリヴィエラ。
パラケル「知り合いにやられるのならば本望であろう」
リヴィエラ「まさか…おまえ」

ボッ!

水弾をパラケルに飛ばすリヴィエラ。パラケルの顔を掠める水弾。
パラケル「ぬっ…」
水弾が掠めた顔の部分が変化していく。
リヴィエラ「ちっ!」
パラケルの顔半分がリヴィエラの見覚えのある顔へと形を変えた。そう、その人物は…
リヴィエラ「№25!」
一凛「偽物…入口の時と同じ」
パラケルへと姿を変貌させられたホムンクルス。リヴィエラが対峙していたパラケルこそが№25だ。
一凛「本体は別の場所…」
リヴィエラが№25(パラケル)を引き付けている隙に…
一凛(本体を探しにいく!)
こっそりとその場を離れ、更生院の奥へと進んでいく一凛。
№25(パラケル)「ばれてしまったか。だがお前を始末するのには関係がないことだ」
パラケルの姿が変化していき、№25へと戻っていく。
№25(パラケル)「私の『亡操術』は造り出したホムンクルスを自分の体のように操ることもできる。それが能力者であれば、その能力も理解し自在に操れる。このようにな!」

シュルル!!

地面から生えた触手がリヴィエラの左腕、両足を拘束する。
№25(パラケル)「もうその種子に養分を吸われ、反撃する力もなかろう」
リヴィエラ「…」
リヴィエラの体から生える種子は成長し、葉っぱが生えてきている。
№25(パラケル)「このままお前の左腕と両足も引きちぎってやろう」
ギリギリとリヴィエラの両足、左腕を締め付ける触手。
リヴィエラ「ニヤリ!」
今にもその手足を引きちぎられそうだというのにリヴィエラは不気味に笑っている。
№25(パラケル)「壊れたか」
リヴィエラ「壊れた…だって?笑わせるなよ三下!」
叫ぶように声を荒げるリヴィエラ。
№25(パラケル)「なに?」
種子により体力も奪われ手足も動かせない。そんな状況でなぜそんな口が聞けるのか理解できない。ただの強がりか。
№25(パラケル)「妄言だな」
リヴィエラ「妄言かどうかはその身に教えてやるよ」

ポロッ…

リヴィエラの服のポケットから何かが落ちる。なにかの薬のようだ。落ちたと思われた薬はそのままリヴィエラの口元へと飛んでいく。そう薬は落ちたのではなくリヴィエラがその右腕で口元へと運んだのだ。

ゴクリ!

薬を飲むリヴィエラ。
№25(パラケル)「なんだ…」
リヴィエラの体から生える植物がどんどん成長していく。先ほどまでは葉っぱが生える程度だったのが蕾をつくり、花が咲く。異常な速さで成長していく植物。そして…

ボロボロ…

成長しきった植物は朽ちていった。リヴィエラの体からすべての種子が成長しきって朽ち果てていく。
№25(パラケル)「馬鹿な…この植物は成長しきれば、宿主の生命を吸い尽くしともに朽ちるはず。なぜおまえは倒れていない。さっきの薬か!」

ボッ!

リヴィエラの手足を拘束していた触手が細切れに切断される。
リヴィエラ「わかってねぇなぁ!こちとら暗部の任務で今以上の危機なんて数えきれないほど経験してんだよ!!」
そういうリヴィエラの目は赤く血走しっている。さきほどの薬の効果だろうか。
№25(パラケル)「強制的に肉体を強化する薬か」
リヴィエラ「そんなちゃちなもんじゃねぇよ」

ダッ!

リヴィエラが№25へと走り、間合いを詰めようとする。
№25(パラケル)「やらせはせん!」
地面から無数に触手をはやし、リヴィエラを拘束しようとする。だが…
リヴィエラ「おせぇ!おせぇ!」
リヴィエラはその触手すべてを動きが完全に見えているかのように無駄のない動きでよける。
№25(パラケル)「なっ…人間の動きではない」
リヴィエラ「絶好調だな、おい!」
リヴィエラが服用した薬。それは暗部組織構成員(メンバー)で使用されていた瞬間解放剤。人間は体の力を無意識に制御している。この薬は一時的にその無意識の体のリミッターを外す。その効果は絶大で目視で拳銃の銃弾を避け、とても人力では動かすことができない岩をも持ち上げることができるようになる

ドゴッ!

リヴィエラに踏みつけられあおむけに倒れる№25。
№25(パラケル)「ぐっ…」
リヴィエラ「やっとつかまえたぜぇ~№25」
喜々とした表情で微笑むリヴィエラ。
リヴィエラ「お前が死んだって聞いてから私は生きる意味を失っていた。だけどよぉ!」

ガッ!

見えない右腕で№25の首をつかみ持ち上げる。宙ぶらりんとなる№25。
リヴィエラ「どんな形でもお前を始末できるなら最高だよなぁ!!スカイとアンダーの苦しみ、その身であじわってくれよなぁ!!」
凶器に満ちたリヴィエラの瞳。直後!

ゴキン!!

鈍い音が建物内に響く。首があり得ない角度に曲がる№25。

ブン!ブン!

そのまま何度も地面へたたきつけられる№25の体。
リヴィエラ「あはは!!最高だなおい!」
№25を地面に放り投げ、歓喜に浸っているリヴィエラ。
№25(パラケル)(驚異的な力だが…馬鹿が。ホムンクルスはわが錬金術で操っている死体。このような物理ダメージではその動きは止まりはしない。この隙にその息の根を止めてやる)
起き上がり地面へと手を付けようとする№25。
リヴィエラ「おい。なに動いてんだ?」
だがその動きはリヴィエラに察知される。
№25(パラケル)「なに…」
リヴィエラ「動くなよ…その位置がいいんだ。最高にな」
№25(パラケル)「何を言って…」

ボッ!

№25の体が下から突き上げられるように吹き飛ばされる。
№25(パラケル)「なんだ!?」
リヴィエラの見えない右腕だ。だが彼女が№25を上へと吹き飛ばした意図が読めない。何をする気なのか。だがその謎は上を見上げた瞬間、瞬時に解けた。
№25(パラケル)「なにかある…?これは!」
部屋の天井に水で四角い箱が造られていた。戦いの最中は全く気付かなった。薄い水の膜で作られた箱の中身は透けて見える。赤く燃え盛るそれは…
№25(パラケル)「炎!さっきの爆炎は消し去ったのでなくこの箱に閉じ込めて天井に設置していたのか」
リヴィエラ「№25消し炭になりやがれ!!」
箱の下面の水が消える。直後、空気中の酸素に触れた炎が激しい爆発を引き起こす。バックドラフト現象だ。その爆発に向かって飛んでいく№25の体。
№25(パラケル)(このホムンクルスもここまでか…仕方がない)
№25から意識を切り離すパラケル。

ボゴォン!!

爆発に巻き込まれ燃え盛る№25の体。死体となり朽ちていたからか、その体は原型が残らないほど燃え尽きる。消し炭となった№25の体は灰となりあたりに降り注ぐ。
リヴィエラ「これで少しは気が晴れたな…」
膝をつくリヴィエラ。使えば寿命が半分は縮まるといわれている薬だ。その副作用は超人的な力を発揮する代わりに肉体への尋常でないダメージを与える。
リヴィエラ「だが…まだだ」
スカイとアンダーのホムンクルスがいる。彼女たちを開放しなければリヴィエラの気は晴れない。
リヴィエラ「ごふっ…」
口から血を吐くリヴィエラ。
リヴィエラ「まだもってくれよ…私の体」
よろよろと立ち上がり、歩んでいくリヴィエラ。彼女は更生院の奥へと進んでいくのであった。

~更生院・管理室~
フラメル「状況はどうだ?」
パラケル「予想以上だ。侵入者もここへと進んできている」
ゲオルグ「侵入者のほうは俺が相手してくるか」
フラメル「入口前に大挙しているEGOたちもこのままでは侵入は免れないな」
パラケル「こちらも出し惜しみをしている場合ではないな。あのホムンクルスたちを使う」
フラメル「例のやつらか」
パラケル「うむ。一体は侵入者に倒されたが、残りの5人を入口前へと向かわせよう。やつらならば並みのホムンクルスのようにはいかんぞ」

~更生院(カリキュラム)・入口前~
焙那「数は多いけど!」
美天「こっちも負けていません!」
ミストラルシティのEGO、治安維持委員が集結した今、ホムンクルスの集団に後れは取らない。
EGO隊員「このまま押きり、中へと突入する!」
指揮を取っていたEGO隊員が勝利を確信し、前線を進んでいく。
EGO隊員「俺に続け!」

ズッ!!

EGO隊員「んっ…?」
なにかが彼の首を掠める。

ブシュゥゥ!!

首から流れる大量の血。
EGO隊員「なっ…」
その場に倒れるEGO隊員。周囲の隊員たちが駆け付け直ちに救護に入る。
十一「なにが!?」
更生院の中から現れたボロボロのスーツに身を包んだ5人。彼らが戦況を一変させる。各々に強力な能力や体術で圧倒する彼ら。
焙那「つ、強い!」
美天「まずいです!押されています!このままじゃ…」
更生院に突入するどころではない。彼らを何とかしなければ…
???「指揮を執っていたEGOの隊員がやられた今、こちらの指揮系統は乱れる一方だ。そこに対処が厳しい敵が現れた。状況を変えなければ勝機はないね」
焙那に話しかけてきたのは治安維持委員第3支部の支部長を務めている九穏肇李(くおんちょうり)だ。
焙那「どうするの?」
肇李「治安維持委員(セキュリティ)の各支部であいつらを分散して倒すしかないと思う。できるかな?」
焙那「今の状況…やるしかないわね」
活路を開くにはそれしかない。
肇李「第1、第2には僕から伝える。第4はすぐに作戦を開始して」
焙那「えぇ。任せて!」

~~

EGOの隊員たちを圧倒していくボロボロのスーツを着た5人。その前に焙那が立ちはだかる。
焙那「あなたたちは、治安維持委員(セキュリティ)第4支部長『君島 焙那(きみじま はいな)』と!」

バッ!!

焙那の隣に3人の人物が立つ。
肇李「治安維持委員(セキュリティ)第3支部長『九穏 肇李(くおん ちょうり)』」
鎖霾「治安維持委員(セキュリティ)第2支部長『契凱 鎖霾(けいがい さめ)』」
列覇「治安維持委員(セキュリティ)第1支部長『義丈 列覇(ぎじょう れっぱ)』」
焙那&肇李&鎖霾&列覇「「「「私(僕、俺)たちが相手だ!!!!」」」」
スーツの5人をそれぞれ引き付け、分散させる4人。
肇李「君の相手は僕だ」
ボロボロのスーツの男。その首元には『33』と数字が刻まれている。
33(みみ)「……」
肇李「正確には僕と…」

バッ!

肇李の周りに隠れていた第3支部の面々が現れる。
肇李「第3支部だ!!」

~~

鎖霾「戦力の分散は成功…あとはこいつを倒せば」
鎖霾の前に立つボロボロのスーツの男の腕には『88』と数字が刻まれている。
88(はっぱ)「…」
鎖霾「相手の能力がわからない以上、まずは様子見だね」

~~

列覇「よ~し!ついてきたな!」
列覇を追ってきたボロボロのスーツの男の太ももには『86』の数字が見える。
86(はむ)「…」
列覇「タイマン張らせてもらうぜ!いくぜ!」

~~

焙那「ついてきたわね…」
焙那を追ってきたボロボロのスーツの男の手の甲には『64』の数字が見える。
64(むし)「…」
焙那「美天さん!」
焙那の呼びかけに応じるように第4支部の面々が64を囲むように現れる。
美天「準備万端です!」
十一「一対多数。卑怯とは言わせませんよ!」

~~
額に『74』の数字を刻まれている男は誰も追うことなくその場に立ち尽くしていた。
74(なし)「……」
EGO隊員「他の奴らは治安維持委員が引き離した。こいつは俺たちで対処する!」
EGOの隊員たちが74を包囲する。
74「…」
ホムンクルスと化した74はその表情を変化させることもない。ただ淡々と状況に対処する動き。それが彼の身についた動き。
EGO隊員「撃てぇ!!」

バババ!!

放たれる銃弾。その銃弾は74の体を貫き、ハチの巣のように穴をあける。確かに74の体に穴が開いたのをその場にいた全員が見た。だが…
74「…」
74の体は何もなかったかのように銃弾により開いた穴がない。
EGO隊員「な、なんで…」

ズッ!

EGO隊員の首元を狙いナイフで切り裂く74。次々とEGO隊員たちを切り刻んでいく。

~更生院近くの高台~

「うむ。あまりいい状況ではないな」
高台から望遠鏡で更生院の入口付近で行われる戦闘を見ている彼。
「学生…治安維持委員(セキュリティ)か。うまく敵の突起戦力を分散させたようだな。EGOのほうが苦戦しているように見える。最近の学生はやるな」
感嘆しながら冷静に戦況を見る。
「俺の仕事は今更生院のなかにいるであろう也転一凛のサポート。仕事をなすにはまず中に入る必要がある。となれば外で戦っている連中の補佐をしないわけにはいかないな。いくならあそこか」
スーツに身を包んだ彼は首元のネクタイを締め、気を引き締める。
涅尤(くりゅう)「今回の仕事はハードそうだが…何とかなるか」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年03月05日 21:50