錬金術(れんきんじゅつ)

~更生院(カリキュラム)・入口前~
列覇(れっぱ)「うぉぉぉ!!」
ホムンクルスたちへと突撃する列覇。彼が近づいた瞬間ホムンクルスたちは物言わぬ死体へと戻っていく。
列覇「どいつもこいつも!戦う気概すらないのか!」
怜霞(りょうか)「死体に気概を求めるのは無理な話ですね」
ホムンクルスと戦う治安維持委員(セキュリティ)たちはホムンクルスを次々と無力化していく列覇の姿に唖然とする。
肇李(ちょうり)「第1部長の義丈列覇(ぎじょうれっぱ)。これほどとはね…」
噂には耳にしていた。義丈列覇は普通の能力者ではないと。彼につけられていた異名。それは…
鎖霾(さめ)「これが噂に聞く真向勝負(スキルキャンセラー)。実際に見るととんでもないわね」
真向勝負(スキルキャンセラー)。義丈列覇の異名。それは彼の能力に由来する。彼が放つオーラ(闘気のようなものだろうか)はあらゆる能力を無効化する。理屈も理由も明らかではないがそういう能力だという事実。彼に対峙したものは文字通りの真向勝負(まっこうしょうぶ)で戦うほかない。
挫羅(くじら)「あんな能力ありえるんですか?」
鎖霾「目の前であんなの見せられたら信じるしかないでしょ。こいつらはまだまだいる!くるわ!」
鎖霾へと襲い掛かるホムンクルス。
ホムンクルス「…」
だがその動きがぴたりと止まる。
鎖霾「なに?」
列覇ではない。一斉にすべてのホムンクルスの動きが止まる。

サァァ……

ホムンクルスたちの体が粉のように散っていく。
肇李「これは…やったんだね」
史香(しか)「操っている者を倒したみたいですね」
焙那(はいな)「一凛さん。やったのね…」
美天(みそら)「よかったぁ」
ホムンクルスたちは無力化されその脅威は去った。だが彼らは知らない。ホムンクルスを操っている者が最大の脅威ではないことを。そう最大の脅威…それは。

~更生院・管理室~
リヴィエラ「うおらぁ!」
水で構成した右腕がフラメルへと振り下ろされる。
フラメル「流体操作か」
フラメルは左手でページを開いた本を持ち、右手を自身の前方に突き出す。

バシャン!

フラメルの右手にリヴィエラの右手が触れた瞬間。リヴィエラの右腕は水へと戻り、あたりに散らばる。
リヴィエラ「ちっ!」
一凛「あいつは能力を無効化するわ!やみくもに戦っても勝てない!」
リヴィエラ「じゃあどうするってんだ!」
零軌「彼女の錬金術は中和の錬金術。だけど一度に中和できる事象には限界があるはずよぉ」
一凛「なんであんたがあいつの能力を?」
零軌「ついさっきまで私も錬金術師だったからかしらぁ」
わけのわからないことを言う零軌。だがそれはでたらめを言っているわけではない。パラケルの記憶を読み取ったとき、フラメルの錬金術に関する記憶も頭に入ってきた。その記憶通りならフラメルを倒すカギは。
一凛「はぁ?こんな時にくだらない冗談なんて…」
零軌「冗談は大事よぉ。こんな時だからこそ心に余裕を持たないとねぇ」
そういいつつも零軌の表情は険しい。それもそうだ。状況は3対1でこちらが俄然有利に見えるが、実際はそうではない。強がってはいるが一凛、リヴィエラ、零軌の3人ともすでにいつ力尽きるかわからないほどに憔悴している。
リヴィエラ「で?どうすんだ?」
零軌「同時に能力で攻撃するわよぉ」
中和しきれないほどの攻撃を浴びせる。単純だが明快な攻略法。ほかに手が浮かばない以上それしかない。
リヴィエラ「いいぜ」
左手を開き、前方へと突き出すリヴィエラ。
一凛「これが最後のチャンス…外せないわね」
零軌「二人とも頼むわよぉ」
二人の背中に手を当てる零軌。
リヴィエラ「…へっ!」
一凛「…よし!」
指を銃のように構える一凛。
リヴィエラ「しくるなよ也転一凛
リヴィエラの周囲の大気中の水分が水滴となり辺りを水浸しにする。その手のひらには水が集まっていき水の弾を形成する。
一凛「あんたもね」
一凛の指先に風が渦巻いていく。
フラメル「何をしようとも無駄なあがきだ『ダブス・メギストス』」
左手に持っていた本を服の中へとしまい、両手を開き構えるフラメル。
零軌「頼んだわよぉ」
零軌はリヴィエラの背中へと隠れる。
リヴィエラ「くらいやがれ!」
一凛「はぁ!」
リヴィエラの水弾と一凛の風弾が放たれる。
フラメル「浅い」
両手で水弾と風弾を受けとめるフラメル。するとその手に触れた水は地面へと散り、風は空に霧散してしまう。
フラメル「策が浅いな」
一凛&リヴィエラ「ニヤリ」
口元に笑みを見せる二人。攻撃が防がれたものの表情にはありえない。ということはなにかある。だが気づいた時にはもう遅い。
零軌「こっちが本命よぉ!」
フラメルの背後には零軌の姿があった。右手をフラメルへとつける零軌。
フラメル「なっ!?」
意識が混濁し、その場に膝をつくフラメル。
フラメル「な…ぜだ」
零軌「最初からこれが狙いだったのよぉ」
一凛「うまくいったわね!」
リヴィエラ「初めてにしてはな」
これが3人の作戦。零軌は二人の背中に触れた瞬間。電気信号を送り、直接脳内に作戦を伝えていた。
零軌「二人の攻撃は囮。その攻撃に気を取られている隙に、水浸しの地面の上を一凛さんの浮力操作でホバーのように私の体を滑らせあなたの後ろに移動させたって寸法よぉ」
だがそんなことをすれば零軌の姿は見えていたはず。それがみえなかったのはリヴィエラの能力だ。移動している零軌の前に水の壁を作り、光の屈折率を操作し彼女の姿を見えなくしたのだ。
フラメル「認めざるを…得ないな」
右手で頭を押さえるフラメル。
零軌「あら?ずいぶんと潔いわね。でも言わせてもらうわぁ。あなたの負けよぉ」
フラメル「ふっ…」
フラメルが見せた笑み。それはあきらめの笑みには到底見えない。その笑みが現すのは零軌の発言に対する嘲笑。
零軌「何がおかしいのかしらぁ?私の能力でろくに立つこともできないあなたが…」
フラメル「おもい…」
零軌「?」
フラメル「思いあがるなよ能力者!!」
左手で服の中から本を取り出すフラメル。取り出した本を上空へと投げる。投げ上げられた本はそのページがパラパラとめくれながら宙を舞う。
フラメル「認めるというのは…こういうことだ!」

カッ!!

宙に舞う本が光を放つ。
フラメル「『トリス・メギストス』」
本から放たれる光がフラメルの体を包み込む。ボロボロと朽ちていく本。光がフラメルに吸収されるように消えると同時に本は消滅する。
零軌「なに…」

ゴッ!

零軌「かはっ…」
腹部にフラメルの拳が勢いよく打ち込まれる。あまりの衝撃に意識が飛びそうになる零軌。
フラメル「まだ意識があるか。だが!」
フラメルが打ち込んだ拳を強く握るとその手の甲から針が飛び出る。その針は無慈悲に零軌の体を貫通する。
零軌「がっ…」
口から血を流す零軌。
一凛「零軌!」
リヴィエラ「ちっ!」
水を操り右腕を形成し、フラメルへと走り出すリヴィエラ。フラメルは零軌を投げ捨てると両手の指をリヴィエラのほうへと向け突き出す。
フラメル「…」

ボッ!

空気を切り裂く音を立て、何かが飛ぶ。
リヴィエラ「?」
リヴィエラには何が起きたのかわからなかった。だが体に違和感を感じる。前に進もうとしても足が前にでない。ふと下を見ると自分の両足にフラメルの指が楔のように突き刺さっていた。フラメルは自身の指を弾丸の指のように飛ばしリヴィエラの足へと突き刺したのだ。
リヴィエラ「なんだと!?」
フラメル「ふふっ」
不敵な笑みを浮かべるフラメル。彼女の飛ばした指が再生していく。
一凛「再生した!?」
リヴィエラ「くそがぁ!」
水で形成された右腕を伸ばしフラメルへと飛ばすリヴィエラ。だがその腕は赤子の手を握るようにやさしくフラメルに受け止められる。
フラメル「無駄なあがきだ」

バシャン!

リヴィエラの腕が水へと戻る。
リヴィエラ「能力が!」

フッ!

瞬間移動でもするかのようにリヴィエラの眼前に姿を移動するフラメル。
リヴィエラ「ちっ!」
能力を無効化され両足も動かすことができない。今の彼女にできるのは左腕を動かすことだけ。だがその程度であきらめる彼女ではない。リヴィエラは左腕でフラメルの首をつかもうと勢いよくその腕を振るう。

ゴキッ!!

何かが折れる音が室内に響く。だが直後その音よりも大きな音が室内へとこだました。
リヴィエラ「ぐぁぁぁ!!!」
リヴィエラの悲鳴。それは彼女の左腕が通常ではありえない方向へ曲がったことによる悲鳴。リヴィエラの左腕はフラメルにつかまれ、へし折られた。
フラメル「四肢が動かせず戦うすべもない。哀れだな」
リヴィエラ「…ふっ」
もう成す術もないはずなのにリヴィエラの口元は笑っていた。直後!

ベチャッ!

フラメルの顔にリヴィエラが唾を吐く。
リヴィエラ「まだ口は動くからよぉ!あいにくだったな!」
舌を伸ばし挑発するリヴィエラ。
フラメル「…下品な」

ボッ!

勢いよく振るわれたフラメルの右腕に吹き飛ばされ気絶するリヴィエラ。
フラメル「さて…」
フラメルが見据えた先。そこには風を纏いフラメルに突撃してくる彼女の姿があった。
一凛「うぉぉ!!」
なりふり構わず全力で風を生成し突撃する一凛。

ドン!

室内に響く衝撃音。一凛の突撃…だがそれはいともたやすく、それも片手でフラメルに受け止められてしまう。
フラメル「もう今のお前に勝機は万が一にもない。『トリス・メギストス』を発動した私に勝つことなどできはしない」
一凛の頭をつかみ壁へと投げつけるフラメル。壁に背中から衝突し、壁によりかかるように座る一凛。
一凛「うっ…」
フラメル「『トリス・メギストス』は爱马仕(ヘルメス)が生涯をかけて創造した錬金術の集大成。彼の記した書に刻まれた錬金術の力をすべて開放する術式。この術式を使えば爱马仕(ヘルメス)の書、緑玉書(エメラルド・タブレット)は失われる。だが今この私の体を流れる力こそが錬金術そのものなのだ」
地面に手を当てるフラメル。すると大気中に散っていた塵が集まっていく。それらは無数のホムンクルスへと形を成す。
フラメル「パラケルにゲオルグ。彼らが使っていた錬金術は緑玉書に記されていた一部にしか過ぎない。そのすべては今、私の力と化した」
一凛「くっ…(うそでしょ、こいつだけでも勝てる気がしないのにまたゾンビ…。零軌にあいつもやられちゃった…もう…)」
フラメル「お前でダメなら次を成すだけだ。死霊どもよ喰らえ!」
ホムンクルスたちが一凛へと襲い掛かる。
一凛「もう…だめ…」
あきらめかけたその時!

ボゥッ!

一凛とホムンクルスを遮るように黒い壁が出現する。壁にぶつかり、その場にたたずむホムンクルスたち。
フラメル「なんだ…?」
一凛「黒い…壁?」
壁が突然現れるはずがない。だとすればこれはなんなのだろうか。よく見るとその壁のようなものはなにかが集まってできたようなものに見える。さらに目を凝らすとその正体が一凛にはわかった。
一凛「これって…!」

「伏せろ也転一凛」

一凛の隣で聞こえる声。その声に従い、彼女は体を丸め小さくなる。

チリチリ…

摩擦音を鳴らす黒い壁。その直後!

ドゴォン!!

室内に巻き起こる爆発。黒い壁がホムンクルスたちを巻き込み爆発する。
一凛「やっぱりあんたの能力!」
一凛の前に現れたのは…
涅尤(くりゅう)「今は問答している暇はないぞ。くるぞ!」
爆炎のなかからホムンクルスたちが二人に襲い掛かる。一凛を抱えて回避する涅尤。だが…
涅尤「くっ…」
ゲオルグとの戦いで追ったケガ。その状態で彼の体が本調子を出せるわけもない。
フラメル「援軍か。だが手負いの増援ではホムンクルスたちのエサになるのが関の山だ」
涅尤「聞け也転一凛。僕[たち]も余裕はない。一瞬の隙を作る。その瞬間にあいつを、錬金術師を叩け」
一凛「[たち]?えっ?」
涅尤「疑問は考えを鈍らせる。今は考えるな。勝機の道筋を見ろ」
一凛「そんなこと言われたって…」
両腕を大きる振るう涅尤。彼の腕から黒い粉末が辺りにまき散らされる。
涅尤「道を開く。走って見せろ也転一凛」

ボボボボボ!!

涅尤の放った粉末が爆発していく。その爆発はホムンクルスたちを吹き飛ばしていく。一凛の目線の先にはフラメルが見える。涅尤が言っていたのはこのことなのか。この機にフラメルを撃てと。
一凛「でも…」
迷いが脳裏によぎる。リヴィエラと零軌と協力しても勝てない相手。それに私一人で勝てるのだろうか。だが迷っている間にも勝機は退いていく。
涅尤「何をやっている也転一凛!時間がないぞ!」
一凛「くっ…」
もう迷う時間すらもない。だけど…踏ん切りがつかない。足が前に進まないのだ。それは彼女が初めて感じた恐怖、挫折に近い感情なのかもしれない。フラメルには勝てない。そう一凛の潜在意識が告げている。だからこそ前へ進むのは危険だと。
涅尤「也転一凛!」
何度言われてもだめだ。前に進むには勇気が足りない。今の一凛には。
一凛「だめ…」
涅尤が作ったチャンス。それは今無駄に散ろうとしていた。

「先輩。そんなの先輩らしくないですよ」

この声。幻聴だろうか。自分を先輩と呼ぶこの声は間違いなくあいつの声だ。
一凛「十一(ともろ)!」
どこから現れたのかもわからないが彼女が一凛の前に現れた。
十一「もう時間がありません!行きましょう!」
一凛の手をつかむ十一。その手のぬくもり、それは紛れもなく十一の手だ。それは妄想などではなく…本当の彼女だ。
一凛「…やれるの?」
十一「先輩と私ならやれます!」
そういう十一の眼には一切の迷いがない。その眼をみて一凛は覚悟を決める。
一凛「十一の前でかっこ悪いところはみせられないからね!」
十一「いきましょう!」
全身に風を纏う一凛。
一凛(フラメルは直進した先。だけどただ突撃しても攻撃は防がれる…だったら!)
十一「先輩の考えていることはわかっていますよ。私を信頼して行ってください!」
一凛「そうね…わかったわ。いくわよ!」
右腕を前に突き出し、それを支えるように左腕を添える。そして右手の指を銃のように構える。

ゴゴゴゴ!!

一凛の全身を覆う風が指先に集まっていく。
フラメル「何をする気かわからんが…」
両手を前に向けるフラメル。その指先は一凛へと狙いを定めている。
十一「…」
覚悟を決めたようにゆっくりと息を吸う十一。
十一「家の歴史、掟。それは大事なことですが…それ以上に大事なことが今の私にはあります!」
自分に言い聞かせるようにそういうと十一はゆっくりと深呼吸をするように息を吐く。そして彼女は覚悟を決めたように…その術式を解放する。
十一「『千百款染(スィンバイクァンラン)』!!」
十一の体に刻まれた術式が青く光る。一瞬にしてフラメルの前に移動する十一。
フラメル「なに!?」
十一「はぁ!」
フラメルの両腕が十一の蹴りにより弾き飛ばされる。
フラメル「バカな!?」
物理的な攻撃が自分に通用するはずがない。その前提が覆されたことに驚きを隠せないフラメル。十一は態勢を崩したフラメルへと両手を向ける。
十一「『閃光弾(シャングァンダム)』!」

カッ!

フラメル「ぐっ!」
十一の両手から放たれた光に目がくらみひるむフラメル。
十一「先輩!」
一凛「くらえぇぇぇ!!」
一凛の指先に渦巻く風。
一凛「『炸裂風弾(エクスプロードバレット)』!」
指先から放たれた風の塊はフラメルの腹部へと命中する。風の塊は命中した直後、渦を巻き高速で回転し爆発する。
フラメル「かはっ…(バカな風を操る能力、それすらも中和できない…さっきの攻撃、ただの蹴りじゃない)」
フラメルの読みは当たっていた。『千百款染』に秘められた力。それは十一さえもそのすべては知らない。だが無数の術式が埋め込まれたそれには対魔導用の自動迎撃術式も埋め込まれているようだ。それがフラメルの術式を崩したのだ。その場に膝をつくフラメル。
十一「やりましたね先輩!」
一凛「よし!」

パン!

手を合わせハイタッチする二人。
一凛「どうだ錬金術師!これがあたしたちの力だ!」
十一「あなたたちの野望はかなうことはありません。おとなしく観念しなさい」
フラメル「もう…ここまでか…」

ビキビキ…

フラメルの皮膚がひび割れていく。彼女の体がボロボロと朽ちていく。
フラメル「私はもうもたない。だが錬金術の歴史、そしてわれらが悲願は…今叶えられる」
一凛「悲願が叶えられる?」
十一「何を言って…」
フラメル「我らの宿願は我らが祖爱马仕(ヘルメス)の力を認めさせること…。そしてそれは今、お前により完遂される」
指をゆっくりと上げるフラメル。彼女の指がさすのは一凛だ。
一凛「どういうこと?」
フラメル「賢者の石は今完成…するのだ。今この時にな…」
十一「賢者の石!?まさかそんな…」
一凛「知ってるの十一?」
十一「眉唾な話です。ヘルメスが行っていたとされていた研究。錬金術による賢者の石の生成」
フラメル「その話を知っているとは…おまえ魔導士か。だがもう関係ない」

ドクン!

一凛「うっ!」
胸を押さえる一凛。胸が熱い。熱でもあるかのように急にうなされる一凛。
十一「先輩!まさか本当に賢者の石…」
フラメル「すべてはこの時のため…お前に埋め込んだ秘石はこれまでの過程でその条件がそろった」
一凛「うあぁぁ!!!」
一凛の叫び声が室内に木霊する。
フラメル「大いなる業(マグヌム・オプス)は成された。腐敗(ニグレド)を経て再構築(アルベド)に至った能力者たち(ホムンクルス)、そして緑玉書(エメラルド・タブレット)と同化した私を取り込み秘石は赤化(ルベド)を成す」

コォォォ!!

一凛の胸が赤く輝く。その輝きはホムンクルスたちとフラメルの体を吸い込むように包み込んでいく。
フラメル「有限と無限の合一。賢者の石は完成する…これで爱马仕の力は証明される…魔導士どもに錬金術の力を認めさせ…」

サァァ…

フラメルの体が朽ち、一凛の胸の輝きに吸収される。ホムンクルスたちも同様に一凛に吸収される。

カッ!

赤い閃光が室内を包む。
十一「くっ!」
閃光に目をつむる十一。閃光が止み、目を開けた十一の目に飛び込んできた光景。それは…

ゴゴゴゴ!!

室内に吹きすさぶ烈風。まるで台風の中にでもいるかのような状況。そしてその中心には一人の人物の姿があった。
十一「まさか…あれが先輩?」

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最終更新:2021年06月05日 22:34