命を賭した戦い!ディックVSアポロン!

~ミストラルシティ中央通り~
オリジネイターを名乗るライアードがもたらした騒動の最中、ディックは市民の誘導をしつつE.G.Oを目指していた。
ディック「皆さんここから離れて!早く逃げてください!」
人々の顔からは恐怖の色がうかがえる。全速力で走りながら、今の自分では彼らの力になれないもどかしさを感じていた。
ピエタの地にてディムームとの修行を経験したものの、実践となれば話は別だ。
なおさら相手が得体のしれないオリジネイターであればなおさらだ。
ディック「道場ではそこそこいけるんだけど…なにかきっかけがあればなぁ…おっとそんなこと考えている場合じゃあない!」
思案を振り払ってE.G.Oに向かう足を早めようとしたその時、彼の視界に見覚えのある男の姿が映った。

ディック「お前は…アポロン!」

~中央街・噴水広場~
市民が逃げた後に残った静けさが佇む広場に二人の男は相対していた。
ディック「オリジネイターの次はお前かよ!そんな場合じゃないってのに…」
様子をうかがいながら呟いた。よくないことはよく続くものだ。
アポロン「お前の邪魔をするつもりはない。行くべき場所へ行くがよい」
拍子抜けする言葉であったが、そうやすやすと先に進むわけにはいかない。
これまで命を狙われ続けていたのだから疑い深くなるのは当然のこと。
ディック「へへその手には乗らないぜ。それにな…」
拳を振り上げてアポロンめがけて走り出す。
ディック「これまでの逃げてばかりと思うなよぉぉぉ!!」
大ぶりの攻撃は容易に避けられてしまった。
ディック「おっと、熱くなりすぎだな。すぅぅ」
果倉部流の構えをとり息を整え相手を見据える。
アポロン(自らの人生に立ちはだかる障壁から逃げようとしない。確かにソナタは変わったのだな。そして…隙のないいい構えだ)
これまでとは違うディックの本意気を感じとり、アポロンもまた構えを整える。

先に動き出したのはディックだった。
間合いを詰めるやいなや、先とは違い最小限の範囲で拳を繰り出す。
かたやアポロンはディックの攻撃をそらして躱し、わずかな隙をついて反撃する。
そしてすぐさまディックの拳が飛び交う!
攻防は互角…いや、ディックがわずかに上回っているようだ!
アポロン「ッッ!」
形勢のわずかな悪化を察したアポロンは、後ろに大きく飛び離れる。ディックもすかさず追いかける!

アポロン「神託のロールを持ってして、我天命を全うす!天地開闢の一幕を紡ぎ出さん!ディック・ピッド!」
あの時と同じように「メサイア・サルバロール」が確かに発現したのだが、ディックの攻撃はとまらない!
ディック「うおおぉぉぉ!」
渾身の一撃がアポロンに放たれた!広場の端まで吹き飛ばされるアポロン!

アポロン「我が能力が…通用しないだと…」
ディック「ディムームの話のとおりだな。アポロン、きみの能力はもう俺には効かないよ。俺は自分の忌み名を手に入れたからね」

忌み名、それは地縛民の慣習の一つ。彼らは生まれたその時二つの名前を授けられる。
一つは常用的に用いられる表の名前、もう一つは神に捧げる裏の名前・忌み名。
忌み名は本人と両親のみが知るものであり、他人には決して教えてはならない。

アポロン「なるほどな。我が能力「メサイア・サルバロール」は対象者を名前で認識する。ソナタのまことの名前を知らない今、能力が通用しなくなったという理屈か」
それならばと、アポロンは背中に携えていた大剣を取り出した。
アポロン「感得の大剣エクス=ペリエンス!ソナタにふさわしい最期を演出してやろう!」

~~
大剣エクス=ペリエンスは所有者が経験した戦いを剣自体も経験し成長する。
代々メサイアの意志を継ぐものが共に引き継いできた。
所有者のスペックを補うこと、そしてさらなる成長を促す役目を持つのだ。

アポロン「エクス=ペリエンスの力を使うのは久しいものよ。はぁぁぁ!」
ディック「さっきのやりとりでお前の間合いはわかっている!大剣の大きさを考慮して…」
剣撃を避け次の攻撃に転じようと構えをとる刹那、ディックの身体は大剣に吹き飛ばされていた。
ディック「ばかな!剣が届く距離じゃあない!それに、アポロンの動きがさっきより早くなっている!」
アポロン「いかにも!これぞ我が大剣の能力なり!」
華奢な肉体からは想像できないスピードとパワーで大剣の攻撃を繰り出す。
ディック「これは、ちょっと、やばいかも」
疲労からか攻撃を躱すディックの動きに鈍りが見える。
アポロン「そこだ!」
ディックの死角からの一撃!今のディックには受け止めることはできない!

アポロン「!?この戦いの中で、ソナタにまた驚かされるとはな」
想像に反して大剣は受け止められていた。ディックのものではない、「彼」の双剣によって!
ディック「おっと、そんなところ狙ってきてたのかよ。まじ危なかったー。助かったよリョウガ
リョウガ「まったく、この程度でへばってたらこの先が思いやられるぜ、しっかりしろディック!」

~~
アポロン(いつの間に仲間が…いやそんな隙は無かったはずだ…もう一人現れたヤツは人間ではない。能力によって具現化された存在だ)
アポロン「なるほど。ピエタにいた二人の神官の具現化と同じ能力か」
ディック「へぇバティストカンタータを知ってるんだ。俺の能力によることも。…ってことは彼らを倒したのはお前たちだったんだな」
リョウガ「地縛神官を倒したのか。結構やりそうだなこいつ」
ディック「あぁ。だから早速クライマックスに行こうぜ!」
すぅぅぅぅ。はぁぁぁぁ。
二人は背中を合わせ、対となるように構えをとった。
その姿はまるで、獲物をねらう動物のようだ!
ディック・リョウガ「行くぜ!果倉部流象形拳『蜘蛛の囁き』!!」
ゆったりと動き始める二人。
アポロン(まだ攻撃の間合いには遠い。こちらから行くか!)
大剣を構え走り出す!
ディックの双拳とリョウガの双剣が蜘蛛の足を思わせる!その四足に捕らわれたらただではすまない!
アポロン「確かにソナタらは強い。だがまだ甘い!」
振りかざされた大剣が光り輝き、戦いを終焉に導いた!

~~
広場に静寂が戻った。そこに立っていたのは二人だけだった。
リョウガ「やれやれ。ディックはキャパオーバーか。まだ能力に振り回されているな」
ディックは極度の疲労から地面に伏している。戦いのさなか限界がきて倒れ、今はどうも寝てしまったようだ。
青髪の青年がアポロンに話しかける。
リョウガ「それで。お前たちはもうディックには興味ないってことでいいのか?」
アポロン「ディックに神たる器はなかった。故に命を奪う必要はなくなった。だが…」
リョウガを指さし、話を続ける。
アポロン「ディックの能力によって記憶の再生と具現化がなされた。ソナタもその記憶の一つだろう」
リョウガの胸元に青い炎が現れる。この炎は地縛神官の二人からと同じものだ。
リョウガ「ああ、そんな感じだ」
ディックの能力『イマジナリーフレンド』は、これまでにディックの魂に記憶に残された姿亡き人物を具現化する!
現在はまだ同時に二人までしか具現化することはできない。しかしリョウガの再生には二人分のキャパを必要とする。
どうやらリョウガと他の人物には、何か違いがあるようだ…

アポロン「ディックの能力は、魂に充満したカルマがなせる業だ。監視は続けさせてもらう。正しく力を使うのだな」
リョウガ「それは俺に任せろ。これまでも俺はディックとともにいたんだ。それはこれからも変わらない」
ディックとともにいた…それはどういう意味なのか…アポロンにもはっきりとは意味が分からなかった。
リョウガ「さてディックの意識がまもなくなくなる。そうしたら俺も一時消えてしまう。一つ頼みを聞いてもらえるか?」
ディックはスライに頼まれて、E.G.Oに救援を呼ぶところだったのだ。
アポロン「救援の件だな。承知した」
ディック「まったくお前は察しがいいと行くかなんというか。ともかく」
身体が青白い炎に包まれて消え始めたリョウガは、親指を持ち上げてアポロンに向かって突き出し…
リョウガ「お前ってグルービーだな!」


ディックの能力は強大な力すら再生する可能性を秘めている。しかし、この世に反してその力が使われることはないだろう。リョウガが傍にいる限り…
アポロンたちもまた、ディック(とその能力)と共存する可能性を見出した。世界を善き方向に導くべく枯れぬ信念のもとこれからも戦いに身を置くのだ。

ミストラルシティにもたらされるオリジネイターの脅威。
未知なる脅威を前にして、彼らは立ち向かうことを決してやめない。
眼前に広がる障壁を乗り越えるその日まで!

to be continued

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最終更新:2016年10月16日 22:36