~クリュセルス・EGO能力研究機関ユグドラシル~
N「まさかミストラルシティの攻略に失敗するとは…」
未元獣対策チームとEGOの活躍によりNの軍勢はミストラルシティから退けられた。
N「彼らの力は私が想像していたよりもだいぶ上ということですか…」
Nは何かを考えている様子だが仮面の下の素顔をうかがい知ることはできない。
N「
コード・スクードとコード・ヴァ―ダンドはノルンシステムによる再調整をしなければなりませんね。アレジェーネたちは準備ができ次第、作業にうつってもらいますか…それにしても」
Nは巨大な装置に顔を向ける。その装置にはキノが捕らわれている。
N(コード・ヴァ―ダンドの行動…あれは予想外でしたね)
ヴァ―ダンドの
アポロンに対する言動。それはNの予想を反するものだったのだ。
N(オリジナルであるアポロンに対し何らかの感情を持ったのでしょうか…ノルンシステムから与えらえる使命に反するとは…)
アージ「N」
部屋にアージが入ってくる。
N「アージか」
アージ「僕たちの方は準備を完了したよ」
N「そうですか。では手筈通りに。彼らはここに攻めてくるでしょう」
アージ「ミストラルシティでの借りを返そうとドーヴァとトリスは躍起になっているからね」
N「ふふふ。所詮は子供ですか。アージ、あなたはどうなのですか?」
アージ「僕かい?僕は目先のことには捉われないさ。」
N「さすがですね」
アージ「そんなことはないさ(僕は僕の生まれた使命を果たす。そのためにはNだって…)」
N「さて。では私も準備をするとしましょうか」
アージ「例の奴を使ってみるのかい?」
N「そうですね。彼女のおかげでクリュセルスを難なく支配することができましたからね」
Nは小さな機械を取りだす。それは昴が試験していた万歩計だ。
アージ「それのおかげで外部からの通信を遮断し、未元獣を生み出す時間を稼ぐことができたからね」
N「
葵夜昴。彼女はよく働いてくれました。これからは私たちの仲間としてさらなる働きをしてくれるでしょう」
強大な機械ノルンシステムの下に拘束される昴の姿があった。
アージ(仲間ね…。葵夜昴、つくづく救われない女だね…。Nがクリュセルスを外部から遮断するために街のギルドに依頼した万歩計の試験を引き受け、ここから脱出を試みた挙句捕まりNに利用され人形と化すとは…)
N「葵夜昴の調整は時期に終わります。生身の人間にノルンシステムの調整を行うのは初めてですがどうなるのやら…ふふふ…」
アージ「ところでN。カレン・ネティスはどうするの?」
N「彼女ですか。コード・スクードがいる以上彼女はもう必要ないかもしれませんね。」
アージ「じゃあ処分しても…」
N「いやもう少し待ちましょう。すべてが終わってからでも遅くはありません。彼女は引き続き牢に捕えておきましょう」
アージ「そう…(おかしい。Nは何故…)」
N「さぁ、私の目的が達成されるのはもうすぐです!」
~モゴラ大陸・某所~
シュウ「ミストラルシティを襲撃した未元獣たちは撃退されたそうですよ」
ラジオの放送を聞くシュウたち。
ウルズ「さすがだな十也たちは」
にろく「ほっ(ナルたちは無事みたいだな)」
きゅっぱ「
にろく。あんたの仲間も戦っているんだね」
にろく「あぁ。俺もあいつらのところに戻るためにも決着をつけなければならない」
にろくときゅっぱを陥れた治安維持局秘密諜報部のN。奴との決着をつけなければミストラルシティには戻れない。
シュウ「そのことなのですが。ウルズ」
ウルズ「なんだ?」
シュウ「あなたから彼らにあなたの知っている情報を教えてあげてください」
ウルズ「それは…」
にろく「ウルズ…」
ウルズはコード・スクード、コード・ヴァ―ダンドと共に未元獣を率い各地を襲撃していた。それが彼の本心ではないにしろ、なんらかの理由があってNと共にいたことは確かだ。
シュウ「ウルズ。あなたにとってあまり話したいことではないのはわかります。ですがこれから戦うべき相手の情報は少しでも知っておきたいのも事実です。そしてそれを知るものはウルズ。貴方しかいません。」
ウルズ「…わかったよ。俺が知っていることは全て話すさ。だがお前たちが思っているほど俺はNについては知らない。それを前提に聞いてくれ」
ウルズは語る。自分にとっては忌まわしい記憶を。
ウルズ「まずは俺と奴の出会いについて話さなければならないな。俺はとある事情で全身に大けがを負い、もう助からないような状況にいたんだ。」
四肢は砕け、体も動かない。そんな状況のウルズ。
ウルズ「そんな状況の俺の前に現れたのがNだった。奴は俺を助け、その体に改造を施した。その結果、俺は体の大半を機械とするサイボーグとなった。」
きゅっぱ「ちょっとまって!サイボーグってあのサイボーグ?」
よく漫画や映画で出てくる機械の体を持つ人間。そのことをウルズはいっているのだろうか。
ウルズ「体の全体ではないけどな。俺の手足は機械の手足だ」
にろく「それにしては動きがスムーズだな」
ウルズ「そういうもんじゃないのか?」
きゅっぱ「いや。あんたの戦いぶりを見てるとその体が機械でできているものとは思えないほどだよ」
現代の技術で生身の人間と同等の動きを再現できるほどの技術は確立されていない。
にろく「Nはそれを可能とするほどの技術を持っているというのか…」
現代の技術を超えるレベルの超技術。それをNは使用することができるというのだろうか。
シュウ「なるほど。それほどの技術を持っている人物。Nの正体、興味がありますね」
ウルズ「話を戻すぜ。肉体を改造され、俺は首にチョーカーをつけられた。そのチョーカーは俺への制御装置代わりだったみたいだ」
きゅっぱ「制御装置?」
ウルズ「あぁ。それは爆破機能を備えたチョーカ―だったのさ」
シュウ「それがある限りあなたは従うしかなかったと」
ウルズ「そうだ。俺は奴の命令に逆らえば、その瞬間自分の命が吹き飛ぶ。そんな状態だったってわけだ」
にろく「まるで俺たちが付けられていたチョーカーと同じだな」
にろくたち治安維持局諜報部の面々が付けられていたチョーカー。それも爆破機能を備えたもものだった。
シュウ「となるとNは元々治安維持局にかかわりがある人物だったのではないでしょうか」
きゅっぱ「諜報部を掌握する前から?」
シュウ「えぇ。諜報部に以前から用いられていたチョーカーとウルズが付けていたチョーカーは同じ種類のものです。それに諜報部のスムーズな掌握からしてNは元々EGOの関係者であると考えられます」
にろく「確かに。そう考えるのが妥当だな」
シュウ「ウルズ。あなたはいつからNの命令で動いていたのですか?」
ウルズ「たしか今から半年位前だったと思ったが…」
シュウ「半年前…ですか。(たしかそのくらいの時に
オリジネイターたちは…)」
なにやら考えを巡らせるシュウ。
にろく「ウルズ。お前はNの正体にまったく心当たりはないのか?」
ウルズ「すまない。俺も奴についてはまったくわからないんだ。」
命令で動いていたウルズでさえも正体をわからないN。
きゅっぱ「だったら直接本人に聞くしかないんじゃないの?」
シュウ「そうですね。それが一番確実な方法です。ですがNのいるであろうクリュセルスには未元獣たちが待ち受けていますよ。それでもあなたたちはいくのですか?」
にろく「あたりまえだ。俺は奴を倒す(そしてナルたちのもとへ戻るんだ)」
きゅっぱ「そうね。いままで秘密諜報部としてEGOに貢献してきたあたしたちを利用して抹消しようとしたNにはお仕置きをしないとね」
ウルズ「俺も奴を倒し、今まで俺をこき使ってくれた借りを返さないとな」
3人の意志は固い。
シュウ「そうですか。それを聞いて安心しました。ではクリュセルスへ向かうとしましょうか」
4人はモゴラ大陸の中を進んでいく。Nのいるクリュセルスを目指して。
そして3日後、EGOのクリュセルス攻略戦当日。
~モゴラ大陸・クリュセルス周辺~
EGO隊員「隊長!突入準備完了しました!」
まだ日も出ていない早朝。クリュセルスの周りに潜むEGOの隊員たち。彼らはクリュセルス突入部隊の先遣隊だ。
先遣隊隊長「よし!ではいくぞ!我らが先陣を切り、後続の部隊への足掛かりを作る!」
先遣隊は闇夜に紛れクリュセルスの街の中へと突入しようとする。クリュセルスの街は大きな塀に囲まれ、設置された巨大な門を通らなければ内部に入ることができない。
未元獣「がぉぉぉ!」
先遣隊たちの前に立ちはだかる未元獣。
EGO隊員「うぉぉぉ!」
だが先遣隊のメンバーはEGOの中でも戦闘に秀でたメンバーを集められている。未元獣たちを次々打ち倒し、とうとうクリュセルスの門の前に到着する先遣隊。
先遣隊隊長「よし!このまま…んっ?あれは…!」
門の前に誰かが立っている。未元獣ではない。人の姿をしている。
コード・ヴァ―ダンド「ふん。EGOの部隊か。」
コード・ヴァ―ダンド。彼が門の前に立ち塞がっていた。
先遣隊隊長「例の仮面の男か。奴の戦闘力は常軌を逸している。だがこの数の我々を相手に勝つことなど!」
先遣隊はクリュセルスの街中を制圧し本隊がユグドラシルに攻め入るための準備を整えるのが仕事だ。そのため街中全部を確実に制圧するための戦力として数十人のEGO隊員が導入されているのだ。
ヴァ―ダンド「数に物を言わせた戦術か…」
冷静に相手を見渡すヴァ―ダンド
先遣隊隊長「全員かかれ!奴を倒しクリュセルスへと突入せよ!」
EGO隊員たち「おおぉぉ!!」
先遣部隊の隊員たちが一斉にヴァ―ダンド目がけて突撃してくる。
ヴァ―ダンド「ふっ!笑止!この程度の戦力で我を突破できると思っているとは!」
柄だけの剣を取り出すヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンド「我が剣の真の力!その身を持って知るがいい!神涜(かんとく)の大剣ディス=エクスペリエンス!」
ジジジジジ!!
剣の柄から刃が形成されていく。しかしその刃は以前の彼の大剣とは大きく違う。エネルギーが集束されたような形の光輝く刀身が形成される。
EGO隊員「なんだあれは!?」
ヴァ―ダンド「いくぞ!」
大剣を横に構えるヴァ―ダンド。
ヴァ―ダンド「伸びろ!ディス=エクスペリエンス!」
ゴゴゴゴゴ!!
ヴァ―ダンドの呼びかけに答えるようにディス=エクスペリエンスのエネルギーの刀身が伸びていく。その長さはゆうに100メートルはあろうかというほどだ。
ヴァ―ダンド「ぬぉぉぉぉ!」
ヴァ―ダンドの腕に凄まじい力が込められる。普通の人間なら腕がちぎれてしまうほどの力だ。彼は自分の自己治癒の力を利用してディス=エクスペリエンスを振るう。
ガガガガガ!!
エネルギーの刀身が地面を削る。凄まじい勢いで振るわれるディス=エクスペリエンス。
EGO隊員「う、嘘だろ!?」
眼の前で起こる現象を理解できないEGO隊員。100メートルはあろうかというエネルギーの剣が大地を削りながらこちらに向かってくる。
パン!パン!
ディス=エクスペリエンスに銃を撃って止めようとするEGO隊員たち。しかしその刃は止まらない。
ヴァ―ダンド「薙ぎ払え!大地ごと我が敵を!」
ガガガガガ!!
勢いが衰えぬまま先遣隊に迫るディス=エクスペリエンスの刃。
先遣隊隊長「ひっ!こ、こんなのどうすれば…。」
膝をつく先遣隊隊長。その顔からは絶望の表情が覗える。
ヴァ―ダンド「一刀必殺!『神薙(カンナギ)』!」
ゴゴゴゴゴ!!
先遣隊隊長「あ…」ジュ…
エネルギーの刃に呑み込まれ一瞬にして塵となる先遣隊のメンバーたち。
ドン!
地面に剣の柄を突き立てるヴァ―ダンド。ディス=エクスペリエンスのエネルギーの刀身が闇夜を照らす。
ヴァーダンド「他愛もない。やはり我を満足させてくれるのは奴のみだ。早くこい、アポロン!」
ヴァ―ダンドは剣をしまい、クリュセルスの中へと消えていった。
~モゴラ大陸・クリュセルス攻略戦作戦本部~
EGO隊員A「せ、先遣隊からの通信が途絶えました…」
EGO隊員B「まさか…全滅したのか…」
アルバド「敵はそれほどの力を持つということか…」
先遣隊の全滅。それは誰しもが予想していなかった事態であった。
レイジ「どうします、隊長?」
アルバド「いまさら作戦の変更はできん!我々はミストラルシティからの奇襲部隊の到着前にクリュセルスへ突入する!いくぞ!」
ヴァイス「オーケー!ボス!」
とうとう始まったクリュセルス攻略戦。アルバドたちはミストラルシティからの飛行強襲部隊のためにクリュセルスへ突入する。
ヴァ―ダンドの迎撃により出鼻をくじかれたEGOと未元獣対策チーム。果たして彼らはNの支配するクリュセルスを攻略できるのだろうか。
to be continued
最終更新:2016年12月15日 22:24