~ユグドラシル~
にろく「ナル!彼女を安全なところへ!」
ナル「わかった!2人とも気を付けて!」
ナルは昴を抱えて退避する。
スクード「まずは裏切り物!お前からだ!」
氷で形成された異形の姿となったスクードがその5本の指をウルズに向ける。
スクード「貫けアイスランス!」
氷で形成された5本の指がウルズ目がけて凄まじい速度で伸びてくる。
ウルズ「無駄だぜ!コード・チェンジした俺に氷の能力は通用しない!」
ザシュ!
ウルズ「なっ…」
ウルズの体を貫く氷の指。
にろく「ウルズ!」
スクード「くくく。今の私の能力はそんな生易しいものではない。お前ごときが私の氷を防げると思うな!」
スクードは突き刺したウルズを持ち上げ、そのまま壁へとたたきつける。
ウルズ「がはっ!」
スクード「私の無限氷(むげんひょう)は熱ごときで溶かせはしない」
今のスクードが作り出す氷の生成速度は常軌を逸しているほどの速度だ。たとえ熱で溶かされようとも、それ以上の速度で氷を生成しなおすほどだ。
ウルズ「なんて野郎だ…」
にろく「溶けない氷…奴を直接叩くしかない!『プラグオン』!」
スクード「やらせるか!」
にろくの腕が凄まじい速度で凍り付く。
にろく「なっ!」
ウルズ「ちっ!こいつはまずいぜ…」
スクード「観念しろ!」
ウルズ「だが黙ってやられるつもりはない!」
スクードに向かって走り出すウルズ。
スクード「ふん!」
スクードが指を上に向ける動作をする。するとそれに合わせて地面から氷の槍が突き出してくる。
ウルズ「当たるかよ!」
避けながらも走るウルズ。スクードとの距離が詰まる。
ウルズ「くらえ!」
拳を突き出しパンチを撃ち込むウルズ。しかし…
スクード「そんな攻撃効きはしない!」
スクードにはまったく効いていない。
スクード「このままお前を氷漬けにしてやる!」
パキパキパキ
ウルズ「くっ…」
にろく「ウルズ!」
にろくがウルズを突き飛ばす。その衝撃で氷漬けを免れるウルズ。
スクード「余計な邪魔を!」
スクードはにろくに向けて手をかざす。
スクード「死ね!」
パキン!
一瞬で凍り付くにろく。そのまま動かぬ氷像のようになってしまった。
ウルズ「にろく!」
ウルズの叫びは氷像と化したにろくには届かない。
スクード「くらえ!」
ウルズの四方をとり囲むように氷の壁が出現する。
スクード「アイスウォール!」
氷の壁から鋭い氷の棘が生えてくる。
ウルズ「逃げ場がない…!」
ゴゴゴ…!
徐々に氷の壁がウルズに向かって迫ってくる。
スクード「裏切者のお前はそのまま跡形もなく押しつぶしてやる!」
ウルズ「万事休すか…」
ピピピ
ウルズの仮面に通信が入る。こんなときに誰だろうか。
シュウ『やぁ、ウルズ。そちらの首尾はどうですか?』
ウルズ「その感じだとお前の方はうまくいったみたいだな」
シュウ『そうですね。ですがあなたの方は芳しくないようですね』
ウルズ「どころかもう絶体絶命のピンチってやつだ」
シュウ『それは困りましたね』
ウルズ「すまないなシュウ。せっかく助け出してもらったが俺はここまでみたいだ」
シュウ『ウルズ…。あなたらしくもありませんね。こんなところであきらめてしまうのですか?』
ウルズ「さすがにこの状況はどうしようもない」
ウルズの四方から迫る氷の壁。それに挟まれればひとたまりもない。
シュウ『そうですか…あぁ、そういえばひとつあなたに言い忘れていたことがありました!』
ウルズ「なんだこんな時に…」
シュウ『あなたの体に取り付けられている義肢ですが、ちょっと面白そうなので私なりに改造しておきました。今ならその機能が役に立つかもしれません。試してみてはどうです?』
ウルズ「いつの間にそんなことを!?というか早くいいやがれ!」
シュウ『申し訳ありません。あなたほどの力があれば必要のない機能かと思いまして…』
ウルズ「ちっ!まったく食えない野郎だ!だが感謝するぜ!希望がみえた!」
シュウ『ではセーフティ解除の方法をお教えします。頼みましたよウルズ』
ウルズ「あぁ!」
スクード「さてそろそろか」
氷の壁はウルズを押しつぶす寸前まで迫っていた。
スクード「あとは残りの侵入者を倒しにいくとするか…」
スクードがウルズの死を確信し、背を向けたその時…
ウルズ「昇華機構解除!」
バゴォン!
スクード「なんだ!?」
激しい爆音と共に砕け散る氷の壁。その中から
コード・ウルズが姿を現す。
スクード「なんだその姿は!」
ウルズの体が金色に輝いている。
ウルズ「力が溢れてくる…これがシュウの奴が組み込んだシステムか」
スクード「私のアイスウォールを破壊するほどの力だと…いったい何をした?」
ウルズ「単純に砕いてやっただけさ。いくぞスクード!」
スクード「速い!」
一瞬にしてスクードの眼前に飛び出すウルズ。
スクード「だが!アイスランス!」
指を氷の槍に変え突き刺そうとするスクード。
ウルズ「くらうかよ!」
ウルズの足から放たれる強力な蹴りがスクードの氷の槍を破壊する。そしてそのまま拳をスクードに打ち込むウルズ。
スクード「ぐっ!」
スクードの氷の体に穴が開く。だがスクードの体の穴はすぐに塞がっていく。
スクード「どんなに力が強くなろうと!」
ウルズ「再生能力か…ならば!」
右腕を上に掲げるウルズ。ウルズの右腕の装甲が展開していく。
ウルズ「一点昇華機構!」
再び装甲が展開した右腕をスクードに打ち込むウルズ。
スクード「なんだ?さっきよりも威力がないぞ?」
スクードの体に穴は開かない。まるで拳を置かれたような感覚だ。
ウルズ「建御雷(タケミカヅチ)!!」
ウルズの右腕の展開していた装甲が閉まりながら、その拳を伝い衝撃がスクードの体に撃ち込まれる。
ドン!ドン!ドン!
スクード「なっ!ぐっ!」
ウルズ「終わりだ!」
ドン!
最後の装甲が閉まると同時に強烈な衝撃がスクードの体に撃ち込まれる。
スクード「ぐぁぁ!」
吹き飛ばされるスクード。金色に輝くウルズの光が消え、その体が普通の状態に戻る。
スクード「くっ…だがこの程度の攻撃では私は…」
立ち上がるスクード。今の攻撃がまるで効いてなかったのだろうか。
ウルズ「いいや終わりだよ」
スクード「なんだ…体が…」
ボロボロ…
崩れ落ちていくスクードの体。
スクード「な、なんで!?再生しない!?」
ウルズ「シュウはお前たちの自己治癒能力の正体に気づいていたのさ。」
スクード「それはどういう…」
~~~
シュウ「彼らの自己治癒能力は無限ではないようです。」
トリスが再生に限界を迎え、死亡したのを知っていたシュウはそこからその正体を看破していた。
シュウ「おそらく彼らの自己治癒能力の正体は肉体の活性化です」
ウルズ「活性化?」
シュウ「えぇ。彼らは肉体の成長速度を速めることで傷の治りを早めているのでしょう」
ウルズ「早めるって言ったって…あんなに早くか?」
シュウ「そうです。尋常ではない速度で肉体の細胞を形成しなおしているのでしょう。未元獣のような出所不明のものを多々持つ彼らならありえない話ではありません」
~~~
ウルズ「そしてこの攻撃が効いたってことはそのシュウの仮説が証明されたってことだ」
スクード「いったいお前は何をしたんだ…」
ウルズ「お前たちの再生能力を突破する方法は限界まで細胞成長させきることだ。細胞が限界を迎えればお前たちの自己治癒能力も限界を迎える」
スクード「それが…」
ウルズ「シュウが俺の右腕の義肢に組み込みんだ一点昇華機構『建御雷(タケミカヅチ)』。これは相手に特殊な振動衝撃を与え、くらった相手の細胞を強制的に限界まで活性化させる機能を持つ」
建御雷(タケミカヅチ)を受けた相手は強制的に肉体が活性化させられる。スクードたちがこの攻撃を受ければ、細胞の強制的な再生能力が仇となり死ぬまで細胞が活性化し続けてしまうのだ。
スクード「バカな…」
ウルズ「己の力が仇になったな。」
スクードの体から黒い霧があふれだす。
スクード「くそぉぉ…」
黒い霧が噴き出し、肉体が崩壊し消滅するスクード。それと同時に部屋を覆っていた氷も消滅する。にろくも氷から解放された。
にろく「くっ…」
目を覚ますにろく。
ウルズ「なんとか終わったぜ」
にろく「さすがだなウルズ。だがNを倒さなければすべては終わらない」
ウルズ「そうだな。先を急ごう」
にろくとウルズはナルとツバメに合流するために先へと進んでいくのであった。
to be continued
最終更新:2016年12月31日 13:21