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コロの里 - (2008/06/20 (金) 01:41:15) の1つ前との変更点

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#ref() 「コロの里」 これはまだほねっこが男爵領になる前の話。 ある村に一匹の犬が居ました。名前はコロといいます。 この村には比較的犬が多い村でしたが、コロだけは別でした。 コロは目つきの鋭い黒犬で、村人の誰彼かまわず唸り、吼え、噛み付くのです。追いかければ逃げ出してしまい、里の人たちはコロのことを嫌っていました。 それでも最初は、コロと遊ぼうとしたり餌をあげようとしたのです。でも、コロはなつくどころか吼え、噛み付きました。いつしか、コロの側には誰も近寄らなくなったのでした。 そんなある日のことでした。 「腹、へってるのか?」 コロの目の前に、熊のような大男が現れます。 大男はコロを見下ろすかのようにたっていたかと思えば、がはははと笑いながらコロに手を差し出します。コロはいつものように吼え、男の手にかぷりと噛み付きました。しかし大男はそれを気にする様子もなく反対側の手でコロの頭や背中を撫で始めました。 今までの村人と違う反応に、コロは思わず頭を撫でていた手にガブリと噛み付きました。先程までの甘がみと違い、今度は先生の手から血が流れます。 しかしこの大男、そんなことを気にすることなくがはははと笑いながら反対側の手でコロを撫でたりします。 「そうか、そんなに腹が減っているのならウチに来るか?」 コロは、くぅんと少し甘えたような声を出して口を開けると、大男の後ろを歩き始めました。 この大男は最近、村に来たばかりの医者で皆から『くま先生』と呼ばれていました。熊と間違えそうな大柄な体格と、口の周りにはやした無精髭から皆がそう呼ぶようになったのです。 #ref() こうして、くま先生とコロは村の診療所で一緒に暮らすようになりました。 最初はくま先生に吼えたり噛み付いたり唸ったりと馴染む気配のないコロでしたが、くま先生はコロに対して怒りませんでした。ただ、診療所の患者さんに同じようなことをした時は怒りましたが、それ以外の時はくま先生はコロのやることを笑ってみていました。そうするうちに、コロは人間に噛み付いたりしなくなりました。 元々コロは賢い犬でした。ただ、本人も覚えていない小さい頃に何かによって人間を信じられなくなっていたのです。 くま先生との生活で、コロは昔の自分を取り戻したのです。 ある日。村に流行病が広がり始めました。 くま先生は昼も夜も無く、必死になって人々の治療に当たりました。その甲斐あって、村の人々は快方に向かい始めたのです。ただ、元々無医村だったこの村で、医者はくま先生1人。おまけに流行病に効く薬も底をつき始めました。 不運というものは重なるもので、疲労が溜まったくま先生が流行病に倒れてしまいます。幸いにも薬はほねっこ城市の医者の所まで行けば手に入りますが、ここ数日吹雪が続き村への出入りが出来ません。 困った村人達を横目に、病に倒れたくま先生の側にコロはいました。 「薬さえ……あれば……」 うなされるくま先生の言葉を聞いて、コロは村から飛び出しました。 外は猛吹雪、周りは森。向かい風で視界が全く利きません。少しでも気を許せばコロは容赦なく風に吹き飛ばされ、何度も木の幹にぶつけられました。いつもは通いなれた道も匂いが吹き飛ばされてしまい全く分かりません。それでもコロは己の勘だけを頼りに森の中を駆け抜けました。 平時であれば半日程度でつくはずの場所に、辿り着くには1日かかりました。 しかし、コロはそこで休む間もなく医者のところまで駆け抜けます。夜分遅くにコロの遠吠えに気づいた医者は驚きながらも、コロが持ってきたくま先生の処方箋を見てすぐに状況を察し、コロが持てるだけの薬を渡しました。医者はコロに休むように勧めましたが、コロはすぐさま引き返します。吹雪は行きよりも更に威力を増していました。既に寒さを通り越して痛みがコロを襲います。それでもコロは休むことなく駆け抜けました。 #ref() 翌日、診療所の前で倒れているコロが見つけたのは村人でした。 コロは急いで介抱され、コロの持ってきた薬は病床のくま先生の指示の元に分け与えられました。その甲斐あって、くま先生を始め村人達は快方に向かいました。 幸いにもコロは一命を取り留めましたが、怪我からくる感染が元で足が動かなくなっていました。くま先生はそれを知り、コロを抱きしめて大声で泣きました。 村人たちは命がけで村人達を救ったコロに感謝し、この村を『コロの里』にすることに決めました。それに異議を唱えるものは誰一人としておりませんでした。 その後、コロはくま先生と一緒に穏やかな一生をおくったそうです。 /*/ この里は、ほねっこ男爵領となった今でも『コロの里』と呼ばれています。 もしかしたら、誰かがコロのことを忘れないと願ったからかもしれません。 それは、今となっては誰も知らない昔話。

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