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WHEN THE MAN COMES ARROUND54-3 - (2008/02/15 (金) 23:47:55) の1つ前との変更点
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立場は完全に入れ替わってしまった。
不用意に拳を放てば先程のように迎撃される。
しかし、最早距離とタイミングを計り、時間を掛けて攻略という訳にもいかない。
滴り落ちる血時計は残り時間どころか、現在進行形で防人のパワーとスピードを徐々に
削ぎ落としていく。
(考えろ、考えるんだ……!)
アンデルセンの持つ獲物、構え、戦闘スタイル。
これらに現在の己の状況を加味すれば、やはり選択するべきは迫り来る銃剣を避けつつの
“カウンター”だ。
それも一撃必倒の威力を持ったもの。
だが、そう上手くいくのか。
アンデルセンはもうこのまま立っているだけでも勝利を奪えるのだ。
直接手を下さずとも、時間の経過が防人を殺してくれる。
しかし――
「失血死は待たんぞ。そんな優しい真似をこの私がするものか……」
――アンデルセンのこの一言で条件はすべて整った。
(さあ、来い……)
防人は使用不能の左手をブラリと垂らし、右手も若干ガードを下げて待ち構える。
ゆっくりと、実にゆっくりとアンデルセンが距離を詰める。
やがて、三白眼気味の両眼がカッと見開かれると同時に、アンデルセンは防人に向かって突進した。
その巨体からは想像も出来ない素早さで。
「シィイイイイイイイイイイ!!」
右の銃剣による刺突が、心の臓腑目掛けて空気を斬り裂き襲いかかる。
(ここだ!)
余力を振り絞り、身体を捻ると同時にステップワークを使い、辛うじて刺突をかいくぐりながら
左側へ回り込む。
そう、狙うはアンデルセンの左側面。
右手の銃剣を順手持ちに変えた事が、唯一の付け入る隙を防人に与えた。
逆手持ちの左の銃剣では、真左からの拳は身体構造の点からいって迎撃は不可能だからだ。
あとは顎の先端を渾身の力で打ち抜き、再生能力ですら制御出来ない脳の揺れを以って
アンデルセンを地に沈める。
「オオオオオオオオッ!」
全身全霊を込めた防人の右フックが弧を描く。完璧な形だ。
その時である。必勝を確信した防人は突然に――
(……!?)
――何を思ったのか、拳が目標に到達する遥か前に緊急停止しようとした。
のみならず、アンデルセンから無理矢理に遠ざかろうとする。
だが完全に攻撃動作に入ってしまった身体は停止させるだけでも並大抵ではない。
と言うよりも不可能だ。
自然、腕を泳がせ、身体を捻れさせ、足をもつれさせた、何とも無様な醜態を晒す事となった。
防人はフラつきながらアンデルセンの足元に尻餅を突く。
そのフラつきもバランスを崩した為のものだけではない事は、出血の止まらぬ手首の傷が
物語っていた。
それにしても何故、防人は千載一遇のチャンスを捨ててまで攻撃を止めたのか。
その答えはアンデルセンの左手にあった。
彼はいつの間にか左の銃剣を順手に持ち替えていたのである。
防人があのまま拳を打ち抜こうとしていれば、タイミングを合わせて銃剣を振るわれ、
今頃は床に転がる己の右手を見つめる事になっていただろう。
アンデルセンは防人の思考を読み取り、掌の上で踊らせていただけなのだ。
構えを変えたのはただの“餌”に過ぎなかったのだ。
「ククク……」
両の銃剣を下ろしたアンデルセンは防人を見下ろし、防人は霞み始めた眼でアンデルセンを見上げる。
未だ保たれているアンデルセンの笑みは、歓喜とは違う感情も多分に入り混じっていた。
「何だ、差し出してくれるのではなかったのか? 今度は右の拳を……」
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