千年原人(遊戯王OCG)

登録日:2024/05/06 Mon 21:47:27
更新日:2025/04/07 Mon 14:21:13
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《千年原人》とは、『遊戯王OCG』に存在するカードの1枚である。


【カード内容】

通常モンスター
星8/地属性/獣戦士族/攻2750/守2500
どんな時でも力で押し通す、千年アイテムを持つ原始人。


【概要】

見ての通り特殊な能力のない、単なる通常モンスターである。
しかし獣戦士族の通常モンスターの中では最高のレベル・攻撃力・守備力を持つ為、力で押し通すと豪語するだけのステータスは持っている。
だがその自慢の攻撃力も2750と、低くはないがかの有名な《青眼の白龍》をはじめ最上級バニラの上位陣には少し劣る*1
守備力も2500とこの手のカードにしては高目だが、やはり最上級モンスターとしては不安が残る数値。
レベル・種族・属性が同じだがリリース無しで召喚できる《神獣王バルバロス》の存在も痛い。
あちらは妥協召喚しても攻撃力1900と最低限はあり《スキルドレイン》等の効果無効化カードで本来の攻撃力3000になれる上、《愚鈍の斧》や《禁じられた聖杯》でさらに打点を上げられるので、わざわざバニラサポートを駆使して千年原人を召喚する意味が薄れてしまう。
守備力が高いので《野性解放》や《コンセントレイト》を使えば攻撃力5250とバルバロスの4200を大幅に上回るが、攻撃力4000以上で環境の主流となるモンスターは少ないのでトドメ以外では大きな優位点とはなりにくい。

英語名は「Sengenjin(千原人)」。nen(年)が抜けている…と言うより《千年の盾》や《千年ゴーレム》といった他の千年シリーズが素直に「Millennium」なのになぜ個性を出したのか。

しかしこのカードの魅力は3つ存在する。
まず1つがそのレア度の変動。
このカードの初出は「「遊戯王デュエルモンスターズII 闇界決闘記」 決闘者伝説 in TOKYO DOME 一次予選通過者特典」
つまり大会でそこそこ勝ち抜かなければ手に入らなかったのである
…というのは1年くらいの話。その後すぐに発売された「PREMIUM PACK 3」に他の大会参加者特典カードと共に一般販売されてしまい、一気にその価値は激減した。
しかし手に入りやすくなった為に、今度は逆に「手に入れやすい最上級モンスター」として重宝したデュエリストもおり、全くデュエルで使われなかったわけではない。

そして残りの2つがイラストとフレーバーテキスト
このモンスターのデザインは原作者の高橋和希先生である。
青肌で1つ目の巨人が物騒な武器を携えて練り歩いている姿は何処か威厳を感じさせる。
まず大きなツッコミ所が、「原人」(いわゆる原始人の一種)を名乗りながらあまりにも普通の人類からかけ離れてる点である。
本当にこんなモンスターがホモ・サピエンスに連なる存在なのであろうか、いくらなんでも疑問を抱かずにはいられない。

そんな原人のテキストは力押しが得意…というのは見てわかるが、なんと彼は原作の重要アイテムである千年アイテムを持つという
しかし当時と違い、今では原作で全ての千年アイテムの姿形が判明しているのだが、彼の持っている道具にそれらと合致するものはなく、「千年アイテムっぽいデザインのもの」すらない
そもそも、この原人はいつの時代の姿で、いつ千年アイテムを手にしたのかも疑問である。原始時代だと千年アイテムが存在するかすら疑わしいのだが……*2
また千年アイテム自体が持ち主の力と知恵、精神力を要求されるものである為、そう考えるとこの原人はこう見えてそれらを兼ね揃えている事となる。
ちなみに同じバニラには旧テキストでは千年アイテム扱いされていた《千年の盾》もあるが、さすがに無理があるためか後に修正*3された。
翻せば千年の盾はわざわざテキスト修正したのに原人は修正されなかったので、両者には差があると判断されたことがわかる。
「見えないところに隠し持ってるのかもしれないし、矛盾ではない」ということだろうか……

…とはいえ結局のところは原作最初期の時期に出たカードであり設定の統合性があったとは考えにくい。
千年アイテム云々も大会参加者用のカードの為に泊付けされたものだと推測される。
インパクトのある外見とテキストを持ちながらも結局は単なるバニラモンスター。
将来「地属性」「獣戦士族」のデッキが流行れば《原石竜インペリアル・ドラゴン》デッキの候補に使えるかも知れないが、2024年の現状では「もしも」の話でしか無い。
環境に顔を出すこともほぼなく、「PREMIUM PACK 3」以降はなかなか再録もされなかった為に、デュエリストの記憶の片隅で彼は眠り続けていた……。



しかし…。


《千年の眠りから覚めし原人》


2024年、原人は眠りから突如目を覚ました。
以下の効果を携えて…

効果モンスター
星8/地属性/獣戦士族/攻2750/守2500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札に存在する場合に発動できる。
このカードを永続魔法カード扱いで自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。
(2):このカードが永続魔法カード扱いの場合、
2000LPを払うか手札の「千年の十字」1枚を相手に見せて発動できる。
このカードを特殊召喚する。
その後、デッキから「千年」モンスターか「ミレニアム」モンスター1体を手札に加える事ができる。
(3):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、モンスターの効果では破壊されない。


「INFINITE FORBIDDEN」で新たにカテゴリ化された「千年」モンスターの1体として、原人は復活した。
レアリティはスーパーレア。
新しいその姿は《千年の盾》を振りかざす脈動感あふれるポーズであり、新たに与えられた名前は《千年の眠りから覚めし原人》。

と、ここまでなら最近コナミがハマっている「昔のバニラモンスターのリメイク」で収まるのだが、特筆すべきはその効果。
まず(1)の効果は「このカードを永続魔法カード扱いで自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く」というもの。
これは一見するとなんのこっちゃかと思うが、これは(2)に繋げる効果といえる。
一応【スネークアイ】等ではこの効果が役立つ…かもしれない。

その(2)の効果は、2000LPを払う手札の《千年の十字》1枚を相手に見せて特殊召喚するというもの。
要するに無関係なデッキでも軽いデメリットでレベル8の攻撃力2750がポンと出せるのだ。勿論【千年】デッキでは実質ノーコストで出せる。
ただしそれだけなら他の「千年」モンスターでも可能であるが、彼の真髄はここから。
なんと更に「千年」「ミレニアム」モンスターのサーチまでおまけでついてくる…。しかも該当モンスターであれば誰でもいい。
要するに《千年の眠りから覚めし原人》から《千年の眠りから覚めし原人》をサーチすることも可能なのである
ちなみに一応バニラである《千年の盾》《千年ゴーレム》《千年原人》もサーチできる。もしかしたら【原石】に使えるかも?
また(3)の効果破壊耐性も地味に厄介と言える。持っている千年の盾で攻撃を防いでいるのだろうか。
単なるバニラなら不安が残ると言った守備力2500も出しやすいモンスターであるなら地味なアピールポイントと言える。

特殊召喚とサーチ効果で【千年ミレニアム】の潤滑油とも言えるモンスターであり、他の「千年」モンスターも同等の特殊召喚手段を持っているため、彼がいるだけであれよあれよと展開が進んでいく。


それらを《千年の十字》があればほぼノーコストで可能だが、無くてもLPを犠牲に行えるというのは強みと言えよう。


…だが、実際のところ彼は出張要員としての出番の方が多い。
というのも特殊召喚に必要なコストとしてLP2000を払うだけなら無関係なデッキでも全く問題なくできるわけである。
特にレベル8モンスターが喉から手が出るほど欲しい【センチュリオン】や【白き森】では大活躍。
奇しくも2つとも女性型モンスター達が主体のデッキなので「少女達を守る心優しき原人」「オデ君」などと呼ばれて重宝されている。
逆にライフコストを逆手に取って《サイコ・エンド・パニッシャー》をフル活用する選択肢も考えられる。
同名カードだけでサーチ効果が機能する点も出張に最適であり、その動きはかの《クシャトリラ・フェンリル》を思い出させると話題。ここから更に除去・制圧してくる向こうがどれほど違法だったかを再認識するデュエリストも多い。
他の「千年」モンスターも同じ特殊召喚効果を持つため、《千年の眠りから覚めし原人》3体+他の「千年」効果モンスター1体ずつ+《千年の十字》1枚というお手軽出張セットとしての派遣も可能である。

とはいえライフアドバンテージが軽視されやすい遊戯王に置いてもやはり2000のライフコストは大きい。
また《千年の眠りから覚めし原人》本人のスペックは上々とはいえその本質は展開のためのコストの為に《儚無みずき》や《墓穴ホール》、【トリックスター】等のついでみたいにバーンダメージを与えるカードやデッキは天敵である。
どんな時でも力で押し通すとはいうが、やはり強すぎる力は代償が伴うものなのだ。


こうしてかつてのネタ枠バニラモンスターはリメイクによって一気に環境入りし、デュエリスト達の記憶に刻まれることとなった。
まさしく長年眠っていた彼が力を取り戻した瞬間と言えるだろう。

ちなみにリメイク前の千年原人は先述の通り英語版では《千年の盾》や《千年ゴーレム》とは異なり名前に「Millennium」がなく千年/ミレニアムサポートを受けられなくなってしまっている。そのためリメイクに際してエラッタが行われ、英語版では「このカードは『ミレニアム』カードとして扱う」というテキストが追加された。


【ゲーム作品での千年原人】

ゲーム作品での初登場となる作品はゲームボーイ遊戯王デュエルモンスターズ2』。
今作でのこのカードは通常召喚できるカードではなく、何と《千年原人の復活》という専用の儀式カードを用いて召喚する事になる。所謂「儀式モンスター」という扱いであった。召喚魔族は森魔族。
ちなみに、召喚条件は《タイガー・アックス》《サイクロプス》《千年ゴーレム》の三体を生け贄に捧げる事。
だが、守備力が高く壁として使える《千年ゴーレム》はまだしも、残りの二体はステータスが低い事から、
当時の儀式召喚モンスターの例によって、ぶっちゃけ「ロマンカード」である。

その後GBC専用ソフトとして発売された『遊戯王デュエルモンスターズ3』では儀式召喚に必要なモンスターは《サイクロプス》と適当な2体に変更された事により儀式召喚自体は楽になった。召喚魔族は神魔族。
しかし、同作での儀式召喚モンスターは全てが通常アドバンス召喚可能な事から、ぶっちゃけ儀式を使わない方が運用が楽という本末転倒な結果に。
その様な事からか、その次回作の『遊戯王デュエルモンスターズ4』では儀式モンスターの通常召喚が廃止された何なら儀式モンスターのカード自体がデッキに投入出来ない事実上のコレクションカードと化した。ここでようやく普通に儀式モンスターとして扱える様になった。
なお、『DM4』での《サイクロプス》は原作での使い手が使い手だけに海馬デッキで使えるカードなのだが、同作の下級モンスターとしては及第点レベルなステータスに加えて、召喚魔族が悪魔魔族という事から《闇・エネルギー》などのサポートカードもそれなりに存在。この事から、比較的扱いやすい儀式モンスターの一体として活躍させる事が出来たりする。
真DM2』では『岩石族と戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力・守備力が900ポイント強化される効果』を得たが、指定生け贄が「《千年ゴーレム》+獣戦士族2体」と重くなっている。

ちなみに、このカードは使い手となるCPUの決闘者にも特筆すべき点が存在する。
というのも、このカードは『DM3』及び『DM5』にてシャーディーが自身のデッキの切り札モンスターとして使用する。
『DM8』でも裏ボスの戦力としては力不足と言っていいにもかかわらず投入している辺り、相当愛着があるようだ。
原作やアニメにおける彼といったら、千年アイテムの守護者として遊戯やペガサスに試練を与える事が知られているが、カードの内容だけにマッチした人選と言わざるを得ないだろう。
そういえば、上述の通り、このカードは後に【千年】カテゴリに位置付けられる様になったのだが、ひょっとしたら現在のゲーム作品などで彼が登場した場合、【千年】デッキの使い手の決闘者として登場するのかも知れない…

またゲーム作品はOCG以上に原作が深く絡む為かDM8から「千年もの眠りから目覚めた原人。どんなことでも力で押し通そうとする」と、フレーバーテキストが後のリメイクと近しいものに変更されている。力押しなのはずっと変わらないが。

遊戯王マスターデュエル』では《千年の眠りから覚めし原人》が堂々のURとして登場。
【千年】でレアリティがURなのはこいつと切り札の《幻の召喚神エクゾディア》だけなので非常に組みやすいデッキといえる。
ちなみに通常の《千年原人》はRである。

【余談】

「INFINITE FORBIDDEN」が発売した当日は【千年ミレニアム】自体の評価が低く、更に彼はよりによって千年原人だったせいか過小評価…ぶっちゃけハズレア扱いされており、カードショップなどでも2桁取引が当たり前であった。
だがその高い出張性能がすぐに判明し、《手のひら返し》一気に評価がひっくり返り、翌日には汎用カードレベルの値段で取引される事となった。
…むしろその初動が無ければもっと高値になっていた可能性もあるのが恐ろしいところである。
同じパックにはこれまた召喚権を使わずに特殊召喚できるレベル6《魔を刻むデモンスミス》がいることも相対的に評価を下げる要因となっている。やはりLP2000は重い。
今では値段もそこそこ落ち着いているが、遊戯王カードの市場価値にて「イラスト」「性能」「汎用性」がどれだけ影響されるかという好例となった。


彼の元々の名前の「千年原人」というのは「千年アイテムを持つ原人」という意味合いで主に認識されていたのだが、今回のリメイク(厳密には上記のゲームDM8)において千年アイテムではなく彼本人が眠っていたという事に意味が変わっている。
しかし千年眠ってたところで、目覚めたのが現代なら中世からタイムスリップしてきた程度である。単純計算で千年アイテムの持ち主である古代エジプト人が滅び去ってから十世紀近く経った後である。
一方「原人」というのは定義的に約100万~200万年前ぐらいの存在なので最早千年など誤差の域
つまり「千年の眠りから覚めた」ことは「原人」であることの説明になってはおらず、眠る前も原人として闊歩していたはずである。千年前まで何してたんだよコイツ。
そろそろ「現実の尺度当てはめるのが間違いなのでは?」って思うかもしれないが、『遊☆戯☆王』が現実の人類史ありきの世界設定なのだから、その世界特有の物品である千年アイテムを持つ彼もまた地球上の存在でなければ筋が通らない。
仮に200万年前から生きているとすれば彼にとって千年寝るのは昼寝ぐらいの感覚なのかもしれない。


また、イラストで持っている《千年の盾》に加えて、同じく初期から登場している《千年ゴーレム》も現在では千年アイテムではないことになってしまっている以上、何の千年アイテムを所持しているかが結局不明ということになる。
装い新たに登場したが、結果的に謎が増えたと言えるだろうか。

なお、《千年の眠りから覚めし原人》は《千年の盾》を装備したにもかかわらず、元の《千年原人》からステータスが変わっていない。
その盾を振りかざすようなイラストを見るに、まさかとは思うが彼は《千年の盾》を数ある攻撃用の武器の一つとして運用してるのだろうか……。

その見た目のせいで二次創作では(上でもネタにしているように)勝手に一人称「オデ」にされることがしばしばだが、
現実世界の原人は現生人類との差異から言語は扱えなかったと考えられているため、「オデキャラに貶められている」のではなく「言語を解せるようにされている」というポジティブな改変と言えるかもしれない。
いやまあ生物としての違いを根拠にするといよいよ千年原人に現実のそれを当てはめるのは無理が出てくるのだが



追記修正は千年間の眠りから覚めるか、LPを2000払ってからお願いします。


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  • 高橋和希
最終更新:2025年04月07日 14:21

*1 今や2900以上すら多数存在する

*2 ただし、千年アイテムは作中の古代時点で「古より伝わる方法で作られた」ものであるため、疑わしいだけで「遥か昔に同じ方法で作られた別の千年アイテム」が存在する可能性は否定しづらい。

*3 「千年アイテムの一つ(初版)」→「次期千年アイテム候補の一つ(真DM等)」→「古代エジプト王家より伝わるといわれている伝説の盾(現在)」