「Shall we die(ガモンさま)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
Shall we die(ガモンさま) - (2009/09/02 (水) 23:29:03) のソース
とある小さな村、その日は夏も盛りの頃で村の子供達も昆虫採集に出かけ、男達は畑を耕す。 この村の少年、三つの眼を持つ天津飯もそのような穏やかな村でのびのびと育っていた。 彼は、半年前に山の災害で父を亡くしていたが、寂しさを表に出さず、健気に生きる彼の姿を見て、 彼の母は少し涙を流す。 「よし、炒飯!行くぞー。」 天津飯はもうすぐ九歳になる弟と一緒に近所の畑に向かう。 「おー、ボウズども、ありがとな!」 父が亡くなってからは病弱の母を支える為、何かと世話になっているお隣の農家で働いている。 「しかし、天ちゃんもエライねえ。本当なら、遊びたい盛りだろうに。」 天津飯は今十七歳。本来ならば教育を受けて友達と遊ぶ年頃だが、家庭が家庭なのでそうもいかない。 炒飯もそんな兄を手伝いたくて自分から農家に志願した。 その日の仕事も終わり、採れたての胡瓜を貰って帰路に着こうとする。 「天ちゃん炒ちゃん。君達とお母さん、家に来てくれてもいいんだよ?」 農家のおばさんが天津飯を呼びとめる。 「いや、いいですよ、こっちとしては雇ってくれるだけで充分なんで。」 と、笑って答える。 「お兄ちゃん早く帰ろうよう。」 「そうだな、母さん待たせちゃうからな。」 二人で笑いながら家に帰っていく。 「う~ん、あたし達は別に迷惑じゃないんだけどねえ。」 「あの年でそういう気配りしちゃうんだろ。もっと子供らしく生きていて欲しいけどなあ。ん?雨か…」 夕方に鴉があちこちを飛びながら、カァッと悲しく泣き続ける。 まるで、この村の行く末を見届けたかのように。 翌日、村はいつもと違い騒がしい音に包まれていた。 「まあ、こんな村に軍隊さんが、何の用かの?」 村長が軍隊の頭らしき男と話している。 「単刀直入に言うわ。レッド総帥は今ドラゴンボールを見つけるために世界中を虱潰しに捜しているのよ。 この村にもドラゴンボールがあるかもしれないから、少し捜索させてもらうわ。」 レッドリボン軍のバイオレット大佐が村の各地に戦車を動かし始める。 「死ぬ気で捜しなさい。村を破壊してでもね。見つからなければ他を捜しましょう。」 レッドリボン軍は村中の土地を壊し、村人の家まで破壊してドラゴンボールを捜す。 「や、やめてくだされぇ!!!」 村民達が兵隊の凶行を止めようと近づくが意味を持たない。 「ふふふふ、私達の邪魔をしようなんて、命知らずなものね。」 バイオレットが村長の首根っこを掴む。 「見せしめになってくれるわよね。」 バイオレットのナイフが村長の頸動脈を的確に貫く。即死だった。 天津飯と炒飯は間近で見てしまい、ショックで倒れた。 「天ちゃん!!」 農家の夫婦が急いで二人を救出する。 レッドリボン軍が村に来て五時間、村は全壊していた。 「な、なんて事だ。こんなことになるなんて……」 女、子供を森の方に隠し、男達が鍬や鎌を持ち、軍隊に突っ込んでいく。 「俺達の村なんだ。俺達が戦うんだ!!!」 しかし、小さな村の人民の小さな武力で世界最強の軍隊に敵うはずもなかった。 三十分もしないうちに男達は皆殺し。軍隊はさらに山を調べ始める。 「この山にいる人間も捜索の邪魔になりそうだから、殺しちゃいましょう。」 軍隊はドラゴンボールを捜すと同時に道を阻んでいる子供達を殺す。 「天津飯、炒飯、逃げなさい!!」 「いやだ!!俺達だって戦うんだ!!!」 母が二人を逃がそうとする。しかし炒飯がそれを拒む。そこへ、バイオレットが近づく。 「あら、近くの街に逃げ込まれて、報復でもされたら拙いわね。念のために…」 「逃げて!!!」 母親の言葉に押され、天津飯が炒飯を連れて逃げだす。 そこへ、レッドリボン軍の戦闘機が空中から爆撃を開始した。 爆発で森は焼かれ、爆風によって天津飯と炒飯は離れ離れになった。 天津飯は、既に焼きつくされた村で目覚めた。周りには、死体、死体、死体。 農家の男や村長が見るも無残な姿になり果てている。 天津飯の眼から涙がこぼれ落ちる。 森に入ると、昨日まで元気に遊んでいた子供達、昔話を聞かせてくれた女性が、死んでいた。 しかし、それ以上に愕然としたのは、母と、弟の死だった。 「う、嘘だ……これ、ドッキリだろ…どこかで、カメラが回ってるんだろ。」 天津飯が自分の頬を力一杯に抓りながら必死で叫ぶ。 「なあ、返事をしろよ!!騙されないよ。あの軍隊だって金で雇った……劇団とか……」 頭では分かっている。しかし、本能がそれを認めない。 「起きてよーーーー!!!!!!!!」 体中の水分が根こそぎ無くなるような大粒の涙。天津飯の中にはもう、絶望しかない。 村に戻った頃には豪雨になっていた。 天津飯は半壊した聖堂の中に入る。経典等は殆ど焼失し、残っていたものは、焼け焦げた漆黒の天使だけ。 まるでその姿は地に堕ちた天使、ルシフェルの様であった。 「主よ、我に復讐を果たす力を、奴等を殺す力を与えたまえ。」 血の涙を流し、天津飯は懇願する。すると神の導きか、聖堂に二人の男が入ってくる。 「ふふふ、中々よい、復讐心に満ちておるな。」 この男こそ、鶴仙流の始祖、鶴仙人だった。 それから一年、レッドリボン軍はドラゴンレーダーを開発し、一気にドラゴンボール捜索を始めるが、 一人の少年によってレッドリボン軍は潰れる。 そのレッドリボン軍で唯一生き残ったバイオレットは、軍を抜け、北の国へ向かった時に三つ目の男に出会う。 「ふ、一年前の……」 バイオレットが銃を出すより先に三つ目の男が指を突き付ける。 「Shall we die。」 三つ目の男、天津飯はどどん波を放ち、脳天を撃ち抜いた。 そして、その様子を見ていた白い肌の子供の様な男が天津飯に近づく。 「僕を、僕を強くして!!」 天津飯は男の瞳を見る。 『コイツも、憎しみのうちに生まれた者、か。』 今、彼等は鶴仙人、白桃桃のような最強の殺し屋になるために日夜、修業に励む。 三年後、彼等の生き方を変える男が、現れるまで。