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「演劇をしよう!!」(中編) (4) - (2012/09/16 (日) 19:24:45) のソース
私の名前はクライマックス=アーマード! 社会的には秋戸西菜で通してます(コレ本名!) 今日は銀成学園演劇部のみなさんにこの上なく宣戦布告です! 宣戦布告っていっても別にガチでケンカ売る訳じゃあ ないですよ! お互いベストを尽くしましょうみたいなこの上なく無難かつ爽やかな宣言しました! だってだってこの上なく オトナですからね私。『学生さんごときがプロの私たちに勝てるとでも』みたいなー、マンガでよくいるかませ臭ばりばりな 挑戦つきつける訳ないじゃないですかこの上なくっ! てかアレですよね、劇で対決とかこの上なく珍しいですよね。という か普通ないような。ま! よく分かりませんけどパピヨンさんが提案して盟主様とかブレイクさんが乗れっていうならやるだ けですよこの上なく! ……ぬぇぬぇぬぇっ!(笑い声)、これでも私は元声優、演技畑だから演劇経験とーぜんアリです。 ああっ、なっつかっしー! むかしよくやりましたよ演劇! 楽しいですよね演劇! 劇団はブレイクさんの借りました。みんなこの上なく一般人です。実はホムンクルスで発表中銀成学園の生徒さんたち襲う とかゆーオチはないですよぉこの上なく! けほん! こーれーまーでーのー! あ~らすじ~!! 早坂秋水さんはかつて刺してしまった恩人・武藤カズキさんの妹まひろさんとひょんなコトから関わるようになり絆を深め ていきました! この上なくっ! 一方そのころ銀成市にあらわれた音楽隊ことザ・ブレーメンタウンミュージシャンズと戦士 さんたちとの間に戦いが勃発! さまざまな思惑が交差するなか秋水さんは音楽隊リーダー・総角主税をどうにか打破した のですがこの上なくまだ終わってはいなかったのです! 新たな敵、レティクルエレメンツ! 音楽隊が生まれる元凶となった悪の集団……まーつまりはこの上なく私たちのコト なんですけど、そのレティクルとの戦いがもーすぐ始まる訳です! 戦闘開始は救出作戦から。私たちがこの上なく誘拐した坂口照星さんの救出から最後の決戦が幕をあけるのですが、 まるでその期限に合わせるよーにもう1つのプロジェクトが進行中なのですよこの上なく! 演劇! パピヨンさんが主宰するコトになった演劇部! その健全化ならびに武藤まひろさんのパピヨンコス着用を防ぐ ため手を組んだ秋水さんと斗貴子さん! さらにヴィクトリアちゃんとパピヨンさんとのドキドキワクワクな急接近とか白い 核鉄製造着手とか戦団に勾留されてた音楽隊の復帰とかいろんな流れが交錯するなか演劇! 迫ってます! ちなみに悪の組織たる私たちが演劇を見過ごしてるのには理由がありますっ!! マレフィックアース! 私たちはメチャ強な存在召喚してこの上なく幸せになりたいんですけどソレには器がいるのです! ちなみにマレフィックアースとはかつてウィルさんがこの上なく未来で逢った『最強の存在』……そー言われてます! 肉体があった頃の名前は勢号始。またはライザウィン=ゼーッ! 電波兵器Zの武装錬金を使う天下無双の頤使者 (ゴーレム)にして光より早い『古い真空』! 歴史を変えうる力をウィルさんに与えた……黒幕! 古来より存在する、人間の闘争本能の本流の中から生まれい出た最初であり最後でもあるマレフィック!! どれほど強いのか? えーとですね。羸砲ヌヌ行って改変者さんいるじゃないですか。あの人の武装錬金はスマート ガンなんですけどー、実体はティプラーマシン(タイムマシンの一種)で、スペースコロニーが豆粒に見えるぐらい大きな 中性子の銃身が毎秒10万キロメートルぐらいで回転してるんですよ。しかもその周囲には常時3億個のブラックホール が展開しててー、万物が持つ光円錐すべての情報のゆらぎをガッチリきゃっちしてるらしいです。だからヌヌさん自由自在 に歴史ロードして改変なかったコトにできるんですけど──… ライザさんはそのヌヌさんを下したのです。 そしておもいどおりの歴史改変を……。 ……ぬぇぬぇぬぇ。 戦士さんたちはまだ知らないでしょう。 いまこの時代が「本来あるべき」歴史からこの上なくこの上なく外れているのを!! 例えば音楽隊は正史にいなかった存在です! 武藤ソウヤさんがタイムスリップして真・蝶・成体を斃したせーで生まれた 新たな未来! 300年先にいたウィルさんがこの上なく歴史を変えたばかりに生まれたものこそ! この時代!! ぬぇぬぇぬぇ。 早坂秋水さん、あなたは開いた世界を1人で歩けるよ~になりたいとこの上なく願ってるよーですが! もし真実を知ったらどーするつもりですか!? 自分の歩いていくべき”世界”、それが多くの人によって書き換えられたものだとすれば……。 本来の歴史とはまったく違う【偽物】とすれば──… そこに下してきた、或いは下していく決断もまたこの上なく偽りに満ちたものとなるのです!! ヒドい事実ですが私はまだ伏せますよぉ。オトナですから~、盟主様たちの命令があるまで口つぐみます。 告げるとすれば最悪のタイミング……肉体を刻まれ精神をすり潰され霊魂さえ尽きかけた最期の時! 普通なら譲れない何かを杖にいま一度立ち上がるべき局面において……告げる!! 盟主様を斃せるのは秋水さんか総角さん……ですからね! ココロ砕く準備はしておかなければなりません!! そして何事もないように、気のいい、劇団のお姉さんとして振舞うだけですっ!! ヌヌさんですか? 照星さん誘拐したときに武装錬金が大破。ソウヤくんともども時空の渦に呑まれ姿を消しましたが? 「アレが対戦相手か」 「あの劇団……いろんな公演で見たカオがチラホラ。全員プロかも」 六枡は冷めた目でステージを見た。年齢も性別もバラバラな集団が袖めがけ捌ける。 練習していると秋戸西菜──クライマックス。戦士たちは知らないが敵対組織の幹部──が乗り込んできてまくし立てた。 小札が思わずライバル出現かと目をむくほどの勢いだった。 「元声優で元教師……変わった経歴だな」 戦う旨を告げると彼女はぴょこぴょこパピヨンに歩み寄り勢いよく手を出した。 応じる蝶人ではない。華麗によけると低く鼻を鳴らしどこかへ消えた。 「うぅ!? ……~~~~うぅぅうぅううううううう~~~~~~~っ! う゛ーっ、う゛ーっ!!」 途端に年甲斐もなく泣きだした秋戸西菜は手近な生徒に手を差し出すが掴まれずに終わる。「だって鼻水でカオぐしゃ ぐしゃだったし」「なんか引いた」「美人だけどないわー」とは部員たちの弁、結局おとなしい若宮千里が半ば無理やり手を 握られた。「貧乏くじね」とはヴィクトリア曰く。 「あ!! ライバルな癖にいやに好意的だとか思いましたね!! そーですよねそーですよね!! フツー対戦相手って いったらなんかもう初対面からイヤミ全開で一方的に突っかかってくるものじゃないですかこの上なく!! ぬぇぬぇぬぇ! でも私は違いますよ!! 劇で対戦とかヘンな話ですけど、でもたまには競い合うのも必要ですっ!! 勝ち負けは重要 じゃないです!! 正々堂々っ、お互い力の限りを尽くしてこそ気持ちのいい劇ができますし何よりお客さんも喜ぶッ! そーいう意味じゃマンガとかでよくいるイヤミな対戦相手はナシですナシ、この上なーーーーーく! ナシっ!」 青ざめ引き攣る千里を誤解したのか。秋戸西菜は満面の笑みで手を振った。握られている千里はいい迷惑、細腕が折 れるのではないかと心配したのはヴィクトリア、幼い瞳を鋭く鋭く尖らせた。 「で、なんであの人さっきから早坂秋水と総角を見てるんだ? ただ見てるというかその、熱烈というか」 「斗貴子氏。世の中には知らない方がいいコトもある」 六枡は概ね理解しているらしい。 (いましたいました元・月の幹部フル=フォースさん! やっぱこの上なく盟主様そっくりです! ぬぇぬぇぬぇ。何やら大道具 を秋水さんに自慢しているようですが私としてはその、ぐふふ、自前の大道具を見せつけて欲しかったり──うきゃあああ! なに考えてるですかなに考えてるんですかこの上なく下ネタ自重ですよ私ーーーーーっ! ダメですダメです公共の場所で そんないやらしい想像……あ! この組み合わせだと終盤秋水さん逆転する方が萌え萌えなんじゃ……で、で、舌をあんな トコに這わ……………………きゃあーーー! いやーっ!! 恥ずかしーーーーーーーーーーっ!!) 秋戸西菜の表情はめまぐるしく変わる。ヨダレを垂らしたかと思えば真意不明の照れ笑いを浮かべ、すぐさまキリっとし 更に頬を染め両手をあてて首を振る。 (でも無銘くんと秋水さんもアリ! なにかと突っかかってくショタとか最高ですっ!! 貴信さんは……顔的にないです!) (ちなみに) (敵幹部であるところの私とリヴォルハインさんがフッツーに戦士さんとか音楽隊の目の前に姿あらわしているのは) (純粋に顔バレしてないから、ですっ! 今日が初対面! 鐶さんは一時期レティクルにいましたけどー、なかなか逢う機会 がなくて……) 一方早坂秋水は辟易していた。 「なぜだなぜだなぜなのであるか! 秋ぽんはまっぴーが好きなのであろ! なぜに告白せんのである!!」 原因は貴族服の男……リヴォルハインである。首にドクロのタトゥーを入れた冷たい感じの美丈夫、というのが秋水の第一 印象だったがいざ口を聞けば印象の崩れるコト崩れるコト。当初こそ黄色い歓声をあげていた女子たちの熱は4秒で冷めた。 それだけなら、彼女らがクモの子を散らすように撒き散っただけなら良かったのだが、なぜか秋水に付きまといはじめている リヴォルハインだ。学園の貴公子は欝蒼と目を細め巨体を見上げた。相手の双眸は美しく、山の端にかかる月をみるような 心持だ。 「どこで聞いたのか知らないが」 「ビッキーに聞いたビッキーに! あ!! あーーっ! ビッキーはピューマみたいな顔してるので三種混合ワクチン打って いいですか秋ぽん!」 諸事この調子である。会話というのがまるで成り立たない。先ほど総角の自慢話を聞かされた時とはベクトルを異にする 頭痛が込み上げやるせない秋水はかろうじて 「俺と武藤さんの関係はそんなものではない」 とだけ言った。それはもっとも正しく現状を表している言葉だった。 (……………………) ──「私! 秋水先輩のコトが好きかも知れなくて!!」 ──「でもソレが言い出せなくて思わず逃げちゃってたのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 告白じみた告白こそ受けているが当のまひろ自身ココロの整理がつきかねている状況だ。 たんに少女が兄の面影を求めているだけの適応機制かも知れない。 そもそも秋水の心がまひろに引き寄せられたのは、やはりかつて姉……桜花を失う痛みを味わったればこそだ。 そこにカズキに対する罪悪感や贖罪意識が交じった結果、音楽隊との戦いの中さまざまな交流が生まれ、絆が芽生えた。 世間一般で言う恋愛感情とはまったく原点からして違うのだ。 「けど秋ぽん自身の実感というのはどうなのであるか?」 リヴォルハインという男の精神はとても幼い……雪崩れ込むように下がる筋肉質な上半身をみながらそんなどうでもいい コトを秋水は思った。2mを超える──かつて激戦を繰り広げた鳩尾無銘の兵馬俑よりも大きい──体躯をまったく持て 余しているようだ。ともすれば威圧もできように……毒気のなさにわずかだが警戒が薄れた。 「及公(だいこう)思われるにともに居てお胸がキュンキュンするのであればそれはもうすなわち好きというコトなのでは なかろーかである!」 目が泳ぐ。まひろの告白前覚えた束の間の安らぎ。まひろという存在を眺めている時の幸福感。桜花と2人でいる時に 似た、されど深奥に激しい情熱を秘めた好ましさ。 やや痛み気味の栗髪。大きく澄んだ瞳。長い睫毛に太い眉。血色のいい頬もツルリと丸い頭頂部。 何もかもずっとずっと眺めていたい。そんな心情に駆られたのは事実だ。 ”仲間意識だ” 爽やかでまっすぐなまひろへの感情が脳裏をよぎるたび秋水は強くそう言い聞かせる。剣客だから心の流れに無理と力 みが生じているのは重々承知だが、『せざるを得ない』。 「あまりマジメに考えすぎず1つ素直になってみるのも手である」 リヴォルハインはそういう。世間一般の意見もそうだろう。 だが。 もしやりたいように振る舞えばどうなるか? まひろはいま傷ついている。弱っている。当人でさえ整理のつかぬ揺らぎにつけ込み自らの意思を通そうなど──… (同じだ。変わらない。武藤を背後から刺したあの時と) 贖罪はまだ終わっていないのだ。武藤カズキに直接謝罪しない限りは。 それに──… 「俺の父親は妻子ある身で別の女性と関係を持った」 「フム?」 秋水自身この独白が不思議でしょうがなかった。初対面である筈のリヴォルハインという男に、自らの深い部分をつい 打ち明けてしまった心情は冷静に考えればまったく不可解だった。にも関わらず彼は当り前のように内心を吐露してしま う。巨体に見合わぬ毒気のなさに気を許した……では片付けられない何かがそこにあった。 「結果俺と姉さんは両親と離れ離れになった。例えあらゆる問題がなかったとしても」 踏み出せないだろう。二の轍を踏むコトを恐れている……とだけいいこの論議を打ち切った。 「戦士長? 剛太の姿が見えませんが」 「買い物にでもいったのだろう。コレから忙しくなるからな」 ゴプ。 口から溢れる血を慣れた手つきで拭いさる。鷲尾が心配そうにすりよってきたが手で制す。 「いつものコトさ。人間だった頃とは違う」 漆黒の笑みを仮面の下に張り付けながらパピヨンは地下にいた。 白い核鉄の進捗率はこの日78%を超えた。 総てが順調。演劇部も円熟しつつある。 吐血などまったく問題にならない…………しかし悪寒は徐々に広がりを見せ──… 「まずは計画の第一段階成功ですねリヴォルハインさん!」 「ウム! 及公が一部、最近型ホムンクルスはすでに」 「パピヨンたちを初めとする演劇部全員に感染した!」 「防げたのはシルバースキンを着ていたブラボーさんだけですこの上なく」 「もっとも少し潜りこんだぐらいであるし、そもそも殺傷能力のない菌使っているから基本無害である!」 「ただし演算はこの上なくやります! そのぶん体力も使います!!」 『もともと極度に免疫力が低下している』人以外は無害なリヴォルハイン その効能が誰にどう及ぶかはさておき──… 「マレフィックアース!! その器にこの上なくなるべき人を炙りだすには演劇以外ありえないのですっ!」 「銀成学園に伝わる伝承。そして及公がご能力! 2つが合わさってこそ追及可能である!!」 「弱ったぞ。どーすりゃいいんだ」 体育館から200mほど離れた校舎裏。そこにさびしく佇む倉庫の中で。 中村剛太は頭を抱えていた。 「手、手を離したらいかんじゃん……。あたし、あたしっ! 暗いところとかホント苦手で、苦手でっ!」 腰にしがみついているのは栴檀香美。シャギーの入ったセミロングの髪をぶるぶる震わせている。気だるくも艶やかな アーモンド型の瞳からは大粒の涙がひっきりなしに溢れている。言葉を発するたび語尾が震えるのはしゃくりあげている せいだろう。 倉庫に唯一あるランプが使えぬのは確認済み。天井からぶら下がる古めかしい白熱電球はどうしたコトか何度スイッ チをひねろうと発光しない。1つだけの窓は……台風対策がそのまま残っているのだろうか。外から厚い板が打ちつけられ ている。光の入る余地はない。 よって4畳ほどしかない倉庫は目下暗黒の闇に包まれている。 (なんでネコの癖に暗い場所が苦手なんだよ!!) 空間よりも暗澹とした思いで剛太は香美を見る。諸事情により貴信は気絶中。 よって密室に2人きり。岡倉ならば大いに鼻の下をのばすシチュも 「なんで斗貴子先輩とじゃないんだ!」 不満極まりものでしかなかった。 発端は10分前。クライマックス(秋戸西菜)の挨拶が終わった少し後──…