SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ内検索 / 「「演劇をしよう!! (前編)」 (12-1)」で検索した結果
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永遠の扉 第090話 ~ 第099話
... 第095話 「演劇をしよう!! (前編)」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12-1) (12-2) (13-1) (13-2) (14) (15) (16-1)(16-2) (17) (18) (19) (20) (21) (22) 第096話 「演劇をしよう!!」(中編) (1) (2) (3) (4) (5) (6) 第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) 第098話 (1) (2) (3) (4-1) (4-2) (4-3) (4-4) (4-5) (4-6) 番外編 「毒島華花、音楽隊を引率する」 登場人物一覧 偽キャラクターファイル(※ 一... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (12-1)
あー、コイツもヘンな奴だ。しかも弱そう。冷めた目の金髪ピアスに構わず女性はひたすら一生懸命まくし立てる。 「私としてはですねー。戦士のみなさんに『女!?』『しかも割と普通の』みたいな反応して欲しかったんですよ。そしてですね、 そしてですよ? もし良かったら『見た目に騙されるな! 奴も幹部見くびってはならない』みたいなー反応してもらえたらー この上なく嬉しいですなんて思ってた訳なんですけど。エヘヘ」 後頭部をぽりぽり掻きながら女性は笑った。あどけない、というより幼稚な、世間ずれした笑みだ。「イタい」という方が正し くもある。 「なあお前」 「なんでしょうーか!!」 「センス古くね?」 「え!?」 「仕方ねーよwwww こいつの肉体年齢ほぼ30だからなwwww」 「ちょ、ディプレスさん!? 女性の年齢をいうなんて失礼じゃないですか!!」 クライマックスの視線。それ... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (12-2)
「世間で言われてるような傲慢なんてのは存外それほど恐れるべきじゃないのかも知れないね。パピヨン君がいい例さ」 『彼』は指を弾きそして語る。 パピヨン。 彼は人を見下すあまり遂には人そのものへの関心を失くし我が事のみに没頭している。 Drバタフライもそうだった、と。 「彼はヴィクター君を隠匿せんとするあまりホムンクルスの本分たる人喰いさえ見事に統制しきっていた。むーん。なんとも コントロラーブル。皮肉だが傲慢さに救われた命も少なからずあるという訳さ」 ねばついた腐肉がどこまでも広がる異常な部屋の中。 半ば蹲(つくば)りながら坂口照星はため息をついた。 「そして私も今まさしく傲慢さに生かされているちいう訳ですねムーンフェイス」 目の前に聳(そび)える長身の怪人は気の毒そうに顔を歪めた。 「同情するよ照星君。どうやら彼らに言わせればキミ... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (13-1)
「さあそろそろ犠牲になってくださいよぉ。この上なく尊び(たっとび)ますからあ」 (追い詰められた) 行き着いたのは袋小路。背後には塀。両側にも塀。これでもかと積まれた灰色のブロックどもは左官の奏功、目測が馬鹿 らしくなるほどの高さだ。登るのを考えた瞬間全身のそこかしこが悲鳴を上げた。手足の傷は決して軽くない。疲労もある。 衣服に染み込んだ血や汗ときたらクチクラやキチン質よろしくバリバリと凝固を重ね運動性というやつを大きく喪失せしめてい る。もはやできそこないの甲虫外骨格か甲殻類の表面かというありさまで気だるい重量ばかり全身にのしかかる。つまりまっ たく心身とも登攀(とうはん)不可の極地にまで追いやられている。 そのうえ眼前には黒い影。 まさしく絵に描いたような追い詰められ方だった。 影が一歩進んだ。街頭に照らされ素顔が明らかになった。右手の得物も同じく... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (16-1)
【時系列は巻き戻り、深夜。銀成市の路地裏にて】 「なるほど。『もう1つの調整体』を奪うよう盟主様から命じられたのはいいけれど」 「どこにあるか分からないから迷ってるwwwwwwwwwとwwwwwwwwwwwwwwww」 「そう!!!! パピヨンのアジトの所在、及公とんとご存じない!!!」 声が、聞こえてくる。 「パピヨン自体の目撃証言は『社員たち』から数多く上がってきている。だが奴は常に突然姿を消す。歩いている 時は言わずもがな、飛んでいる時もスラーーーーーーーーーっと降下したかと思えばもういない……そんな報告ばかり だ。一番近くにいる社員どもは常にそう報告する!! 事実及公ご自身『視点を切り替え』あちこちご覧になるがニンともカ ンとも見つからぬ!!!」 「いやいやそんな不思議がるコトないじゃないですかこの上なく」 上の方から。 「『... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (11)
「で? いつになったら話してくれるの? 申し訳程度に作られた地下室。中央のヴィクトリアは嘆息しつつ問い掛ける。まひろはやや俯き加減なので、気持ち上体 を屈め覗きこむような格好だ。腰に手を当て返答するよう鋭い上目遣いを送っているがやればやるほどまひろは委縮する らしく──怯えているというよりは、「びっきーがこれだけ真剣に聞いてくれるんだからちゃんと言わなきゃ」と言葉選びに一 生懸命になり、ますます言えなくなっているようだ──埒があかない。もとより狭量で短気なヴィクトリアだ。流石に怒りのマー クが跳ねのある前髪で脈動し始めたころ、意外なところから声が掛った。 「いう必要もない!! 貴様の悩みなんてのはこの蝶・天才の俺にかかれば全部全部お見通しだ!! 「ひゃあああああ!?」 素っ頓狂な声はヴィクトリアの口から上がった。見ればパピヨンの顔がすぐ横にいる。それだけなら何とか耐えら... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (14)
影は一歩進んだ。街頭を頂点とする円錐の輝き、そこへ向かって。やがて影が明度的事由により漆黒のベールを脱ぎ捨 てたとき、金髪ピアスは瞠目しつつ思った。 でけぇ。 いま背後の壁のてっぺんでケタケタ笑っているディプレスを2mとすればそれより10cmほどは高い。がっしりとした体格 だが逆三角形ではなく筒型で、巨漢ながらも野卑な印象はまったくない。 しかも着衣ときたらうらぶれた路地裏にまったく不釣り合いで、貴族服だった。上着は青と銀を基調にしたジャケットで、下 は純白のズボン。一目で高級品と分かる生地は内包する筋骨隆々にほとほと辟易しているようで、”今にもはち切れるよ”、 男が動くたび泣いていた。 顔は衣服に負けないほど気品がある。どちらかといえば短い髪にウェーブを掛けているところは先ほど遭遇したリバース ──青っち──と似ていなくもない。違いを上げるとすれば... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (15)
【翌日。銀成学園地上1F。廊下】 「感謝する」 「何がよ?」 ヴィクトリアは怪訝な顔をした。目の前には秋水がいて深々と頭を下げている。地上に戻るなりそれだ。まったく訳がわか らない、愛らしい顔つきを不快に歪め詰問する。 「相談に乗ってくれたのだろう。ありがとう」 「確かにそうだけど、なんでアナタが礼をいうの?」 武藤姓でもないクセに。からかうように笑うと瞳の光が揺らめいた。 辺りには人気がない。いくつかある校舎のうち一番南側の更に隅っこというところだ。敷地的にも辺境らしく窓の外には フェンスがある。錆やほつれの編み目を縫うように広がる裏道を一台、豆腐販売の車が通った。うら寂しい笛の音は訳も なくヴィクトリアの感傷を誘った。フェンスから校舎までは3mほどあり、薄い黄土色の校庭にはコーンやバレーボールが無 造作に転がっている。いずれも乾いた泥や埃の洗礼をたっぷ... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (10)
橙の光が闇の中を進んでいた。円形のそれは時おり左右へ傾き空間の暗黒を削っていた。灰色の壁。丸く歪曲した天井。 そして線路。光が無造作に抽出する景色はここがトンネルであるコトを示唆していた。 光はどうやらライトらしく後方から硬い足音がコツコツコツコツ常に響いている。それはもつれ合うような不協和音。足音の 主は複数いた。 「しかし広いわねココ。電波とか届くのかしら?」 場所に不釣り合いな嬌声が淀んだ大気を震わせた。 「届くって入ってすぐの頃に言っただろ! 戦団への定時連絡! 毎日毎日ボクに押し付けやがって!!」 こちらはいかにも坊ちゃんといった感じの若い男性の声。懐中電灯を握る手をぶるぶる震わせ憤りも露だ。 「何にせよ大戦士長救出作戦まで後2日。大まかな位置は把握できたな」 いかにも無頼漢じみたハスキーな声が笑みを含ませると、前者2人は軽く同意を示した。 「まさか... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (13.1)
「さあそろそろ犠牲になってくださいよぉ。この上なく尊び(たっとび)ますからあ」 (追い詰められた) 行き着いたのは袋小路。背後には塀。両側にも塀。これでもかと積まれた灰色のブロックどもは左官の奏功、目測が馬鹿 らしくなるほどの高さだ。登るのを考えた瞬間全身のそこかしこが悲鳴を上げた。手足の傷は決して軽くない。疲労もある。 衣服に染み込んだ血や汗ときたらクチクラやキチン質よろしくバリバリと凝固を重ね運動性というやつを大きく喪失せしめてい る。もはやできそこないの甲虫外骨格か甲殻類の表面かというありさまで気だるい重量ばかり全身にのしかかる。つまりまっ たく心身とも登攀(とうはん)不可の極地にまで追いやられている。 そのうえ眼前には黒い影。 まさしく絵に描いたような追い詰められ方だった。 影が一歩進んだ。街頭に照らされ素顔が明らかになった。右手の得物も同じく... -
第095話 「演劇をしよう!! (前編)」 (1)
栴檀貴信(ばいせんきしん)。肉体年齢は17歳である。 遡るコト7~8年前、ホムンクルスと化した「やかましい」青年であるところの彼は。 裂けたレモンのような巨大な双眸に芥子粒のような四白眼を泳がせている彼は……困っていた。 「ああもうヒマじゃん! ヒマ!」 「静かにしろ」 「ヘーイ! 転入生のカノジョー!! ヒマなら俺とお話しないー!」 原因は”前”である。 (余談だが栴檀は本来「せんだん」と読む。「ばいせん」とは無論誤用だが、響きがいいので使っているらしい) ホムンクルスの製造には「幼体」が用いられる。動植物、または人間の細胞を基盤(ベース)にしたそれらを投与された 場合、大抵の者は精神を”基盤”のそれに蝕まれ、体を乗っ取られてしまう。 だが貴信は『ある事情』によってそれを免れた。投与された「幼体」の基盤は……当時彼が飼っていたノルウェージ... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (16-2)
豪華な部屋、と書くといささか平易だがそれ以外の形容ができないほど豪華な部屋だった。 壁や天井は金色に輝き大理石の敷き詰められた床には絢爛なる絨毯が広がっている。壁にはこれまた金色の額縁に 入れられた名画の数々が居並び部屋の中央に鎮座する黒檀の机には三又槍を思わせる銀色の燭台が置かれている。 その机の上を含む周囲には豪華さを消し去る物体がこれでもかと蝟集(いしゅう)していた。 机の右には高さ1mほどの赤い筒。左には月の顔を持つ燕尾服。上には毛布ごとごろごろする少年。 傍若極まる連中が部屋の威容をこれでもかと壊していた。 「むーん。細菌型ときたか。とくれば感染者はさぞや惨たらしい死に方をするんだろうね」 実に興味深い。黒目のない真白な瞳を仄かに輝かせながら月は口を綻ばせた。 およそホムンクルスの類型というのは3種類に分けられる。植物型。動物型。そして人間型。... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (13.2)
【同時刻 日本のどこか山深い地方で】 「村だな」 「村ですね」 狭く、近未来的な部屋だった。パネルやレバーといった操作器具が敷き詰められ電子音が規則正しく響いている。 その部屋の正面にはモニターがあり今は粗く緑がかった風景を映し出している。 モニターの中央と向かい合うように椅子が3つ、配置されていた。うち2つは隣同士で1mばかりの感覚が空いていた。 座っているのは両方とも20代以上の男性で、片方はやせ型、片方は小太り。生白い肌と浅黒い肌も対照的な彼ら、 先ほどからモニターを見てひそひそと話している。 モニターが遠望していたのは確かに村だった。 いかにも小規模なそこは山の中腹にあり提灯や屋台が所狭しと並んでいた。時節柄解釈するに祭りでも開いているとみ るのが妥当だろう。いかにも農民風な人々が望遠レンズの映し出す世界で踊ったり屋台に並んだ... -
永遠の扉 過去編
【過去編 ──接続章── 】 「”代数学の浮かす” ~法衣の女・羸砲ヌヌ行の場合~」 1 2-1 2-2 3-1 3-2 3-3 4 5 ──接続章── 「”過去は過去でなく輪廻して今”~音楽隊副長・鐶光の場合~」 1 【過去編第001話 「動き始めていた時間の真ん中で(前編)」】(1-1) (1-2) 【過去編第002話 「動き始めていた時間の真ん中で(中編)」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) 【過去編第003話 「動き始めていた時間の真ん中で(後編)」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) (1-6) (1-7) (1-8) (1-9) 【過去編第004話 「探した答えは変わり続けていく」】(1-1) (1-2) (1-3) (1-4) (1-5) (1-6) (1-7) ... -
第096話 「演劇をしよう!!」(中編) (1)
「不肖がいまおりますのは銀成学園の1-A! ただいまこちらでは発表に向け猛練習の真っ最中!! この熱気が分かる でしょうか!!」 ハンディカメラの液晶の中をロバが泳いでいる。ロバといってもそれは属性で風体はもちろん違う。 パリっとしたタキシード姿の小柄な少女。シルクハットを被り肩に1つずつお下げをたらしている。同学年の中で最も中学生 に近いヴィクトリアよりもさらに幼い顔つきだ。 (小札零。なんで私が音楽隊なんかと……ホムンクルスと一緒なのよ) 「ちなみに不肖たちは演劇のメイキングをば収録中」 (黙って!!) ヴィクトリアは口角をみちみちと引きつらせた。家庭用、だろうか。収録に当たりとある部員から貸し出されたそれは片手で 十分なほど小さい。こういう時を想定したのか筺体には黒いバンドが(やや破れとほつれが目立っているが)あり、何とか無事 に保定されている。 何か見... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (1)
『鐶光は鳩尾無銘が大好きだ。 彼女はむかし義姉に両親を殺された。その挙句監禁され、5倍速で年老いる人外へと……。 瞳が暗色に染まるほどの戦いを強いられ続けるうち果たした出会いが運命を変える。 ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ。標的を殲滅した流れの共同体を急襲し、小札、貴信、香美と立て続けに重傷を負 わせた鐶光の前に立ちふさがった者こそ……当時まだ人型になれずいたチワワ姿の鳩尾無銘。 苛烈を極めた戦いは引き分けに終わる。 鐶が無銘を好きになったのはその後だ。 折悪しくやってきた戦士から、鐶を、命がけで守ったから。 好きになった。お世辞にも自分より強いとはいいがたい、チンチクリンなチワワが、傷だらけになりながら戦士を退け …………守ってくれた。 救ったのは命だけじゃない。 親も尊厳も失い悲嘆にくれる鐶に彼は、... -
第096話 「演劇をしよう!!」(中編) (2)
「戦士長が監督ぅ!!?」 「はい。アクションの方ですが。ちなみに特撮監督は無銘サンです」 斗貴子は愕然とした。演劇部をめぐる状況はだんだん凄まじくなりつつある。 「フ。俺にかかればこれぐらい簡単だ」 振り返る。黒檀の素晴らしいタンスができたところだ。額の汗を拭う総角。歓声。周囲の生徒が燃えている。 香美とのアクションがひと段落した斗貴子は大道具の方を見にきた。総角の動向が気になったというのもあるがそれ以上 に防人の所在を知りたかったのだ。 「助かった毒島。ケータイが通じなかったからな。手間をかけた」 「い、いえ。大丈夫です。仲間をサポートするのも仕事ですから」 そういう彼女は小道具係らしい。先ほどから何やら赤やら緑やらの宝石を針金に通している。 「ところでどうしてキミは素顔なんだ?」 「防人戦士長の命令です……。ずっとガスマスクだと目立ち... -
「演劇をしよう!! (前編)」 (6)
──────銀成学園屋上────── 中央に整列する影があった。少年もいれば少女もいる。身長や年齢はばらばらな彼らだが床板に沿って一直線に居並 んでいる。中央に位置するショートボブの少女は宛(さなが)ら学級委員という顔つきで──時おり騒ぎ出す学ラン少女など 注意しつつ──左右を見渡している。そんな彼女と1mほどの距離を挟んで向かいあうのは全身銀色のコート姿。 防人衛。いうまでもなく一団の指揮官である。 「とにかくガス騒ぎの影響で午後の授業は中止だ。その時間を打ちあわせに充てよう」 ここで挙手。剛太だ。防人はすかさず指差し発言を促す。 「キャプテンブラボー。なんか毒島が落ち込んでいるんスけど」 (ああ。考えてみれば授業中止は私のせいですね。怪我の功名なのかも知れませんがあまり素直に喜んだりは、喜んだりは……) 見ればガス騒動の主因が座りこんでいる。表情は... -
第094話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」後編 (11)
──どこかで── 「あなたはまだ、破壊への希求を捨てていないようですね」 ひび割れたサングラスの奥。理知的な瞳が捉えるのは、流れるような金髪。 どこまでも綺麗に梳られたそれは、持ち主の目鼻を隠し、表情までもを隠している。 「しかしメルスティーン。ヴィクターの盟友だったあなたはいつどこで、何を、誰を、どう破壊しようとしているのですか?」 「あとどうしてあなたはスカートを穿いているのですか? 確か男性だったと思うのですが」 坂口照星は、眼前に佇む男へ静かに呼びかける。 神父風の衣服は所々が破け、口元や目元に赤黒い血がこびりついているが、口調には何ら消耗が感じられない。 それまで受けてきたであろう凄惨な暴行などなかったように。 まるで戦団の執務室で部下に呼びかけているように。 照星は、静かに呼びかける。 「... -
第093話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」前編 (4)
「ががが、ががが、がおがおがー! ががが、がががが、がおがおがー!!」 ポニーテールにかんざしを差した小さな少女──銀成学園理事長──が1匹、廊下を走り抜けた。 彼女はひどく楽しそうにキラキラと笑い、両腕を横へめいっぱい伸ばし、走っていた。 ただそれだけです。別に本筋とは関係ありません。 「ねえ斗貴子さん。最近のジャンプって敵が出てくるたび修行するよね。ドラゴンボールもそうだったけど今のジャンプって ラディッツ出てきたら修行、サイバイマン出てきたら修行って感じだよね。あと修行の内容がほとんど新技習得っていうのは 分かりやすくていいんだけど、でもホラさ、やっぱり新技っていうのは死闘の最後のギリギリな時、本当負けそうになりなが ら自力で思いついて最後の決め手に……って感じが熱いしありがたみが出てくると思うんだ」(声色) 「知るか! カズキの声真似はよ... -
P2!~after 10 years~ 52-1
―――そして、ダブルスの試合が終わった頃になって。 「いやあ、よかった!今病院から連絡があってな。眞白の怪我は大したことはなかった。脳挫傷と脊椎損傷、後はちょっと 全員の骨という骨が軒並み粉砕して身体中がありえない方向に折れ曲がって、更にそれが内臓や皮膚を突き破って、出血量 が3000ccを超えちゃっただけだとさ!」 蒔絵の報告を聞き、久瀬北の面々にほっとした笑顔が浮かぶ。この程度の怪我ならば、一週間もすれば完治するだろう。 ちなみにダブルスの山雀(やまがら)・梟宇(きよう)VS紅州青州(こうしゅう・せいしゅう)兄弟は、いちいち書く までもない普通の試合であり、普通に久瀬北が負けたので割愛させていただく。 まあ一応触りだけ書いておくと、グラウンドにクレーターができたり照明が吹っ飛んだり観客に5名の重軽傷者が出たり 山雀がフェンスにめり込んだり梟宇が観客席にめ... -
第094話 「パピヨンvsヴィクトリア&音楽隊の帰還」後編 (10)
音楽隊はホムンクルス特有の禍々しさが驚くほど薄い。秋水にちょっかいを出した無銘でさえ言葉の端々にはそこはか とない愛嬌がある。 だがそんな姿を見てもなお、斗貴子は受け入れ難い。記憶こそないが故郷の赤銅島はホムンクルスたちによって甚大な 被害を受けている。家族はおろか使用人やクラスメイトすら喰い殺された。唯一覚えているのは戦団の施設で邂逅したホムン クルス。西山、と名乗るその少年は斗貴子の顔に消えるコトなき一文字の傷を刻んだ。顔に傷。女性たる斗貴子がホムンクル スを憎悪するに十分だろう。戦団の技術なら傷跡も消せるが、斗貴子にそのつもりはない。傷跡とともに抱え続けたいほどの 憎悪。それをホムンクルスに覚えている。 桜花や秋水は元々ホムンクルスに与していた。共闘に疑問はないだろう。 剛太が家族をホムンクルスに殺されたのは物心つく前の話だ。共闘が戦団の姿勢なら、あっさり受け... -
永遠の扉 第012話 1
第012話 「混戦」 「あ、聞いたとおり垂れ目じゃんコイツ。やっぱあたらしいの!」 『こら香美! あまり僕たちの知っているコトを教えるな!! 情報は何より大事だ!』 (なぜ知ってるんだ) 訝しみながら、剛太は傷口を確認する。 幸い、右腕は服が破れた程度。 頬からは血がカーテンのようにだらっと溢れているが、放っておいても治るレベルだ。 「こら剛太! 何をボサっとしている! さっさとモーターギアを拾え!」 斗貴子の鋭い叱責の声が飛ぶ。 見れば彼女はすでに香美目がけて突進中だ。 (いや先輩。俺の体勢が整うまで待ってくれたって) などと剛太は思わない! いささか短慮な先輩をたしなめない! 「やっぱ先輩はカッコイイ!」と内心で喝采すら送っている。 ちなみに斗貴子がくすんだアスファルトに足裏を叩きつける度、白い美脚が濃紺のミニスカ ートをひらひらたなびかせる。 剛太... -
永遠の扉005-2
第005話 「総ての序章 その1」 (2) 山の中腹で最初に見たのは、顔の右半分が破裂した西洋人の死体。 まだ死臭は薄く、飛び散った歯も唾液と血液に濡れ光っていた。 熊にやられたとかそういう類の傷ではない。 打撃点に向かって一気に、まるでねじ込まれる様な…… 同様の死体が他にも2つ転がっている。 首から上が破裂している者、肩口を抉られたまま恐怖の表情で事切れている者。 皆総て、紺地に幾何学模様をあしらった制服を着用していた。 それが錬金戦団における再殺部隊の制服だとは、爆爵は死ぬまで知らなかった。 目を引いたのは、躯の傍らに落ちている六角形の金属片。 爆爵は文献で読んだからそれが何か知っている。 核鉄。 だが欲し続けたそれをも凌ぐ昂揚感が爆爵を突き抜けた。 未知への震えに口腔が乾く。少年時代、錬金術の本を見つけた時のように。 ……視線の先。 切り開かれ... -
永遠の扉 第067話
194 名前:名無しさん 投稿日:[ここ壊れてます] ID kakukoto0 193 頑張れスネーク そっちに行けないオレのためにまずは美少女をうpするんだ 195 名前:193 投稿日:[ここ壊れてます] ID 876543210 http //*******/***/*****.jpg (マジでグロ注意。画面の端にあるのはID書いた紙な) 見ても文句いうなよホント… 俺なんかメートルぐらいの場所にいるんだぜorz 196 名前:名無しさん 投稿日:[ここ壊れてます] ID kakukoto0 ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!! こっち見んな!! 首だけこっち見て笑うなあああああああああああああ!!!! そのグロ画像がリアルで 193の頭上を滑空した... -
「”代数学の浮かす” ~法衣の女・羸砲ヌヌ行の場合~」 5
遂に邂逅した武藤ソウヤと羸砲ヌヌ行。 彼らの目の前に現れたのは……”鎧”だった。 特定の1体を除いていえばヌヌ行がその姿を把握したのは戦闘終了後しばらく経ってからである。 戦闘はすぐ終わった。例の帯が支配する世界でじっくり観察しなければ敵がどういう姿かなど永遠に分からなかっただろう。 無数の裂け目から着地音もバラバラに降り立った彼らは。 鎧を着た執事。一言で形容すればそうだった。胸にブレス・プレート。両腕にはトーナメント・アーマー。兜はアーメット。 とは淹通(えんつう)なるヌヌ行が戦闘終了後ソウヤに披歴した知識だが……とにかく歪な姿だった。左右は非対称で 右肩からは用途不明のウィングが天めがけ高々と生えていた。手袋や爪先は唇のような赤。黒い葉脈の浮いた鎧のそこ かしこから覗く地肌らしき部分も赤。コントラスト。強烈な色彩を放っている。顔とき... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (3)
デパート1階の中央部には駅前商店街がそのままある。幅10mほどあるゆったりした通りの両側にインテリアショップや 古美術商、本屋に服屋にCD屋さん。総て個人経営。大手デパートと地元産業が共存しているのは全国でも珍しい。事実 最近、ここは貴重なモデルケースとしてとみに注目を帯びている。 銀成市初の名誉市民は2代目市長だった。杉本某氏という、どこか防人衛に似た名市長は、戦後荒廃する故郷を立て 直すため数々の手を打った。 銀成市南部のサツマイモ畑が広がる平野に大きな幹線道路を造り交通の便を良くしたのもその一環であり。 引退間際の最後の一策こそこのデパートと商店街の……共存。 全国チェーンのデパートでありながら地元産業に密着した収益形態は平成不況の冷風を凌ぐ傘としていまも銀成市を守 っているのだ。 デパート内の商店街は吹き抜けになっており、少し首をあげれば6階まで一... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (7)
「ってゲームしてる場合じゃないわよ!!」 いきなりヴィクトリアは金切り声を上げた。だいぶご立腹らしくゲーム機は頭上高々だ。すわ叩き付けるのかとやっと修復した 兵馬俑ともどもキャッチに向かう無銘だが、ヴィクトリアはやおら手を止める。 「……返すわね」 「返されました」 返却は、生後間もない子猫を受け渡すように優しく行われた。 良かったゲーム機壊されずに済んだ。ホッとする無銘の鼓膜を叩くは落胆。 「よく見たらもう夜だし……。早く帰ってアイツの晩御飯作らなきゃいけないのに……なに遊んでるのよ私…………」 ベンチの上で体育座りし俯いてバーコード状の影を背負う少女に、 「いいのです、たまには遊ぶのもいいのです」 優しく語りかけ肩を撫でる鐶。 (姐(あね)さん。結構ノリノリだったな姐さん) そも1世紀以上前に生まれたヴィクトリアだ。コンピュータゲームなるものがまだ珍... -
第097話 「演劇をしよう!!」(後編) (8)
鐶たちがヴィクトリアと戯れているころ、武藤まひろは走っていた。 「お財布~!! お財布返してよー!!」 住宅街の中、遥か前を灰色の影が走っていく。ニット帽を被っているせいで年のころは分からない。 彼女は、ひったくりに遭った。顛末はこうである。 デパートからの帰り道、急にノドが渇いたまひろは桜花たちといったん別れ、自動販売機を探した。 この春寄宿舎に入ったばかりだから土地勘はあまりない。ただこの少女は時々妙に勘がいい。自動販売機さんカモン 自動販売機さんカモンと念じつつ適当にホクホク歩いているとものの5分で発見した。 とりあえず冷たいお茶を買い釣り銭を取ろうとしたところで、不意に、さっき見たヴィクトリア(ゲームに夢中)への連絡を思 い出した。思いつくとすぐ取り掛かるのが美点であり欠点だ。常人ならまず釣りを財布にしまいケータイを持つ。だがまひろと きた... -
永遠の扉 第071話
御前は次から次から出来(しゅったい)する異様な光景に呆れかえっていた。 「無茶苦茶だアイツ。何でもアリじゃねーか」 「……なんで俺との戦いで忍法使わなかったんだ?」 それはともかく、と桜花は瞳を薄桃の光にさらっと輝かせた。 「これで勝負の瞬間までこちらが攻撃されるコトはなさそうね」 「で、でも、どうするの?」 千歳は半泣きで路上を指さした。 見れば辺りに満ちた鏡のせいで、鐶の姿が十も二十も蠢いている。 「これじゃどこに向かえばいいか分からないよ!」 「いや、お前のヘルメスドライブならば本体のところへ俺達を運べるだろう」 「あ」 「後は彼が瀕死直前に追い込むのを待つだけだ」 斗貴子の期待を読んだかの如く、根来はいま一つの核鉄を突き出した。 それはシリアルナンバーLXXXIII(83)。元は貴信の物である。 「ダブル武装... - @wiki全体から「「演劇をしよう!! (前編)」 (12-1)」で調べる