SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ内検索 / 「天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・前篇」で検索した結果
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天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・前篇
さて、天体戦士サンレッドとレミリア・スカーレットの挨拶代わりの闘いから一夜明けて。 幻想郷と外の世界の境界に位置する博麗神社。 神主は不在。いるのはただ一人<博麗の巫女>。 彼女こそは外界との往来を遮断する<博麗大結界>を管理する存在にして、幻想郷の異変を解決する役割(ロール) を与えられし存在。 そんな霊験あらたかな神社であるが、一言でいえば寂れている。 二言でいえば蝶・寂れている。ほんともう、閑古鳥が大挙して押し寄せているのだ。 そんなトホホな神社の境内には、件の<博麗の巫女>。 紅白を基調とし、脇を大胆に露出させた巫女服を着込んだ黒髪の少女――― <楽園の素敵な巫女>博麗霊夢(はくれい・れいむ)だ。 幻想郷の異変解決屋である博麗の巫女として多忙な日々を送っている割に、ちっとも懐が潤わない彼女は賽銭箱を 覗いては溜息をつく。その姿だけならば憂いを... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・後篇
巨大な湖の畔に、その館は聳え立っていた。 屋根も外壁も真っ赤に塗りたくられた、悪魔の館―――人はそれを<紅魔館>と呼び、畏れた。 その一室では、悪魔達による饗宴(サバト)が繰り広げられていた――― 「セイヤァッ!」 中国風の衣装を纏い、長い赤髪を振り乱し拳を振るう女性。 まるで舞い踊るように美しい体捌きだ。 更に体内で練り上げた<気>をその拳に込め、可憐な両腕を鉄槌と化す。 「―――烈虹真拳!」 彼女は紅魔館の門番にして拳法の達人<華人小娘>紅美鈴(ホン・メイリン)。 人の身では決して到達できない境地に至ったその絶技を指先一つで受け止めたのは、大吸血鬼レミリア。 「くっ…」 「まだまだね。こんなんじゃ準備運動にもならないわ」 「も…申し訳ありません」 「なら、これはどうかしら?」 背後からの声。 「火符―――アグニシャイン!」 襲い掛かる無... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 祝勝会(前篇)・惨劇の幕開け
―――前回までのおさらい――― 美しくも謎めいた妖怪・八雲紫の力によって不思議な世界<幻想郷>へと迷い込んだ天体戦士サンレッド御一行。 かつてこの地を訪れた伝説の吸血鬼<賢者イヴ>の遺産を巡って開催された<幻想郷最大トーナメント>に参戦した レッドさん。 彼は望月ジロー・コタロウの吸血鬼兄弟、そして宿敵である悪の将軍ヴァンプ様と友情を深めたりしつつ、神奈川県 川崎市溝ノ口では使い道のなかった戦闘力を存分に発揮し、一回戦では鬼族最強の星熊勇儀を倒す。 そして二回戦において幻想郷最強の一角と称される風見幽香との死闘を制し、見事に準々決勝へと勝ち進んだの であった。 これより待ち受けるは、更なる強敵。 頑張れ、僕らのヒーロー・サンレッド! とりあえず、全ては祝勝会でヴァンプ様の愛情と殺意たっぷりの御馳走を食べてからだ! と、いうわけで、幻想郷最大トーナメント初... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・中篇
幻想郷で最強の存在とは誰か? こう尋ねれば、その答えは十人十色で異なるだろう。 ある者は境界の妖怪・八雲紫の名を挙げるかもしれない。 またある者は白玉楼の亡霊姫・西行寺幽々子と答えてもおかしくない。 紅魔館に巣食う吸血姫―――レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットも、上記の二人に劣らぬ力の持ち主 と目されている。 最強の種族と謳われる<鬼>。その中でも群を抜いた戦闘力の持ち主であり、共に妖怪の山の四天王に数えられる 伊吹萃香と星熊勇儀もこの類の議論では度々話題に上る。 守矢神社が祀る二柱の神性―――天を司る風の軍神<八坂神奈子(やさか・かなこ)>と大地を司る土着神の頂点 <洩矢諏訪子(もりや・すわこ)>も、数多の大妖怪と比して猶、その実力に遜色はなかろう。 上記の二柱神によって核融合の力を与えられた地獄の鴉―――霊烏路空(れいうじ・うつほ)も、頭脳はと... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊情の宴~ ~紅魔降臨・前~
<永遠に紅い幼き月>レミリア・スカーレット。 <紅い悪魔>レミリア・スカーレット。 外の世界において最強の吸血鬼はと問えば、百人いれば九十九人が化け物殺しの鬼札(ジョーカー)――― 窮極にして絶対の存在たるアーカードの名を挙げるだろう。 残る一人についても<まあ他の奴はどうせアーカードって言うだろうし俺もそう思うけど、ここは敢えて別の奴に しよっと。俺って異端派!>というへそ曲がりである可能性が非常に高い。 だが。しかし。 幻想郷においては恐らくレミリアこそが最強の吸血鬼であり、至高である。 とはいえ、彼女も最初から最強だったわけでもなければ、生まれた時から吸血鬼だったわけではない。 遥か遠い昔―――500年ともう少し前には、彼女とて人間だった。 とある小さな町の貧しい家に生を受けた彼女は、贅沢はできなかったけれど、それなりに幸福だった。 誰もが羨む美男... -
天体戦士サンレッド ~激突!太陽の戦士VS炎の悪魔! (サマサさま)
かつて世界には、神より遣わされし蒼氷(そうひょう)の石が在った――― 古の聖者がその秘石を用い、炎の悪魔を封じた伝説――― それより千年。 解放の緋―――或る少女の血を受け、炎の悪魔は封印の蒼より解き放たれ、再びこの世に舞い降りた。 レコンキスタの鐘の音が響くイベリア半島。 人類同士の争いは、かの悪魔の出現により、人類と悪魔の聖戦へと変貌した。 更に千年――― 炎の悪魔<シャイタン>は、遥か東方の島国へ――― 「―――と、いう話なんだよ」 ここは何の変哲もない一戸建て(借家)。何を隠そう、世界制服を企む悪の組織<フロシャイム>の川崎支部で あることは、ご近所さんなら誰でも知っている。 居間のコタツでみかんの皮を剥きながら、川崎支部の最高責任者であるヴァンプ将軍は熱弁を振るう。 「けどヴァンプ様。このやたらシリアスな導入部が俺達に何の関... -
天体戦士サンレッド ショートショート集(サマサさま)
~~~天体戦士サンレッド・これまでのあらすじ~~~ ―――2010年、世界は未曾有の危機を迎えた! 世界を蹂躙する、悪の組織フロシャイム。迎え撃つ、正義の戦士サンレッド。 今、闘いは最終局面へ――― 迫りくる悪の化身。 仮初の平和は脆くも砕かれ、絶望が世界を包む。 「サンレッド…お遊びは終わった。ここからは、殺し合いの時間だ!」 「ふ…今までお前が俺達に勝ってこれたのは、俺達が真の力の一割も出していなかったからだと思い知りな!」 「レッド!とうとうお前をぶっ殺すよー!」 鋼鉄の神は大地を蹴り、全てを破壊する。 「クックック…ゆけい、ヴァンプレイオス!愚かな人間共に我らの力を示すのだ!」 その強大な力の前に、人類に逃げ場はない。 それに乗じて胎動を始める、更なる邪悪。 「フフ…サンレッドカ。面白イ男ジャナイカ、我ト炎ノ力デ勝負シヨウトハ... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 一回戦第一試合・決着
天体戦士サンレッド・剛力形態<ヒュペリオンフォーム>。 それはサンレッドの太陽闘気(コロナ)が極限にまで達した時にのみ装着される戦闘形態の一つ。 古の太陽神の名を冠するこのフォームの主眼に置かれるのはただ一つ―――<パワー>。 純粋な肉弾戦に関しては究極形態すら凌駕するヒュペリオンフォームを纏ったサンレッドは、まさに真紅の破壊神 となりて、あらゆる敵を打ち砕くのだ! 「―――なんつー、どうでもいい解説は脇に置いて…」 サンレッドは、右足を大きく上げて。 「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」 勢いよく大地を、踏み付けた。 その瞬間、闘技場が―――否。 世界そのものが、震えた。 ZUUUUUUUUNッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!! 『お、おおっ!?ゆ、揺れる揺れるっ!』 「あ、兄者... -
天体戦士サンレッド ~唸る剛腕!最強の虎と無敵の獅子 (サマサさま)
正義と悪が互いの全てを賭けて闘う神奈川県川崎市・溝ノ口。 その駅前に今、新たなる悪魔達が降り立った。 「いやー、結構混んでましたね、ピラフ様」 「あーもう!あのオヤジ、混雑をいいことに私のおしり触ったんですよ!あームカツク!」 「ふ…そうぼやくな。我々が世界征服に成功すれば、新幹線のグリーン車とてタダで乗り放題なのだからな」 微妙に情けないことをのたまうのは犬人間・若い女性・怪人というアンバランスな三人組。そう――― 奴らこそは、恐るべき悪党なのだ! 「調査によれば、ここ溝ノ口にはフロシャイムとかいう悪の組織の支部があるというが…ククク。悪の組織は二つも いらん。今日より我々がこの地を支配するのだ!」 「大丈夫ですかねー」 「心配いらん。何でもそいつらはヒーローに負けっぱなしの弱小組織ということだからな…既に十人以上のヒーロー を屠っている我々の... -
天体戦士サンレッド ~魔界からの刺客!超金属戦士ヒム登場(サマサさま)
仮○ライ○ーとかが闘っていそうな、人里離れた岩山。そこは地獄と化していた。 辺り一面に散らばる残骸―――<アームスレイブ>と呼ばれる巨大人型兵器のなれの果て・およそ十機分―――と、 半死半生で地を舐める無数のヒーロー。 その中心で、一人の男が嘲笑する。 「ハッ…地上の兵器やらヒーローってのは、こんなにも脆いのかよ。これじゃはるばる魔界から来た甲斐がねえな」 銀色に輝く、傷一つない超金属のボディ。精悍な顔には己の力に対する揺るぎない自信が溢れている。 「これでこの辺りのヒーローやら正義の組織はあらかた潰したな…さて」 そして、奴の次なる目的は――― 「今度は川崎…天体戦士サンレッドの首を貰うぜ」 「う…うう…」 倒れ伏すヒーローの中の一人が、呻きながら顔を上げた。 「お…お前は一体…何者なんだ…」 その問い掛けに対し、男は不敵に笑った。 「オレの名はヒム―――やがて... -
天体戦士サンレッド ~卑劣なる策略!悪夢のバスジャック事件(サマサさま)
悪の組織・フロシャイム川崎支部。 その一室に怪人達を集め、ヴァンプ将軍はいつになく引き締まった顔である。 「フロシャイムの精鋭達よ…次なる作戦を発表する!」 厳かに告げられた言葉に、怪人達はざわめく。次の瞬間、備え付けのモニターに画像が映し出された。 「これは…幼稚園の送迎バスですか?」 「そうだ―――これ以上は、言わなくても分かるだろう?」 そして悪の将軍ヴァンプは、非情なる命令を下した―――! 「決行の日は明日!我らは園児達を人質として、バスジャックを行う!」 ついに悪の本性を現したフロシャイム!今、園児達の悲鳴がバキスレに木霊する! …なんて展開にはなりませんので、読者の皆様方は今回も安心して、お子様にもお勧めのほのぼの牧歌的癒し系 小説<天体戦士サンレッド>を御堪能ください。 天体戦士サンレッド ~卑劣なる策略!悪夢のバスジャック事件 ... -
天体戦士サンレッド ~少女の願い!サンレッド・怒りの全力バトル
毎度お馴染み、神奈川県川崎市。 「…んー」 「どうしたのよ、あんた」 「いや…ほら、あの女の子」 商店街で買い物していた我らがヒーロー・サンレッドとかよ子さん。二人の視線の先には。 「―――新装開店セールでーす!よろしくお願いしまーす!」 現実じゃありえねー天然物のピンク髪は、彼女が人外の存在である事を雄弁に物語っている。雪よりも白い清らかな肌 と、穢れを知らぬ清純可憐な愛らしい顔立ち。 そんな年端もいかぬ美少女が、道行く人々に向けてチラシを配っているのだった。 「女の子型の怪人ってのは珍しいけど、あの子は最近よく見るんだよな…こないだは定食屋で働いてたぞ」 「ああ、そう言えば私も他の場所でティッシュ配ってるの見たわ」 「そんなに仕事を掛け持ちしてんのか…働きモンだなあ、おい」 「そうねー。誰かさんに見習ってほしいぐらいね」 ゲホンゲホン、とわざとらしく咳をするレ... -
天体戦士サンレッド ~レッド危うし!フロシャイム戦慄の秘密兵器! (サマサさま)
「どう?レッドさん、すごいでしょー」 「おー…確かにこりゃ壮観だわ!」 悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍にいつもの公園に呼び出された神奈川県川崎市のご当地ヒーローである 天体戦士サンレッドは<それ>を見上げて彼にしては素直に賞賛した。 ちなみに今日のTシャツの文字は<スパロボK4月2日発売>である。 「しかしよヴァンプ。これもフロシャイム脅威の科学力ってやつか?」 「あ、違う違う。雑誌の懸賞で当たったの」 「…懸賞」 にこにこ笑うヴァンプ将軍を尻目に、レッドはどよ~んとした顔で<それ>をもう一度眺め回した。 子供達が駆け回る何の変哲もない公園に鎮座する異形の物体。 それは、巨大ロボットであった。 天体戦士サンレッド ~レッド危うし!フロシャイム戦慄の秘密兵器! 「いやー、こんなのが当たるなんて、ホントにヴァンプ様ツイてますよ... -
天体戦士サンレッド ~レッド危うし!フロシャイム戦慄の秘密兵器! (サマサさま)
「どう?レッドさん、すごいでしょー」 「おー…確かにこりゃ壮観だわ!」 悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍にいつもの公園に呼び出された神奈川県川崎市のご当地ヒーローである 天体戦士サンレッドは<それ>を見上げて彼にしては素直に賞賛した。 ちなみに今日のTシャツの文字は<スパロボK4月2日発売>である。 「しかしよヴァンプ。これもフロシャイム脅威の科学力ってやつか?」 「あ、違う違う。雑誌の懸賞で当たったの」 「…懸賞」 にこにこ笑うヴァンプ将軍を尻目に、レッドはどよ~んとした顔で<それ>をもう一度眺め回した。 子供達が駆け回る何の変哲もない公園に鎮座する異形の物体。 それは、巨大ロボットであった。 天体戦士サンレッド ~レッド危うし!フロシャイム戦慄の秘密兵器! 「いやー、こんなのが当たるなんて、ホントにヴァンプ様ツイてますよ... -
天体戦士サンレッド ~悪夢の遊戯!苛烈なる死闘(サマサさま)
とある昼下がり。 正義のヒーロー・天体戦士サンレッドがフロシャイム川崎支部のアジトへ足を運んだ。 そう、彼は遂にフロシャイム殲滅のために動き出した―――はずもなく、単に昼メシをたかりに来ただけである。 そして今日のTシャツは<決闘王>だ。 「おーい、ヴァンプ~…あん?何だよ、いねーのかよ、おい」 サンダルを脱ぎ捨てて、ずかずかと廊下を進む。悪の巣窟へ潜入したヒーローとはもっと緊迫感溢れるものだとは 思うのだが、レッドさんはこういう御方である。御了承下さい。 そんな彼の耳に、居間から楽しそうな声が聞こえてきた。訝しげに覗き込むと、そこには。 「じゃ、私のターンいくよ!<伝説怪人ペリアル>を召喚して攻撃!」 「うわっ、また負けちゃった!」 「ヴァンプ様つえ~!三連勝じゃないっすか」 「いやー。まぐれだって、まぐれ」 何かのカードを手にして遊ぶ、我らが悪の将軍・現在バキス... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 天体戦士サンレッドVS望月ジロー
幻想郷最大トーナメントに向けて、各自が準備を進めているその頃。 ―――神奈川県川崎市。いつもは善と悪の壮絶な闘いが繰り広げられている公園に、数人の人影。 「…どういうことかしら、これ」 「うーん…」 「急に四人もいなくなったと思ったら、ねえ…」 レッドさんの恋人・かよ子さん。 ジローとコタロウの雇い主にして扶養主・ミミコさん。 そしてフロシャイム川崎支部の戦闘員1号・2号。 彼らの手には、一通の手紙。差出人はそれぞれサンレッド・望月兄弟・ヴァンプ様である。 内容はかいつまんで言えば<少し留守にします。必ず戻ってくるので心配しないでください>とのことだ。 「まあ、ウチの人だけじゃ頼りないけど、ヴァンプさんもいるなら安心ね」 「そうですよね。ジローさんやコタロウくんだけじゃともかく、ヴァンプさんがいるんだもの」 「そうっすよねー。ヴァンプ様も一緒なら、滅多な事はないです... -
天体戦士サンレッド ~決死の潜入作戦!軍曹、命を賭した任務! (サマサさま)
悪の組織フロシャイム・川崎支部。 今ここに、新たなる恐怖の化身が舞い降りようとしていた―――! 「ふもっふ!」 「…………なにこれ」 我らがヴァンプ将軍は、玄関口で元気よく手をフリフリしているクマだかネズミだかよく分からんナマモノを前 に困惑するのであった。 読者の皆!今回は、ニクたら可愛い奴らが大活躍しちゃうぜ! 天体戦士サンレッド ~決死の潜入作戦!軍曹、命を賭した任務! 「もー!なにこれじゃなくて、新しくアニマルソルジャーに入った凶悪無比のボン太くんですよっ」 どこぞのハムスターによく似た声のウサギのぬいぐるみ型怪人・ウサコッツはプンプンしながら抗議する。 <アニマルソルジャー>。それは愛くるしいぬいぐるみ型怪人達で構成された、恐るべき殺戮集団。 女学生を中心に絶大な支持を誇る彼らだが、その容姿に騙されてはならない。 ... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊情の宴~ 幻想郷珍道中・紅魔館へ
不気味に鬱蒼と生い茂る木々。 深く闇に沈む森。 日が落ちた世界を、天体戦士サンレッド率いる一向は紅魔館へ向けて進む。 しかして何とも、夜の世界というのはおどろおどろしい雰囲気だ。 おまけにここは幻想郷。夜は、妖怪達の時間。いつ彼等が牙を剥いて襲ってくるか分かったものではない。 ―――しかしながら、ここにいる面子を見て、それでもなお襲い掛かってくる妖怪がいたとしたら、そいつは勇気 があるのではなくただの自殺志願だろう。 白玉楼の主―――西行寺幽々子。 その護衛役の半人半霊の剣士―――魂魄妖夢。 百年を生きる吸血鬼―――望月ジロー。 そして幻想郷最強クラスの妖怪達とも互角に渡り合う最強のチンピラ―――サンレッド。 向かってくる低級妖怪などがいれば、数秒で消し炭にもミンチ肉にもできるような連中であった。 「あわわ…レッドさ~ん」 「ひええ…兄者~」 そんな中、戦闘力的... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 死闘開幕
サンレッドは予選の夜を―――正確には、風見幽香と初めて出会った瞬間を思い出そうとして――― 「…最悪だったな、ありゃ」 やめた。思い出すには、彼女の姿はえげつなすぎる。 美しい少女の姿でありながら―――どこまでも、怪物そのものを体現していた。 サンレッドといえど、認めなければならない。 あの時確かに、彼は恐怖していた―――それでも。 「それが、どーした」 逃げる気も、負ける気もない。 「どーするもこーするも…勝つしかねーだろ」 「さて…始まるわね」 風見幽香は少女のあどけなさを残す美貌に、どこか酷薄な笑顔を貼り付けたまま、入場門へ続く廊下を歩く。 そのしなやかな細腕に<何か>を抱えて。 「手間をかけた分ぐらいは、愉しませてほしいものね―――サンレッド」 ジロー達は、未だ戻らぬヴァンプ様とコタロウを待っている。 ―――二回戦開始の声が響いてなお、二... -
天体戦士サンレッド ~偽サンレッド現る!?フロシャイム、驚愕の思惑
川崎市街地より離れた山中―――そこでは川崎市の悪党達が集結し、大きな円陣を組んでいた。 その中心では、二人の男が睨み合っている。 一人は超金属戦士・ヒム。 もう一方は、まるで冗談のように巨大な男だった。長身のヒムが、子供のように小さく見える。 (サンレッド抹殺のための、新しい刺客か…その実戦訓練の相手役を買って出たはいいが…) 異様なのはその身体の大きさだけではない。筋骨隆々とした肉体の上に乗っているのは、獰猛な野獣の頭部だ。 闘争心と覇気に満ちた瞳に射抜かれ、ヒムは戦慄する。 (ただデケえってだけじゃねえ…コイツの発する闘気が、実際以上に大きく見せてやがるんだ!) 震えが止まらない。だが、それは恐怖に起因するものではない――― (こんな野郎がいたとはな…面白ぇ!) ヒムは戦士だ。その冷たい金属の身体に、熱き魂を宿す闘士だ。強敵との闘争は彼にとって忌避でなく、むしろ歓迎... -
天体戦士サンレッド ~知られざる過去!悪の将軍ヴァンプ・その青春
「おい、ヴァンプ。何してんだよ」 悪の組織フロシャイム・川崎支部。そのアジトへメシをたかりにやって来た正義のヒーロー・天体戦士サンレッドは、 居間で佇むヴァンプ将軍を訝しげに問いただす。 「あ、レッドさんじゃないですか。いやね、押入れを掃除してたら、こんなのが出てきたもので」 ヴァンプ様は、一冊のアルバムを手にしていた。 「私の高校時代のなんですけど、懐かしくてついつい見入っちゃいました」 「ほー、お前の高校時代ね…なんか、想像できねーなー。ちょっと貸してみろよ」 「はい、どうぞ」 パラパラとページを捲り、レッドはブハっと吹き出す。 「おいおい、お前ってば本当に学生服着ちゃってるじゃねーか!ブレザーだし、ネクタイだし!」 「そりゃー私だって高校生だったんです。学生服くらい着ますよ」 「けど、今のお前を知ってる俺からすれば違和感がすげーよ…」 「ははは。おっ、この二人... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 天体戦士サンレッドVS星熊勇儀
「ああ~…いよいよ始まっちゃいましたね」 ヴァンプ様は落ち着きなくそわそわしながら、闘技場に立つレッドを見つめる。 「ね、ね。大丈夫ですよね、レッドさん。ああ~、あの人の強さを疑うわけじゃないけれど心配だなあ…もし殺られ ちゃったりしたら大変だよ。抹殺すべきヒーローを他の人に倒されたなんてなったら、皆にどう言えばいいのか… あ、そうなったらなったで世界征服に一歩近づくわけだし、ここはむしろあっちの星熊勇儀さんを応援すべきかも。 でも私達以外の誰かがレッドさんに勝っちゃうってのも複雑な気分だし…あ~も~、ホントどうしよう、私」 「…とりあえず、静かに観戦してはいかがでしょう」 「そ、そうですね、ジローさん!よーし、見るぞー!」 身を乗り出し、食い入るように闘技場を睨み付けるヴァンプ様である。 そんな彼を呆れ顔で見つめて、魔理沙はジローとコタロウに小声で問うた。 「なあ。こ... -
天体戦士サンレッド ~召喚!異世界よりの使者(後編)(サマサさま)
「―――はあ。なるほど…ヴァンプの野郎、ロクなことしねーな、全く」 ここはレッドさんの自宅―――正確に言えばレッドさんの彼女・かよ子さんの自宅で、ファラから今回の事の次第 を聞き、しかめっ面になったレッドさんという場面である。 「でもヴァンプさん、とっても優しくていい人だったよ?」 「だから世界征服できねーんだよ。悪の組織のくせして」 「そういう事を言わないの。全く、あんたって酷いんだから」 そう言ってレッドさんをたしなめたのが噂の彼女・もうすぐ三十路のかよ子さん。 全体的にスマートできりっとした容姿、可愛いというより凛々しい大人の女といった印象のしっかり者だ。 だらしないレッドさんを色んな意味で支える出来た女性で職業・保険の外交員。やり手である。 「―――ほら、二人とも終わったわよ」 コタロウは鼻に絆創膏を貼りつけられ、ディランは膝に包帯を巻かれていた。 「ありがと... -
天体戦士サンレッド 設定資料集 (サマサさま)
~天体戦士サンレッド・登場人物や設定・裏設定の解説~ (※あくまでこのSSにおける設定であり、作者の自己解釈・妄想なども割と含むので注意されたし) ○主人公 <天体戦士サンレッド> 本編の主人公…なのだが、ヴァンプ将軍をはじめとするフロシャイムの怪人達に存在感を完全に奪われている。 性格は粗暴なチンピラそのものだが、ヒーローだけあって優しい所もある…と思いたい。 かつては今よりもっとタチが悪かったそうな。 かよ子という恋人に養ってもらっている、いわゆるヒモである。 ヴァンプ将軍や怪人とはもはや完全に馴れ合っており、対決の時以外は結構仲良しな部分もある。 そんな彼だがヒーローとしての強さは本物で、どんな敵が相手でもTシャツにサンダルというやる気のない格好の まま、ロクに全力を出さずに一撃で倒してしまうほど。 最近は川崎市に変な奴が色々やって来てちょっと辟易している... -
天体戦士サンレッド ~召喚!異世界よりの使者(前編)(サマサさま)
―――フロシャイム川崎支部。その一室に、奇妙な機械が置かれていた。 「本部が新たに開発した装置…これを作動することにより、異世界の恐るべき魔獣を召喚できるという…」 我らが将軍ヴァンプ様は、厳かに語る。 「私はサンレッド抹殺のため、早速この装置を起動してみた…しかし…」 一気に口調が情けないものに変わるヴァンプ様。 「…どうしよう。明らかに失敗しちゃったよ、これ…」 「まずいっすよ、ヴァンプ様。これは…」 「どう見ても魔獣じゃねーもんなー…」 周りで見守っていた川崎支部所属怪人・メダリオとカーメンマンも困惑するばかりだ。 はてさて、装置によって召喚されたのは。 「あ、あのー…ここ、どこ?おじさん達、誰?」 「ば…化け物!?なんだよお前ら!?」 6歳か7歳くらいの、可愛らしい女の子と、いかにも捻くれ者といった男の子であった。 天体戦士サンレッド ~召喚!異世... -
天体戦士サンレッド ~友情秘話!?ウサギと少女と真っ赤なヒーロー (サマサさま)
とある小さな公園にて。 「うわーん、やめてよじん君!耳が取れちゃうよー!」 ちょっと意地悪そうな男の子が、ぬいぐるみっぽい何かの耳を引っ張っていた。 その名はウサコッツ。可愛らしい見かけは世を欺く卑劣な策略。本性は邪悪なる悪の手先・フロシャイムの一員だ。 しかし彼は悲しいかな、子供に危害は加えることが出来ないように設計されて造られているのだ。子供の誘拐が主な 任務であるが故、人質にした子供に万一のことがあってはならないからである。 そんな彼の元に、救世主は現れた。 「こら、よしなさい。弱い者いじめなんてしちゃダメでしょ?」 まだ幼さを残す声。そこにいたのは、妖精のように可憐な一人の少女だった。 ―――いささか緊迫感に欠ける、ウサギと少女の馴れ初めであった。 天体戦士サンレッド ~友情秘話!?ウサギと少女と真っ赤なヒーロー 「じん君... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 太陽の戦士・出陣
総勢32名の全選手入場を終え、選手達が一旦引き揚げてからも、闘技場を包む興奮は一向に収まる気配がない。 誰もがこれから始まる凄まじい激闘の予感に高揚し、酔い痴れる。 「いやあー。賑やかで、まるでお祭りみたいですね」 「幻想郷の奴らなんて皆、理由を付けては騒ぐのが大好きだからな。一種のお祭りみたいなもんだろ」 と、魔理沙。 「お祭りというより、これもある種の異変じゃないの?」 「そうね。これだけの連中が一同に介して闘うなんて、普通じゃないわ」 そう言ったのはアリスとパチュリーだ。 「でも、優勝は絶対レッドさんだよ」 「あーら、このガキったら何言ってんのかしら。勝つのは幽香に決まってるでしょ」 「ふーんだ、君はレッドさんの強さを知らないからそんな事言えるんだよ!」 「あんただって、幽香がどれだけヤバいか知らないでしょ!」 「何だい、へちゃむくれ!」 「何さ、間抜け面!... -
天体戦士サンレッド ~参上!地獄の暴走ライダー (サマサさま)
某ファミレス前。 二人組の怪人が、時計と睨めっこしていた。 奴らの名は、モギラとモゲラ。モグラをそのまま大きくしたような姿の怪人であり、言うまでもない事だが悪の組織 フロシャイム・川崎支部の一員である。 「もうそろそろかな、アントキラーさん」 「それにしても店の中じゃなくて駐車場で待ってろって、どういうことだろ?」 その時だった。爆音を響かせ、一台のバイクが疾走してきたのだ。目を丸くする二匹の前でバイクは盛大にドリフト しながら停車する。 真っ赤なバイクだった。まるで特撮のヒーローが乗っているような、如何にもなシロモノだ。そしてそれに跨っている のはヒーローではなくこれまた怪人。干からびたように水気のない身体を、簡素な鎧が包んでいる。頭部を守るのは 二対の巨大なツノを備えた兜。 「よぉ~おめーら、待たせたな。どうよ、スゲーだろ?」 この男こそ... -
天体戦士サンレッド バレンタイン編
パターン①悪の皆様方 「バレンタインだなあ…」 「ああ、バレンタインだよ」 「だからって、なあ…」 「所詮、俺らにゃ関係ない行事っすよ…」 ―――言うまでもなく、神奈川県川崎市。 道を往くのは世界を狙う恐るべき悪党四人。 フロシャイム川崎支部所属のメダリオ&カーメンマン。一匹狼のヒム。悪の吸血鬼ヤフリー。 世界を狙ってるくせに、話題はセコいにも程がある。 しかし―――しかし、だ。男子たるもの、バレンタインは試練の時なのだ! 「そういや思い出すなあ、メダリオ。お前、いつかのバレンタインで高級チョコを自分で買って、女の子から貰ったとか 虚しい演技してたっけ(笑)」 「なっ…おいカーメン!その事は言うなよ!」 「うっわー…そんなハズカシー真似してたのかよ」 「メダリオさん、そりゃ悲しすぎますよ…(苦笑)」 「うっうるせー!お前らだって精々母親からしか貰ったこと... -
天体戦士サンレッド ~フロシャイムの姦計!軍曹・孤高の闘い
「―――あらまあ。ヴァンプさんとこの子じゃない。こんにちは」 「ふもっふ!」 フロシャイム川崎支部への道すがら、通りがかりの近所の森末さんに手を上げて朗らかに挨拶するボン太くん。 されど、その和やかな容姿を真に受けてはならない。 彼の裡には、獣が住むのだ。 (フロシャイム…奴等の実態も大分掴めてきたな…) 数百・数千もの構成員それぞれが、並のヒーローを遥かに超える実力の持ち主である事。 幼い子供に対し<フロシャイムは善良な悪の組織>と刷り込みを行っている事。 カードゲームを発売し、法を犯す事無く大金をせしめた事。 異次元への扉を開くほどの科学力の持ち主であるという事。 最近ではとある吸血鬼の一族や恐るべき力を秘めた魔界の戦士、悪の姫君を奉ずる謎の軍団とも接触し、更に勢力を 増している事。 何という事か。一見平和な神奈川県川崎市溝ノ口に、ここまで恐ろしい悪が蔓延ってい... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 勝ち名乗り
「ふぅん…意外に食い下がってるわね」 と、観客席から闘いを見下ろすレミリアは鼻を鳴らした。 「風見幽香への怒り、そして憎悪…それが奴に力を与えている。そういう事かしら?」 「言い方が悪いよ、レミリアちゃん。せめて正義の怒りをぶつけているって言ってよ」 「どう言おうが、同じ事です」 コタロウは抗議するが、レミリアはすっぱりと切って返す。 「それに、その二つが悪いものだなどと、私は思っておりません」 「ええ~…そうかなあ…」 不満顔で、コタロウは口を尖らせる。 「一番強いのは、愛と友情だと思うけど。漫画やアニメだと、大抵そうだもの」 「成程。そういうこともあるでしょうが、そうでないこともあるでしょう―――負の感情から生まれる力は時に其れ を凌駕する。特に、怒りと憎しみは―――何よりも強い。憤怒とは、純粋なる人間の情念につきますれば」 まあ、あいつは人間じゃなくてヒーロー... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 天体戦士サンレッドVS風見幽香
天体戦士サンレッド・飛翔形態<プロミネンスフォーム>。 熱く輝く太陽の紅き炎を宿す、サンレッドの戦闘形態の一つ。 速度と機動性、そして飛行能力に特化したこのフォームを装着したサンレッドは、正しく大空の覇者。 炎を纏い空を駆けるその姿は、燃え滾る真紅の流星! 「その姿…どうやら空中戦を御望みのようね」 対して、風見幽香は不敵に唇を歪めた。 「いいでしょう、付き合ってあげる―――」 その背中から、服を突き破って一対の翼が広がった。 仄かに輝く、美しき純白の翼―――それだけ見れば、まるで天使のようだ。 そう―――云わば命を刈り取る、告死の天使。 「そして思い知るがいい。幻想郷の住人に対して、空で闘いを挑む愚かさを!」 紅き戦士と大妖怪が、同時に飛翔する。 両者は烈風を巻き起こしながら空中で幾度となくぶつかり合い、火花を散らした。 天は今、強大な力を有した二匹の獣に... -
天体戦士サンレッド ~月下の支配者!吸血鬼参上(サマサさま)
それはよく晴れた夏の日の出来事。 公園のベンチで我らがヒーロー・サンレッドは、鬱陶しそうにタバコを吹かしていた。 ちなみに今日のTシャツは<黒き血の兄弟>である。 浮かない顔の原因は、彼の隣に座る十歳ほどの少年。 「だからね、レッドさん!ぼくを弟子にしてよ!ぼくも立派なヒーローになりたいんだ!」 「…………」 ―――ふわふわの金髪に、蒼い海を思わせる碧眼。天使のように愛らしい笑顔の美少年である。 そんな少年を、レッドは困ったように見下ろしていた。 「あー、その。なんつったらいいかなー…」 「お願い!ぼくは真剣なんだ。ヒーローはチビっ子の味方でしょ?」 「そりゃまあ、通俗的に言えばそうだな…けどな」 レッドは頭痛を堪えるように眉間を押さえる。 「ヒーローになりたいっつっても、お前、吸血鬼じゃん…」 「うん、そうだよ」 だから何?と言いたげに朗らかに笑うその少年には... -
天体戦士サンレッド ~血に染まる川崎!真紅の大決戦
いつものようにいつもの如く、神奈川県川崎市。 「―――この世界には<幻想郷>と呼ばれる、夢想と空想を具現化し、具象化した楽園が存在します」 道端を歩きながら語るのは、真っ赤な帽子に真っ赤なスーツ、日傘を差した赤ずくめの男――― 彼の名は望月ジロー。黒髪黒瞳の端正な顔立ちだが、口元には鋭い牙が覗く。 彼こそは望月コタロウの兄にして<銀刀>と恐れられる、既に百年以上の時を生きた力ある吸血鬼だ。 「へー」 気のない相槌を打ったのは赤いマスクだけど格好はいつものTシャツな我らのヒーロー・サンレッド。今日の文字は <東方赤太陽>である。彼はジローに呼び出され、むさ苦しくも男二人で歩いているのだ。 「其処は<神隠しの主犯><遊惰なる賢者>と称される伝説の大妖怪<八雲紫(やくも・ゆかり)>が創り上げし、 人間もそれ以外も、全てを受け入れる理想郷―――鬼に天狗に河童に妖精、果ては神々に至... -
天体戦士サンレッド ~絶望の宴!最凶ヒーロー兄弟・本土上陸
―――意表を突いた展開。それは物語にとって大切な要素の一つである。 されど、これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、人知を超えた怪人やヒーローの世知辛い日常を綴る物語。 それゆえに読者の皆様方には<どうせいつもの日常風景が垂れ流されるんだろ、ケッ>なんて思われるのだ。 うん。その通りなんです、すいません。 「いらっしゃいませ!ピ○・キャ○ットへようこそ!」 フリフリ可愛らしい制服に身を包んだ、ピンク髪の少女がにこやかに接客する。 そう、前回レッドさんに全力で闘ってもらえたある意味幸運、ある意味凶運の悪の姫君・エニシアである。 悪の軍団を率いる彼女は、今日はどうやらファミレスのバイトに精を出している様子だった。 「よー、エニシアちゃん。相変わらず可愛いねー」 「ちわっす!」「ちわっす!」 店に入ってきたのは、モグラ型怪人コンビのモギラとモゲラを引き連れたアリジゴク怪人・アン... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 賢者の血統
―――白玉楼の庭園。 既に予選は終了し、闘いを勝ち抜いた32名の精鋭が出揃っていた。 「…………」 サンレッドは無言で、本戦出場者達を眺め眇める。 まず目についたのは、頭から角を生やした長身の美女と小柄な幼女の二人組。 (あいつら、相当やるな…) 今は気配を抑えているようだが、それでも隠しきれない程の力が滲み出している。 「星熊勇儀と伊吹萃香―――強大な種族である鬼の中でも、更に突き抜けた二人よ」 不意にかけられた声に、ぎょっとして振り向く。 「あら、驚かせたかしら?ごめんなさいね」 夜だというのに日傘を差したその少女は、ニコニコ笑っていた。 それだけならどういう事もないが―――その全身は余す所なく血に濡れている。 彼女自身に怪我はないようだから、全て返り血だろう。 「私は風見幽香というの。あなたが外の世界のヒーロー・サンレッドね?噂は聞いてるわよ」 「お、おお... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 第一試合終了、そして
一回戦第一試合―――勝者・サンレッド。 『幻想郷最大トーナメント、第一試合から波乱の幕開け!天体戦士サンレッドが、幻想郷一の怪力を誇る星熊勇儀 を真っ向から撃ち破りましたぁっ!溝ノ口発の真っ赤なチンピラヒーローが、衝撃の幻想郷デビューを我々に見せ 付けた!この男は何処まで往くのか!?これから目が離せません!』 射命丸文の絶叫と化した実況と鳴り止まぬ歓声の中、彼は地に伏したままの勇儀に手を差し伸べた。 「立ちな。手を貸してやるよ」 「…心配すんな」 よ、っと声を上げて、勇儀が立ち上がる。 「おいおい、無理すんなよ?」 「なに。そこらの奴とは鍛え方が違うさ…ほら。勝ったんだから、観客に愛想良くしなよ」 勇儀はレッドの右腕を掴み、高々と持ち上げさせる。 歓声が、一際大きくなった。 「…ちっ。こういうガラじゃねーんだけどなー」 そう言いつつ、満更でもない様子で左手も... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 真紅の吸血姫
その時だった。 「面白そうな連中が、面白そうな話をしてるじゃない」 幼くもそれに似合わぬ怜悧な声だった。 「私も混ぜてくれないかしら?」 幽々子は顔を引き締め、障子を開け放つ。 眼前に広がる、優雅な庭園。聳え立つ巨大な桜―――<西行妖>。 その枝に、一匹の蝙蝠がぶら下がっていた。 「盗み聞きとは、趣味が悪いわね」 気分を害したのか、呑気な幽々子にしては少々険のある物言いだった。 「御免遊ばせ、退屈でしょうがなかったもので」 驚いた事に、蝙蝠が返答する。 「…<化身(メタモーフィシス)>」 ジローが呟いた。 読んで字の如く、己の姿をまるで別の何かに変化させる異能力。 「吸血鬼の中でも、魔術に長けた者の得意技ですよ…」 「吸血鬼…?そういやさっきの声、どっかで聞いたような」 そこまで言って、レッドも思い至った。 かつて川崎市に降り立ち、ある意味レッドすら震撼さ... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 決意
~決意~ 医務室にて――― 「や…やめろ!俺が…俺が何をしたってんだ!?」 天体戦士サンレッドは四つん這いにさせられ、その態勢のまま四肢を固定されていた。 何故こんな事になってしまったのか、皆目見当もつかない。 「暴れてはダメよ、サンレッド」 海のように深く、静かな知性を感じさせる涼しげな声。 「勝ったとはいえ、貴方も相当なダメージを受けている。早急に治療が必要だわ」 「だから、なんでこんな事をする必要があんだよ!」 「あら、私のする事が信じられないのかしら?」 一本のぶっとい三つ編みにした、長い銀髪。 穢れなど欠片もない白磁の肌。 澱みなき流水を思わせる、清廉な美貌。 彼女こそは蓬莱山輝夜の従者にして幻想郷最高の医者。 今大会において医療部門の全権を任された女性――― 「まあ、任せておきなさい―――人呼んで<超天才激烈美人女医>八意永琳(やごころ... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 二回戦迫る
~二回戦迫る~ 医務室のベッドの上で、メディスン・メランコリーは目を覚ました。 何故だか、頭がズキズキする。ハンマーでぶん殴られたような鈍痛だ。 「う…うーん…?ここは…」 「気が付いた?」 目を開けると、そこには彼女にとって見慣れた顔があった。 緩いウェーブがかかる、碧の髪。可憐な面立ちには、穏やかな微笑み。 風見幽香―――<四季のフラワーマスター>の二つ名で呼ばれる、大妖怪。 「あれ…幽香?ここ…どこ?」 「医務室。貴女、頭を打って運ばれたのよ」 「頭…?そういえば、嫌な夢を見たわ。赤いチンピラが私に向けて脳天直撃セガサターン…あれ?」 限りなく現実に即していそうな悪夢であった。 「夢にしてはやけにリアルだった…」 「そう…酷く魘されてたわよ。怖い夢だったのね。可哀想に」 「あ…もしかして、ずっとここにいてくれたの?」 「勿論よ」 幽香はにっこりと... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 裏方、その奮闘
―――幻想郷最大トーナメント本戦は、遂に明日まで迫っていた。 参加者達が思い思いに時を過ごす中、トーナメントを成功させるべく、裏方の皆さんは今なお闘っていた。 その奮戦ぶりを、どうか見ていただきたい。 「―――あやややや。これはすごいですね、にとりさん」 鴉天狗の新聞記者―――射命丸文は眼前に聳え立つ巨大な建造物に目を瞠り、手にしたカメラのフラッシュを 次々にたいていく。 「ふふん、そうだろうそうだろう。我ら河童の科学力は幻想郷一ィィィィィッ!」 彼女のすぐ後ろでは、大きなザックを背負い、髪を二つにしばってハンチング帽を被った少女が胸を反り返らせて いた。天狗と同じく、妖怪の山に棲息する妖怪の一種―――河童である。 「この<超妖怪弾頭>河城(かわしろ)にとり―――お値段以上の仕事はさせてもらったよ」 幻想郷のあらゆる種族の中で最も科学技術に深い造詣を... -
天体戦士サンレッド ショートショート集2(サマサさま)
神奈川県川崎市より、遠く次元を隔てた先の異世界・ルーンハイム。 悪のデルティアナ帝国は、叛旗を翻した皇子ディランによってその野望を挫かれた。 もうボッコボコのギッタギタにされた。 見てて可哀想なくらいだった。 <もうやめてあげて>最終的にはそんな同情の声が上がる始末だった。 だが、悪は踏んづけても踏んづけても潰えることはない。 それはまるで、頑固でしつこい油汚れのように! 「ふふふ…ディラン。よくぞ決闘の申し出を受けてくれたな。流石は俺の宿敵だ」 セレスティア王国―――王都セイントリア。広場では二人の少年が向かい合う。 二人は全く同じ顔をしていた。 特徴的な銀髪。ややあどけなさを残しながらも端正に整った顔立ち。 違うのは、瞳に込められた意志。 「まだ懲りてなかったか…説教が足りなかったな」 揺るがぬ正義を宿すは、かつてセレスティアの王女ファラと共に神奈川県川... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 八強、集う
『さあ、会場の皆さん!二回戦の全試合が終了し、これにて本日の闘いが全て終了しました!』 未だ興奮のざわめきが収まらぬ中、それに負けぬ勢いで響く実況。 『あんな試合、こんな試合、色々ありましたね!…え?ほとんど見た覚えがない?それは気のCeuiよ。とにかく本日 の全24試合を終え、遂に準々決勝に8名が駒を進めました!』 「ふむ…確かにここまで長い道のりでしたね」 実況に同意し、妖夢も感慨深げに頷く。 「ほんの数時間の事でありながら、まるで半年ぐらいかかったような…」 全く妖夢は、何を言っているのか。 ほんの数時間の間の出来事を書くのに半年以上もかかるだなんて、そんなバカな話があるわけない。 ないったらないのだ。 「いやいや、構いませんよ。何せ私は<未来放浪ガルディーン>の続きを今なお待ってるくらい気の長い女ですから。 どうぞ、気楽にやってください」 「…あの、誰と話し... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ ヴァンプと幽香の密約・そしてとある吸血鬼の憂鬱
二回戦第一試合―――サンレッドと風見幽香の死闘。 それは、太陽の戦士の勝利で幕を閉じた。 興奮覚めやらぬ中、サンレッドは両手をゆっくりと下ろし、ようやく息をついたのだった。 『天体戦士サンレッド、一回戦に続いてまたしても大番狂わせをやってのけたぁ!幻想郷最強とも噂される風見幽香 を激闘の果てに捻じ伏せ、準々決勝への進出を決めました!まさに彼こそはドSを越えた超絶ドS――― 真・究極加虐生物サンレッドの誕生だッ―――!』 「フン!」 元ネタ通りに鼻を鳴らしてノリのいい所を見せるレッドさんである。 彼は倒れた幽香を見下ろし、口を開いた。 「どうだ、風見…最初に言った通り、俺の拳がおかしくなるまでボコってやったぜ…」 そう語るレッドの両手からは、ポタポタと血が零れ落ちている。 単に皮が破れているだけではない。折れた骨が、肉を突き破っていた。 「あと、もう少し…もう少しだけ... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 幕間劇(インターミッション)
予選から、丸一日が経過した。 重傷を負ったジローではあるが、吸血鬼―――それも齢百年を超える古き牙の再生能力は伊達ではない。 既に、己の足で歩き回れるまでに回復していた。 月灯りが照らす白玉楼の庭園。縁側にそっと腰を下ろし、坐禅を組む。 涼やかな風が頬を優しく撫でる、いい夜だった。 月の光は、彼の身体を優しく包んでくれる。 その祝福の中、しばしジローは思索に耽った。 「ジローさん」 「ん…?」 呼びかけられ、思索を中断する。そこには、半人半霊の少女が立っていた。 「御身体の方、もう大丈夫なんですか?」 「ええ。心配をおかけしました」 「か、勘違いしないでよねっ!べっ、別にあんたの心配なんてしてないんだからねっ!」 「…妖夢さん。属性は無闇にたくさん付ければいいものではありませんよ」 「そりゃそうです。眼鏡っ子でお嬢様で優等生で知恵袋で天然で健気でスタイル抜群でド... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 序
其処は幻想郷―――其れは、全てを受け入れる楽園。 現実世界から忘れられ、弾き出された者達が集う最後の場所。 これより始まるは、この妖しくも美しき世界で繰り広げられる物語――― ―――それは、現代から遡る事、実に数百年。 幻想郷にて。小雨が降り注ぐ中秋の頃。 庭先に巨大な桜の木を臨む純和風の屋敷。その縁側で雲に隠れた月を想うように天を仰ぐ、三人の女性。 「中秋の名月…とはいうものの、実際には天気が悪くて見られないのが普通なの。十年のうち、九年は雨が降って月 を隠してしまうのよ」 そう語るのは青白い死に装束に身を包む、儚くも清楚な雰囲気を持った少女。 肩口で綺麗に揃えた髪は、光の加減で雪のように白く―――或いは桜の花のように薄紅にも見える。 彼女はこの屋敷の主にして、名を西行寺幽々子(さいぎょうじ・ゆゆこ)。 その立ち居振る舞いは優雅にして幽雅。確かにここに... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 賢者が遺せしは
幻想郷には、多種多様の人知を超えた領域が存在する。死者の魂が彷徨う世界―――冥界もその一つだ。 そこには、とある巨大な屋敷が在った。 永遠に咲く事無き呪われし桜<西行妖>が聳える壮麗な庭園。 それこそは転生と成仏を待つ魂の管理を閻魔王より承りし西行寺幽々子が住まう<白玉楼>――― 「―――とはいうものの、普段はそんなにやることもないのよね。ヒマだわ」 幽々子は縁側に腰掛け、傍らに控えていた少女に愚痴る。 「面白き事もなき世を面白く―――なんて簡単に言ってくれるわ。あーあ、ヒマだわ、ヒマ、ヒマ。このままじゃヒマ すぎてゆゆちゃん死んじゃう」 「…幽々子様。私はそれに対して<亡霊の貴女が死ぬわけないでしょう>と創意工夫の欠片もないツッコミを返す べきでしょうか?それとも自分の事をゆゆちゃんと呼ぶのはイタイと忠言すべきでしょうか?」 気真面目な口調で語る少女の名は魂魄妖夢(こ... -
ダイの大冒険AFTER(ガモンさま)第二十話 ボブルの塔
~天界~ 「本来ならば、ダイに殺されたあの時点で余の野望は潰えたと思っていたが……」 肉体が甦り、威厳を取り戻しつつある魔族、そんな彼にベンガーナから逃げて来たモンスター達と偶然会った。 「な……!!!なんであんたが!!!???」 ヴェルザー軍のモンスター達にとって・・・否、おそらく彼を知るものが見れば誰もが驚愕するだろう。 姿こそ若々しく、鬼眼も見当たらないが、その風貌でモンスター達に正体が誰かを知らしめた。 「何で生きてるんだ。大魔王バーン!!!!」 彼の姿は”凍れる時の秘法”で保存されていた若いバーンの体が両目を開いた姿だった。 「貴様等は・・・ヴェルザーの部下か?・・・奴も地上の支配を始めたか。」 バーンは軍勢の中心に潜る。 「余にも奴とは違う目的がある。地上を崩壊させ、太陽を手に入れる。」 バーンは周囲にいたモン... -
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 全選手入場!
太陽と入れ替わりに、月の光が静かに大地を照らす頃。 燦々と輝く照明が、幻想郷最大トーナメントの舞台である闘技場を明るく彩る。 「いやーしかし、大した盛り上がりだぜ。よくこれだけ集まったもんだ」 既に満員と化した客席の一角で、一人の少女が呆れとも感心とも取れる呟きを漏らす。 真っ黒いトンガリ帽子に、魔法使いが着るような古めかしい白黒の衣装。気の強そうな瞳が印象に残る少女だ。 <普通の魔法使い>霧雨魔理沙(きりさめ・まりさ)―――<楽園の素敵な巫女>博麗霊夢と共に数多くの異変を 解決してきた英傑であり、この幻想郷では知らぬ者はいない悪童である。 <彼女に物を貸したら死ぬまで戻らない>は幻想郷の常識だ。実にジャイアニズム溢れる少女である。 「これだけ大掛かりな催しも珍しいからね…ま、ヒマ人が多いってのもあるでしょうけど」 体調が芳しくないのか、時折小さく咳込みながら... -
BATTLE GIRL MEETS BATTLE BUSINESSMAN 56-7
数日後。戦団所属の病院の廊下を、山崎と斗貴子が歩いていた。 グムンの毒を受けた女の子はここで治療され、どうにか一命を取り留めた。もうしばらく 入院の必要はあるが、後遺症の心配などはないそうだ。 胴体真っ二つだった山崎はというと、あっという間に修理されて元通りになってしまった。 山崎曰く、戦いでこうなることは珍しくないから、NS社にはスペアの部品が常に充分 用意されているとのこと。 だが、当然だが脳だけは取替えがきかず、あと一年もすれば腐敗してしまう。そうなれば 今度こそ、山崎にとって本当の死となるそうだ。 グローブ・オブ・エンチャントの性能はとりあえず確認され、パレットのように錬金術を使う 企業の存在も確認されたので、NS社は研究を続行。とはいえ、まだまだ武装錬金の 解明・開発には遠いようである。 パレットのホムンクルス製造工場は錬金戦団が急襲し壊滅。日本支社の犯罪に... - @wiki全体から「天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・前篇」で調べる