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遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十四話「聖都侵攻」
<白龍皇帝(ドラグナー)>―――海馬瀬人。<紫眼の狼(アメジストス)>―――エレウセウス。 二人のカリスマに率いられ、世界に叛旗を翻した虐げられし者達―――奴隷部隊。 戦闘には出られない女子供や老人を除いても、既に数百人を超える規模となっている。 数百人―――とはいえ、堅牢なる城壁で護られし風の聖都・イリオンに攻め入るには、無謀とすら言えない数字だ。 城壁のみならず、内部には数千もの戦闘要員が常駐している―――そして。 風神(アネモス)の血を引く英雄・イーリウス。彼の率いる部隊は、常勝不敗。古代世界において、最強と謳われる 生ける伝説。 難攻不落の風神の聖域―――対して、たった数百人の奴隷部隊。それだけ聞けば千人いれば千人が、奴隷部隊の 無残な敗北を予想するだろう。千が一万だろうと百万だろうと同じことだ。そして、その全員が愕然とすることだろう。 奴隷部隊... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十五話「聖都陥落」
「ほぉ~れほれ!奴隷諸君、頑張りたまえ!城壁はまだまだ完成していないよぉ~!」 「くそっ…!」 下劣としか表現しようのない笑顔で、神官―――幼い頃のミーシャを犯そうとした、あの変態である―――が、歯を 食い縛りながら重い石を運ぶ奴隷達を、哄笑しながら鞭打つ。 「うぁっ…!」 疲労の限界に達した奴隷が倒れる。それを見た変態神官が目を細めた。 「おやおやぁ?誰が休んでもいいなんて言いましたかぁ?イヒ、イヒ…これはお仕置きだねぇ?」 「や…やめ…うぎゃぁあ~~~っ!」 鞭が風を切り、奴隷を散々に打ち据える。皮膚が破けて肉が裂け、血が滲み出す。 「イヒ、イヒ、イヒヒヒ、サボったりするからこうなるんだよぉ、分かったかい?」 「う、うう…」 「さあ、諸君!もっともっと城壁を高く高く高ぁ~~く築き上げるんだ!もっともっともっともっともっとだよぉ! でないと... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十六話「宴」
無敵と謳われた城壁も砕け散り、今や豪奢な廃墟と化したイリオン。奴隷部隊は、駐屯地で待機していた非戦闘員や イリオンで新たに解放された者達も加えて歓喜の渦に包まれていた。 虐げられるばかりだった自分達が手にした、初めての勝利―――それも間違いなく歴史に残るであろう大勝である。 <白龍皇帝>そして<紫眼の狼>という巨大な力と偉大なカリスマあってのこととはいえど、彼らは自分の手で剣を 執り、戦ったのだ。そして、堅牢なる風の都の城壁をも打ち砕き、今は勝利の美酒に酔い痴れている。 焼き立ての骨付き肉(俗に言う漫画肉である)や瑞々しい果実にかぶり付きつつ、葡萄酒をまるで浴びるような勢い でガブ飲みする。 (フン。下品な宴だ…もっと品よく楽しめんのか、全く) 内心でそう悪態をつきながらも、海馬は不思議と悪い気分ではなかった。隣にいるエレフもいつになく楽しげだ。 「さあ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十話~第二十九話
第十話 ~ 第十九話 第二十話「魔法少女?とマスコット」 第二十一話「超古代においても普遍なる不良的対話」 第二十二話「世界で最も不毛な愛の形」 第二十三話「朗報と凶報」 第二十四話「聖都侵攻」 第二十五話「聖都陥落」 第二十六話「宴」 第二十七話「記憶の水底」 第二十八話「戦う者達」 第二十九話「死せる英雄達の戦い―――開戦」 第三十話 ~ 第三十九話 -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四話「凡骨の決意」
レスボス島の中心に位置する、星女神の神殿。 「城之内さ~ん!これ、あっちに運んでくださーい!」 「おう、任せとけ!」 「すいませ~ん、ここの掃除もお願いできますか?」 「おう、これ運んだらやっとくぜ!」 ―――城之内はここで、雑用をして働いていた。当面、遊戯と合流するのが第一の目的(海馬はいらねえ!)だが、 手がかりもなく探し回るにしてはギリシャは広いし、先立つモノもない。 「それじゃあ、こうしたらどうかしら?」 そんな迷子の城之内くんに、助け舟を出してくれたのが犬のお巡りさん…でなくて、ソフィアだった。 「星女神の神殿には各地から巡礼者がやってくるわ。その中に、あなたの友人を見たという人がいるかもしれない でしょう?或いは、本人が訪ねてくるかもしれない。だから、しばらくここで働いたらどうかしら」 というわけで、ソフィアの紹介により、城之内は星女... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十八話「戦う者達」
<結局彼は、運命の手から逃れられませんでした。されど、憐れむ必要はないのです。 私もあなたも、誰一人逃れられないのですから。めでたし、めでたし> ―――全ての歴史を知る黒き書物・その囁き――― 死せる英雄達の戦い。 其れは、神話の英雄達と現代の決闘者達の、壮大な戦いの戯曲である。 運命を切り開くのは誰の剣か―――或いは誰もが、運命の掌の上で踊る悲しき奴隷に過ぎぬのか。 神は黙したまま、何も語らず――― 「―――ごめんなさい。取り乱してしまって…」 イサドラはミーシャから離れ、涙を拭った。 「いえ、私は構いません…それよりもイサドラ様。先程あなたはレオンティウス様に、私の兄と闘ってはならないと 仰りましたが、それはどういうことなのですか?」 「それは―――」 イサドラは息子の顔を見つめ、口ごもる。 「母上。私がその男には勝てな... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十七話「冥王」
「なに…なにを言ってるの、エレフ…」 信じられないといった様子で、ミーシャは変貌したエレフに近寄る。 「アルテミシア」 エレフ―――否。<冥王>タナトスは、優しげな微笑を浮かべる。 「ァノ仔カラノ伝言ダヨ…スマナカッタ、モゥ傍ニィテヤレナィ。ト」 「エレフ…」 「違ゥ。サッキカラ言ッテルジャナィカ。我ハ冥王―――タナトス」 その姿が不意に消える。その次の瞬間には、彼は奴隷部隊の兵士達の眼前に立っていた。 「あ、あ、あ…」 死を告げる紫の瞳に魅入られ、奴隷達はガチガチと歯を鳴らす。 「畏レルナ。死ハ救ィ―――残酷ナ運命カラノ解放」 例ェバ、キミ。そう言ってタナトスは、一人の若い男を指し示す。 「キミハ戦火ノ中デ、家族ヲ失ッタ…父モ、母モ、マダ幼ィ妹モ」 「う…うう…!」 「奴隷部隊ニ参加シタノモ、自由ヲ勝チ取ルタメデハナィ―――死ニ場所... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十八話「再起」
アルカディア城の客間。遊戯は自分の胸元に手を当て、落胆する。そこにあるべきものが、ない。その喪失感が遊戯 の心を責め立てる。 「千年パズル…もう一人の、ボク」 あの闘いから、既に数日が経過していた。あれからどうなったのかは分からない。目が覚めた時には、自分はここで 寝かされていた。城之内に訊いた話では、オリオンが抱えて運んできてくれたそうだ。 「オレも一緒にな。あいつが一番大怪我してたってのに、無茶するぜ」 そう言って城之内は力なく笑った。 「海馬くんは…どうなったのかな」 「さあな。オリオンが言うには、エレフ…いや、タナトスは千年パズルを持ってそのまま消えてっちまったらしい。 後はもうオレ達を連れてその場から逃げるだけで精一杯で、海馬のことまでは分からないってさ」 ま、あいつのことだから生きてるだろ。その言葉には遊戯も迷うことなく同意した。 「... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第六話「兄として」
不気味な鳥の鳴き声だけが響く、深夜の山中。海馬とエレフは焚火を囲んで向き合っていた。 「海馬―――本当に、ミーシャはレスボスにいるんだろうな?」 「フン。オレも実際に見たわけではない。そう聞いただけだ」 海馬はブルーアイズの背にもたれかかりながら、ぞんざいに言い放つ。 「とはいえ、どうせ手がかりもないのだろう?ならば行ってみても損はあるまい。オレも当面は色々と調べ物を せねばならんからな。ひとまず貴様と行動を共にするのも悪くはないさ」 「ちっ。いい加減なことだ…まあいい。レスボスにもいずれは行くつもりだったからな。それよりも海馬、貴様 は一緒にいたという連中は探さなくてもいいのか?確か、遊戯と…」 「凡骨馬之骨之介負犬左衛門(ぼんこつ・うまのほねのすけ・まけいぬざえもん)だ。まあ奴のことだ、城之内 とかいうもっともらしい偽名を名乗っていることだろうがな…... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第一話「聖なる詩人の島」
窓から差し込む、太陽の光。城之内はそれを浴びながら、重たい目を擦った。どうやら自分はベッドに寝かされて いるようだ。どうしてなんだ?記憶がはっきりしない。 「あら、気が付いたかしら。気分はいかが?」 上品な女性の声。顔を横に向けると、声のイメージ通りの、清楚な妙齢の女性が微笑んでいた。 驚くほど美しいわけではないが、品よく整った顔立ち。深い知性を感じさせる物静かな笑みが、成熟した女性の 魅力を余すとこなく発揮している。丁寧に纏められた長い髪を、紅い薔薇の髪飾りが彩っている。 (はて、オレはこんな素敵なお姉様と一夜を過ごすほど甲斐性のある男だったのだろうか?) ―――そんなわきゃねー、と自分で納得し、なんか溜息とちょっとだけ涙が出てしまった。 「あの、オレ、なんでこんなところに?つーかあんた誰?そもそもここどこ?」 不躾にも程がある疑問文の連発にも、女性は... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十七話「記憶の水底」
「バカな…風神(アネモス)の加護篤き、あの城壁を…」 とても信じられないとばかりに目を見開くレオンティウス。 「しかし、あの都は東方防衛の要だ。そんなことをされて、諸国が黙っているはずがなかろう」 「はっ…当然ながら、アナトリアやマケドニア、トラキアといった国々が兵を差し向けましたが、尽く敗走に終わった と…」 「なんと―――!どうすればそのようなことが出来るというのだ!」 「詳しくは分かりません。しかし、奴隷達を率いる首領格の二人…剣神の如き太刀を振るう<紫眼の狼>と、光輝く 白き龍を従える<白龍皇帝>。その力は、まさに神仙の業と…」 「アメジストス…<紫眼の狼>だと…まさか!」 カストルは唾を飲み込み、遊戯達に向き直る。オリオンが硬い表情で答えた。 「ああ、間違いない―――エレフだ。そして、<白龍皇帝>ってのは海馬だろうな…あのバカ共め、なんつー... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十三話「朗報と凶報」
「ぐ、う、ううう…」 城之内は、尻を押さえて蹲っていた。長く苦しい闘いを物語るように、顔中に脂汗を滴らせている。 「じょ、城之内くん…」 「へへ…遊戯…そんな顔すんな…オレなら、大丈夫だ…ぐっ!」 気丈にも笑い飛ばそうとする城之内だったが、尻を襲う激痛は治まらない。 「くそっ…我ながら信じられねえ…まさか、あんな太くてデカいモノが、オレの腹ん中に入ってたなんてよ…」 (なんてことだ…くっ!オレがもっと注意しておけば…) 己の甘さを痛感し、闇遊戯も今さらながらに嘆く―――だが、遅かった。 全ては、あまりにも遅すぎたのだ…。 城之内は、ぜえぜえと荒く息をつきながら言った。 「まだヒリヒリしやがる…手強い相手だったぜ…一週間の便秘って奴はよ…」 そう。城之内はウ○コが太くてデカくてお尻が痛かったという話をしていたのだ。おホモな御方にヤられちゃったという... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二話「美しき射手」
―――遊戯は、腕に嵌ったデュエルディスクを気にしつつ、キョロキョロと町を歩いていた。あまりにも見慣れない 街並みである。<挙動不審になる(キョドる)>のも無理はない。 「ねえ…ここ、どこだと思う?やっぱり、現代じゃないよね…」 (ああ。恐らくは、古代ギリシャの世界なんだろうな―――何故かは分からないが、とにかくオレたちは、この世界 に飛ばされちまったようだぜ…) もう一人の自分も、相槌を返す。傍から見れば独り言なので、すれ違う人々は訝しげに彼を眺めているが、遊戯には 特に気にならないようだ。 (こうなると、城之内くんや海馬も心配だぜ。早いとこ探し出さないとな…) 「うん。ひとまず、町を見て回ろうか」 ドン!と、余所見をしていたせいか、人にぶつかってしまった。 「あ、すいませ…」 「すいませっじゃねっぞ、ダラァっ!」 「うわっ…!」 遊戯は... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第八話「星女神の巫女」
いつも通りの、平和なレスボス島の夜―――そのはずだった。 異変は、兵装の闖入者達。神域を穢す、罪深き者達――― 「大変だわ…大変だわ大変だわ大変だわ!」 「お、落ち着きなさいよ!私だって怖いんだから…!」 「フィ、フィリス様、大丈夫かしら」 「ここは、お任せするしかないわよ…」 巫女達は物陰に隠れ、怯えて息を潜めていた。そして。 「―――あなた方、夜分遅くにいかなる御用です」 星女神の神殿・入り口前にて、フィリスは立ち並ぶ兵装の男たちに向けて毅然と言い放った。 「ここを星女神・アストラ様の神域と知っての狼藉ですか!無礼は赦しませぬ!」 「ほお…勇ましいことだ」 兵士達の中から、一人の男が歩み出る。猛毒を宿す蠍を思わせる、奇抜な髪型の男―――スコルピオス。 「まあそう怖い顔をしなさるな。美人が台無しですぞ?我々は何も、貴女達を取って喰おうという... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十五話「星女神」
蠍の襲撃から、実に丸一日以上が過ぎていた。太陽の光が差し込み始める早朝。 「…ちっ」 星女神の神殿。あてがわれた部屋の中で寝転がり、オリオンはあの夜の光景をまたしても思い返す。 ―――いつまでも泣いていたミーシャ。フィリスの介抱を終えて様子を見にやってきたソフィアや巫女達に保護 された時も、ただ黙って俯いていた。 自分達は慰めの言葉もなく、ただそれを見送るしかなかった。 「じゃあ、何ができるかって…これしかねえな」 飛び起きて、まとめていた荷物を引っ掴み、部屋を出る。その横顔には、誰にも止めることはできないであろう 決意が宿っていた。 「あのバカを縛り付けてでも、ミーシャの元へ連れ戻す…それだけだ」 ミーシャのことは、ソフィア達に頼んである。自分なんかより、よっぽど彼女のことを気遣ってくれるだろう。 「…ミーシャ。ちょっとだけ待ってろ。次はきっと... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十話「凡骨の意地」
「―――小僧。いい度胸だ」 スコルピオスが剣を構え、城之内と向き合う。 「我ら全員で貴様を殺すのは簡単だが、ここは一つ、私と一騎打ちといこうではないか」 「へえ…意外と立派なことを言うじゃねえか。どういう風の吹き回しだ?」 「さあ、何故かな…強いて言えば、敬意を払いたくなったというところかな。貴様のその、身を挺して巫女を守ろう という心意気にな…」 「…………」 「貴様が勝ったなら、我らは大人しく引き揚げ、二度とこの島には足を踏み入れまい―――それでよいな?」 「ああ、それで文句はねえよ。いくぜ、決闘(デュエル)!」 城之内は大地を強く踏み締め、力強く叫ぶ。 (相手は一人だ…ならいけるぜ!まずはこいつで様子見だ!) ディスクに新たなモンスターカードをセットする。召喚されたのは、黒き鎧を纏う騎士。 「鋼鉄の騎士―――ギア・フリード!」 「ぬ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十七話「蠍の最期」
その日は、今にも雨が降り出しそうな曇天だった。 「嫌な空だ…」 王宮のテラスで、レオンティウスは嘆息する。 「全くですな。どうにも胸騒ぎがしますぞ」 彼の隣にいた、古強者の風格を醸す中年の男も重々しく同意する。 この男の名は、カストル。自身の兄・ポリュデウケスと共に若輩の頃から騎士としてアルカディアに仕え、かつては 兄と並んで<アルカディアの双璧>と呼ばれた勇者である。 ポリュデウケスは<とある事情>により、若くして騎士を辞任しての隠遁生活を送ることとなり、その後は妻と共に 没した。そして彼らの子供である、双子の兄妹の行方は、杳として知れない。 そのことに対し忸怩たる思いはあったものの、カストルは兄の分までよく働き、今ではアルカディアの大将軍として 勇名を馳せている。 レオンティウスも、幼少時より面倒を見てくれているカストルには未だに頭が上がらな... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十一話「断罪の時」
「遊戯…こいつらは…」 「分かってる。神殿の入り口で、巫女達やソフィアって人からあらかた聞いた」 闇遊戯の怒りに満ちた視線が、スコルピオス達を射抜く。 「神への生贄だの何だの…そんなことのために、城之内くんを、そしてたくさんの人を傷つけやがったのか…」 「そんなこと?くく…神の力を得るというのはそれほどの一大事なのだよ、小僧。何人かが血を流した所で、まあ 仕方がないことだと赦してはくれんかね」 「黙れと言ったはずだぜ、クソ野郎」 「―――ふん。そういう態度を取るか。おい!」 「はっ!」 スコルピオスが手で合図すると同時に、兵士達が矢を構える。城之内がそれを見て、顔を青くする。 「遊戯…!」 「くくく…如何に貴様が奇妙な術を使うとはいえ、この人数相手にたった一人では、どうにもなるまい!」 「ああ、そうだな」 闇遊戯はしかし、笑みすら浮かべて... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十八話「奴隷市場」
「うーん…」 レスボス島を離れ、本土の港町にて。 「ほれほれお客さん!こりゃいい品だよ!悩んでないで買った買った!」 露天商がひしめき合い、大勢の客でごった返す、青空市場。 その一角で、遊戯は並べられている商品を見ては唸っていた。ギンギラギンに輝くアクセサリー。遊戯はその中から 銀の腕輪を手に取り、首を捻る。 「遊戯…お前、それがそんなに欲しいのか?」 オリオンが呆れたように肩をすくめる。 「いや、ボクはそうでもないんだけど、もう一人のボクがね…<もっと腕にシルバーとか巻けYO!>だって」 「あいつ、こういうの好きだもんな」 「へえ、意外とオシャレさんなのね」 城之内とミーシャも興味を惹かれたのか、腕輪をマジマジ見つめる。 「あっそ…じゃあ、買っちまえよ。どうせそんな高いモンじゃねえんだろ?」 と、値段を見てオリオンは目を丸くした。慌てて... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十四話「そして、長き夜の終わり」
「フン…中々面白いことになったな」 「面白い、だと?何がだよ、テメエ!」 まるで視線で殺そうとでもいうような鋭い眼光で、オリオンが海馬を睨む。対して海馬は。 「決まっているだろう。そこでグズグズと泣いている女がだ。何もせずに泣いてばかり…悲劇のヒロイン気取りで、 実に楽しいことだろうな」 海馬は冷たく言い放ち、ミーシャを見据える。その冷徹な光に、ミーシャは思わず視線を逸らした。 「…オレを睨み返すことすらできんか。奴と…エレフと同じ紫の瞳でありながら、こうも違うとは。片や猛々しく 吠える狼、片や怯え震える仔ネズミか…フン、実に面白い」 「よせ、海馬!」 闇遊戯がミーシャを庇い、海馬の眼前に立つ。 「彼女がどれだけ傷ついているか、いくらお前でもまるで分からないわけじゃないだろう!その傷に塩を塗り込む ような真似はやめろ!」 「クク…甘いぞ、遊戯... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第九話「凡骨の咆哮」
「ふう…予定より、随分到着が遅れちまったな」 船から降りたオリオンがぼやく。既に深夜といっていい時間だ。 「ほんとなら、昼頃には着くはずだったのにね」 「ああ。おまけに何だか、嫌な予感がするぜ…くそっ。思い過ごしならいいんだが」 オリオンはいつになく苛立っている様子だった。遊戯も頷く。どこか…何かが、歪んでいる。そんな嫌な雰囲気を 二人は感じ取っていた。 (ねえ、キミはどう思う?) (オレも同じ意見だ―――どこか、キナ臭い気配を感じるぜ) もう一人の自分も、緊張を滲ませている。 (相棒!ここはオレに任せてくれ。何か、大変なことが起こっている。そんな気がするんだ) (うん…頼んだよ!) その瞬間、千年パズルが輝き<武藤遊戯>は姿を消した。代わりに現れたのは――― 「あれ…?遊戯。お前、なんか顔が変わってない?…なんで?」 「小せえことにこだ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十三話「闘う者達」
雨の荒野を抜けると、そこには一面の緑が広がっていた。 大地に根を張る巨木から可憐に咲く小さな花、果ては野菜やら果物やらまでおよそ整合性の欠片もなく様々な植物 が好き放題に茂っている。 誰かが手当たり次第、そこかしこに種を蒔いた―――そんな有様だ。 「お、こりゃ美味そうじゃん!ちょうど腹ペコだったんだよな、オレ」 「よせよ、城之内。冥府の物を食べると地上に戻れなくなるって話があるんだぜ?」 げっ、と城之内は手にした果物を放り投げた。 「城之内、オリオン、二人とも気を抜くな。恐らくはここにも冥府の番人が潜んでいることだろう」 「番人…あの仮面の人や女の子の例からすると、まともな人格は期待できないわね」 「まともな奴が、冥府の番人なんかやらねえだろ」 「まあそうだよね…ん?皆、静かに。何か聴こえない?」 遊戯に促され、一同は口を閉ざして耳を澄ませる。 ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十一話「冥府激震」
冥府の底のそのまた底―――其処は冥王の間。彼は一人、玉座に佇む。 銀の髪に、紫の瞳。携えしは一対の双剣。 かつて<紫眼の狼>と呼ばれた男―――エレフ。 その肉体はもはや冥王の器と化し、精神は闇深く眠りについた。 今の彼は冥王タナトス。それ以上でもそれ以下でもそれ以外の何物でもない。 彼はただ心静かに、座して待っている。その退屈など、彼には欠片ほどにも苦痛ではない。 彼は生まれ堕ちたその時から、ずっと待ち続けていたのだから。 何故、自分は存在しているのか。自分は、何をすべきなのか。 その答えを問い続け、待ち続けていたのだから。 そして今、彼はその問いに己なりの解を見出していた。 タナトスは顔を伏せ、一人呟く。 「母上(ミラ)…貴柱ガ命ヲ運ビ、仔等ニ残酷ナ運命ト痛ミヲ与ェルノナラバ―――我ハ其ノ命ヲ奪ィ続ケ、殺メル事 デ救ィ続ケヨゥ」 ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十三話「闇からの囁き」
「よお…ブサイクちゃん」 頃合を見計らい、オリオンがエレフに笑いかけた。エレフはミーシャから離れ、少し驚いたように口を開く。 「お前は…オリオンか?」 「けけけ、久しぶりだけどよ…相変わらず、ひでえツラだなあ」 「フン…人のことが言えたツラか、オリオン」 「残念でした、今の俺は泣く仔も惚れるハンサム様よ…ぷ、くくく…あっはっはっは!」 「ふ…」 静かに微笑みながら、エレフは闇遊戯達に視線を移した。 「キミが、遊戯か…それに…」 エレフは城之内を見て少し考え込む仕草を見せた。すわ何事かと城之内は思わず身構えたが、続くセリフに盛大 にずっこけることとなる。 「キミが…凡骨馬之骨之介負犬左衛門だな…」 「ぶーっ!?な、なんだ、そりゃあ!?」 「ぼ、ぼんこつうまの…」 「ほねのすけ、まけいぬざえもん…城之内、お前、本当はそういう名前だったのか... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十話「冥府に潜む影」
遥か地底深き亡者の国―――冥府。 その最果てで、タナトスはゆっくりと目を開いた。 「ヤハリ来ルカ…」 「愚かしい」 「愚かしい」 その傍らから響く声。黒尽くめの衣装に身を包む幼い少女が二人。まるで能面のように表情がない。 「神の力に触れてなお、刃向おうなど。人間風情が」 「神の力に触れてなお、刃向おうなど。人間風情が」 異口同音に放たれる侮蔑の言葉に、タナトスは眉を寄せた。 「μ(ミュー)。φ(フィー)。人間ヲ侮ッテハィケナィヨ…特ニ彼等ノヨゥナ相手ハ厄介ダ」 「そうでしょうか」 「そうでしょうか」 「ソゥダトモ。油断スレバ、足元ヲ掬ワレルヨ」 「買被りすぎでは?」 「買被りすぎでは?」 「フフ…カモシレナィ。ダケド彼等ヲ見ティルト、我ハ期待シテシマゥンダ」 「期待?何を」 「期待?何を」 「彼等ハ…運命ヲ越ェル存在ナ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十四話「そして、最後の場所へ」
暗く長い石畳の回廊。三人の足音と息遣いだけが、その空間を満たしていた。 「ちきしょう…なんでこんなお化け屋敷みてーな神殿を造りやがるんだ。もっとぱーっと明るくしやがれ!」 城之内はそう愚痴るが、ぱーっと明るかったらそれはもう冥府ではない。なのでお化け嫌いの彼としては身を縮めて こそこそ歩くしかないのである。肝の小さい男であった。 「…ここまで来るのに、三人になっちゃったね」 遊戯は不安そうに呟く。ミーシャも心細そうに眉を顰めた。 「大丈夫かしら、皆…」 「心配しなくたって、あいつらは簡単にくたばるタマじゃねえよ。前振りっつーか、伏線ってヤツさ。きっとオレ達 が絶体絶命大ピンチって時に<待ってましたっ!>とばかりに登場するつもりなんだよ」 「それはどうかな。現実は非情だ」 「それはどうかな。現実は非情だ」 「!?」 ぬうっと。それは、突然現れた... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十五話「鎖された心」
―――止まない雨が降りしきる荒野。 「…はっ…はっ…ぜぇっ…」 <狗遣い>の名を与えられた少女は爪先から脳天までズタボロになりながらも、かろうじて立っていた。その足元に 小さな黒い犬。プルー(百八世)―――狗遣いとしての魔力はもはや枯渇し、全力を振り絞ってさえただの仔犬程度 の存在しか産み出せなくなっていた。 「フン…しぶとさだけは褒めてやるが、もう飽きた」 対して海馬は、傷一つ負っていない。彼に寄り添う三体の白龍もまた、疲れた様子も見せずに翼を広げている。 まさに完封―――海馬は完全に、狗遣いを圧倒した。 「オレも先を急ぐのでな。貴様はここで終わりだ」 海馬が一歩踏み出す―――その時、足首に痛みが走った。僅かに顔をしかめ、それを見下ろす。 「…駄犬が」 今や地獄の番犬どころか、ただの番犬の役目さえ務まりそうもない小さな体躯と弱々しい爪牙。そんな脆弱な武器で、 プル... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第五話「死と嘆きと風の都」
風の都と呼ばれる街・イリオン。だが、紫の瞳の少年は思う。ここはそんな大層なもんじゃない――― ただの地獄だ。 ここは奴隷たちの部屋―――いや、部屋なんてご立派なものじゃない。何もない、だだっ広いだけの空間。 虚ろな目をした奴隷たちが、我が身を嘆きながら横たわっている。その中に、その紫の瞳の少年はいた。 彼の名は、エレフ。元は幸せな家庭で育ちながら、一転して奴隷に堕とされた少年。 鞭で打たれて、散々殴られて、痣だらけの惨めな顔。だがその目には、強い光があった。誰もが生きる希望を失い、 運命に屈する中で―――彼は、そうしなかった。 (俺は…こいつらみたいにならない。なってたまるか!) 自分たちを扱き使う連中と同じくらいに、彼は無気力な奴隷たちを軽蔑していた。牙を抜かれた、惨めな負け犬。 (生きてるくせに、死んでやがる…その腕はなんのためにあるんだよ。剣を握る... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十六話「友情の戦士達」
遥か遠く、過ぎ去りし時代。 若き王はその魂を邪悪なる力と共に鎖された。 無数のピースに分解(バラ)され、久の眠りへと囚われた。 (千の孤独が蝕む、暗く冷たい檻の中に、オレはいた) 待ち続けた。 数十年―――数百年―――数千年――― 無数のピースを束ねてくれる誰かを。 (そして…) 優しい瞳をした少年だった。脆弱そうでいて、芯に強さを秘めた少年だった。 (そうだ―――お前がオレを、呼び覚ましてくれた) (時に置き去りにされた、永すぎる闇) (その闇の中で、名前さえ忘れていたオレを―――!) 共に駆け抜けた、数多の闘い。時に心が折れそうな時も、それでも立ち上がれたのは。 (いつもお前が、オレを支えてくれていたから―――!) だから―――自分は、大丈夫だ。 どれだけズタボロにやられたって、何度だって。 諦めずに、闘える――― 「…正直、驚カサレタヨ」 ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十九話「奴隷達の英雄」
奴隷制度。 古代世界において、奴隷とは<生きた道具>である。現代人の感覚からすれば非道以外の何物でもないが、この時代 では、それは当然のことであった。 世界史の授業は居眠りの時間である城之内にも、それくらいの知識はある―――されど。 実際に見たその光景は、あまりにも生々しく、悲惨だった。 「…あんなんがまかり通って、いいのかよ…」 「いいわけねー。いいわけねーけど…仕方ないことだって、ある」 オリオンが苛立った様子で小石を蹴飛ばした。 「遊戯。城之内。お前らの時代じゃ、もう奴隷ってのはいないのか?」 「ボクらの時代でも、ちょっと前まではあったみたいだけど…今は、そういうのはないはずだよ」 「そう。いい世の中になったのね」 ミーシャは、やはり悲しげな顔で溜息をついた。 「けど、この時代はそうじゃないのよ。奴隷制度を快く思わない人だっていないわけ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十九話「ある夜の語らい」
「分かりました…もう止めますまい」 カストルは開き直ったかのように、そう言ったのだった。 「皆…どうか生きて帰ってくだされ」 「辛気臭い男だな、全く」 アレクサンドラは鼻を鳴らす。 「私は何も心配などせん。お前達を倒すのはこの私だからな―――さっさと用を済ませてこい」 交わした言葉は短くとも、その奥に込められた想いは、誰もが理解していた。それに深く感謝して、遊戯達は速やか に旅立った。目指す先は<死神>タナトスが支配する地―――冥府。 最後の戦いの時が、すぐそこまで迫っていた。 「さ、さ、さ、さあ皆…びびび、ビビってんじゃねえぞ…」 「お前がな…」 オリオンは呆れながら城之内をジト目で見る。城之内は生まれたての仔鹿もビックリなくらいガクブルしていた。 ―――かつてある男が冥府への扉を開いたとされる大森林・ラフレンツェの森。 ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十七話「紫眼の狼、再臨」
「どこから…間違っていたんだろうな、私は…」 エレフの目から、涙が零れ落ちる。 「本当に…今思い返せば…これでいいと思って選んだ道の…全てが、過ちだったとは…はは…笑えないな――― 最悪なのは…運命じゃなかった…何もかも運命のせいにした…私自身が最悪だったんだ…」 だから、どうか。 「せめて…最後に、責任を取りたい…これ以上、タナトスが…人を殺してしまう前に…」 「エレフ…待てよ、おい!」 「オリオンか…」 昔を懐かしむように、エレフは少しだけ笑った。 「奴隷だった頃に、いい思い出など何一つなかったが…お前と出会えた事だけは、幸運だったよ」 「な…何言ってんだよ、こんな時に。お前、それじゃ、まるで…」 まるで―――別れの言葉じゃないか。 「お前が我が友であってくれて―――よかった」 そして、エレフは海馬に目を向ける。 「海馬…ろくでもない事に付き合わせて、悪かっ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十話「魔法少女?とマスコット」
アルカディア北部の平原地帯。 北方より侵攻を始めた女傑部隊(アマゾン)は、アルカディア軍と激しい戦闘を繰り広げていた。 戦況は均衡し、長期戦の様相を呈していた――― 「アマゾンめ…流石にしつこいな」 自ら兵を率いて、戦場を縦横無尽に駆け抜けるレオンティウスは、彼らしからぬ苛立った様子だった。 「母上以外の女は苦手だ…粘着気質の女となれば、私にとってはもはや憎しみの対象ですらある…」 「そんなことを言っている場合ではありませんぞ、陛下」 彼の隣に陣取るカストルが、口を尖らせる。 「分かっているさ。この状況―――何か一つ欲しいな。味方にとっても敵にとっても予想外の事態。できれば我らに 有利に働くような…いや、そんなことを言っても始まらないな。それより、女王は…アレクサンドラは、まだ戦場に 出ていないのか?」 「はっ。今のところ、誰も彼女の姿を見... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十二話「世界で最も不毛な愛の形」
「城之内よ。腕っ節では、お前は私には敵わなかったかもしれん。だが、幾度倒されようとも尚も諦めず立ち上がる その姿に、私は真の戦士の姿を見た!」 「…へっ…褒め方が偉そうなんだよ、女王様…」 ボロボロの城之内は、泥と血に塗れた顔で、にやりと笑った。アレクサンドラもそれに笑い返し―――城之内を地面 に押し倒した。突然の事に目を白黒させる城之内に対し、彼女は魅惑的な女豹の笑顔を浮かべる。 「実に気に入った!我が城に連れ帰って私が直々に搾り取ってやる!…その前にこの場で味見してくれるわ!」 「な、何を搾り取るというんですかー!?そして味見ってナニをされるんですかー!?」 アレクサンドラはぽっと頬を赤らめ、照れくさそうに笑う。 「ふふ…分かっておるくせに、女子(おなご)にそのような破廉恥なことを訊くではないわ」 「や、やめろ!分かりたくねー!つーか何でこんな展開に... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三話「青眼の白龍・紫眼の狼」
―――夜も更けた、深い山奥。その中をひた走る男は、野盗だった。道行く人を襲い、身包み剥いだ挙句に殺す。 そんな最低な商売に愉悦すら感じる、最低の人種―――しかし。 「はっ…はっ…はぁっ…ひィィっ…!」 男は今、心底怯えていた。彼は、狩りを愉しむ側から、完全に逆の立場へと叩き落されてしまったのだ。 「なんだ…なんなんだ、あいつは!」 いつも通りの仕事のはずだった。仲間たちで周りを囲み、怯える獲物をゆっくりといたぶる―――はずだった。 誤算は、ただ一つ。あの男は―――紫の瞳を持つ、あの男は、とてつもない怪物だった。 まるで草刈でもするかのように、奴は、仲間たちの首を次々に狩っていった。助けようなんて思わなかった。 とにかく今は、逃げなくては…逃げなくては!それだけで頭がパンクしそうだった。 しかし、どうする?どうやって逃げる?このままでは、確実に追いつかれる... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十八話「The God Of Death」
その瞬間、天地が鳴動する。大地が揺らぎ、天に黒き雷光が迸る。 「な、なんだ!?」 「―――いかん!」 エレフが飛び起き、天を睨む。 「タナトスは私の中から出ていっただけだ…奴はまだ生きている!」 そして一際激しい雷鳴と共に、漆黒の雷が天を切り裂いて大地に突き立つ。否―――それは雷ではなく、先刻エレフ の身体から脱け出ていった、あの黒い瘴気だ。 それはもぞもぞと不気味に蠢きながら、次第に形を成していく。 細胞が生じ、心臓が脈打ち、血が湧き、骨が組み合わさり、臓物が収まり、肉が覆い、皮膚が張り巡らされ――― 彼が、その真の姿を露わにした。 闇そのものを具現化したような、黒のローブ。そこから覗くのは、枯れ木のように細い木乃伊の如き指先。 その静謐に整った面立ちは、異様なまでの血の気のなさと相まって、さながらよく出来た彫像のようだ。 人間達に死を告げる紫の瞳は、妖しいほどに... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十一話「超古代においても普遍なる不良的対話」
「へっ…大物登場ってわけか。相手にとって不足なしってね!気張れよ、レッドアイズ!」 ゴアアアアア!黒き竜が気勢を上げる。それを見たアレクサンドラは、コキコキと首を鳴らした。 「む…?お前は、その竜と一緒に闘う気か?私はてっきり、お前との一対一の勝負と思っておったのだが」 「は?」 思わず間の抜けた声を漏らす城之内。アレクサンドラは、ふうっと溜息をついた。 「少しばかり失望したぞ、オードブルくん…一騎打ちの申し入れに対し、そのような無粋な答えとは…残念ながら、 お前はそこまで大した相手ではないようだ。それなら私は、これで十分」 ポイとアレクサンドラは剣を捨て、ボクシングのような構えを取る。周囲からは怒涛のアレクサンドラコール。同時 に城之内に対して、怒涛の大ブーイングである。 「よい、よいとも。周りの者など気にするな、オードブルくん」 アレクサンドラは... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十二話「In The World Of Rain」
荒涼とした大地に降りしきる、土砂降りの雨。歩く度にバシャバシャと水溜りが泥を跳ね上げる。 「あの仮面オヤジ、ここを真っすぐ突っ切ればタナトスの所に行けるっつってたな。しかし…」 城之内は苦い顔で天を仰ぎ、忌々しげに舌打ちする。 「ったくよぉ…何だって雨なんて降ってんだ。ここは地下だろ?おかしくね?」 「冥府は死神・タナトスが支配する神域。我々の常識が通用する世界ではないということだ」 「まあ、居心地の良さなんざ期待してなかったけど。何も雨を降らすことはなかろうに…」 オリオンも雨に濡れた髪を鬱陶しがり、顔をしかめる。ふと、横にいる遊戯を見た。 「なあ、遊戯…お前、その髪型さ」 「え、どうかした?」 「この雨の中でも全然形が崩れてねえけど…何か、秘訣でもあんのか?」 「うーん、別に何もしてないけど…言われてみれば、ボクは何でこの髪型なんだろ…?」 ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第十二話「運命の双子 見守るは水月」
―――天空神・オシリス。闇夜を斬り裂き、雄々しく翔けるその姿を、ソフィア達も目撃していた。 「あれは…一体、何だというの…?」 常に泰然としているソフィアですら、それには唖然とする他なかった。完全に己の理解を越えた世界だった。 「神…」 小さく呟く声。それは、フィリスが漏らしたものだった。彼女は大怪我しているにも関わらずに身を起こし、畏敬 に震えていた。 「ああ…神よ…天空より来たれり偉大なる龍神よ…矮小なる我が身にひしひしと感じます、貴柱(あなた)の悪を 憎む御心と、正しき怒りを…か弱き我らのために、そして悪を断つために来てくださったのですね…」 なんか目がちょっとイっちゃってる感じだった。ソフィアはちょっぴり彼女から距離を取る。その時だ。 「フン…オシリスを召喚せねばならんほどの敵がいるとは思えんがな。遊戯の奴め、余程腹に据えかねることでも ... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十九話「死せる英雄達の戦い―――開戦」
「アルカディア…」 海馬と共に高台に立つエレフは、眼下に陣取ったアルカディア軍を燃えるような眼差しで見ていた。 「我が故郷にして憎き地…その死すべき者達よ…ついに貴様らを滅ぼす時がきた…!」 「クク…随分とおっかない顔だな?余程憎悪の根が深いと見える」 「…私を軽蔑するか?海馬よ」 エレフはどこか自重するように顔を伏せた。 「自らを育んだ祖国に対し、悪意と敵意しか抱けぬ私を、愚かと嗤うか?」 「オレは父を殺している」 唐突な告白に、エレフは息を呑む。 「血の繋がりも情の繋がりもない、義理の父だがな…オレはその男を、文字通り奈落に叩き落してやったよ」 「…………」 「今なお、奴に対しては憎悪しか感じない。父だから、祖国だからといって、それだけで無条件に愛や情など成立 するものか―――その怒りも憎しみも貴様だけのものだ。横から口を挟む気はないさ」... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第四十九話「ラスト・デュエル!(前篇)」
―――現世から遥か遠くに隔たる超空間。 「遂に」「終に」「目覚めてしまった」 「<黒き予言書>」「<終焉の魔獣>」「<歴史の支配者>」 其処では先刻、タナトスと矛を交えた詩女神六姉妹が、死神と人間の最後の闘いを見守っていた。 「最早、人間達の力では」「到底太刀打ちできない」「されど、タナトスも今は十全ではない」 「今なら、我々が加勢すれば」「冥王を斃す事も」「せこくね、それ?」 どこか白けたような末っ子の六女だったが、姉達はそれを黙殺した。 「では参りましょう」「これ以上タナトスに」「人間達を殺させるわけにはいかない」 「あの者達に」「力を貸して」「姉ちゃん達さあ。あたいはどーかと思うよ、そーいうの」 またしても混ぜっ返した六女に対し、残る五姉妹は流石に気分を害したようだ。 「―――ロクリア。貴柱(あなた)は何を言いたいのです」 最年長の姉・イオニアが代表して苦言を呈... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第五十話「ラスト・デュエル!(後篇)」
対峙する、王と神。 激突する、光と闇。 世界を照らす創世の女神―――ホルアクティ。 歴史を喰らう破壊の魔獣―――ベスティア。 「ぐ、う、う…!」 全身を襲う激痛に、闇遊戯は呻く。 (こうなる事は、分かっていたが…召喚しただけで、身体がバラバラになりそうだぜ…!) この世界においては通常の三幻神でさえ、召喚するだけでも体力を相当に消耗する。まして、その全てを融合させた ホルアクティ。その存在を顕現させるだけで、満身創痍の身体が悲鳴を上げていた。 「フフ…成程。ソンナ切リ札ヲ今マデ使ワナカッタノハ、其レガ理由カ…」 魔獣―――ベスティアと化したタナトスが、洞察する。 「肉体ヘノ負荷ガ大キ過ギル。恐ラク攻撃ハ一度ガ限界…其レデハ敵ヲ倒セナカッタ時ニ、窮地ニ陥ルダケダ」 「それは…お前も同じだろう、タナトス」 闇遊戯は、挑発するように言い放つ。 「お前とて、それほどの力... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第七話「雷神域の英雄―――そして暗躍の蠍」
この時代において、ギリシャ随一の大国にして雷神の加護を受けし雷神域・アルカディア。 その城下町で、戦場から帰還したアルカディア軍の凱旋が行われていた。その先頭、逞しい軍馬に跨った青年が 民衆に手を振る。 「おお…レオンティウス様だ!」 「レオンティウス様…!」 「ありがたや、ありがたや…」 ―――金のメッシュの入った、緩やかなウェーブの茶色い髪を風が靡かせる。精悍な顔立ちの若獅子を思わせる その青年の名はレオンティウス。 アルカディアの第一王子にして次期王位継承者。青銅の甲冑に身を包み、赤いマントを翻らせる姿は、まさしく 威風堂々。生まれながらの王者―――彼を見れば、誰もがそう思うだろう。 「―――雷を制す者…世界を統べる王となる…まさにあの御方のための神託じゃ…」 「何でも、レオンティウス様の雷槍(らいそう)の一撃で、千の軍勢が一瞬にして消し飛... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第一六話「死せる者達の物語」(第一部最終話)
『さて…まずは我が神域を穢す者達を懲らしめた功績を称えると共に、礼を言わせていただきましょう』 そう言われても、城之内は金魚のように口をパクパクさせるばかりだ。アストラはそんな彼に対し、安心させる ようにそっと微笑みかける。それだけで、ふっと全身から緊張が解けていくのを城之内は感じた。 『そして、これから更なる闘いへと身を投じるあなた達へ、せめてもの贈り物を…オリオン、弓を貸しなさい』 「はい」 恭しく弓を差し出すオリオン。手渡されたそれを、アストラは天に向けて翳した。その掌から、凄まじい気とでも いうべきものが迸り、それはオリオンの弓に吸い込まれていく。 『この弓に、私の力の一片を加えました…普通に矢を射るだけで、これまで以上の威力と速度が得られるでしょう。 そして、これを授けます…』 いつの間にか、アストラの手には光輝く矢が握られていた。その数、四本... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十六話「死せる英雄達の戦い―――最悪の結末」
十九年前――― レオンティウスは、泣いていた。 悲しくて、悔しくて、ただ泣いていた。 「母上…どうして?どうしてあの子たちはすてられたの!?ぼくのおとうとといもうとなのに!」 イサドラは、悲しげに俯いて首を振った。 「泣かないで、レオンティウス…どれだけ残酷な仕打ちだろうと、それが運命の女神の思召しならば、人はただそれ に従う他はないのです」 「なんで…神様は、なんでそんなことをするの?」 イサドラは答えられない。ただ、静かに語る。 「…運命は残酷です。されど、彼女を恐れてはなりません。女神(ミラ)が戦わぬ者に微笑むことなど、決してない のですから」 だから、レオンティウス。どんな苦難にも、勇敢に立ち向かいなさい。 「離れた者が再び繋がる時も、いつか訪れるでしょう―――きっと」 ―――予言の忌み仔として、双子の兄妹は産まれ、そして捨... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十一話「死せる英雄達の戦い―――破壊神光臨」
「フ―――このような闘いとも呼べぬ茶番、すぐさまケリを着けてくれるわ!」 天に向けて腕を翳し、海馬は咆哮する。 「往け、ブルーアイズ!貴様の力を見せてやるがいい!」 白き龍はその命令を忠実に実行するべく、巨大な口を開く。 「ブルーアイズの攻撃!滅びのバースト・ストリ―――」 「確かにスゲエよ、ブルーアイズ…けどな…そればっかで押し通せると思うんじゃねえ!」 城之内は叫び、一枚のカードを見せ付ける。 「む…!?そのカードは!」 カードがディスクにセットされると同時に、城之内の眼前に巨大な物体―――ゲーム機のコントローラーに酷似した 奇妙な機械―――が現れる。 「―――<エネミーコントローラー>!テメエも知ってるだろうが、このカードはコマンド入力で、相手モンスター を自在に操ることができる!」 言うが早いか、城之内は既にコマンド入力を終えていた。... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十話「死せる英雄達の戦い―――戦慄の白龍」
アイツのことが嫌いだった。 『よかろう…貴様の硝子細工の自信を粉々にしてやる!』 勝ちたかった。ぶちのめしてやりたかった。 『立ち上がることもできぬ負け犬め!』 だけどアイツは、とんでもなく強かった。それだけは、認めるしかない。 『<負け犬>から<馬の骨>に昇格させてやる!』 ふざけるな。オレだってやれる。オレだって――― テメエに、勝ってみせる。 アルカディア軍と奴隷部隊の戦いは、熾烈を極めた。 赤い紅い鮮血で染まった大地は、まるで死の渚の如く。 その上に横たわる、今は物言わぬ屍―――されど彼ら一人一人に、物語はあったはずだ。愛する者がいたはずだ。 されど今の彼らに接吻(くちづけ)するものは、愛する恋人ではなく―――餓えた禿鷹のみ。 その凄惨なる戦場の一角。 「くそっ!奴隷共め…よもやここまでの勢力になっていようとは!」 「... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十五話「死せる英雄達の戦い―――屠り合う英雄」 」
「なんということか…!」 カストルは眼前で始まった二人の闘いを、悲痛な面持ちで見守る。 「何故…何故、私は陛下を止められなかった…」 レオンティウスは、同行しようとするカストルを押し止めてこう言ったのだ。 「一騎打ちで敵の大将を負かすことができれば、この戦も終わる―――決して手を出すな」 それは、確かにその通りだ。しかし――― 「それでも…あの二人だけは、闘わせてはならなかったというのに…!」 されど彼らは出会い、刃を交えた。ならばそれも、避けざる運命だというのか。 「結果はどうあれ、生きていてくだされ。陛下…そして…エレウセウス様…」 「はぁぁぁぁっ!」 月灯りの元で狼(エレウセウス)の魔剣が輝く。それは宵闇を切り裂きながら、獅子の喉笛目掛けて踊る。 「せいやぁぁぁぁっ!」 対するは苛烈に振るわれる獅子(レオンティウス)の雷槍。横薙... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十二話「死せる英雄達の戦い―――巨神VS究極竜」
オレは最強のはずだった。 『滅びのバースト・ストリーム!』 なのに何故。貴様は。 『怒りの業火―――エクゾード・フレイム!』 無敵であるはずのオレの、更に上を往く? 『憎しみを束にして重ねても…それは、脆い』 バカな。闘いとは、怒りと憎しみをぶつけ合うものだ。どれだけ貴様が奇麗事を言おうと、それは変わらない。 必ず貴様を高みから引き摺り下ろし―――それを、証明してやる。 「お兄様…皇帝様、大丈夫かな…」 女子供といった戦えない者が集まった避難所。遠く離れた戦場の様子を見守りながら、ソロルは不安げにフラーテル の服の裾を掴む。 「心配いらないよ、ソロル」 フラーテルはその手に自らの掌を重ねて、微笑んだ。 「皇帝様は、あんなに強いんだもの…どんな奴が相手でも、負けたりするもんか」 そうだ―――あの方は、負けたりしない。だってあの方... -
遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十四話「死せる英雄達の戦い―――二度と還らざる、淡き少年の日々」
「あれが、星屑の矢…光龍を一撃とは、凄まじい威力だ」 「頑張って力込めすぎだろ、星女神様…」 闇遊戯と城之内は、その破壊力に舌を巻くばかりだ。そして。 「がはっ…」 苦通の呻きと共に、海馬は地に膝を付く。 青眼の光龍―――余りにも強大な存在であるが故に、それを打ち破られたことによるダメージのフィードバックも並の ものではなかった。全身の骨がバラバラに砕けたかのような激痛と、脳髄を掻き混ぜられたような眩暈。 それでもなお、海馬は眼光鋭くオリオンを見据えた。 「…まだだ…オレは敗れてなどいない…!」 「その根性には頭が下がるがよ…観念しな。ここまでだ」 レッドアイズから降りたオリオンは弓を構え、海馬に向けて突き付ける。奴隷部隊の者達は、動揺の余り動くことすら できなかった。 「命まで取りはしねえ!さっさと降参して、このバカげた集まりを解散させるこ... - @wiki全体から「遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十四話「聖都侵攻」」で調べる