つけ麺は冷たい麺をつゆに浸して食べる構成の食品であるという宿命から、食べれば食べるほど温かいつゆの温度は低下していく。 また麺というものはお湯で茹でるのでいくら完璧に湯切りをしたとしても水分を多く含むのが当然であり、その影響でつゆの味は麺をひたせばひたすほどに薄まっていく。 大前提としてつけ麺のつゆというのは食す前が最も温度が高くかつ濃いという事実がある。 つけ麺は麺をたっぷり食べるという精神のもと通常よりも大盛りになりがちであるという性質上、食べれば食べるほど満腹係数は増大していき食欲は低下するのであるが、その一方でつゆの味の薄味化、温度の低下という最悪の現象も同時進行していく。つまり食事の後半になるに従って食欲減退要素が等比級数的に増大していくのがつけ麺の本質なのだ。 これを後期つけ麺的問題という。 後期つけ麺的問題をいかに乗り切るかがつけ麺大盛り派の至上命題でありこれを完全に克服することが超麺人と定義された。 **克服へのアプローチ ***熱盛り つけ麺というものは麺が冷えているからつゆの温度の低下を招く。 ならば麺を冷やさず暖めた状態で食べればこの問題を克服できるのではないかという単純な発想法。 しかし時間をおけばやはり温度の低下を避けえず、また麺の薄まりという問題は完全に棚上げにしている。 たしかに熱盛りはつけ麺の魅力のひとつを開拓したが、後期つけ麺的問題の克服という観点においては様々な面において穴が多い大雑把な方法といえよう。 ***IHヒーターによる温度管理メソッド つゆの温度低下を防ぐために新たに考案された技法の一つ。 前述の[[熱盛り]]は一定の成果をあげたが、食べる人のスピードによって温度低下に露骨な差が現れる。 店側も悩んだ末に出した結論が[[IHヒーターによる温度管理メソッド]]であった。 時間でつゆが冷めてしまうのなら、常に熱を加えてしまえば良い。 この方法は、[[つけ麺のつゆはすぐ冷たくなってしまうんだね。仕方ないね]]という13世紀より続いていた難題をいとも簡単に解決してしまった。 このメソッドの登場により問題は解決するに至ったかに見えたが、至上命題である[[つけ麺のつゆの濃度低下]]には全くの無力であった。 ***冷たいつゆ どうせ冷めてしまうなら最初からつゆが冷たければ良いのではないかという大胆な考え。 これにより「麺に熱を奪われつゆが冷める」という事象をすべて封じることが出来る。 なにせ「最初からつゆは冷たかった」のであり「食べているうちに冷めた」わけではないのだから。 ざるそばから着想を得たコロンブスの卵的な克服法。 冷たいつゆと熱盛りを組み合わせると「食べているうちに最初よりつゆが温まっていく」という逆転の現象すら引き起こす。 しかしやはり「つゆの薄まり」に対しては無力そのもので後期つけ麺的問題を克服したとは言いがたい。 また「最初からつゆが冷たかった」というのは自らハードルを下げただけのことであり、克服というより単純に逃げではないかという厳しい批判もある。 ***焼け石法 あらかじめつゆに焼けた石を放り込むことにより、つゆの温度低下をふせぐ。 焼け石に水というくらいであるから冷たい麺にたいしてもかなりの耐性があると言える。 ストーンボイリング=石焼き鍋の調理法の流用。その歴史は古く縄文時代から行われていたようだ。 しかし前述のIHヒーターと基本原理は全く同じであり特に優れている部分があるわけではない。 また現代テクノロジーではなくわざわざ自然石を使うところが風流っぽくて嫌味であるという意見も無視できない。 さらにIHのように手軽に扱えないので焼け石は最初から投入される。そうすると最初はちょっと熱々すぎて適切な温度調整というのが難しいという問題点が生じる場合がある。自然というのはやっかいなものなのだ。
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