「俺と佐藤 672 56w4KY/h0」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

俺と佐藤 672 56w4KY/h0 - (2006/10/21 (土) 14:18:59) のソース

*** 672 名前:初投げ適当 投稿日:2006/09/07(木) 12:15:52.36 56w4KY/h0 
カタッという音がして、マグカップが置かれた。 
気まずさに背を押されるようにして、立ち上がる俺…いや私? 
席を立とうとしたその動きを、佐藤の腕によってさえぎられた。手早く2人分のマグを奪われる。 
「片付けとくから座ってろ」 
「いいって、客にそんなことさせられるか」 
「うまいお茶いれてもらった当然のお礼だ」 
腕まくりしてカップを傍らに置いて、そこで奴の動きは止まった。 
ちょっと様子を伺おうとのぞきこもうとして怪訝になる・・・機嫌悪いんかな…? 
左腕の時計を外すために、佐藤の目が俯く。 
視線だけ落とし、長い腕は腰の位置のまま時計を外すのは奴の癖だ。 
変化する前の身体の時は、何度羨ましく思ったことか。 
「まだつらいんだろ、身体」 


*** 673 名前:初投げ適当 投稿日:2006/09/07(木) 12:16:52.46 56w4KY/h0 
「あっ・・・うん・・・」 
視線に気づかれたのか、顔をあげられて振ってきたのは気遣う言葉。 
やっぱり気付かれてたのか…。 
「それお気に入りなんだから、割るなよ」 
「俺は皿洗いは上手いんだよ」 
笑った佐藤は腕時計を俺に預けた。 

俺の女性化が始まったのは、同室の佐藤が合宿の間だった。 
夏休み、人も疎らな寮で1人きりの誕生日にはげしい眩暈。…もしかしてとは思っていた。 
女性化は15歳でくる奴もいれば、17歳でくる奴もいる 
たまたま、俺がババを引いただけのことだ。 
誕生日にやってきたそれを俺はベットで堪え、ずっとそれが終わるのを待っていた。 
眩暈、吐き気、骨がきしむような痛み。それらが去るのをどこへも出かけずにやり過ごす。 
しかし、痛みほど長く感じられる時はない。俺はただひたすら、眠った。 


*** 678 名前:初投げ適当 投稿日:2006/09/07(木) 13:26:53.34 56w4KY/h0 
「おい、大丈夫か?」 
気遣う声に気づいて目をあげようとしても、顔をあげられない。 
「ごめんな…」 
弱々しい声しか出ない自分の声に触発されたのか、視界が揺らめく。 
宥めるように差し出された手が、躊躇うように止まったのを見てやはり…と思った。 
「気持ち悪い、だろ…」 
泣いたらいけない、涙がでそうなのに気づかれたらいけない。 
わざと視線をあわせないように胸のあたりを凝視していた瞳をぎゅっと閉じた。 
「帰ってきていきなりこんなのいたら、そら気持ち悪いよな」 
着替える時。鏡をみる時。そして、シャワーに入る時。 
いやおうなく目に入る、変わり果てた自分の身体。 
「まー、童貞だったし俺?」 
「…開き直るか、そこで」 
「だって相手もいなかったし、もう女になっちゃったし」 
「こら、おまえな…」 
佐藤の手を掴んで、自分の胸に押し当てて顔を覗き込んだ。 
「それに俺、けっこーいい身体になったと思わない?」 
「・・・・・・」 
しばしの絶句の後、ニヤリと笑った佐藤は手をさらっと動かした。 
「・・・え?」 
そのまま胸の形をなぞるように動く手を叩きかえした俺の抵抗は、長く続かずに右手一本で壁際に追いやられる。 
顔が赤くなっていくのが恥ずかしくて、何するんだアホとでも言おうとした唇は深く口づけられることで制止される。 
唇が離れそうになる度に、逃れようとしてまた深いキスが落ちてくる。 



*** 679 名前:初投げ適当終了っ 投稿日:2006/09/07(木) 13:27:36.41 56w4KY/h0 
「ほら、いいことあったろう?」 
「う、うー!」 
「なに唸ってやがるんだ、気持ちよかっただろ?」 
気障ったらしい言葉に、思わず俯いた。 
・・・この野郎、俺のルームメイトはこんな奴だったのか…。 
思ってる間にも、鎖骨の下のあたりから首へ背中へと流れていく不穏な手。 
ポカスカ殴って叛意を示そうとすると、あっさり腕を外した佐藤にもう1度強引に顎をとられた。 
視線を捕らえてから、瞼にキス。こめかみに、そして唇にキス。 
「タイムリミット」 
「ぉ、おまえなぁ・・・」 
勝手にすき放題しやがって、何を言いやがるんだこいつは。 
「あー!畜生、何で女になるかなお前は」 
「お前と違って、童貞で悪かったな!」 
「連呼してる単語を除けば、赤い顔、潤んだ目でいっても、可愛くしか見えねぇよ」 
「脳に虫でもわいたか佐藤…」 
ため息をついたら、押さえ込まれていた手をとられた。繋ぐように重なる手を見て、華奢になった自分の手との違いが否応にも目に入る。 
変わっていく自分の身体についていけない思考を落ち着けようと、目を閉じた…その後。 
手の甲に柔らかい口づけられる。 
「おまじない」 
「何のだ、このアホ!」 
「おまえの身体が早く落ち着くように」 
・・・会話が成立しない。 
俺の身体が落ち着いたらなんだというのだ。 
唇をつけたまま、目だけをあげられる。その視線が気恥ずかしいのが悔しい。 
「はやく落ち着いてくれないと、イロイロできないし?」 
不穏な言葉に身の不安を感じた俺は、心も女性化してきたんだろうか…。 

これから、どうなるんだ俺--------。
目安箱バナー