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抗う者共 ----  くすくすくす。  暗い部屋。ほの明るい蝋燭の灯火に照らされながら、その道化は笑っていた。  ゲームの管理を統括する者、と言っても実際の所、準備が終わってしまえば何がしかの問題が起きない限りは余りする事が無い。  その為、過去──つまりはこれまでのゲームについて夢想する事が男にとっては最大の娯楽だった。  思い出すのは、前回のバトル・ロワイアル。開催された中で一番の数の反逆者を出し、道化の片目を義眼にした男を輩出したゲーム。  あのゲームは本当に面白かった。思わず自らの役割を忘れてしまうほどに。  最も。それで転生により更なる力を得た者達の参加が禁止とされたのは道化にとって少々興冷めだったが。  まぁ、仕方の無い事だろうな、とも思う。 「面白い男でしたね」  顔に傷のある、剣を得意とする赤い髪の男…追い縋る者(チェイサー)だった。  最初はその男は、さんざ殺しまわる殺人者だろう、と道化は思っていたけれども。  だが、全く予想の裏を──道化さえも考え得なかった立ち回りを黒い男はこなした。  その男は、殺すだろうと思っていた者達を守るばかりか、更には脱出に向けて参加者を纏め上げ── 結果として、道化や他の管理役に参加者の討伐令が下る──つまり、主催者側が陥落寸前にまで追い込まれたのはいい思い出だ。  お陰で、思いがけず、殺人者達を主催者側に引き入れる、と言う思いつきを閃いてしまった程だ。  (因みにその時の優勝者は、主催者側が肩入れした殺人鬼だった)  道化の記憶は過去に立ち返っていく。  ── 『やれやれ。貴方のお陰で今回のゲームは大波乱でしたよ。私共にとって、ですが』 『そりゃ良かったじゃねぇか。こんな幸せゲームなんざ終わっちまうにこしたこたぁねぇ』 『ですが、貴方は最早一人。他の皆さんは──おっと、私共の手駒は別ですが──他の管理者と相打ちにほぼ討ち取られてしまった。  王手詰み(チェックメイト)──実に惜しかったですが、残念ながら貴方もここまでです』  にやり、と黒の男は道化を前にしてさえ不敵に笑っていた。片手にはツルギが煌いていた。  投擲された短剣を走りながら叩き落した男がツルギを振り上げ振り下ろし、道化がそれを受け止める。  石畳を蹴り、剣戟剣戟剣戟。一歩も引かぬ。しかして一度も斬られず受け流し切り返す。虚実織り交ぜた剣舞。 『本当にそう思うか?』 『勿論。チンピラ如きに負ける道理はありませんよ』 『じゃあ、お前はここで死ぬな』 『どうしてです?』 『お前が目の前の相手を見間違えてるからさ。俺はチンピラなんぞじゃねぇ──騎士だ』  ──  結局、その闘いに勝利したのは道化だったが。  彼は代償に片目と、それから少なくない手傷を負ったのだ。(勿論、その目以外は全て癒してしまったが)  道化は、男がその片目を貫いた時の言葉を覚えている。  即ち。『俺がここでくたばったとしても手前等は、いずれ死ぬさ。手前等に向けられてる剣は俺達だけじゃなねぇ』と。  『生まれる前からの付き合いだしな』とも。  ──勿論、道化も全土に反体制組織が潜伏している事は、知っている。だが、質実ともに取るに足らない。  愉快じゃないか。と彼は思う。  そんな哀れな有象無象如きが、麗しき女王陛下を口にするのだ。 「ですが、結局の所──貴方は私の片目を潰した『だけ』ですよ」  くくく、と道化は笑う。  この男にしては珍しい事に──それは勝ち誇った勝者の表情だった。  有象無象共にしても、既に数多くの者達が処刑されている。勿論、極限までの苦痛を与えた上で。  所詮はあの男が口にした言葉など、只の世迷言だろう。 「さてさて。此度の喜劇はどのような展開を見せるやら。一人たりとも逃げ出せぬ素敵な素敵な芝居で御座い」  何時もの言葉を呟き、道化は笑った。 ---- [[戻る>第二回NG]]

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