バトルROワイアル@Wiki内検索 / 「2-136」で検索した結果

検索 :
  • 2-136
    136.上等な肉 灯台の頂点。 今そこには、一羽の鷹がいる。 その鷹は弓を提げ、辺りを見回す。 ―――さぁて、聞いた話しに間違いがなけりゃアイツが居るのはこの島だ。 とっとと行ってやりてぇのは山々だが、流石のオレサマも手掛かり無しじゃぁ見つけられん。 ……そうだな。 島に残ってる物好きな同族から、色々聞いて回るとするか。 そして、鷹は灯台から西に向け飛び立ち。 一刻ほど飛んだところで、それに気付いた。 ッ!? 風を切る音。 聞こえた瞬間その鷹はそれが何による音かを直感し、それをわずかに視認するとすぐに回避行動を取る。 少しばかりの痛みが走り、頬を浅く裂いたのは一本の矢。 ♂ローグは茂みの中から空に向けて弓を構える。 空には一羽の鷹。 正確に狙ったつもりだったが、その鷹は避けた。 自分の狙いが甘かったのかもしれないが。...
  • 2-138
    138 彼女は弱みを見せはしない 黒焦げの燃え滓となった♂BSの死骸に土を被せながら、♀アルケミストは素早く胸中で計算を始めていた。 (これならまだ、初心者用ガードの方がマシだったわね……) 使えないにも程がある。俺は戦闘専門だから任せておけとか大口を叩いていたくせに、あんなひ弱そうな♂剣士に殺されて、なんて情けない男なのだろうか。 しかも、死体の後始末を私にやらせるなんて何様のつもりだろう無能のくせに。 人目が無かったら、蹴りの一つでも入れてやりたいところだ。 これならお預けにしておいて正解だったかもしれない。愚図を飼っていられるほど、今の状況に余裕はないのだし。 そう……余裕は無い。私の盾として使える人間が、一気に二人も減ってしまったのだから。 ♂BSを埋めた穴の隣に、これまた似たような穴を掘っていた♀BSがダンサーだったモノへ丁寧に土を被せていた。♀BSの顔...
  • 2-133
    133 ミッシング・マップ [第2回定時放送より30分以内] ざざぁと静かに打ち寄せる波が、心を落ち着かせてくれる。 海は穏やかだ。晴天にきらめく日差しも心地よい。 隣ではデザートウルフの子供が暢気に、砂浜をごろごろと転がり回って遊んでいる。 その空間だけを切り取るならば、そこはとても平和な空間であった。 しかし。 「・・・・・・困った」 傷はまぁいい、雀の涙ほどの効果ではあるがヒールで多少痛みは和らいだ。強調する部分は「多少」。 いつの間にか昇っていたお日様が、服もある程度は乾かしてくれている。強調する部分は「ある程度は」。 彼女――♀アコライトはたった今、GMジョーカーの定時放送が流れてきたことによって目を覚ましたのだが、問題はその定時放送だった。 新たな禁止エリアが発表された。♀アコライトもすぐに地図を確認しようとしたのだが、そこで地図は♂クルセイダ...
  • 2-137
    137 姉妹[第2回放送前] どうしようもないほどの悪夢。ううん、違う。これは現実。忘れようとしても忘れられないあたしの過去。 首を鎖につながれ、翼をもがれた一羽のあわれな大鷲がオリの中で好奇の視線にさらされている。 人の姿をしているのに口から出る言葉はたどたどしく、鳥と話すときにだけその口はなめらかに動いた。 サーカスの観客はそんな大鷲の一挙手一挙動に沸き返る。けれどそれは決して喝采ではなくて、嘲笑に過ぎない。 そう、あたしはただの見世物だった。 観客の受けが悪ければその日の食事はパンのひとかけらすら与えられず、鞭打たれ、 団員の虫の居所が悪ければ、熱湯をかけられ、蹴られ、唾を吐き捨てられた。 そのうちにあたしは人をまともに見ることができなくなり、 月日が流れ、あたしは人を見るだけで知らずガクガクと震えるようになっていた。 そんなある日のこと...
  • 2-135
    135 人ではない者達の遭遇  ずるり。ずるずる。  ずるずる。ずるり。  薄い、無臭の粘液を足跡として、蟲は進んでいた。とうに血の後は地や草木にふき取られている。  獲物を求めてしばらく、奇妙な気配をやや遠くで見つけてからは本能的にそちらへ向い出した。蟲にとっての獲物よりは近い種の王の下へ。  ずるり。ずるずる。  ずるずる。ずるり。  ずるり。ずるずる。  ずるずる。ずるり。  ふと、ただ草木だけが立ち並ぶだけの周囲に小さな異変が起きた。行く匹かの小さな小さな羽虫が、蟲を見つけ観察するかのように遠巻きに回りだしたのだ。  空中のそれを察知する術を持たないのか、それとも無視しているのか、蟲は変わらず進む。  ずるり。ずるずる。  ずるずる。ずるり。  ずるり。ずるずる。  ずるずる。ずるり。  ずるり。ずる… 「ほう」...
  • 2-134
    134 数奇な出会い[第2回定時放送後] 2回目の放送で彼女の名前が呼ばれるであろうことはわかっていた。 そのことで♀騎士の笑顔が、また遠いものになってしまうこともわかっていた。 この世界では死んだ人間が生き返ることはない。そして殺したのは他ならない、この俺だ。 だけど─── 『まずは・・・♀剣士さん』 なにも一番最初に彼女の名前を読み上げることはないんじゃないかと思った。 おそるおそる顔を♀騎士の方へゆっくりと向ける。 ほら、やっぱり。 ♀騎士は出会ったときの今にも泣き出しそうな顔に戻っている。 いや、あのときはたしか、本当に泣き出しちまったんだっけ。 一見勝気そうに見えるつり目がうっすらと涙を湛え、こぼれ落とす準備を始めている。 小さくすぼんだ口がかすかに震えながら、けれど泣き出すことを懸命にこらえているようにも見てとれる。 ♀騎士の...
  • 2-139
    139 殺せっ [第2回放送前] この島に来て、はじめての夜が明けた。 気になったことといえばどこからか梟の鳴く声が聞こえたくらいで、 それ以外はバトルROワイアルの名にふさわしくない、本当に平和な夜だった。 けれどローブの中に隠し持ったスティレット、刀身を浸食した赤黒い色が俺に現実を、 この島における絶対不可侵なルールを俺に教えてくれる。 スティレットを右手に握り締めたまま、獲物を狙う蛇のようにゆっくりと視線を左隣りに流す。 疲れ果てているのであろう、貪るように眠り込んでいる俺と同職の女がひとり。 つるんと長くのびたまつげが閉じきった目蓋に、けして起こさぬようにと自己主張しているように見える。 お世辞にも色気があるとは言えない体つき、 短くまとまった薄い褐色の髪がこの魔導師の少女にまるで年端もいかぬ少年のような印象を与えている。 しかし、彼...
  • 2-130
    130 GMの疑念[放送直前] 『つまり、貴方は夢の中でこの幸せゲームらしきものを主催していた、と言う事ですか』 『え、ええ。そう言う事になりますね。…所詮夢の出来事ですけど』 「ふむ…」 文書化された盗聴記録を読み終え、GMジョーカーは切れ長の目をゆっくり閉じた。 椅子に深々と背を預け、机に脚を乗せて天井を振り仰ぐ。 そのまま長い沈黙が流れた。 「どうしました?彼女が疑わしいのは間違いないと思いますが」 記録文書を持ってきたGM橘がせっつく。 しかしGMジョーカーは視線を下ろそうともしない。 「これで全部ですか?」 「全部とは?」 「彼らの会話ですよ」 何か物足りなそうに言うジョーカーに、GM橘は少々いらだたしげな顔をした。 これだけあれば充分ではないのか。 「前半は分かりません。私が聞いたのは報告があってからですから。それ以前の部分については...
  • 2-131
    131 進め、生きるのならば [放送直後] 何処からか響く道化の声。 告げられる死者の名の中には、もちろん『彼女の名』も含まれていて。 ――♀クルセイダーさん。 ♂騎士はその名が聞こえた瞬間、彼の前で慟哭する青年へと視線をやった。 少しだけ落ち着いてきていた♂アルケミだったが。その肩が、再び震えだす。 (あぁ、♂アルケミ。本当にお前は俺と似ているな) もちろん死んだ大切な人のために泣くとはいっても、二人に違いはあったが。 ♂騎士は、手にかけてしまったことへの後悔。♂アルケミは、ただ虚ろに絶望する。 共通する感情は――この理不尽なゲームへの怒り。 慰めの言葉もかけてやることができずに。ただ、ほとんど見知っていない少女の為に祈りを捧げる。 ♂アルケミがこんなに大切に想う娘だ。きっといい娘だったのだろう。 ♂騎士はぼんやりとそんなことを考えていた...
  • 2-132
    132 人殺し達の戦い [第2回放送直前] 青箱に手をかける♀ノビを♂アサが止める。 怪訝そうな顔で口を開きかける♀ノビの口を、♂アサは手で塞ぐ。 「……人が来た。お前はここで待て」 そう小声で言って、すぐにその場を立とうとする♂アサの動きが止まる。 ♀ノビが♂アサの手を握ったままで居るからだ。 一瞬振り払おうと思った♂アサだったが、すがるような表情の♀ノビを見て考え直した。 『……くそっ』 心の中だけで舌打ちしながら、♀ノビの手を握り返す♂アサ。 「良く聞け。お前はそこの茂みに隠れて、俺が合図するまでその場を動くな」 「は、はい」 「そして俺が『貫け』と叫んだら、その場から真っ直ぐ前に向けてソードを突き出せ。腰の高さでソードを両手に持ち、体当たりする要領で全力で突っ込め」 その指示の内容に驚く♀ノビ。 「それがお前の役目だ。それさえ果たせば最悪の事態も回...
  • 136
    136.仇をもとめ・・・ 傷の手当てをして爆発の中でも無事だった荷物をまとめ。 ♂騎士の形見となったコットンシャツを身に纏い、無形剣を帯びて♀騎士は歩いていた。まだ傷は癒えきっていない。 ♀ハンタをみつけ、♂騎士の仇を討ちたくてたまらなかったが、さすがに時期尚早と言えた。 (まずは傷を癒して、十分に動けるようにならないとな。今のままあのハンタに挑んでもやられるだけだ。) (♂騎士・・・。お前のおかげで、わたしは恐怖からも、命までも救われた。絶対に仇は取るからな・・・。) わずかな時間ではあったが、相棒であった♂騎士を思い出し。また涙があふれそうになる。 きっと唇を引き結び涙をこらえてまた歩きだす。あるくたび、体のあちこちが痛む。 (せめて傷が癒えるまでは、あのPTに世話になるべきだったかもしれないな・・・。) (もう過ぎ去ったことを考えても仕方が...
  • NG2-13
    復讐者と殺害者 一日目 夕刻前~夕刻  一人の男と一人の女。バードとグラリス。  けれども、そこに在るのはロマンスではなく交わされる鋭い視線だった。  水平に構えられた大柄のボウガンが、互いに互いの急所を狙っている。  落日は近い。遠く血の匂いがした。死が近く感じられる。そんな状況。  口を開いたのは、詩人だった。言いつつも片手で羽帽子を正す。 「血の匂いってのは消えないものでゲスねぇ。アンタ、一体何人殺してきた」  グラリスは、その言葉に眉一つ動かさない。詩人は言葉を続ける。 「答えない。堪えない。けれど応えるのは、貴女が手にした連弩って訳ですかぃ、アイアン・メイデン。  まぁ、それでもいいでしょうさ。ですが俺っちはそうムザムザと殺されはしませんぜ?  むしろこっちから御首(みしるし)を頂戴する勢いでさ」  それはそうだろう。とグラリスは思う。...
  • 詳細情報男性
    ...と戦闘(捕食目的)(2-136)→策を悟られ、逃げられる(2-148) I-6で忍者、悪ケミを襲撃→忍者を殺害(2-169) G-7で♀ノビを殺害(2-197) F-6で♀BSPTを襲い(2-224)、♀BSを毒状態にするが自らも足を負傷し離脱、痛み分け(2-226) F-6で♂スパノビを再度襲う(2-244)が、♀アルケミにクロスボウで殺される(2-247) 020.♂アルケミスト <初出:2-020話> <死亡:2-208話> =特徴= [容姿]BSデフォ・青(csm 4j0g50k2) [口調] [性格] [備考]BRに反抗するためゲームからの脱出を図る、ファザコン気味?、半製造型(2-055)      メマーナイトなし?(2-187) =所持品= マイトスタッフ(2-055)→♂プリーストが持つ(2-208) 割れにくい試験管・空...
  • 詳細情報特別
    ...6で♂ローグと戦闘(2-136)→危険を察知し飛び去る(2-148) E-5でミストレスと戦闘、撃退する(2-203) ※BR参加者とは見なされない。
  • 2-113
     113.誰ぞ罪を償うか  がきぃぃん。  前触れ無く響いた金属音に♂アルケミストは振り向いた。  まず最初に彼を襲ったのは剣と剣が打ち合ったその音であり、次は混乱だった。  なぜなら。そこに居たのは冒険者であるなら誰しも見慣れている衣装の女性──つまり、カプラサービスの職員。  普段の温厚な眼差しが剥げ落ち、冷たい殺人者の目をしたグラリスが、♀クルセイダーと剣を打ち合わせていたので。  ♂アルケミの思考が混乱から覚めるのとほぼ同時にぎゃりぃっ、と言う音。滑る刃金に火花が散る。  彼は、とっさに手にしたマイトスタッフをグラリスの両手剣に叩き付けた。  ♀クルセイダーの得物は、一対一では両手で扱う剣に対しては余りも不利なので。  これは不意打ちだったらしく、驚いた様な顔でグラリスが弾かれたバスタードソードを両手で押さえ込んだ。 「…っ!!矢張り少し無茶だった...
  • another2-13
    another 追憶の彼方 「おにーさーん、コレもう一本追加でー」  空っぽのワインボトルを指さして、マジシャンらしい少女が店員に声をかけた。 「それ3本目だろ? やめとけよ」  テーブルに向かい合わせに座る若いアサシンが溜息を付く。  それほど大きくないテーブルの上に彼女が開けたワインボトルと彼が飲んでいるマステラ酒のボトルが並んでいるせいで、つまみに頼んだトマトサラダとほぐした蒸し鶏を置く場所すら狭い。 「別にいいじゃない? 誰かに迷惑かけてるわけじゃあるまいし」  悪びれもせずに、彼女は店員が持ってきたワインをグラスに注いだ。 「一昨日も別の酒場で男3人相手に呑んだらしいな? ……相手を酔い潰したから良いものの自分が酔い潰れたらどうするつもりだったんだ」  蒸し鶏を器用に箸でつまみ上げて口に放り込み、グラスを傾けながら...
  • 詳細情報女性
    現在の状態  詳細情報 男性冒険者 女性冒険者 特別枠参加者 その他の人物 021.♀ノービス 022.♀スパノビ 023.♀剣士 024.♀マジシャン 025.♀アーチャー 026.♀アコライト 027.♀シーフ 028.♀商人 029.♀騎士 030.♀WIZ 031.♀ハンター 032.♀プリースト 033.♀アサシン 034.♀BS 035.♀クルセイダー 036.♀セージ 037.ダンサー 038.♀モンク 039.♀ローグ 040.♀アルケミスト 021.♀ノービス <初出:2-011話> <死亡:2-197話> =特徴= [容姿]髪型 ノビデフォ(2-011) [口調] [性格] [備考]死んだふり使用可(2-050) =遺 品= ポイズンナイフ(2-174)→♂ローグに奪われる(2-197) 包丁(♂ローグの手向け品)(2-197) ...
  • 2-114
    114.Devotion 私は、弱かったんだろうか。 薄れてゆく意識の中で、♀クルセは思っていた。 喉からひゅうひゅうと空気が漏れ、熱いものが流れ出していく。 私はここで死ぬんだ。 あなたを守ると言ったのに。 暖かな血と共に、命が流れ出していく。氷のように冷たい死が、全身を犯していく。 あの夜の底よりもなお暗い闇が、自分を飲み込もうとしている。 怖い。 鼻歌を歌いながら、道化師がやって来る。 怖い怖い怖い 9人分の死体をぶら下げて、後ろに4人を引っ立てて、鎌を担いでやって来る。 怖い怖い怖い怖い怖い そしてゆっくりと告げる。さあ♀クルセさん、お迎えに上がりましたよ。 怖い助けてこんなの嫌お父様お母様どうして死にたくない誰か――!! ぽつ、と胸に熱が広がる。ぽつ、ぽつ。 闇に包まれていた私の意識が一気に開けた。 ♂アルケミさんが泣いている。私を...
  • 2-148
    148.殺人者VSファルコン 「この・・・・・・トリ公が・・・!」 ♂ローグは、全身に作った細かな傷口に苛々していた。どれも浅いものだし痛み自体は気になる程ではないが、相手ははじめに矢が一発掠ったきり無傷、自分はこの有り様。一方的にやられっぱなしなのが、彼にとっては癪だった。 とはいえ、彼の対峙している相手――ファルコンは、標的が小さい上に動きが素早く、何より空を自分の領域とするその攻撃は、360度立体的な軌道から成り、未だに掴めない。このまま攻撃を外し続けると、無駄撃ちしてしまった矢もバカにならない。 人間様より狩り辛いじゃねぇかよ、と♂ローグは吐き捨てた。 だが、こいつは野性の動きではない。自分を狙っている人間を恐れず、逃げるどころか挑発に乗るように攻撃を仕掛けてくるとは。 何より、野鳥は鳥のくせに滑稽なヘアバンドをつけていたりはしない。 「・・・・・・オイ...
  • 2-115
    115.Land Seeker 放送後の島の最南端… 海を見下ろす岬の先端に、闇色の半径4メートル程の球形が形成されていた。 月光が皓々と辺りを照らす中、周囲の闇より遙かに暗いそれは、見方によっては底が見えぬ穴のようにも見えるだろう。 そしてあまりに不自然な『それ』の中心に、 「むう、こんなものかの」 やや不満げに眉を顰ませる女性…ミストレスはいた。 背の薄く光る蜻蛉のような4枚の羽と赤く輝く双眸は、彼女が人外であることを物語っている。 リーン…リーンリーン…… 波の音に混じって流れる高周波音…羽から発する震動音にあわせるように闇色の何かは形を変える。 時には空に浮かぶ雲のように、時には海底の砂泥のように。 …変幻自在なそれが何なのか語るまでもないだろう。 苦手な者(例えば♀ローグ辺り?)が間近で見たら卒倒すること請け合いである...
  • 2-184
     184.破戒 二日目宵の口  父親が死んだ。  不思議と、余り悲しいとは思わなかった。  世辞にもいい父親ではなかったけれど、多分そのせいでは無いと思う。  きっと、そのせいじゃない。  きっと──きっと、そのせいなんかじゃない。  言い聞かせるように何度も言葉を転がす。  そのくせ♀BSは、一しきり酒でも煽りたい様な気分だった。  二度目のサヨナラにも乾杯だ。丁度、先程まで雨も降り注いでいて。  ひどく寒い。回復したとはいえ、体力は普段に比べれば落ちているのだし。 「お天道様も泣いてたのかね」  呟いた。彼女とその同行者は立木の影で雨をしのいでいた。  結局、♂ハンターには追い付けなかった。山歩きへの慣れの差であった。  酷く暗い。彼女以外には誰も何も口にしなかった。  正直に言えば、彼女もまた彼らを責める事が出来る様な状況ではな...
  • 2-110
    110.眠れ、愛しき人よ 【朝方】 森の中に埋もれるようにして建つ小屋。 一度は激情に駆られて逃げ出したその場所に、♂騎士は今一度足を踏み入れた。 「♀プリ……」 床に広がる夕陽のように赤い血。倒れ伏す相棒――愛しい彼女。 中の様子は血が乾いているという違いこそあれ、彼に悪魔が降りた夕暮れのままだった。 転がる彼女の遺品――少女の日記と未開封の青箱。 それを拾い上げ、彼は自分の胸に抱きしめた。 そして、魂なき♀プリーストに視線を戻す。 一人倒れる彼女は、本当に孤独で、寂しそうで―― 「ごめんな、こんなところに一人にして。……寂しかったろ」 ゆっくりと彼女を抱き上げる。 氷のように冷たい体が、彼女の死を♂騎士に改めて認識させた。 「……馬鹿だな、俺」 わかっている。殺したのは他の誰でもない、この自分だ。 木陰に遮られることなく、日の光を...
  • 2-178
    178.紅の騎士 [2日目夕方(雨が上がる前)] 雨が降れば、移動をしようとする人間は減る。 だがそこを狙って、あえて移動をして他人を襲おうとする人間もいる。 そのような人間が、雨をしのぐに最適であろう集落を狙うのは当然のことだ。 ♂騎士も、もちろん警戒を怠ってはいなかった。 だからこそ逃げ場のない小屋の中ではなく、雨宿りの場所を軒先へと移したのだ。 しかし――かつての恩人が、彼を襲うなどとどうして想像できようか。 命の恩人との再会を喜んだ彼が、あっさりと♂クルセイダーの接近を許してしまったのも無理はなかった。 「気づいたか。なかなかの反応だ」 奇襲を避けられたというのに、眉一つ動かさずに♂クルセイダーは静かに呟いた。 「……俺は、警戒してたからな」 避けた、とは言っても深い傷にはならなかったというだけだ。♂アルケミストは血の滲む肩口を抑え、顔を歪めた。...
  • 2-105
    105 梟【深夜~明方未明】 ほっほう。 礼には及ばない。ただ教えただけさ。この道を真っ直ぐ進むと、魔術師風の優男と遭遇するだろう、とね。歩みは遅いしこの位置からはどんどん遠ざかっている。出遭いたくなければ君達のほうが歩みを止めればいい。今のところ、ほかには付近に人はいないからね。 何、我々は鳥だ。渡鳥達を伝わるからね、我々の情報網と、その伝達の速さは君達の想像以上なのさ。 ほっほう・・・話には聞いているよ。鷹想いの心優しきハンターがひとり、この島に迷い込んでいる、とね。 だから・・・安心しなさい、夜はわたしのような一部の夜行性の梟達しか活動はしていないが、夜が明けさえすれば。 この島にいるすべての鳥達は、君の味方だ。 我々にできる事など限られてはいるが、せめてその限りの中では君を助けてみせよう。 ・・・ほっほう、名前かい。人は皆、相手を理解するために名前を訊くね。...
  • 2-126
    126 プライベート・レッスン?  [2日目・早朝] G-5に位置する、砂地交じりの草原。 そこにまばらに生える木の下に、♂ハンターと♀アーチャーは座っていた。 だがその様子はいつもと少し違っている。 いつも過剰なほどに♂ハンターにくっついている♀アーチャーが、珍しく彼に背を向けて座っているのだ。 不機嫌そうに頬を膨らませながら。 「なぁ、いいかげん機嫌を直してくれないか」 「王子様が悪いんですよ! 嫌がるあたしに無理矢理あんなことさせるからっ」 「えーと…誤解を招く言い方はやめてね……」 +++ 事のはじまりは今から少し前。 危険区域のこともある。定時放送が流されるまで下手に動かないほうがいいだろう、という考えから二人は未だにG-5にいた。 「荷物の確認も、弓のメンテナンスもした。  他に、放送を待つ間何かすることはないかね。……そ...
  • 2-170
    170.小さな運 [2日目夕方] しとしとと降り続く雨が男の体を濡らしていく。 ゆっくりと男は歩を進めながら、時折あたりを警戒する。 男はわずかに痛むコメカミを右手で軽く抑えながら歩いていく。 男の左手には鞘に収められた獲物、ブレストシミターが握られている。 (運が・・・よかった、な) ♂クルセははずせば武器を諦めるつもりでシミターをグランサモンクに対し投じた。 シミターが運良く奴にあたれば最良、外れて木にあたり剣の魔力が発動すればそれもまた良し。 投擲自体には自信はあった、しかしシミターはグラサンモンクに当たることはなかった。 (不幸中の幸い、といったところか・・・) だが天は彼に味方した。 投じたシミターはグラサンモンクのすぐ横にあった木に突き刺さり、そして剣の魔力が発動した。 だ...
  • 2-175
    175.雨と葛藤 ♂マジは迷っていた。 あの狂った♂Wizが……正しい方向を教えてくれたとは…限らない……! …だが……彼としても…実験を遂行するには……俺が死んだら困るはずだ… 考えろ…考えろ……! しと…しと… 気がつけば雨が降っていた。 いくつもの分岐をあらゆる角度から考え、しかしいまだ結論は出ない。 ……俺を殺さないように配慮したと考えれば……♀マジと遭遇できるように正しいことを教えただろう…… しかし♂Wizが逆の方向で別の人影を見かけたとすれば……万一を思って別方向にいかせるかもしれない…… 大体……俺と♀マジを組ませたら……自分に反抗するという可能性を考えているかもしれない…… いや…もしかしたらまだ奥の手を……そもそもマジシャン2人で勝てる相手ではないかもしれない…… …ぐっ……時は刻一刻と過ぎていく…… この隙に……♀マジが移...
  • 2-122
    122 Encount! 「うぅー、お腹が痛いー」 後ろから聞こえてくる情けない声を無視して♂セージは森の下生えを踏みしだき枝を払う。 手にしているのは支給品のソードブレイカー。本来はこんな山刀のような所業に使うものではない。 武器に魂があるならば泣いていることだろうが、そんなものにまみえる機会があれば謝っておこうと結論付けた。 形跡が残るような歩き方はしたくないのだが、後ろの♀商人の体調を考えると致し方ないか、とも思う。 「ぅうーー」 朝食を食べて歩き出してしばらくしてから続いている重低音のうなり声の原因は全くの自業自得であった。 とはいえ、見捨てていけるほど♂セージは冷血漢ではなかったようで、いつもより多少険しい顔をしつつも 彼女を気遣って道を作り作り行軍することになっているのだ。 「たーすーけーてー…」 「自業自得です。その腹痛は...
  • 2-162
    162.野良犬の往く先[二日目午後(雨の降り出す前)] しくじった―― 全身を苛む雷撃の痺れと背中を走る痛みよりも、仲間の存在に気付けなかった己の凡ミスが口惜しくて、ひび割れた眼鏡の裏でグラリスは涙を零していた。 (なんて……なんてこと……) 細かい裂傷だらけの身体は、関節のあちこちから油の切れた機械のように軋みをあげている。一歩進むごとに全身が焼けた鉛を流し込まれたみたいに痛みと重さを増してゆく。 増してくる身体の重さに比例して、意識にも段々と靄がかかる。恋人の抱擁めいた優しい睡魔に、疲労の溜まった膝が勝手に屈しそうになった。 (寝るなっ。シャンとしなさいっ!) 強く唇を噛み、グラリスは睡夢の園に堕ちかけた意識を強引に引きずり上げた。口内にじわりとにじむ血が粘っこい唾と混ぜ合わさって喉に絡み付く。熱を帯びた肺が野良犬みたいに荒く掠れた息を吐いた。 (……野良犬か。...
  • 2-164
    164.女王の往く道 [2日目午後(雨前)] 忌々しい道化が。どのようにして血祭りにあげてくれようか。 麗しき女王蜂は、苛立ちを隠すこともせずに歩を進めていた。 殺気と怒りの色に、彼女を取り巻く羽虫たちも脅えるように距離をとっていた。 「この狭くもない島の中で器を早々に見つけ出すとは。さすが貴女と言うべきですかねぇ」 背後から聞こえた声は間違えるはずもない。憎き道化のものである。 ミストレスの殺気が一気に膨れ上がる。常人ならば一目見ただけで脱兎のごとく逃げ出すだろう。 「道化よ。器にまで封呪を施すなどという姑息な手を使いおって……よほど殺されたかったとみえる。  むざむざ殺されにくるとは都合がよいわ。おぬしには一瞬の死など生ぬるい。じわじわとなぶり殺しにしてくれようぞ」 ばちばちと音を立て、ミストレスの手に魔の雷が収束する。 それを見てもジョーカーは...
  • 2-123
    123 イレギュラー [1日目深夜] ジョーカーは、島の南東部に広がる岩場の上にいた。 「おやおや……こんなことになっていたとは」 切り立った岩の並ぶ中に、地面が赤く染まった一角がある。天に向けて鋭く突き立った 岩の中ほどに、その首輪の持ち主は百舌の早贄のごとくぶら下がっていた。 ゲーム開始時点から一度も動いていなかったその反応が先ほど消え、不審を抱いて来てみれば この有様だ。万に一つの偶然、と言うしかない。ランダムで開いたポータルの先は不安定な岩の上。 状況を把握する間もなくバランスを崩し、そのまま少し下の岩にグサリというわけだ。 音声記録には悲鳴と衝撃音、その後には苦しげな息遣いだけが残されていた。鋭い岩に体を貫かれ 身動きもとれず、ただ死を待つだけだったのだろう。この時間まで生きていたのは、急所だけは外れていたからか。 「まあ、50名のうちには違いありませ...
  • 2-124
    124 素敵な朝を  朝日に急かされて、私は目を覚ます。  何時もの一日がまた始まる、って心のどこかで信じながら。  けれど。この悪夢はまだ覚めていないらしい。  開いた眼に移るのは、プロンテラの町並みじゃなくて。  私のしたぼく──、子バフォでも無くて。  痩せた、黒い頭巾に半ば包まれた顔。  それから、朝日と海から吹く風に揺れている遠い木々だった。 「やあ、お早う」  と彼が悪ケミに言う。 「ん…おはよ」  寝ぼけた頭で答え、それから自分が見張りの途中で眠ってしまっていた事に悪ケミは気づいた。  さっ、と顔が青くなり、続いて言い訳が幾つも電光石火に閃いて、けれども自分が言い訳がとても下手だと言う事に思い至った。  頭がぐしゃぐしゃして──実際、手入れもせずに一日動き回ったのだ。どのような惨状になっているかなんて考えたくもなかった。 そこの...
  • 2-157
    157.相容れぬ殺戮 何人もの手練れの暗殺者。 罠に加えてモンスターの放たれた大部屋。 壁の見えない複雑な迷宮。 アサシンギルドに存在するあらゆる障害を越え、3人の男がアサシンギルドマスターの前に立っていた。 鋭い眼光を3人に向け、まずギルドマスターが言葉を発する。 「……随分と派手にやってくれたようだが、女王の親衛隊がわざわざ何の用だ」 それを受け、そのうちの一人の男が一歩前に出る。 一礼し、胸に手を当て話す。 「いえ、我々はGM……親衛隊ではありません。 その使い走りとでもお考え下さい」 別の一人が前に出て、続ける。 「GMジョーカーの命により、昨日より♂アサシンのBR参加前の行動を調査しておりました」 もう一人が前に出て、同じように続ける。 「BRの機密を王国の者より聞き出した者がいます。 そして、その...
  • 2-140
    140 ♂WIZの思考(嗜好) [第2回定時放送後] GMジョーカーによる2回目の茶番が終わる。 1回目は9人、2回目は8人。一昼夜で、すでに17人もの人間が還らぬ魂となってこの島をさまよっていた。 片眼鏡(モノクル)を左目に煌めかせた黒髪の男が、ふぅーっと大きなため息をつく。 ため息の理由など推して測れよう。彼にとってみれば貴重な実験体が17体も失われたのである。 魔術師ギルドが、ただ禁じられている研究内容であるという理由だけで稀少な異端学派の書物を焚書にしたときも大いに嘆いた彼ではあったが、 今回の失望はそれ以上であった。 未だひとつの献体も入手できず、無為な時間を過ごしたことに気付いた彼は苛立ちを消すためであろうか、 左手のスティックキャンディをぺろり、ぺろりと舐めながら、なにかを思案しているようであった。 おそらくはこれから先の方針を考え...
  • 2-119
    117 助祭の失敗~拝啓何某様リターンズ 一日目 深夜  拝啓神父様。  何となく何処かで聞いた事のあるような文句でごさいますがお加減如何でしょうか?  ♂アコライトです。  先に襲撃者によって離れ離れになった同行者達との合流も果たせず、また彼らの安否も容として知れない事に 僕自身も苛立ちを覚えるばかりでありますが、そもそもからしてこの殺人ゲームに巻き込まれると言う悲運に見舞われ、 また僕一人では何一つ出来る事とて無く只、夜明けと皆を待ちながらじっとしているのみでした。  ところが。  突然がさりと僕の前の茂みがなったかと思うとそこから思いもかけなかった来訪者がやってきたのです。  一瞬、先に出合った珍妙な弓手二人か、はたまた僕の下僕などとお名乗りになられた美しい人かとも思いましたが、 もしその方々であれば、まさかむさ苦しい顔で筋肉で張らし切った服を着て...
  • 2-180
    180.剣よりも強い物[2日目昼~雨] 時を数時間ほどさかのぼる。 『ここへ来るまでに、遠目にですが集落らしき物を見かけました。彼の傷も治療したいですし、そこまで戻りませんか』 グラリス撃退後、♂シーフの傷が浅いことを知りつつも♂セージは言った。 まず急ぐべきことは筆記具の入手。その為には他の参加者と遭遇する危険を承知で人家を探さざるを得なかったのだ。 彼が見た集落はすでに大半が禁止区域になったようだが、まさか禁止区域に全体が収まるはずもない。はみ出ている部分も当然あるだろうし、北から来た♀Wizや♂プリ達は民家の気配さえ目にしていなかった。 当然の選択として♀Wiz一行は東へと向かう。 そして、彼が言っていたよりもかなり手前で民家を見つけた。 そのころには空色が怪しくなりつつあったこともあり、彼らは安全策を採ってそこへ向かった。 …地図上ではF-3...
  • 2-189
    189.デバッガー 森の頂ともとれるその場所には、一本の巨木がそそり立っていた。 木は樹齢がどれほどなのか検討もつかないほど雄大で、多少の雨風ではびくともしそうになかった。 木根の太さも半端ではなく、それがうねるように地面を這っているさまは、誰が見ても圧巻であり、自然の力というものを肌で感じずにはいられない光景だった。 根っこが作った天然のうろもやはり相当に大きく、人が二人はいってもまだお釣りがくるほどの空間となっており、 雨をやり過ごす二人にとってこれ以上の避難所はないと言って良かった。 ♀スパノビと♀ハンターの二人は紆余曲折の末に、最初に雨避けをしたこの場所までもどっていたのだった。 雨宿りのために他の誰かがこの木に近づいて来る危険は考慮しないでもなかったが、むやみやたらと歩いて回れるような天候ではなかった。 ♀ハンターの鳥と会話ができるという能力の...
  • 2-167
    167.ギャンブル[2日目昼] それは突然の邂逅だった。 大きな起伏の頂点へたどり着いた瞬間に起きた、お互いにとって必殺距離での。 一方はゲームに乗っており、もう一方もそのことを知っていた。 にもかかわらず、戦端は開かれなかった。 双方がお互いの実力差を正確に認識し、狩る側と狩られる側があまりにもはっきりしていたから。 「さて、あまり手を取らせないでいただけるとありがたいのですが」 その死神じみた男は言った。 こいつだ。こいつが♀マジの言っていたキ○ガイWizに違いない。 ♂マジは背筋を冷や汗が流れ落ちるのを感じた。 「キキキ。丸焼きト八つ裂キ、毒デ悶死のどレがイイ?」 「私に毒を使うスキルはないですよデビルチ君」 なんだ。なんなんだこいつは。 恐怖と混乱で思考が斜め上へと走り出す。 どうしてデビルチなんて連れているんだ。 召喚?召喚したのか?...
  • 2-144
    144 Goodbye my princess 毎日の日課だった弓の練習。 それを終えて家に戻ると、家族みんながおいしいご飯を作って待っててくれた。 あたしはそのころはまだ弓が上手で、パパにもパパの友達にも、いつも褒めてもらってた。 厳しいけれど、強くてかっこよかったハンターのパパ。 優しくて、自慢できるくらいきれいなダンサーのママ。 弓の腕はからっきしだったけど、いつも綺麗な声で歌ってくれたバードのお兄ちゃん。 あたしはみんな、大好きだった。 なのに。 いきなり現れた綺麗なおねえさんが――綺麗で怖い女王蜂が、あたしのしあわせを全部奪っていった。 あんなに強かったパパは、虫の兵士たちに全身を刺された。 あんなに綺麗だったママは、あいつが撃った雷で、真っ黒になった。 最後まであたしを庇ってくれたお兄ちゃんは、虫に喉を食い破られた。大好きだった歌声も...
  • 2-168
    168.託す者 雨音がパタパタと耳朶を打つ。 雨を避ける為にダンボール箱を被りながら移動する悪ケミをちらりと見やり、忍者は苦笑する。 まるでダンボール箱から足が生えているようだ、と。 「雨宿り出来る場所を探した方がいいんじゃないかい?それじゃあとっさの時に動くのも難しいよ?」 その言葉にダンボール箱ならぬ悪ケミは足を止め箱の中で何やらごそごそとすると、にゅっと1枚の紙片を突き出す。 『時間が無いの。出来るだけ早くモンクを探さなきゃでしょ。夜になる前に何とかしないと何時遅われるか判らないし』 『♀モンクは1日目で居なくなっちゃったから♂モンクを見つけないと。首輪が外せる事が判れば、みんな殺し合う必要が内って判ってくれるはず』 なるほど。誤字は多いが言っている事は至極まっとうだ。 しかし…と忍者は内心続ける。 (指弾の使い手は明ら...
  • 2-145
     145 鉄面皮  面白く無し、と♂クルセイダーは鉄面皮の裏で考えていた。  原因は目の前の二人、である。  彼はさも当然の様に(彼にはそう見えた)声をかけて来た♂モンクに応じ、一時彼らと共に座り込んでいた。  僧兵曰く、彼を治療したいと言った♀騎士に感謝しろ、と言う事らしかった。  今更口にするまでも無いが、ここは殺戮の庭である。  だと言うのにだ。これは一体なんたる偽善か、そうでなければ愚鈍であろうか。  彼は勿論、冷静ではある。  意識ははっきりとしているし、殊にこのゲームにおいてならば彼に勝る経験を積んだ者などいるまい。  例えば、只殺すだけでは最後まで生き残る事は出来ない、と理解している点。  他にも、諸々の生存論理がある。  しかし──正直に言えば、彼は眼前の♂モンクと♀騎士が妬ましかった。  直ぐにでも切りかかりたくはあったが、彼の...
  • 2-176
    176.女郎蜂 [2日目夕方] 草の匂い立つ雨あがりの草原を、憮然とした足取りで歩くひとりの青年がいた。 青年は雨の中でもずっと歩いていたのであろうか。衣服の上から下まですべてがこれ以上は水を含めないほどに濡れていた。 丈夫な白麻でできた羽織り着も、綿糸を編みこんだ褐色の上着も、動きやすさを追求した短めの下裾着も、 靴の中、果ては下着までもすべて、イズルードの海にでも飛びこんだあとのように、ぐっしょりと濡れていた。 その状態は、ハンターである青年にとって動きにくい以外のなにものでもなかった。 雨上がり、熟れた稲穂の色に染まった西の空を仰ぎながら、さきほどまで大木のしたで雨をやり過ごしていた女がいた。 女のからだつきは、まだ少女のそれであり未成熟ではあったが、ただよわせる色香は少女とは思えないほど艶っぽかった。 ほっそりとした身体のラインを鮮やかなほどに浮き彫...
  • 2-191
    191.麗しき毒女 [2日目宵の口] 「さて、これからどう行動していきましょうか・・・」 ♀アルケミストは淫徒プリの言葉を軽く聞き流しながら考える。 最優先は自分だけが生き残ること。 他の人間がどうなろうと知ったことではない。 他者は私に利用されるためにある。 そして現状のPTは何処かしら危険な雰囲気だ。 生き残るためには、このPTに居続けることと離れることの損得を考えねばならない。 「♂アサさんは♂WIZに殺されて・・・私はなんとか逃げ切って・・・それで・・・」 「それじゃ♂WIZは危険ってことかねえ」 「おで・・・こわいんだな・・・」 ♀ノービスが自分にあった出来事を語っている。 ♀BSと♂スパノビがそれぞれの反応を示していた。 気になるのは♀BSの声に覇気がないことだが、父親が死んだことだしそんなこともあるだろう。 そんなことは別...
  • 2-121
    121 再会 [早朝] それは東の空が黒を白く塗り替え始めた二日目の早朝の話。 森から僅かに外れた木々がまばらに生えた丘の上を、1組の男女が歩いていた。 男の方は頭からフードを被っているため、髪型は分からない。 けれど身につけている服の様子から男がアサシンであることは明らかであった。 周囲を探る眼光の鋭さから、彼が数々の修羅場をくぐってきたアサシンであることも想像に難くはない。 一方の女はというと、金髪を美しくなびかせた絶世の美女、からはほど遠いが、一般にはかわいい系に分類される顔立ちである。 冒険者が一度は袖を通す服、ノービス服を着ていることから彼女がノービスであることは間違いないと言えよう。 真剣に辺りを見回し、突然の外敵に備え警戒している♂アサシンの表情とは正反対のあどけない表情が、 彼女が女性というより少女と表現すべき年齢であることをなんとなく...
  • 2-155
    155.誤算 ♂WIZは慎重に後をつけていた。距離を十分に取り、姿を見られぬように木々を盾にする。 ♂WIZが追いかけているのは、♂アサシンと♀ノービスである。慎重にならざるをえないだろう。 時折、♂アサシンと♀ノービスが話し合う。距離を空けているので、声は当然聞こえない。 口元もかすかに動いているのが分る程度である。だが、その度に立ち止まるので、 遅々として進まない。かれこれ一時間は彼らを追跡しているが、今だ森の中である。 「また、おしゃべりですか・・・。見た目よりも随分仲がいいのですね。」 ♂WIZはつい一人ごちてしまう。だが、それも仕方ない。この殺しあうための島で、 一時間に6回も立ち止まって、しゃべっているのである。♂アサシンの戦闘力を見た後では、 この事は意外と言うほかない。 「しかし、このペースでは、あの二人が他の者たちと出会...
  • 2-199
    199.鳥使いと虫使いと [定時放送後] 「…え、なに?」 日も落ち、視線の通らなくなった森の中。 野営の支度になるべく乾いた落ち葉を探していた♀ハンタが突然声を上げた。 木の枝で周囲をカモフラージュしていた♀スパノビも即座に立ち上がり、辺りへ警戒の視線を飛ばす。 その耳に遠くでギャアギャアと複数の鳥が鳴き交わす声が届いた。 「鳥さんですね?何か居ますか」 「…ううん。それが…よくわかんないの」 ♀ハンタは虚空へ向かってちちち、と舌を鳴らすような声を出し、首を傾げる。 「なんだか、怖いモノ?があっちにいる…らしいんだけど」 彼女は北を指さした。 「殺人者ですか」 「うう~ん」 ♀スパノビの問いに♀ハンタの首の傾きが深くなる。 「たぶん…違うと思う。…細かい質問は難しいからよくわからないけど…」 「なるほど」 鳥の言葉が分かると言っても限度はあるんです...
  • 2-187
    187.The Cold Equations  目の前には死に体を晒した一組の男女がいる。  一人は、以前出会いながらも道を違えた♂騎士。全身に無数の傷を負って血の海にその身を横たえている。ちょっと見ない間に痩せこけた頬も、細かく震える紫色の唇も彼が逃れられない死神の手につかまっていることを明白に示している。それはいくら止血をしても換わらない事実なのだろう。  もう一人は、この島に来てからずっと一緒に行動してきた♀ウィザード。♂プリーストの手によって止血されたとはいえ手足に走る裂傷が痛々しい。が、それ以上に痛々しいのは全身をくまなく覆う無数の凍傷だ。間違いなく冷却系の大魔法ストームガストによるものだ。こちらもどうして生きていたのか不思議なくらいの惨状を呈している。  そこまで考えて、♂シーフは思考の方向を変えた。逆に生きていたほうがつらい現実というものがある。縁の深い人間は...
  • 2-117
    118.花【二日目早朝】 今日もつき合わせちゃってごめんね。 あぁ、彼女の声が聞こえる。 私はまだ半人前だけど……お祈りだけは忘れたことがないんだ。 そう言う彼女の笑顔はとても清らかで。 いつか……立派なプリースト様になれるといいんだけど。 大丈夫、君なら慣れるさ。その清らかな笑顔を持つ君なら。 あは、でも君と一緒ならきっと出来そうな気がするよ。 そう、君の笑顔は人に安らぎを与えるんだ。 なんでだろ……君といると、安心する……。 なのに何故― 天の神様、どうか今この私の願いを聞き届けてください― 何故君が― 私の心の中にいる全ての人物をどうかお救いください― どうして君が― そして……どうか彼の願いをかなえ― そんな奴に殺されなければならない― 彼は朝...
  • 2-153
    153.誤解が生んだ赤い結末 ご主人様、無事でいて!! そう願いながら駆けつけたわたしの視界に映ったのは、一人の男と地に伏せたご主人様。 あの男がご主人様を……! ジルタスはその勢いのまま止まらずに鞭を振るう。 射程ギリギリで放たれたそれは、寸前まで男の居た地面に乾いた音と共に叩きつけられる。 グラサンモンクは予見していたように飛び退くと、即座に指弾を放つ。 男の周囲に浮かんでいた光の球の一つが一直線に飛んでくる。 ジルタスも走りながら返す鞭で軌道を逸らし華麗に受け流した。 そのまま再度鞭を振りかざす。今度は十分に男を捕らえられる距離だ。 ――パシィッ! 手ごたえはあった。だが首を狙ったそれは惜しくも男の左腕に巻きついたのみに終わった。 それでも十分なダメージだ。巻きついた鞭は左腕にがっちりと食い込み、肘の先から地面に血が...
  • 2-111
    111. 妄想渦巻く夜の姫 【定時放送後~夜】 「はぁ・・・・・・はぁ・・・、多分・・・もう、ここまで来れば・・・・・・大丈夫・・・な、はず・・・」 息を切らせながら、♂ハンターは痛む腕で地図を取り出し、現在位置を確認する。地図の中で一際目立つ赤い輝きは、自分達のいるこの場所が地点G-5であることを示していた。見渡せば砂地交じりの草原が広がっており、ぽつりぽつりとまばらに木々が立ち並んでいる。 見晴らしは悪くないし、こちらには遠くから攻撃ができる武器もある。幸いにして俺もこの子も弓使いだ。研ぎ澄まされた“梟の目”により、夜目は効く。もし近くにゲームに乗り気な奴がいても、襲われる前に手は打てる筈だ。陽も落ちた今、他の参加者達も日中ほど活動は活発ではないだろう。ヘタに動いて誰かとハチ合わせる危険を冒すよりは、こういった視界のいい場所でとりあえず体を休めよう。そう判断し、♂ハンター...
  • @wiki全体から「2-136」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索

人気記事ランキング
目安箱バナー