(共有に係る特許権)実意商
第七三条
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
旧法との関係 四四条二項、四七条、四八条二項
趣旨
本条は、特許権の共有について規定したものである。民法第二編第三章第三節は所有権の共有について規定し、同法二六四条は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがある場合には、この限りでない。」とあるところから別段の規定がない限り、これらの民法の規定は当然特許権の共有についても適用されるわけであるが、特許権については他の財産権の共有とは違った事情があるので本条の特別規定を設けたのである。したがって、本条と抵触する限りでは民法の規定は特許権の共有には適用されない。
一項は特許権が共有に係るときは各共有者は他の共有者の同意がなければその持分を譲渡することができない旨を規定したのである。その立法理由は、特許発明の実施は他の有体物の使用の場合と異なり、一人が使用したために他人が使用できなくなるものでなく、しかも投下する資本と特許発明を実施する技術者いかんによって効果が著しく違い他の共有者の持分の経済的価値も変動をきたすことになる。このようなことから特許権の共有者は互いに信頼関係にあることが必要であり、持分の自由譲渡によって共有者の代わることを禁じたのである。
二項は民法の規定によって禁じられているものを特別規定として本項において禁止を解除したというものではなく、民法の規定からすれば各共有者は他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施することができるが、一項の規定にひきずられてこれに反する解釈がなされるおそれもあるので、念のためこのような規定をおいたものである。
三項は特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することを認めると、その設定をうけ、又は許諾された者の資本及び技術いかんによっては他の共有者の権利も有名無実となるので、一項の場合と同様な理由から他の共有者の同意を得なければならないものとしたのである。
[字句の解釈]
1 <譲渡>用語の意味からして、相続その他の一般承継は含まず、したがって、相続その他の一般継承については他の共有者の同意を要しない。
2 <専用実施権>七七条
3 <通常実施権>七八条(青本第17版)
最終更新:2009年11月12日 05:39