(専用実施権)
第七七条
特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
2 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
3 専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般継承の場合に限り、移転することができる。実意
4 専用実施権は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を承諾することができる。実意商
5 第七十三条[特許権の共有]の規定は、専用実施権に準用する。実意商
旧法との関係 四四条一項
趣旨
本条は、専用実施権について規定したものである。旧法四四条一項は「特許権ハ制限ヲ付セスシテ之ヲ移転スルコトヲ得」と規定していたが、ここにいう制限を付した特許権は用益物権的なものと解されている。すなわち、かりに特許権に関東一円という地域制限を付して移転するという場合は、その特許権について関東一円を範囲とする用益物権的な権利を設定することと解されているのである。その他の時間的な制限、内容的な制限を付した特許権についても同様である。このような用益物権的な権利を制度として設けることの必要性は社会的にはかなり強いわけであるが、旧法においては四四条の規定をはじめ、制限付特許権に関する規定が明瞭でなかったので、実際にはあまり活用されなかった。本条に規定する専用実施権は、従来の不明瞭な制限付特許権に代わるべきものとして新しく設けられた制度である。実施権としては、本条に規定する専用実施権のほかに、通常実施権があるが後者は債権である。これら二つの実施権と特許権との関係は、あたかも土地の所有権に対する地上権および賃借権になぞらえることができる。すなわち、特許権は所有権と同じように絶対的支配権であり、専用実施権は地上権と同じように用益物権であり、通常実施権は賃借権と同じように債権である。上記のように専用実施権は物権的な権利であるから排他性を有し、期間、地域、内容を異にすればともかく、同一期間、同一地域、同一内容についての専用実施権が二以上設定されることはありえないのである。この点、通常実施権については二以上の権利が並存し得るのと異なるわけである。ただ、専用実施権と通常実施権との関係については、専用実施権設定後、当該特許権について通常実施権を許諾することは認められないが、専用実施権設定前に許諾された通常実施権は登録していればその専用実施権者に対しても効力があるのである。(九九条一項)。
専用実施権の移転については、三項に規定するように制限が付せられている(この点は地上権の場合と異なる)。すなわち、その実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾がある場合及び相続その他の一般継承の場合に限られるのである。自由譲渡を認めなかったのは専用実施権を設定する場合は、特許権者と設定を受ける者との信頼関係にもとづく場合が多く、かつ、特許権の共有の場合に述べたごとく、特許発明についてはどの程度の資本をもって、どのような技術により実施をするかということが特許権者にとっても重大な関係を有するからである。
同じようなことは、専用実施権について質権を設定し、又は通常実施権を許諾する場合についてもいえることで、四項はこれらの場合にも特許権者の承諾を得なければならないものとしたのである。五項は特許権の共有に関する規定の準用であるが、特許権の共有の場合と専用実施権の共有の場合について、別異の考えをとる必要はないからである。
なお、専用実施権は物権的な排他的な権利であるので、その侵害をなした者に対して差止請求権、損害賠償請求権の行使をすることができるのは当然であるが、これについては本章第二節に規定している。
[字句の解釈]
1 <設定行為で定められた範囲>通常、時間的な範囲(たとえば、昭和四六年一月一日から五年間)、内容的な範囲(たとえば、特許請求の範囲にA及びBの二発明が記載されている場合にそのうちA発明について)、地域的な範囲(たとえば、北海道地域について)の三種類があげられるわけであるが、必ずしもこれにとらわれるものではなく、すべて当事者の設定行為によって定まるものである。
2 <業として>六八条参照
3 <事業とともにする場合>事業とともにする場合は、特許権者の承諾なくして移転することができるとしたのは、事業を移転しても実施権を移転し得ないならば、その事業設備は稼動しえなくなる場合が少なくなく、ひいては国家経済上からの損失となるからである。
4 <質権>九五条(青本第17版)
最終更新:2009年11月12日 05:41