(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)
第八三条
特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りではない。(改正、昭四〇法律八一、昭四六法律九六)
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
旧法との関係 四一条
趣旨
本条以下九一条の二までは、旧法四一条及び四二条に該当し、不実施の場合の強制実施について規定したものである。強制実施の手続を詳細に規定した点が旧法と著しく異なるが、要件についても若干の改正が加えられた。また、不実施に対する制裁としての特許取消制度は廃止した(この点については後述)。
一項は、特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し協議を求めることができる旨を規定する(ただし書は、パリ条約五条Aの規定がリスボンにおいて改正され、従来、特許権の不実施を理由とする強制的な実施権の設定については登録後三年は請求できないこととしていたのが、特許権者の保護を厚くするため「出願の日から四年を経過をしない時は請求できない」という要件が追加されたことに伴う改正で加えられたものである)。ただ旧法のような「公益上必要アルトキハ」という要件は設けられていない。また、直接通常実施権の設定の裁定を請求するのではなく、まず協議をしなければならない。実施許諾の協議をすることについて禁止規定があるわけではなく自由にできるわけであるが、ただ本項の規定による協議をした場合は、その協議が成立しなかった場合に二項の規定により裁定を請求することができるという効果があり、その点が自由意思による協議の場合と違う。
二項は、協議が整わない場合の裁定の請求について規定する。その請求は特許庁長官に対して行わなければならない。
[字句の解釈]
1 <継続して三年以上>特許された直後三年以上継続して実施をしない場合はいうまでもなく、特許後一度実施をして、その後継続して三年以上実施をしない場合も含まれる。しかし、過去において三年以上継続して実施しなかった事実があっても、現在実施をしていれば本条の適用はない。
2 <協議が成立せず又は協議をすることができないとき>三九条参照
[参考]
<特許取消の廃止> 旧法四一条は最初の実施権の許与があった後において正当の理由がないのに引き続き二年以上その発明を実施しないときは特許を取り消すべき旨を規定していたが、現行法においてはこのような規定を設けていない。不実施に対する制裁として特許の取消をするのはあまりにも苛酷すぎるという理由にもとづく。(青本第17版)
最終更新:2009年11月12日 19:35