(質権)
第九五条
特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。
旧法との関係 当該条文なし
趣旨
本条は、特許権等を目的として質権を設定した場合の当該特許発明の実施の権能の帰属について規定したものである。旧法の下において特許権等を目的として質権が設定された場合に、その特許発明を実施する権能は設定者が有するか質権者が有するかについては学説が分かれた。ある説は民法二九七条、二九八条の留置権に関する規定を準用して質権者の承諾がある場合に限り質権者は実施の権能を有し、承諾なきときは抵当権に類似する性質を有し、質権者は実施し得ないとする。また他の説においては民法三五六条の不動産質に関する規定を準用して質権者のみがその特許発明を実施する機能を有するとする。学説上の問題は別として実際上の問題としては特許発明の実施が通常相当の設備を必要とすることや技術の熟練を伴わなければならない場合の多いことを考えると、質権者が実施の機能を有するという制度よりも質権設定者が実施の権能を有する制度の方がのぞましいのである。本条はそのような趣旨から設けられた規定である。
もっとも質権設定者が実施の権能を有し、質権者が実施の権能を有しないというのは契約でなんらの定めもしなかった場合のことであって、契約をもって別段の定めをすればそれが有効であることはいうまでもない。「契約で別段の定めをした場合を除き」としたゆえんである。
[参考]
<抵当権とすることについて>審議会における答申は、上述のように旧法においては質権を設定した場合に、その特許発明の実施の権能が設定者の側にあるべき旨を明らかにする意味において特許権等は抵当権の目的とすることができる旨を規定すべきことを述べている。その後の法文の作成に当ってもこの答申の線に沿って特許権等は抵当権の目的とすることができるということできたのであるが、抵当権にした場合にはその実行方法について別途規定をおかざるを得ず、しかも実務上の問題を考えた場合はその規定の仕方についていろいろ困難な問題があるので、抵当権の制度を採用することをやめ、答申が実質的に意図しているところに従って本条のような規定を設けることとした。なお、質権とした場合のその実行については民事執行法一九三条が適用されるので別途規定をおく必要はない。(青本第17版)
最終更新:2009年11月23日 05:44