(登録の効果)実意商
第九八条
次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一 特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、放棄による消滅又は処分の制限
二 専用実施権の設定、移転(相続その他一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
三 特許権者は専用実施権者を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅、(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2 前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届けなければならない。
旧法との関係 四五条
趣旨
本条は、特許権の移転等については登録をもってその効力の発生要件とする旨を規定したものである。旧法においては本条に規定するような事項については登録をもって第三者対抗要件としていたのであるが、権利関係を明確にする意味においてこのように改められた。権利の移転等について登録をもって効力発生用件とする立法例としては鉱業法があり、また立法論としては民法一七七条の不動産の得喪等については登記をもって効力発生要件に改めるべきであるということがいわれている。
登録をもって効力発生の要件とするという本条の規定は、移転等については登録されればいかなる場合でもその効力が生じるというものではない。登録によって効力が生じるための前提として実質的な要件を満たしているものでなければならない。たとえば、甲が乙に対して特許権の移転がされたということについての契約その他の法律行為は全くないにもかかわらず、偽造の譲渡証等を添付した登録申請により移転の登録があったとしても、その登録によっては特許権の移転の効力が生ずるものではない。本条が、「登録すれば、効力を生ずる」としないで「登録しなければ、効力を生じない」とした理由もここにあるわけである。実質的な要件が欠けていても登録という外形的なものに表示された法律関係を信頼して取引等の行為をした者を保護しようというのは、登録をもって効力発生の要件とするかどうかの問題でなく、登録の公信力の問題であり、公信力は我が国においては登録制度のみならず、登記制度においても認められていないところである。
一項各号において、移転については相続その他の一般承継の場合を除外しているのは三四条の特許権を受ける権利の承継の場合と同じように相続等の事実の発生した時点から移転の登録がされるまでの間は権利者が存在しないという自体の生ずることを防ぐためのものである。したがって、相続その他の一般承継の場合は登録をしなくても移転の効力が生ずることになる。ただ、相続その他一般承継の場合は二項の規定により、その旨を届け出なければならないことになっており、その届出前に特許庁から被相続人宛に手続をしたとしても、相続人は自己に対してされるべきであったという理由でその手続の無効を主張することはできないものと解される。
二号中、混同又は特許権の消滅により専用実施権が消滅する場合を除いたのは、混同の場合はその前提として移転の登録があるという理由によるものであり、特許権の消滅の場合は特許権の消滅によって専用実施権も当然消滅するからである。
三号中、混同又は担保する債権の消滅による質権が消滅する場合を除いたのは、二号の場合と同様である。
[字句の解釈]
1 <登録>本登録の意味であって仮登録をしただけでは本条各号の効力は生じない。ただ仮登録をしておけば、後日、本登録があったとき仮登録をした時点にさかのぼって効力が生ずる。
2 <処分の制限>執行保全のためにする仮差押、仮処分等をいう。(青本第17版)
最終更新:2009年11月24日 00:54