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特許法第一〇一条

(侵害とみなす行為)
第一〇一条
次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(改正、平六法律一一六、平一四法律二四)
二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内のいて広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(本号追加、平一四法律二四)
三 特許が物の発明についてされている場合において、その物の業としての譲渡又は輸出のために所持する行為(本号追加、平一八法律五五)
四 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(改正、平六法律一一六、平一四法律二四)
五 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内における広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(本号追加、平一四法律二四)
六 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為(本号追加、平一八法律五五)

旧法との関係 当該条文なし
趣旨
 権原のない第三者が業として特許発明を実施することは、特許権の侵害にあたる。特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるとされており(七〇条)、原則として、請求項に記載された発明特定事項の全部を業として実施した場合が、特許権の侵害となる(いわゆる直接侵害)。
 しかしながら、特許発明の全部実施には当らないため、特許権を直接に侵害するとはいえない行為であっても、例えば特許権の侵害に用いられる専用部品の供給などの行為は、直接侵害を惹起する蓋然性が極めて高く、そのような行為を放置することは、特許権の効力の実効性を失わせることになる。
 本条は、このような問題に対処するために設けられたものであり、侵害の予備的又は幇助的行為のうち、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為を特許権の侵害とみなす(いわゆる間接侵害)規定である。
 一号及び四号は。「その物の生産にのみ用いる物(一号)」又は「その方法の使用のみ用いる物」(四号)という当該発明の実施にのみ用いられるいわゆる「のみ品」(専用品)の生産・譲渡等の行為を侵害とみなすものである。一号が適用される例としては、テレビ受像機の完成品に特許がされている場合に、そのテレビ受像機の組立に必要な一切の物をセットとして販売するような行為が挙げられる。この例でいえば、テレビの組立セットはテレビの受像機その物ではないので特許係る物ではない。したがって、それを販売しても直ちに特許権侵害ということはできない。ところが、そのテレビの受像機の組立セットはテレビ受像機の組立以外に用いるということは考えられず、いずれはその組立セットによって侵害行為がされる蓋然性が極めて高いものであるから、その前の段階における行為を侵害行為とみなして禁止しようというものである。特許が方法の発明についてされている場合(四号)も同じことである。テレビの組立セットにしろ、販売された後におけるその使用等の行為を侵害行為として押さえてゆくことは理論的には可能であるが、実際には多数の者によって各個に侵害行為がなされる可能性があり、そのすべてを押さえゆくことは容易なことではないころから、特許権者の保護のためこのような規定が設けられた。しかし、このような規定はややもすると濫用されるおそれがある。本条において「その物の生産にのみ使用する物」又は「その方法の使用にのみ用いる物」というようにきわめて限定的な規定としてのは汎用による弊害を懸念したからにほかならない。
 二号及び五号は、平成一四年の一部改正で新たに追加された規定である。これらの規定は、「~にのみ用いる物」という専用品に限らず、「その物の生産に用いる物」(二号)又は「その方法の使用に用いる物」(五号)のうち「その発明による課題の解決に不可欠なもの」を、特許権の存在及び特許発明の実施に用いられることを知りながら生産譲渡等をする場合についても侵害とみなすものである。
 三号及ぶ六号は、平成一八年の一部改正で新たに追加された規定である。これらの規定は、「特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等または輸出のために所持する行為」(三号)および、「特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等または輸出のために所持する行為」(六号)についても、侵害とみなすものである。侵害物品を「譲渡等」又は「輸出」する行為は、それがなされた場合には侵害物品が拡散して事後的な侵害防止措置が困難になる蓋然性が高い行為であるため、模倣品問題対策強化の観点から、これらの目的として「所持」する行為を侵害とみなす行為とすることにより、侵害行為禁止の実効性を高めるとともに、侵害物品拡散の抑止を図る規定である。
 本条各号に掲げる行為は、特許権又は専用実施権を侵害するものとみなされる行為として、直接侵害に係る罰則(一九六条)とは異なる一九六条の二の罰則が適用される。
 なお、平成六年の一部改正により、TRIPS二八条の規定に従い二条三項における発明の実施行為に「譲渡若しくは貸し渡しの申出」が規定されたことに併せ、本条においても同趣旨の改正が行われた。
 また、平成一四年の一部改正により、二条三項の「譲渡」、「貸渡し」が、電気通信回線を通じた提供を明示的に含ませた用語である「譲渡等」に改められたことに併せ、本条についても、同趣旨の改正が行われた。
[字句の解釈]
1 <その方法の使用にのみ用いる物>自分が生産し譲渡しようとする物がたまたま特許を受けている方法の使用のみに用いる物であるということではなく、およそその物一般がその性質上その特許を受けている方法の使用以外に使用されない物である場合である。
2 <発明による課題の解決に不可欠なもの>請求項に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり、発明の構成要素以外にも、物の生産や方法の使用に用いられる道具、原料なども含まれ得る。逆に、請求項に記載された発明の構成要素であっても、その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは。「発明による課題の解決に不可欠なもの」にはあたらない。それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品、道具、原料等が「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当する。例えば、消しゴムで消せるボールペンの発明がある場合、そのインキに用いる特殊な顔料などは「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するが、通常のボールペンのものと特段変わらない軸やキャップなどは、そのボールペンの生産自体に欠かせないものであったとしても、「発明による課題の解決に不可欠なもの」には該当しない。
3 <日本国内において広く一般に流通しているもの>例えば、ねじ、釘、電球、トランジスター等、日本国内において広く普及している一般的な製品が該当する。「広く一般に流通している」ということは、それが特注品ではなく、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品であるということであり、そのような物の生産・譲渡等まで間接侵害行為に含めることは取引の安定性の確保という観点から好ましくないため、間接侵害規定の対象外とされた。流通範囲が日本国内に限定された理由は、そもそも特許権の効力の及ぶ範囲は日本国内に限られるため、外国における普及は取引の安定性の確保という観点からは考慮する必要のないこと、たとえ外国において広く普及していたとしても、日本国内で普及していないものについては、侵害防止のための差止めの必要性が大きいこと等である。
4 <知りながら>特定の事実(「その発明が特許発明であること」及び「その物がその発明の実施に用いられること」)について実際に知っていたことを必要とする。それらの事実を知らなかった場合には、それがたとえ過失による場合であっても該当しない。過失により知らなかった場合が含められなかったのは、自らの供給すう部品等が複数の用途を有する場合に、それらが供給元においてどのように使われるかについてまで注意義務を負わせることは、部品等の供給者にとって酷であり、また、取引の安全を著しく欠くおそれがらうためである。(青本第17版)
最終更新:2009年11月27日 07:14
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