旧法との関係
趣旨
本条は、平成一五年の一部改正に伴い追加されたもので、特許無効審判の手続において答弁書の提出期間内に訂正を認めることとしているが、平成一五年の一部改正において、特許無効審判における審判請求書の補正について例外的に容認する規定、及び「キャッチボール」現象の弊害に対処するための規定(一二六条の[趣旨]を参照)の導入に伴い、被請求人である特許権者における訂正の機会を増加した。
一項本文では、特許無効審判における訂正の機会を規定するもので、審判請求書の副本及び訂正理由の補正に係る手続補正書の副本の送達に伴う答弁書提出期間(一三四条一項及び二項)、審決取消し判決及び審決差戻し決定に伴う指定期間(一八一条一項及び二項)、及び職権審理がなされた時に、その審理結果に対する意見提出期間(一五三条二項)について、訂正する機会を与えられることとなる。なお、同項ただし書については、訂正の要件を規定しているが、従来の
特許法一三四条二項に規定してた訂正請求における訂正の要件と同様である。
二項では、被請求人が提出したものを請求人に送達することを規定した。
三項には、訂正拒絶理由に関する規定である。従来の特許法では、訂正拒絶理由に係る規定は、単に一六五条を準用するものであったが、一三四条の二を新設するにあたり、準用をやめ特許無効審判における訂正拒絶理由の根拠条文を明確化した。
四項は、複数の訂正請求がなされた場合の調整規定である。特許無効審判の請求書の補正が認められる場合には、一三四条一項の指定期間内にされた先の訂正請求と、同条二項の指定期間内にされた後の訂正請求が併存することがある。その際、両訂正の間に矛盾がある場合には、訂正請求の趣旨の解釈が問題となりえるが、特許権者の意思を最も良く反映しているのは後の訂正請求であることから、条文上、先の訂正請求が取り下げとみなされる旨を明定し、手続の繁雑さを回避した。
五項は、一項において特許無効審判の手続における訂正を認めることとしたことに伴い、訂正の要件、手続、効果等について、関連する条文を準用したものである。なお、同項後段は、一二六条五項の規定を読み替えて準用することにより、無効審判の請求がされていない請求項について訂正された場合に限り、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないことを規定するものである。
[参考]
<従来の訂正における拒絶理由の運用の問題>
訂正拒絶理由通知に関する一六五条は、従来から特許無効審判における訂正請求に準用されていたが、本来査定系審判である訂正審判に関する規定であるため、訂正請求が不適法である理由が職権で発見されたものであるか、或いは審判請求人が申し立てたものであるか否かに拘わらず、常に審判長が訂正請求をした特許権者にその旨通知し、相当期間を定めて意見書を提出する機会を与えることとしていた。
しかし、当事者系の特許無効審判においては、審判請求人が、訂正請求における訂正が不適法であることを主張することがある。その場合においては、その主張に対して被請求人に答弁機会が与えられるから、審判長がさらに同一の訂正拒絶理由について通知をし、答弁機会を付与すると、同一の論争を再度繰り返すこととなり、不必要に審理を長期化させる原因となっていた。また、一六五条は、職権審理を当然の前提とする訂正審判の規定であるため、特許無効審判における訂正請求の適法性についての職権審理の根拠条文とはなり得ず、従来、無効審判における訂正拒絶理由の職権審理の根拠は必ずしも明らかではなかった。(青本第17版)