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特許法第一三四条の三

(取消しの判定等があつた場合における訂正の請求)
第一三四条の三
審判長は、特許無効審判の判決(審判の請求に理由がないとするものに限る。)に対する第百八十一条第一項の規定による取消しの判定が確定し、同条五項の規定により審理を開始するときは、その判決の確定の日から一週間以内に被請求人から申立てがあつた場合に限り、被請求人に対し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求するための相当の期間を指定することができる。
2 審判長は、第百八十一条第二項の規定による審決の取消しの決定が確定し、同条第五項の規定により審理を開始するときは、被請求人に対し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求するための相当の期間を指定しなければならない。ただし、当該審理の開始の時に、当該事件について第百二十六条第二項ただし書に規定する期間内に請求された訂正審判の審決が確定している場合は、この限りではない。
3 特許無効審判の被請求人は、第百二十六条第二項ただし書に規定する期間内に訂正審判を請求した場合において、前二項の規定により指定された期間内に前条第一項の訂正ののの請求をするときは、その訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を援用することができる。
4 第百二十六条第二項ただし書に規定する期間内に訂正審判の請求があつた場合において、第一項又は第二項の規定により指定された期間内に前条第一項の訂正の請求がされたときは、その訂正審判の請求は、取り下げえられたものとみなす。ただし、訂正の請求の時にその請求のときにその訂正審判の審決が確定している場合は、この限りではない。
5 第百二十六条第二項ただし書に規定する期間内に訂正審判の請求があつた場合において、第一項又は第二項の規定により指定された期間内に前条第一項の訂正の請求がされなかつたときは、その期間の末日に、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を第三項の規定により援用した同条第一項の訂正の請求がされたものとみなす。ただし、その期間の末日にその訂正審判の審決が確定している場合は、この限りでない。
(本条追加、平一五法律四七)

旧法との関係 八八条
趣旨
 本条は、平成一五年の一部改正に伴い追加されたもので、差戻し決定後の特許無効審判における訂正機会を規定したものである。なお、訂正審判について、通則規則は一三四条の二に、差戻し等があった場合の特則規定は本条にまとめることで条文の可能性を高めている。
 平成一五年の一部改正において、「キャッチボール」現象の弊害に対処するため(一二六条の[趣旨]を参照)、新たに「差戻し決定」を導入しているが、本条に規定する手続は、これと併せて、差戻しがなされた場合に、差戻し後の特許無効審判の審理において訂正審判請求を認める制度を整備し、かつ、差戻しがなされたときに既に係属している訂正審判の手続と無効審判の調整を図ることを趣旨とするものである。
 一項及び二項は、事件が差し戻されたことにより審判官がさらに特許無効審判の審理をする場合に、特許権者は、一定の要件のもと訂正請求をすることができることを規定したものである。事件が特許庁に差し戻される場合には、取消し判決による場合(一八一条一項)と差戻し決定による場合(一八一条)とがあるところ、一項では取消し判決の場合、二項では差戻し決定の場合をそれぞれ規定している。
 差戻し決定は特許無効審判において訂正請求がなされることを前提とするものであるから、裁判所が差戻し決定をしたときは、特許庁は特許権者に訂正の機会を付与する必要があるため、差戻し決定後は訂正の機会を付与しなければならないこととした(二項)。訂正機会付与の方法は、通常の特許無効審判における訂正請求と同様に、審判長が、特許権者に相当の期間を指定することによる(二項本文)。また、差戻し決定がなされた場合でも、決定時に既に訂正審決が確定している場合や、決定後差戻し審再開前に訂正審判が確定した場合には、改めて訂正請求させる必要はないため、訂正の機会は、訂正審判の審決が確定していないときに限定することとした(二項ただし書)。
 他方、取消し判決によって差戻しが生じた場合には訂正の必要がない場合も多い。しかし、有効審決が取り消された場合には、特許権者が訂正を望む場合もありえることから、審判長の裁量により、再係属した無効審判において訂正の機会を付与することができることとした(一項)。訂正の機会を与えるに際して、被請求人である特許権者の申立てを必要とした理由は、取消し判決の場合おいては、差戻し決定の場合と異なり、必ず訂正の機会を確保する必要はないからである。また、仮に特許無効審判において訂正請求ができなくとも、再度の審決後に特許権者が出訴すれば訂正の機会が与えられることからみても、特許権者の申立てによることとすれば十分である。なお、実際に訂正の機会を与えられるか否かは、審判長の裁量事項である。また、特許権者から申立てがあったにもかかわらず訂正機会が付与されない例としては、原審決の取消しの理由が手続上の瑕疵等にあり、再度有効審決をすることができる場合などが考えられる。実際にはこのような事例は稀であろう。
 三項は、訂正請求に係る書類の援用を認める規定である。特許権者が訂正審判を請求した後に差戻し決定があった場合において、特許無効審判の中で訂正の審理をするためには、特許権者は改めて訂正請求をしなければならない。しかし、この場合、特許権者が求める訂正の内容は、先に請求した訂正審判において求めた訂正の内容と同一であることが多いと予測される。そこで、特許権者の便宜のため、訂正審判においてすでに請求されている訂正の内容をそのまま特許無効審判における訂正請求に際して援用できることとした。もっとも五項によって、訂正請求可能な指定期間内に訂正請求をしなければ、訂正審判の内容を援用して訂正請求がされたものとみなされるから、特許権者が本項を積極的に用いるのは、特許権者が早期の審理を望んで指定期間の終了を待つことなく訂正審判と同一内容の訂正請求を行う場合であるといえよう。なお、援用される書類は、訂正審判請求書に添付した訂正明細書等であって訂正の請求そのものではないから、本稿に基づく援用を求めるには訂正請求をする必要がある。
 四項は、三項の訂正請求がなされた場合に、先に請求された訂正審判をみなし取下げとする規定である。差戻し決定の結果、訂正審判と差戻し後の特許無効審判が同時に係属した場合において、特許権者が無効審判中で訂正請求をしたときは、訂正審判を係属させておく実益がなく、むしろ無用に手続を繁雑化させることから、訂正審判は取り下げられたものとみなし、特許無効審判に訂正の手続の一本化することとした。この規定は、訂正審判の内容と異なる訂正請求の場合であっても適用されるが、後でなされた訂正請求の方が一層の熟慮の結果なされたものであると考えられるから、特許権者にとって不利益となることはないであろう。また、審判請求人にとっても、事件が差し戻された場合に当事者系の手続で統一的に処理されることとなり便宜である。なお、このみなし取下げ規定は、訂正請求がなされたときに、すでに訂正審判の審決が確定しているときは適用されない(四項ただし書き)。訂正審決の確定後は訂正審判請求の取下げはできないからである。しかし、訂正審判において訂正が拒絶され、出訴されている場合には、みなし取下げ規定の適用は妨げられない。
 なお、四項の規定が適用される場合において訂正審判と訂正請求の双方について手数料を徴収すると、実質的に同一の訂正のために重複して手数料を徴収することとなる。そこで、この場合には、後の訂正請求については手数料を徴収しないこととした。本規定の適用を受けるために、訂正審判における訂正の内容と、後の無効審判における訂正の内容とは、同一である必要はない。
 五項は、指定期間に訂正請求がなされなかった場合に、既に請求された訂正審判を訂正請求がされたものとみなす規定である。本項が適用されると、訂正請求があったこととなる結果、四項の訂正審判のみなし取下げ規定が適用され、訂正の手続は特許無効審判に移行される。ただし、訂正請求期間中の訂正審決が確定したときは、訂正審判の同一の訂正請求をさせることは無意味であるから、本規定は適用されない(五項ただし書)。(青本第17版)
最終更新:2009年12月18日 00:02
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