(証拠調及び証拠保全)実意商
第一五〇条
審判に関しては、当事者若しくは参加人の申立により又は職権で、証拠調をすることができる。
2 審判に関しては、審判請求前は利害関係人の申立により、審判の係属中は当事者若しくは参加人の申立により又は職権で、証拠保全をすることができる。
3 前項の規定による審判請求項の申立は、特許庁長官に対してしなければならない。
4 特許庁長官は、第二項の規定による審判請求前の申立てがあつたときは、証拠保全に関与すべき審判官及び審判書記官を指定する。(改正、平一一法律四一)
5 審判長は、第一項又は第二項の規定により職権で証拠調又は証拠保全をしたときは、その結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
6 第一項又は第二項の証拠調又は証拠保全は、当該事務を取り扱うべき地の地方裁判所又は簡易裁判所に嘱託することができる。
旧法との関係 一〇〇条一項、二項
趣旨
本条は、証拠調及び証拠保全について規定したものである。証拠は審決の理由[一五七条二項四号]を基礎づける資料として、極めて需要な意義をもつ。旧法は証拠調については規定されていたが、審判請求後の証拠保全まで含まれるかどうか疑問であり、また審判に係属する前の証拠保全については全く規定されていなかったので、本条は新しくこれらの点についても規定した。
一項は証拠調ができる旨の規定である。申立によってもできるし職権でもできるが、職権で証拠調をした場合には、五項の規定により当事者に通知し、意見申立の機会を与えなければならない。当事者の知らない間に、不利な証拠が集められ、当事者の利益が害されるという事態を防ぐためである。
二項は証拠保全をすることができる旨の規定である。証拠保全は、たとえば、証人となるべき者が外遊直前である場合のごとく、あらかじめ証拠調をしておかないと証拠を使用するのに困難となるような場合に認められる緊急の措置であるから、審判請求前においてもできることとした。審判手続が開始された後であればその審判の審判官が証拠保全を取り扱うから問題はないが、審判請求前の場合には証拠保全を処理する機関がない。そこで三項で特許庁長官に申し立てることにし、四項で証拠保全に関与すべき審判官及び審判書記官を特許庁長官が指定することにしたのである。証拠保全も、証拠調と同じく、職権ですることもできる。以上は、特許庁が証拠調又は証拠保全を行う場合に関する規定であるが、場合によっては、たとえば、新規性喪失の原因となる公知事実が特許庁から遠くへだった地方に存在する場合などには、むしろその地の裁判所に証拠調を嘱託する方が便利な場合がある。したがって、六項として、嘱託の根拠規定を設けたのである。
なお、平成一一年の一部改正により、証拠保全についての調書の作成は審判書記官が行うこととされたことに伴い、四項において、特許庁長官が証拠保全に関与すべき者として指定する対象に審判書記官を追加した。
[字句の解釈]
1<証拠調> 証拠方法を取り調べることをいう。証拠方法とは、審判官がその五官の作用によって取り調べることができる有形物のことである。証拠方法に人的証拠と物的証拠がある。前者には証人、鑑定人、当事者本人の三種類が、後者には文書、検証物の二種がある。証拠調は審決の基礎資料を獲得するための重要な手段である。
2<証拠保全> 本来の証拠調の時期まで待っていたのでは、取調が不能又は困難になるおそれがある特定の証拠について、あらかじめ取り調べてその結果を保全しておくことをいう。(青本第17版)
最終更新:2009年12月23日 23:20