(訴訟との関係)
第一六八条
審判において必要があると認めるときは、他の審判が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。(改正、平五年法律二六、平六法律一一六、平一五法律四七)
2 訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、審決が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。(改正、平五年法律二六)
3 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に関する訴えの提起があつたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。その訴訟手続が完結したときも、また同様とする。(本項追加、平一一法律四一)
4 特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、その特許権についての審判の請求の有無を裁判所に通知するものとする。その審判の請求書の却下の決定、審決又は請求の取下げがあつたときも、また同様とする。
(本項追加、平一一法律四一)
5 裁判所は、前項の規定によりその特許権についての審判の請求があつた旨の通知を受けた場合において、当該訴訟において第百四条の三第一項の規定による攻撃又は防御の方法を記載した書面がその通知前に既に提出され、又はその通知後に最初に提出されたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。(本項追加、平一六法律一二〇)
6 特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、当該訴訟の訴訟記録のうちその審判において審判官が必要と認める書面の写しの送付を求めることができる。(本項追加、平一六法律一二〇)
旧法との関係 一一八条
趣旨
本条は、審判と訴訟との間の進行調整について規定したものである。審査の章においても五四条に本条と同趣旨の規定がある。たとえば、特許を受ける権利を承継しないで特許出願をして特許権者になったという理由で甲を被請求人として無効審判が請求されており、同時に裁判所において当該特許を受ける権利の譲渡の有効無効が争われているときは、その訴訟で甲が特許を受ける権利を正当に継承したかどうかという問題が判断されるまで、審判官は審判手続を中止することが便宜である。これが一項の趣旨である。また、特許権者甲が第三者乙に対し特許権侵害を理由とする損害賠償を請求して訴を提起した場合、特許庁に甲の特許権についての無効審判が係属しているときには、無効審判の審決が確定してから審理を進める方が訴訟経済に合致することにもなり、裁判所にとって便宜である。このような場合は二項によって訴訟手続を中止することができる。旧法には「民事又ハ刑事ノ」という表現を用いていたが、これでは行政事件の訴訟が除外されるという解釈も生じかねないので、すべての訴訟手続を含める意味で単に「訴訟手続」とした。
なお、平成一五年の一部改正において、二項の訴訟に仮差押命令及び仮処分命令が含まれることを明確にするための改正を行った。
また、平成六年の一部改正において、二項の訴訟に仮差押命令及び仮処分命令が含まれることを明確にするための改正を行った。
また、平成六年の一部改正により、特許異議申立てについての決定が確定するまで審判手続を中止することができる旨を一項に追加したが、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除した。
さらに、平成一一年の一部改正により、侵害訴訟提起の情報を特許庁が把握することにより、対応する無効審判事件等についての早期の審理集結を図ることを目的として、裁判所と特許庁との侵害事件関係情報の交換についての規定である三項及び四項を追加した。
三項は、特許権又は専用実施権の侵害に関する訴えが提起されたときに、裁判所は特許庁長官に対して、その訴えがあった旨を通知し、その訴訟手続が完結したときも、その旨を特許庁長官に通知することを規定している。
四項は、裁判所から通知された侵害訴訟に係る特許権についての審判請求の有無及びその審判事件の終了について特許庁長官が裁判所に通知することを規定している。
五項及び六項は、平成一六年の裁判所法等の一部改正において、一〇四条の三(特許権者等の権利行使の制限)の規定が新設されたことに伴って、裁判所と特許庁との間の進行調整を図るために新設された規定である。
五項は、侵害訴訟と特許無効審判が並行して係属している場合に、特許庁における特許無効審判での職権審理においてもそのことを認識した上で両手続の関係を配慮して審理を進めることにより、両手続間における判断齟齬を極力防止するための規定である。
六項は、前項の通知を受けた場合、特許無効審判を担当する審判合議体は、原則として新版の当事者に対する審尋等を通じて、当該侵害訴訟において提出された書面のうち必要なものを入手することとなるが、特許無効審判の請求の理由は不十分であるが若干の事実・証拠等を補強することで特許を無効にすべきものと認められる場合で、侵害訴訟における書面の入手・提出について特許無効審判の当事者が非協力的であるとき等に、特許庁長官が、直接、裁判所に対して、訴訟記録のうち審判において審判官が必要と認める書面(例えば一〇四条の三第一項の規定に基づく主張・立証やその前提となる特許請求の範囲の文言の解釈についての主張・立証に関するもの)の送付を求めることとするものである。
[字句の解釈]
<中止>二二条参照(青本第17版)
最終更新:2009年12月30日 02:13