旧法との関係 一一九条、一一九条の二
趣旨
本条は、審判における費用の額について規定したものである。審判の種別が異なるのと対応して費用の負担を決定する方法もおのずから違ってくるわけであるから、一項、二項として無効審判に関する規定をおき、三項、四項においてそれ以外の審判に関することを規定した。すなわち、請求人と被請求人とが対立する無効審判にあつては、民事訴訟と同様に、その主張が容認されなかった者に審判の費用を負担させることが公平であると考えられるため、二項で民事訴訟法六一条以下の規定を準用している。旧法は準用条文を法律で規定せず、
特許法施行令八条で民事訴訟法を準用していたが、事項の性質上法律事項と考えられるので、二項に準用条文に関する規定をおいた。民事訴訟法六一条は敗訴者負担の原則を定めたもので、無効審判においてもこれが原則となる。同法六二条、六三条は敗訴者負担の原則を適用することが妥当でない場合の例外規定である。六四条は一部敗訴の規定で、AおよびBの二請求項に記載された発明を包含する特許権について無効審判を請求し、A請求項に記載された発明については無効、B請求項に記載された発明については請求棄却の審決があったとような場合に適用がある。六五条は共同訴訟人が平等の割合で費用を負担すべきことを定めた規定である。六六条は参加にもとづく費用の負担についての規定で参加申請によって生じた費用の負担はこの条文によって処理される。六九条、七〇条は、一定の場合に当事者以外の者に費用を負担させる旨を規定している。七一条二項は費用額の決定をする場合の手続に関連したものである。
一項は、これらの条文を準用しながら審判に関する費用の負担を決定すべきことを定めたものである。すなわち、一般には審決によって定めるが、例外的に審判が審決によらないで終了する場合には審判の決定で定める。いずれの場合も申立てを待たずに職権で行う。審判が審決によらないで終了する場合とは、審判請求の取下げの場合などである。審判手続においては職権主義が支配し、当事者の自由な処分を許さないから請求の放棄、認諾、和解等のごとく当事者主義に固有の終了事由は存在の余地がないと考えられる。
なお、平成一五年の一部改正において、一二三条一項の審判及び一二五条の二第一項の審判を特許無効審判及び延長登録無効審判と規定する修正を行った。趣旨については一二一条を参照されたい。
三項は、無効審判以外の審判に関するものである。この場合は対立当事者が存在しないため、証拠調等の費用はすべて審判請求人の負担となる。四項はその場合の準用条文について規定している。
なお、平成一五年の一部改正において、一二一条一項の審判及び一二六条一項の審判を、拒絶査定不服審判及び訂正審判と規定する修正を行った。趣旨については一二一条を参照されたい。
このように一項から四項までの規定によって費用を負担すべき者が決定されるのであるが、負担すべき費用の額について請求人被請求人の間に争いがある場合には、請求によって特許庁長官が決定する。これが五項である。
六項は、費用の範囲等について民事訴訟費用等に関する法律の木知恵を準用したもので、同法の規定に従って具体的な費用等が決定される。従来は、民事訴訟費用法(明治二三年法律六四号)の規定を準用していたが、昭和六四年、同法が廃止され、それに代えて民事訴訟費用等に関する法律が制定されたのに伴い改正したものである。表現方法は、民事訴訟費用等に関する法律の表現にあわせたため、従来のものと異なっているが、実質的には従来どおりである。
なお、「審判に関する費用の納付」にはその費用の予納義務(民事訴訟費用に関する法律一二条)も含まれるので、二項及び四項では、従来同趣旨の規定を準用していたが、その必要はなくなった。
また、平成五年の一部改正において、訂正無効審判及び補正却下不服審判が廃止されたことに伴い、一項及び三項の規定から該当箇所を削除した。
さらに、平成八年の民事訴訟法の改正に伴い、準用する民事訴訟法規則の条番号の変更等が行われた(実質的な内容変更を行うものではない)。また、旧二項で準用していた旧民事訴訟法一〇一条[相手への催告]の規定については、手続の細目であることから規則事項となり、引き続き特許法に準用することができないため、これと同趣旨の規定を特許法施行規則に設けることとした。
また、平成一八年の改正時に、三項及び四項の「又は申立人」を削る文言の修正を行った。(青本第17版)