旧法との関係 一二一条
趣旨
本条は、再審の請求について規定したものである。
再審は本来訴訟法上の概念であり、判決が確定した後に、特別の理由にもとづいて認められる非常の不服申立方法である。確定判決を争わせることは法的安定性を害するから一般的には許すべきではないが、全く不服申立の途をとざしてしまうと、具体的妥当性の要請に反する事態を生ずるおそれがあるので、訴訟手続の重大な瑕疵等一定の理由がある場合に限定して再審の容認している。
特許法も明治四二年法までは再審の規定を欠いていたが、確定審決を絶対不変のものとすることが妥当でないのは確定判決の場合と全く異ならない。このような理由により、旧法ではじめて再審の章が設けられた。
一項は、「確定審決」に対するものであり、したがって、審判の確定審決に限らず再審の確定審決に対しても、再審理由があるときには再審の請求をすることができる。旧法においてすべての確定審決が再審の対象となるのではなく、請求人と被請求人が対立して争ういわゆる当事者系の審判、抗告審判の確定審決についてのみ再審が認められたにすぎない。拒絶査定不服の抗告審判の確定審決等に再審の請求をすることができないのは法的安定性の要求が強いためと説明されていたが、当事者系の審判と区別する根拠が薄弱なので、すべての審判について再審を認めることにした。
また、平成八年の民事訴訟法の改正に伴い、従来文理上疑義のあった、訴訟の結果につき利害関係を有する第三者は、補助参加の申出と同時に再審の訴えを提起することができることが、法文上明確にされた。特許法において旧本条に規定されたように、再審の請求ができるのは当事者に限られており、参加人(ここでは審判に参加する資格を有する者をいう。参加の形態については一四八条一項及び一四八条三項を参照。)は再審の請求はできなかったが、特許法に再審制度が設けられた趣旨からして、参加が可能な審判については、その再審請求についても民事訴訟と同様の請求適格とすることが望ましいと考えられるため、民事訴訟法の改正に伴い、参加人も再審の請求ができることとした。すなわち、一四八条三項に規定される参加は民事訴訟法四二条の補助参加に相当するものであり、これについては民事訴訟法と同様に利害関係を有する者の事後的な救済を図るため再審の請求を認めることが適当と考えられる。また、一四八条一項に規定される参加については、利害関係人であれば無効審判を請求することも可能ではあるが、他の審判請求人が無効審判を現実に有力な証拠で請求していながら、再審事由となる手続の瑕疵などで無効を勝ち取れなかったような場合には、一事不再理が働くため、以後の無効審判請求が認められず、無効となるべき権利が存続してしまうことも想定されるので、再審請求により救済できるようにすることが望ましい。
二項は、再審の理由について規定したものである。再審の制度は法的安定性を害するものであるから、看過することができないような重大な手続の不備違背等の理由が存在しなければならないとしたのである。民事訴訟法三三八条一項は、再審の理由を一号から一〇号まで限定的に掲げている。たとえば、法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと、法定代理権がなかったこと、判決に関与した裁判所が事件について職務に関する罪を犯したことは、いずれも再審の理由である。同条二項は、たとえば、裁判官の職務犯罪が理由とする再審に請求は、有罪の判決又は過料の裁判が確定したとき等にのみすることができるとしている。同条三項は「控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。」という規定であるが、民事訴訟法における控訴審に相当する抗告審判の制度を現行法では認めなかったので、準用する余地がなくなった。民事訴訟法三三九条は「判決の基本となる裁判について前条第一項に規定する事由がある場合(同項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合にあっては、同条第二項に規定する場合に限る。)には、その裁判に対し独立した不服申立ての方法を定めているときにおいても、その事由を判決に対する再審の理由とすることができる。」とするが、これを準用することにより、参加拒否の決定等の中間処分に再審理由がある場合にも確定審決に対して再審を請求することがなる。
なお、本項は平成八年の民事訴訟法の改正に伴い改正されたが、これは、準用する民事訴訟法規定の条番号を変更したものであり、実質的な変更を伴うものではない。
また、平成六年の一部改正において特許後の異議申立制度が導入されたことに伴い、決定取消に対する再審の規定が追加されが、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除した。(青本第17版)