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特許法第一七八条

(審決等に対する訴え)
第一七八条
審決に対する訴え及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。(改正、平五法律二六、平六法律一一六、平一五法律四七)
2 前項の訴えは、当事者、参加人又は当該審判若しくは再審に参加を申請してその申請を許否された者に限り、提起することができる。(改正、平五法律二六、平六法律一一六、平一五法律四七)実意商
3 第一項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達のあつた日から三十日を経過した後は、提起することができない。(改正、平五年法律二六)実意商
4 前項の期間は、不変期間とする。実意商
5 審判長は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、職権で、前項の不変期間については附加を定めることができる。実意商
6 審判は請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。(改正、平五法律二六)実意商

旧法との関係 一二八条ノ二
趣旨
 本条は、行政訴訟の提起について規定したものである。旧法制定当時は審決に対する訴の提起としては審決の法令違反に対する大審院への出訴が認められていたにすぎなかった。新憲法の制定によって行政機関は終審として裁判を行うことができず、一切の法律上の争訟は裁判所の終局的な判断を受けることになり、この場合に行政事件の特殊性を考慮して行政事件訴訟特例法が制定され、さらに昭和三七年には行政事件訴訟法(昭和三七年法律一三九号)が制定された。特許庁における審決、決定ももとより行政処分であり、それについての訴えは行政事件訴訟法の適用を受けるのが原則であるが、特許事件の性質上、同法の規定をそのまま適用することが必ずしも適当でないので、本条から一八四条までの規定を設けて行政事件訴訟法の特則を定めたのである。
 一項は審決、決定に対する訴の管轄を規定したものである。行政事件訴訟法一二条によると処分行政庁の所在地の裁判所、すなわち、東京地方裁判所が管轄裁判所となるべきであるが、特殊の理由から東京高等裁判所を管轄裁判所としたのである。すなわち、特許庁での審判手続が裁判に類似した準司法手続によって厳正に行われる以上、さらに三審級(地方裁判所から最高裁判所まで)を重ねることはいたずらに事件の解決を遅延せしめるという事情と、事件の内容がきわめて専門技術的であるため、特許関係の専門家によって行われた審判手続を尊重してよいという事情とによって、一審級を省略して直接に東京高等裁判所へ出訴することとしたのである。公正取引委員会の審決、高等海難審判庁の裁決についても、同様の理由から東京高等裁判所の専属管轄とされている(私的独占の禁止及び更正取引の確保に関する法律八五条、海難審判法五三条)。ここで審決とは審判の審決のみならず、再審の審決をも含む。また決定については本項で規定されている決定だけが訴訟の対象になる。除斥忌避の決定、参加許否の決定に対しては、いずれも不服の申立をすることができない(一四三条三項、一四九条五項)
 なお、従来は、拒絶査定不服審判(一二一条一項)において、要旨を変更する補正が却下された場合(旧一五九条一項で準用する旧五三条)、補正却下に対し不服のある審判請求人(出願人)は、補正却下不服審判を請求する代わりに東京高裁へ補正却下不服の訴を行うことが規定されていたが、補正却下不服の訴が提起されると判決が確定するまで、拒絶査定不服審判の審理は中止されるため(旧一五九条一項で準用する旧五三条)、拒絶査定不服審判の審理が遅延するという問題が生じていた。
 このため、平成五年の一部改正において、特許出願の審査においても補正不服審判(旧一二二条一項)を廃止し、補正の可否については拒絶査定不服審判において争うこととした(五三条三項)ことに伴い、拒絶査定不服審判の審理の遅延を防止する観点から、拒絶査定不服審判における補正却下についても、拒絶査定不服審判の審決取消訴訟において争うこととし、補正の可否のみを理由として東京高裁へ補正却下不服を行うことは認めないこととしたので、本項から該当箇所を削除した。
 また、平成六年の一部改正において、特許異議の申立てについての取消決定及び特許異議申立書の却下の決定に対する訴えについても東京高等裁判所の専属管轄とすることとした。これは審決や審判請求書の却下の決定に対する訴えの場合と同趣旨である。なお、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除した。
 二項は原告適格に関するものである。行政事件訴訟法の解釈としては、行政処分によって権利を侵害された者であれば、行政処分の直接の当事者でなくても原告適格がある。一般の行政処分であれば法律上の利害関係がある第三者にまで原告適格を拡げても別に支障はないが、特許権のように対世的な権利に係る訴訟においては、利害関係がある第三者の範囲は著しく広汎になり、これらの者すべてに原告適格を認めると裁判渋滞の遅延の原因となるおそれがある。しかし、現に特許庁の審決によって権利を害された者に救済を許否し、当事者だけに訴訟の提起を許すことは「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」という憲法三二条との関係上問題である。したがって、いわば妥協案として考えられたのが二項である。すなわち、訴えは当事者のほか審判又は再審に参加を申請して許されなかった者もまた提起することができる。質権者、専用実施権者、通常実施権者は、まず参加を申請すればよく、参加が許されれば当事者ないしは参加人として、許されなくても第三者として、いずれも本項によって訴えを提起することができる。これらの利害関係人が審判請求の事実を知らないでいる間に審判が終了し、参加を申請する機会を失うこともあり得ようが、そのような事態の発生を防ぐため、「審判長は、第一項の審判の請求があつたときは、その旨を当該特許権について専用実施権者その他その特許に関し登録を有する者に通知しなければならない」(一二三条四項)として参加申請人に訴えを提起する機会を与えることにした。
 なお、平成六年の一部改正において、審判に参加を申請してその申請を許否された者と同様に、特許異議の申立てについての審理への参加を申請してその申請を許否された者に原告適格を認めることとしたが、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除した。
 三項は出訴期間についての規定である。行政事件訴訟法一四条は、出訴期間を処分のあったことを知った日から六月と規定しているが、行政処分の効果を早く確定させるため、特別に規定を設けて出訴期間を短縮する法律が多い。本項もその一つであり三〇日とした。
 四項は出訴期間が不変期間である旨を規定している。すなわち、通常の期間と異なって期間の伸縮ができず、五項によって附加期間を定め、あるいはその付加期間を伸縮できるのみである。また行政訴訟には一般に民事訴訟法が適用されるから(行政事件訴訟法七条)、原告適格を有する者の責に帰することができない理由で不変期間内の訴訟が提起できなかったときは、追完することができる(民事訴訟法九六条)。
 六項は、一項で一審省略という構造をとっていることと関連して、一定のものについては必ず審判手続を経由すべきことを定めたものである。
[字句の解釈]
1 <専用管轄>法律の規定によって定められた管轄の定めのうち、裁判所の意思または当事者の行為によって動かすことができないものをいう。ここで管轄とは、裁判所間で裁判権の行使を分掌する定めを意味する。専属管轄に違反した場合、すなわち、東京地方裁判所に本条の訴えを提起したときは、訴訟は却下され(移送されることもある)、たとえ誤って裁判が進行し判決があっても、当然に控訴理由、上告理由となる。
2 <不変期間>法定期間のうち法律が特に不変期間とするものである。民事訴訟法上では、大体、裁判に対する不服申立期間である。裁判所の自由な伸縮がみとめられず、附加期間、追完の制度がある点で通常期間と異なる。
3 <附加期間>期間の伸縮に関する規定の適用がない不変期間について、公平の要求にもとづき、職権または請求によって附加する期間である。不変期間と一体をなし、したがって、徒過の場合は追完ができる。(青本第17版)
最終更新:2010年01月07日 23:38
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