旧法との関係 該当条文なし
趣旨
本条は、日本国内に住所又は居所を有する者の委任による代理人の権限について規定したものである。在外者の代理人にあっては前条に規定するように、在外者が代理権の範囲を制限しない場合には一切の手続について代理権を有するわけであるが、本条の場合は民法一〇三条又は民事訴訟法五五条二項の場合と同様不利益行為についての特別な授権がない限り代理権を有しないという考え方で規定されている。旧法には本条のような規定はなく民法一〇三条の解釈によって運用していたわけであるが、具体的手続が代理権の範囲であるかどうかについて明瞭でない場合も少なくないので、現行法においては具体的に手続の条文をあげ特別の授権を要する場合を規定したのである。
昭和六〇年の一部改正において特許出願等に基づく優先権制度が導入されたが、優先権の主張又はその取下げは、その基礎とされた先の出願のみなしと利下げ又は優先権の利益の喪失という効果をもたらすので、これらの行為についても特別の授権を要することとした。
昭和六二年の一部改正においては、特許権の存続期間の延長登録の制度が導入されたが、延長登録の出願の取下げも不利益行為に相当するため、当該行為についても特別の授権を要することとした。
また、平成五年の一部改正では、補正却下不服審判が廃止されたことに伴い、本条中の該当箇所が削除され、また、改正前の四二条の二が四一条へ移動されたされたことに伴い、本条中の該当箇所が改正された。
平成八年の一部改正においては、商標法条約が「委任状は、代理人の権限を特定の行為に限定することができる。」と規定し、「出願の取下げ」又は「登録の放棄」をその例示として挙げていること(四条(3)(c))、また、同条約は、委任による代理人の代理権の範囲は「登録後にも及ぶ」旨の明記があればその代理権は登録後にも及ぶとの考え方に立っていることから(同条(3)(c))、我が国も、商標法だけでなく
特許法においても、これと平仄を合わせた取扱いをすることを前提として、代理権の権限に関し、登録後においても特別授権がなければ行えない不利益な行為として「特許権の放棄」を追加することとした。
さらに、平成一一年の一部改正においては、出願公開の請求が、通常は出願日から一年六月を経過するまで秘密の状態を保たれる出願の内容をそれ以前に公表するものであり、出願人に不利益を生じる場合もあり得ることから、該当行為についても特別の授権を要することとした。
平成一五年の一部改正において、一二一条一項の審判を拒絶不服審判と規定する修正を行った。趣旨については一二一条を参照されたい。
平成一六年の一部改正により実用新案登録に基づく特許出願制度が導入されたところ、実用新案登録に基づく特許出願された後は、基礎とした実用新案登録に基づく特許出願は、もとの実用新案権にとっての不利益行為に該当するものであるから、特別の授権を要することとした。(青本第17版)