趣旨
PCTは、国際出願日を認められた各指定国においてその国の国内出願と同一の効果を維持していくため、出願人に対し所定の期間内にその指定国のための国内手数料を納付することを要求することができることとし(PCT二二条)、その納付がなかったときは、指定国において、当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する(PCT二四条(1)(ⅲ))旨規定している。またPCTは、国内法令は、国際出願がその形式又は内容についてPCT及びPCT規則に定める要件と要件とは異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない旨を規定する(PCT二七条(1))一方で、指定国の国内法令が発明者の氏名を届け出ることを義務付けることを妨げてはならない(PCT二七条(2))。
これらの条約の規定を実施するとともに、PCT二二条に規定する手続を行う主体、対象等を明確にするため、国際出願の表示、発明の名称、発明者、出願人及び代理人に関する事項を記載した所定の様式による提出書の提出を義務付けたのが本条である。
一項は、出願人は国内書面提出期間内に、発明者の氏名等を記載した書面を提出しなければならない旨を規定している。この書面は、発明者の氏名等の届出書であるとともに、国内手数料の納付書等の性格を有するものである。なお、従来は、外国語特許出願の場合は翻訳文の提出先の提出書としての性格を有するものであることから、提出時期に差異を設けたが、昭和六二年の一部改正により、日本語でされた国際特許出願(以下「日本語特許出願」という)の場合とこの書面の提出期間が、実質的に同一になったこと等の理由から、両者を区別することなく一律に国際特許出願として規定することとした。
また、平成八年の一部改正では、一号中から「法人にあつては代表者の氏名」を削除し、改正前の二号「提出の年月日」を削除した(改正理由は三六上の[趣旨]参照)。
さらに、平成一〇年の一部改正において、旧二号「発明の名称」を削除するとともに、国際出願と本条に基づく国内書面との結合を表すために、旧四号において、「国際出願日その他の通商産業省令で定める事項」として記載を求めていた「国際出願日」と「国際出願番号」のうち、国際出願の特定に当たり「国際出願日」の記載は不要であるとし、旧四号を「国際出願番号その他の通商産業省令[現経済産業省]で定める事項」とし三号とした(改正理由は三六上の[趣旨]参照)。
二項は、国際特許出願についての手続の特例について規定したものである。国際特許出願の場合は、我が国の特許庁以外の受理官庁に対し出願がされた場合でも国際出願日における特許出願とみなされ、一項による手続がされていなくても我が国の特許庁に出願が係属していると考えられること、国内出願には類似の手続がない一項の書面の提出手続があることから、その手続の補正について、一七条三項の補正に加えて特別の補正事由を設けることとしたものである。
一号は、一項の書面が所定の期間内に提出されないときは補正命令の対象とすることを規定したものであり、国際特許出願について出願人が指定官庁としての我が国の特許庁に対する手続を全く行っていない場合であっても補正命令の対象とする趣旨である(本号による補正命令は、五号による補正命令と同時に行われることとなろう)。なお、外国語特許出願の場合は、明細書及び請求の範囲の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは出願が取り下げられたものとみなされるため、翻訳文が提出されていることが本号の補正の対象となるための前提である。
二号は、一項の規定による書面の提出手続について、未成年者または成年被後見人が法定代理人によらずに手続をした場合等、七条一項から三項までの規定に違反した場合又は復代理人の選任について授権されていない代理人が復代理人を選任し、その復代理人が手続をした場合等、九条の規定に違反した場合が補正命令の対象となることを規定したものである。
三号は、一項の規定により提出された書面の様式上の瑕疵がある場合等、手続に方式上の違反がある場合が補正命令の対象となることを規定したものである。
四号は、一八四条の四第一項により外国語特許出願について要約の翻訳文を提出すべきことを義務付けたことに伴い、要約の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは、補正命令の対象とすることとしたものである。これは、国内出願において要約書が提出されないときを補正の対象としていることに対応したものである。なお、外国語特許出願の場合は、明細書及び請求の範囲の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは、出願が取下げられたものとみなされるため、翻訳文が提出されていることが本号の補正の対象となるための前提である。
なお、平成一四年の一部改正において、一八四条の四第一項に翻訳文提出特例期間が設けられたことに伴い、一八四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあっては要約の翻訳文についても、翻訳文提出特例期間内に提出ができることとした。
五号は、一九五条二項により国際特許出願について国内出願と同額の手数料を納付すべきことを義務付けたことに伴い、その納付が所定の期間内にされないときは、補正命令の対象とすることとしたものである。これは現行
特許法が手続について納付すべき手数料が納付されないときを補正の対象としていることに対応したものであり、日本語特許出願の場合は、出願人が指定官庁としての我が国の特許庁に対する手続を全く行っていない場合であっても、補正命令の対象とする趣旨である。なお、外国語特許出願の場合は、明細書及び請求の範囲の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは、出願が取下げられたものとみなされるため、翻訳文が提出されていることが本号の補正の対象となるための前提である。
三項は、出願人が二項による補正命令に応じた補正をしないときは、国際特許出願を却下することができる旨を規定したものである。補正命令に応じなかった場合に手続を却下とせず出願自体を却下としたのは、国際特許出願を却下することができる旨を規定したものである。補正命令に応じなった場合に手続を却下とせずに出願自体を却下としたのは、かりに手続を却下とした場合には、一項の規定による書面の提出手続が却下となった場合であっても、当該書面の提出がない場合として二項一号により再度補正の命令をする必要が生じてくることとなり、補正命令が重複することとなるので、そのような重複する補正命令を回避するために出願を却下とすることとしたものである。
なお、ニ項に規定されたもののほかに、翻訳文の提出手続に瑕疵がある場合について一七条三項の補正の規定が適用されるのは当然である。
また、従来の三項では、補正をする際には手続補正書によりしなければならない旨を定めた一七条四項の規定を準用していたが、こうした規定を置かなくても、二項の規定により手続の補正をする場合には当然一七条四項が適用されると考えられるため、平成六年の一部改正において旧三項を削除し、四項を三項に繰り上げた。
さらに、平成八年の一部改正において、三項に現定する「無効」を「却下」に改めたから、これは一八条において「無効」を「却下」に改めたことと同趣旨である。
[字句の解釈]
1 <経済産業省令で定める事項>国際出願番号、代理人の氏名又は名称等(施規三八条の三参照)
2 <経済産業省令で定める方式>書面に一項に規定する記載事項が記載されていないこと、書面が所定の様式により作成されていないこと(施規三八条の五参照)(青本第17版)