(特許原簿への登録)
第二七条
次に掲げる事項は、特許庁に備える特許原簿に登録する。
一 特許権の設定、在続期間の延長、移転、消滅、回復又は処分の制限(改正、昭六〇法律四一、昭六二法律二七、平六法律一一六)
二 専用実施権又は通常実施権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限
三 特許権、専用実施権又は通常実施権を目的にとする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限
2 特許原簿は、その全部又は一部を磁気テープ(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。以下同じ。)をもつて調製できることができる。(追加、昭三九法律一四八)
3 この法律に規定に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。(改正、昭三九法律一四八)
旧法との関係 六一条
趣旨
本条は、登録に関する規定である。不動産については登記制度があるわけであるが、特許に関する権利は不動産に関する権利とは全く別異のものであり、登記制度をもって充足することはできない。この登記制度に相当するものとして本条は登録について規定しているのである。一項各号に掲げる事項は登録事項の主要なものである。また一項各号に掲げる事項は登録事項の主要なものである。また一項各号に掲げる事項についても、その登録の効果は必ずしも同一ではない。すなわち、特許権の設定、存続期間の延長、転移、放棄による消滅等は登録をもって効力発生要件としており(六六条一項、六七条の三第四項、九八条一項)、通常実施権の転移、変更、消滅等は登録をもって第三者対抗要件としている(九九条三項)。二項は、従来原簿の様式をバインダー式帳簿としていたことに代えて、電子情報処理組織を使用して、文字を符号化したうえで磁気テープ等に記録することによって登録を行うことができるようにするものである。磁気テープ等のお従来の「原簿」の概念に含ませることは少々無理があるので、新たに一項を挿入したものである。三項に規定しているように、この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は政令で定めることとしているが、この目的のため「特許登録令」(昭和三五年三月二四日政令第三九号)が設定されている。
なお、平成六年の一部改正において、特許権の回復を認めることとした(一一二条の二)ため、一項一号に特許権の回復を追加した。
[字句の解釈]
1 <特許原簿>登記制度における不動産登記簿に該当するものであり、一八六条に規定するところにより所定の手数料を納付すれば何人もその記載内容の閲覧、謄写、磁気テープをもって調製した部分に記録された事項を記載した書類の交付等の請求をすることができる。
2 <処分の制限>執行保全のための仮差押、仮処分、税金滞納による差押等をいい、当該権利の処分行為が制限される場合をいう。
3 <保存>たとえば、七九条の先使用による通常実施権を有する者がその権利を第三者に転移しようとする場合に、その転移を九九条三項にいう第三者に対抗することができるものたらしめるため、移転前に保存の登録をする事例がある。
4 <全部又は一部>特許原簿は、現在、特許登録原簿、特許関係拒絶審決再審請求原簿及び特許信託原簿に分かれ(特許登録令九条一項)、また特許を受けた発明の当該明細書、特許請求の範囲及び図面(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律の規定により明細書及び特許請求の範囲に記載された事項並びに図面の内容が同法三条二項に規定するファイルに記録されている場合にあっては、当該ファイルの記録)は、特許登録原簿の一部とみなされている(特許登録令九条二項)。このように登録事務の必要性や便宜のために原簿の種類を分けている現状であり、特許原簿を磁気テープ等で調製したときにも、たとえば、現在、特許登録原簿とみなされている明細書、特許請求の範囲及び図面は従来通りとし、また件数がきわめて少ない特許関係拒絶審決審判請求原簿のみは従来の帳簿への記載の方法によることにする等の予知を残しておくほうが実際上便利な場合も考えられる。そこで、必ずしも原簿全体を磁気テープで調製しなくてもよいこととするためである。
5 <磁気テープ>磁気テープとは、酸化第二鉄等の磁性粉末材料をプラスチックフィルム(アセテートセルローズフィルム、ポリエステルフィルム等)若しくは紙等に塗布したものまたはプラスチック材料に磁性粉末材料を均一にねりこんでフィルムに形成したものを一定の幅に形成して出来たものであって、音声、画像、符号等の時期的記録に使用するものをいう。現在のところ、念頭におかれているのは電子情報処理組織の外部記録装置に使用される電子計算機本体から送られる信号を記録する作用を営む磁気テープである。
6 <(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。)>この部分が意味するのは、磁気テープに記録するのに準ずるような方法を使用することによって記録することができ、しかも、一定の事項を確実に記録して置くことができる物をいう。
まず「これに準ずる方法により」とは、直接筆記して文字を書くのではなく機械装置等を使用して、文字が示す意味内容をいったん別の形(電流、磁力線、光線等)に変換し、変換されたものをなんらかの物理的、化学的変化(残留磁気、静電容量に関係する誘電率の変化、光線の透過率の変化、電気抵抗の変化等)として蓄えることによって記録する方法を指すのである。前述した磁気テープの場合には電子情報処理組織によって符号化された電流に変換され、結局、残留磁気の形で記録されるが、変換する方法が電子計算機の場合のような符号化を行う方法であることは要件でなく、たとえば、ビデオテープレコーダに類似した装置を使用して文字をそのまま写し取ることによって記録することも含まれうると解する。また磁気テープの場合のように電磁的方法である必要はなく、機械的、静電的方法を用いて記録をしてもよい。
次に、「一定の事項を確実に記録して置くことができる物」とは、登録されるべき事項が間違いなく一定の場所に記録できるとともに、いったん記録された内容が長期間にわたって保存でき、かつ、必要に応じて記録されている内容を取り出せることが要件となっていることを意味する。換言すれば、記録の正確さ、保存性及び再生可能性を含めた全体としての記録の信頼性が要件となっているのである。電子計算機の使用によって外部記録装置の磁気テープ(磁気ディスク、磁気ドラム等も同じ)へ記録することは技術的に見てこれらの信頼性を備えているものと考えられる。
7 <調製する>「調整する」とは、物品を整えつくることで、この場合は、機械的又は電気的方法等によって登録すべき事項を磁気テープ等に記録することによって登録がされた磁気テープ等を作成することをいう。
8 <この法律に規定するもの>たとえば、六六条二項(青本第17版)
最終更新:2009年10月08日 17:16