アットウィキロゴ

特許法第三二条

(特許を受けることができない発明)
第三二条
公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条[特許の要件]の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
(改正、昭五〇法律四六、平六法律一一六)

旧法との関係 三条
趣旨
 本条は、二九条に規定する発明であっても公益的な理由から特許することができない発明について規定している。
 本条は、その立法趣旨を説明するまでもなく当然のことである。すなわち、産業上利用することができるような発明であっても、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するような発明については特許すべきでないのである。
 なお、昭和五〇年の一部改正が行われるまでは、本条において、特許を受けることができない発明として、飲食物又は嗜好物の発明、医療(人の病院の診察、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下同じ)又は二以上の医療を混合して一の医療を製造する方法及び化学方法により製造されるべき物質(いわゆる「化学物質」)の発明が規定されていたが、これは、第一に産業政策上の見地、すなわちこれらの産業分野における我が国の技術開発力が先進諸国に比べて低かったため、外国企業によって物の形での特許を取得されることにより我が国産業が蒙ることとなるかもしれない圧迫を懸念したためといわれ、第二に国民生活上の見地、すなわち飲食物や医療等が国民生活に不可欠のものであることを配慮したものといわれている。
 昭和五〇年の一部改正により、これら発明についても特許を受けることができることとされたのであるが、改正の理由は次のようなものである。
(1)これらの不特許事由の存置についてはつとにその再検討をすべきことが指摘され、とりわけ化学物質については、昭和三〇年当時現行法の制定のための審議において、すでに我が国の技術水準は著しい進歩を遂げたとして不特許事由から除くことが検討され、世論調査の結果、若干慎重論が強かったため存置されていたもの、当時の審議会の答申には「将来我が国における科学技術の進歩と国際的な動向によってあらためて検討すべきものと考える」と記されている。
 このような審議から二〇年近くを経過した昭和五〇年当時では、我が国産業の技術水準は一層急速な向上を遂げ、外国企業による特許支配を論ずる段階を通り過ぎて、新規物質の発明という積極的な技術開発に取り組むべき時期に至っていると判断され、また、国民生活上の配慮の点についても最近では多種多様な化学物質の類似の化学物質、医薬、飲食物等が豊富に提供されるに至っていること等にかんがみて、これらの物質等を特別に扱って不特許事由を存置する理由はなくなっているものと考えられる。
(2)これらの物自体の発明に対して特許に対して特許を与えることとすべきとする積極的な論拠としては、発明である以上他の分野における発明と同様正当な同等正当な保護が与えられるべきであるという基本論のほかに、製法発明又は用途発明に対する保護のみでは、独創的な新規物質の開発意欲を喪失させ他人の発明を模倣する安易な製法開発に走らせるなど研究開発のあり方をともすればゆがめる結果をもたらす一方、新規物質の発明者は自らの発明を十分に保護するためにたとえ無用であっても後願製法発明を排除するための製法の開発および特許出願を強いられ、さらには物自体の発明に特許があれば生じないであろう無用な係争が生ずるという問題があることである。
(3)諸外国の状況をみれば、アメリカ、イギリス、フランス等でこれらの物の発明についても特許を与えることとしているのに加えて、パリ条約のリスボン改正会議において、「技術の進歩を促進するためには発明は最大限度に保護されなければならないことにかんがみ、本会議は同盟各国に対して各国がその国内法制において新規化学物質の特許の保護を規定することの可能性を検討することを勧告する」との勧告が採択され、一九六八年には西ドイツが化学物質、医薬及び飲料物に対しても特許をすることとなり、デンマーク、スウェーデン等のノルディック諸国も同じく一九六八年から特許をすることなった(ノルディック統一特許法では医薬及び飲食物については国により一〇年間、一九七七年までの留保が可能となっている。)我が国においても、このような国際的動向に順応することが必要と考えられる。
 なお、原子核変換の方法により製造されるべき物質の発明については、いまだ我が国の当該分野における技術開発力は低いこと等の理由により、昭和五〇年の一部改正においては、その物質自体の発明について特許することは見送られていたが、平成六年の一部改正においては、TRIPS協定二七条1の規定に従うとともに、我が国の原子力産業の技術水準が国際的にも遜色ないレベルに達しつつあり、産業保護の観点から不特許事由として存置する理由が乏しくなったことを踏まえ、本条から削除された。(青本第17版)
最終更新:2009年10月13日 03:36
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。