旧法との関係 該当条文なし
趣旨
本条は、特許査定の謄本送達前に不適法な補正がなされた場合の取扱いについて規定したものである。本条は、平成五年の一部改正において改正がなされ、また、平成六年の一部改正では、出願公告制度が廃止されたことに伴う改正を行われている。さらに、平成一八年の一部改正では、五〇条の二の通知が導入されたことに伴う改正が行われている。
従来は、補正が要旨変更と認定された場合に、その補正を却下するとともに、補正却下不服審判(旧一二二条一項)の請求がなされた場合には、特許出願の審査を中止する(同四項)旨が規定されていたが、平成五年の一部改正により、制度の国際的調和、迅速な権利付与の実現の観点から、不適法な補正である新規事項を追加する補正がなされた場合には、これを特許出願の拒絶の理由(四九条一号)とすることとされたため、補正却下の処分はなされないこととなった。
しかしながら、第二回目以降の拒絶理由通知に対する補正(一七条の二第一項二号)が不適法である場合についてまで、特許出願の拒絶の理由とすると、その補正が不適法である旨の拒絶理由を再度通知し、更にその拒絶理由通知に対しては、補正が可能であるから、更に補正について審判を行う必要があり、審査の迅速性が確保され難いこととなるため、本条において、第二回目以降の拒絶理由通知に対する補正が不適法であることが特許査定の謄本の送達前に認められた場合には、当該補正を却下することとした。また、分割出願制度の濫用を抑止する観点から、第一回目の拒絶理由通知と併せて五〇条の二の規定による通知がされた場合も、第二回目以降の拒絶理由通知がされた場合と同様に扱うこととした。
補正却下の対象となる補正は、新規事項を追加する補正(一七条の二第三項)、発明の内容を大きく変更する補正(一七条の二第四項)、請求項の削除、特許請求の範囲の特定の厳縮、誤記訂正、拒絶の理由に示す事項についてする明瞭でない記載の釈明を目的としない補正(同項五項)、独立して特許を受けられない補正(同条六項で準用する一二六条五項)である。
なお、第二回目以降の拒絶理由通知に対する補正が不適法であったことが特許査定の謄本の送達後に認められた場合は、新規事項を追加する補正のみが無効理由(一二三条一項一号)とされる。その他の要件(発明の内容を大きく変更する補正、請求項の削除、特許請求の範囲の特定の減縮、誤記訂正等)については、迅速な権利付与の実現、出願間の公平な取扱いの観点から再度審査を回避するため補正を制限したものであり、これを満たしていないことが後に認められた場合であっても、無効とするほどの実態的な瑕疵があるとは認められないため、無効理由とはされていない。
また、平成一四年の一部改正において、三六条二項の「明細書」から「特許請求の範囲」が分離されたことに伴い、一項にも同様の修正が加えられた。
三項は、前項の補正却下の決定に対して不服を申し立てることを認めることとすると、従来の五三条と同様にその審査が中止され、迅速な権利付与が図られないことから、従来の五四条と同様に、独立して不服を申し立てることは認めないこととした。しかしながら、全く不服を申し立てることができないという趣旨ではなく、別ルートによる不服の申立てが認められる。すなわち、補正が却下されれば特許出願は補正前の従来に戻るわけであり、その補正前の特許出願の多くは元々拒絶理由を含んでいるものであるから、その補正が却下された後の特許出願については拒絶査定がなされるはずであり、その拒絶査定に対しては審判を請求することができるので、補正却下の決定に対する不服は、平成五年の一部改正前の五四条三項ただし書と同様に拒絶査定不服審判(一二一条一項)において、拒絶査定の可否と併せて補正却下決定の可否を争うことができることを規定したものである。
なお、平成一五年の一部改正において、一二一条一項の審判を拒絶査定不服審判と規定する補正を行った。趣旨について一二一条を参照されたい
[参考]
<補正却下の決定に基づく新出願制度の廃止>
昭和六〇年の一部改正において特許出願等に基づく優先権制度を導入されたことに伴い、補正却下後の新出願の制度を廃止し、本条中関連する規定(旧四項から六項まで)を削除した。
補正却下の決定に基づく新出願の制度を廃止した主な理由は次の通りである。
(1) 特許出願等に基づく優先権制度の導入に伴い、同制度の利用によって要旨変更のおそれのある補正については、安全確認に所期の目的を達成できることから、要旨変更の補正に対する救済制度である補正却下後の新出願制度の意義が薄らぐことになる。
(2)昭和四五年の一部改正において採用された出願公開制度により、原出願の出願公開後の補正が却下された後の新たな特許出願は、その公開公報により拒絶される可能性が極めて高く、原出願の公開後は補正却下後の新出願の制度は、存在意義をほぼ失っている。
なお、補正却下後の新出願の制度は、
特許法、
実用新案法では廃止されたが、
意匠法、商法法では存続している。同制度については意匠法一七条の三の[趣旨]を参照されたい。(青本第17版)