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特許法第六九条

(特許権の効力が及ばない範囲)
第六九条
特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。実意
2 特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。実意
一 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
二 特許出願の時から日本国内にある物
3 二以上の医療(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して製造する方法の発明の係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。(本項追加、昭五〇法律四六)

旧法との関係 三六条
趣旨
 本条は、特許権の効力のおよばない範囲について規定したものである。特許権は絶対的な支配権であるが、種々な事情から限界を設ける必要がある。それは同じく絶対的な支配権である所有権である所有権について限界が設けられる理由と類似している(民法第二編第三章第一節)。
 一項の試験又は研究のためにする特許発明の実施に特許権の効力がおよばないこととしたのは、試験又は研究がもともと特許に係る物の生産、使用、譲渡等を目的とするものではなく、技術を次の段階に進歩せしめることを目的とするものであり、特許権の効力をこのような実施にまでおよぼしめることは却って技術の進歩を阻害することになるという理由にもとづく。もっとも、効力のおよばないのはその試験又は研究のためにする実施に対してのみであって、試験又は研究の結果生産された物を業として販売する等の行為については当然特許権の効力はおよぶものと解される。六八条に規定するように、現行法においては特許権の効力の業としての実施以外の実施に及ばないので、試験又は研究のためにする実施の多くは一項の規定がなくとも業としての実施ではないという理由で特許権の効力が及ばないわけであるが、試験又は研究のためにする業としての実施ということもあり得ると考え一項の規定をおいてものである。
 二項一号は、パリ条約五条の三にも規定されているところであるが、国際交通の便宜を考えて規定したものである。二項二号は、特許出願の時に存在する物にまで特許権の効力をおよぼしめるのは苛酷にすぎるので、このような規定がおかれたものである。もっとも、本号の規定の適用を必要とする事例はきわめてまれで、多くは当該発明はその物が特許出願前から存在することによって公知であるとされ、かりに特許になった場合においてもその物の所有者は七九条の規定による実施権を取得する場合が多いのである、結局、二項二号の存在理由がある場合としては、当該物を秘密に所持していて、その所持が当該発明の実施又は実施又は実施の準備には該当しないような場合である。
 三項は、昭和五〇年の一部改正により医薬の発明及び医薬の混合方法の発明にも特許を与えることとしたことに伴って、新設された規定である。
 従来、医薬の混合方法の発明に対しては特許が与えられていないので、薬剤師、医師等が調剤をする場合に行う医薬の混合については、特許法上の制約なく実施することができたが、改正により、医薬の混合方法の発明についても特許を与えることとした結果、調剤上の支障が生じないよう調整することが必要となったものである。
 これは、調剤行為は医師又は歯科医師が交付する処方せんにより行われるべきものであるから、それを行う者(多くの場合薬剤師)は処方せんに従うしかなく、また、処方せんは、きわめて多種の医薬の中から当該病状に最も適切な薬効を期待できるように選択し調剤することを指示するものであるから、医師等はその都度その混合方法が特許権と抵触するか否かを判断することは困難であること、また、医師等の調剤行為は患者たる国民の健康を回復せしめるという特殊な社会的任務に係るものであること等を考慮した場合に、調剤行為にまで特許権の効力を及ぼすのは適当でないためである。
 昭和五〇年の一部改正により、医薬自体の発明に対しても特許がされることとなるので、当該発明に係る特許権と調剤行為との関係が問題となるが、医薬自体は通常、特許の実施許諾を受けた医薬の製造業者によって製造され、正当に医薬等に販売されるものであるから、調剤の段階で特許権が問題となることはまれであること及び従来から製法特許による権利が及んでいる医薬との均衡を考慮して、医薬自体の発明に係る特許権との調整は行われなかった。ただ、混合方法によって製造されるべき医薬の発明については、調剤において単に混合するだけでそのような医薬ができることが多いので、これについても混合方法の発明と同様に扱うこととした。
[字句の解釈]
1 <医薬>特許法でいう「医薬」とは、薬事法の定義とやや異なっており、人の病気に用いるものに限っている点で薬事法より狭く、医薬部外品をも医薬とする場合がある等の点で薬事法より広い。
2 <処方箋>医師法または歯科医師法の規定に基づいて交付されるものであり、薬剤師、医師、歯科医師いずれであっても処方せんによらなければ調剤することができないこととされている。(薬剤師法一九条及び二三条)。(青本第17版)
最終更新:2009年11月07日 18:49
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