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「畜生、砲撃が全然止む気配が無いじゃないか!」 枢軸によって繰り返し行われる砲撃の雨が連合兵士の精神を疲弊させ、絶望だけが隊内を浸透している。 思えばクソッタレな徴兵令でしょっ引かれ、最悪の最前線へと送られたのが運の付きで、いつ死んでもおかしくない状況だ。 深々と降るこの雪だって恨めしい、手が悴み、銃身がぶれて敵をサイトに定めることだって出来やしない。 そもそも、その敵だって姿を現さないのだ。積もった雪にぶちまけられた赤を見て苛立ちに苛まれる。 「ジーザス、ファッキン・クライスト。てめーの誕生日だって云うのに、俺達には死ねって言うのかっっ!?」 塹壕から仲間の悲鳴が上がる。肉片が飛び散り、頬に付いた。どうしようも無い不快感。 ジェノサイド・クリスマス。砲撃の声と共に散り往く同胞達を後目に、遂に抑えられなくなった。 「全軍突撃だ。ここに留まっても徐々に兵を消耗させるだけだ。どうせ死ぬ命、敵を一人でも多くぶっ殺してやろうぜ! 」 一人が声を上げた。司令系統がズタズタになり、撤退すらも選択肢から消え、投降すらも許されない。 最後の戦闘車両に乗り込んだ男が突撃する。しかし、戦車の装甲神話は脆くも崩れ去った。 圧倒的だった。エンジン部に被弾し、轟音を上げて吹き飛んでしまう。悔しさに涙する。 誰かが声を上げた。 「サンタだ!」 誰かが賛同する。 「赤いリキシー!!」 皆が声を上げる。 「BFサンタだ!」 薄暗い中空に、トナカイを模した二つのバイクに引かれた鮮やかなワインレッドのリキシーが滑空していた。 どんな原理で動いているか、そんなことは些細なことだ。絶望的な戦場に現れると言われる連合兵士に長く語り継 がれる戦場伝説。 それがBFサンタ、落下傘が開き投下される補給物資。 『メリークリスマス』 そう書かれたリンゴ箱から暖かいスープが出てきた。そしてBFサンタは此方を一瞥し、枢軸の砲撃する方面へと加速する。 その軌跡はさながら光の尻尾で、プレゼントのリボンを思わせた。 「助かったな……」 「ああ、でもな、犠牲が大きすぎた」 死んだ仲間は決して戻ってはこない。けれどもソレでBFサンタを責めるのはお門違いだ。 BFサンタは現れる……連合の兵隊が危機に陥った時に。つまり、そう云うことなのだろう。 爆撃音。 彼は全ての者に祝福を、だから戦場を転々とし、連合の兵に物資を与え、戦況を塗り替えるのだ。 この日を決して忘れないだろう。来年のクリスマスは……家族で過ごせると良いな、そのためにもこの戦争勝ち残 らなければならない。 「メリークリスマス、BFサンタ」 小さな声で、BFサンタにだけ聞こえる声で俺は囁いた。
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